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第80話 私は私の家に

Author: 暁万里
last update publish date: 2026-07-15 14:52:00

 夕食の後片付けをしたあとも、澪は一人で台所に立っていた。

 シンクを布巾で拭く。

 乾いた食器を棚へ戻す。

 身体は自然に動く。

 何年も繰り返してきたことだから。

「澪」

 リビングから母の声がする。

「お茶ちょうだい」

「……うん」

 返事をして湯を沸かす。湯呑みにお茶を注ぎ、リビングへと運んで、母の前に置いた。

 母は当然のように湯呑みを受け取り、テレビへと視線を戻す。

 感謝の言葉、ひとつもない。

 美羽もソファへ寝転んだままスマートフォンを眺めていた。

 静かに胸が痛んだ。神宮寺家では違った。

 賑やかな会話が飛び交って、お互いの存在を尊重し合う。

 そんな雰囲気に包まれた場所だった。

 あの家では、自分が何かをすると、誰かが笑ってくれた。

 ここでは違う。

 やることが当たり前。

 できて当たり前。

 誰も、それを疑わない。

 その時だった。

 インターホンの音が、部屋の中に響く。

「あら?」

 母が時計を見る。間もなく二十時になろうとしていた。

「こんな時間に誰かしら」

 そして当然のように言った。

「澪、出て」

「うん」

 澪は玄関へ向かい、ドアノブへ手を掛け、ゆっ
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  • 「君は俺の花だ」妹に婚約者を奪われた私を、冷徹華道家が溺愛して離してくれません   第6話 白い花

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  • 「君は俺の花だ」妹に婚約者を奪われた私を、冷徹華道家が溺愛して離してくれません   第4話 連れて帰る

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  • 「君は俺の花だ」妹に婚約者を奪われた私を、冷徹華道家が溺愛して離してくれません   第3話 触るな

    「……澪?」 聞き慣れた声だった。 その瞬間、澪の体は強張る。 振り返った先には、息を切らせた拓真が立っていた。 雨に濡れた髪。 乱れた呼吸。 まるで必死に追いかけてきたみたいだった。「澪……!」 澪の姿を見て、安堵したように表情を緩めた拓真が、一歩近づいてくる。 けれど澪は思わず一歩足を後ろに引いた。 その仕草に、拓真の顔が傷付いたように歪む。「待ってくれ。話を聞いてほしい」「……」「誤解なんだ」 その言葉に、澪は思わず顔を上げた。 誤解。 その言葉が胸に刺さる。 だって澪は見たのだ。確実に。この目で。 ホテルの前で。 拓真が美羽に口づける姿を。「誤

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