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345話

Author: 籘裏美馬
last update publish date: 2026-04-08 19:37:25

腕を強く掴まれていて、御影さんから離れる事が出来ない。

私は何度も腕を振り払おうとしたけど、私の腕を掴む御影さんの力が増しているように感じる。

「茉莉花、お前に相応しいのは俺だろう!?あんな薄情な男より、俺の方が相応しい!俺と一緒にいれば、今後危険な目には遭わない!」

「──離してくださいっ!」

私たちの話し声は、次第に大きくなっていく。

御影さんの声に負けじと、私が大きな声で「離して」と言った瞬間、廊下を走ってくる使用人の足音が聞こえた。

「お嬢様、大丈夫ですか!?」

「──っ、ええ!お客様がお帰りよ。見送ってあげて」

「かしこまりました。御影様、お嬢様から離れてください。お見送りいたします」

やって来た男性使用人2人に囲まれた御影さんは、渋々といった体で私から手を離す。

私の横を通り過ぎる際、御影さんはぼそりと呟いた。

「涼子の暴走は止まらないぞ。……お前を守れるのは俺だけだと思っておいた方がいい」

御影さんは私にそう言うと、そのまま歩いて部屋を出て行った。

「──っ、最悪、だわ……」

ずきり、と御影さんに掴まれた腕が痛む。

ちらりと服の裾を捲って
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    腕を強く掴まれていて、御影さんから離れる事が出来ない。 私は何度も腕を振り払おうとしたけど、私の腕を掴む御影さんの力が増しているように感じる。 「茉莉花、お前に相応しいのは俺だろう!?あんな薄情な男より、俺の方が相応しい!俺と一緒にいれば、今後危険な目には遭わない!」 「──離してくださいっ!」 私たちの話し声は、次第に大きくなっていく。 御影さんの声に負けじと、私が大きな声で「離して」と言った瞬間、廊下を走ってくる使用人の足音が聞こえた。 「お嬢様、大丈夫ですか!?」 「──っ、ええ!お客様がお帰りよ。見送ってあげて」 「かしこまりました。御影様、お嬢様から離れてください。お見送りいたします」 やって来た男性使用人2人に囲まれた御影さんは、渋々といった体で私から手を離す。 私の横を通り過ぎる際、御影さんはぼそりと呟いた。 「涼子の暴走は止まらないぞ。……お前を守れるのは俺だけだと思っておいた方がいい」 御影さんは私にそう言うと、そのまま歩いて部屋を出て行った。 「──っ、最悪、だわ……」 ずきり、と御影さんに掴まれた腕が痛む。 ちらりと服の裾を捲って確認してみると、腕にははっきりと御影さんの指の痕が残っていた。 ◇ 翌日。 いつも通り会社に出社した私は、仕事をしつつ時折痛みを感じる自分の腕に目を向けた。 「痛いわね……。打撲みたいな感じになっているのかしら……。馬鹿力だったのね、あの人って……」 ズキズキと痛む腕のせいで集中が続かず、私は背もたれに深く背中を預けた。 天井を見上げ、ため息をついていると本部長室の扉がノックされた。 「──はい?」 「本部長、矢田です」 「矢田主任?どうぞ、入ってください」 「失礼します」 やって来たのは、矢田主任。 社内施策の報告にやって来てくれたみたいだった。 彼女は胸元にバインダーを抱えて、歩いて来る。 私の目の前までやって来た矢田主任は、バインダーを手渡してくる。 「本部長、こちらが今回の施策です。ご確認の上、署名をお願いします」 「ええ、分かりました。今確認しますね」 バインダーに手を伸ばした私に、矢田主任の表情が変わる。 手を伸ばした際に、私の服の裾から昨夜の痣が見えてしまったみたいで──。 「ほ、本部長!どうしたんですか、それ!?」 「えっ、ああ…

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    ◇ 藤堂の家に私を送ってくれたお父様。 お父様は私を気遣い、暫く仕事──会社は休むか、と聞いて下さったけど休む事はしたくない。 確かに苓さんに忘れられてしまった事はショックで。 悲しくて悲しくて辛いけど、だからと言って、苓さんと一緒に進めていたカフェ事業を途中で放り投げる事も、休む事もしたくない。 だから私はお父様に「大丈夫」だと伝えた。 お父様は心配そうにしていたけど、会社に戻らないといけないらしく、私を家まで送って下さった後は会社に戻った。 家で1人になった私は、ふと家の中を見回した。 すると、家の中や外……庭先で苓さんと一緒に過ごした思い出が蘇る。 「そう言えば、苓さんが寝泊まりしている客間で一緒に寝た事もあったし……。私のお部屋で過ごした事もあったわ……」 そうだ。 そして、まだ存命していたお祖父様と、お父様と苓さんが夜にお酒を飲んで談笑していた時もある。 それに、苓さんと手を繋いで離れの日本庭園を何度も散歩した事を思い出す。 「あの離れは、お母様がお気に入りだって事を苓さんにもお話したものね……」 庭園の見事さに、苓さんが感動してくれていた事も、しっかりと覚えている。 「……苓さん」 いつか、私の事を思い出してくれるだろうか。 それとも、今後一生……私の事は思い出してくれないのだろうか──。 でも。 苓さんは、私の事を好きになってくれたんだから、もう1度好きになって貰えるよう、努力しよう。 苓さんから沢山「好き」を「愛情」を貰ったから、今度は私から沢山苓さんに好きと愛情を伝えて。 そして、もう1度私を見てもらって──。 好きになってもらえばいいんだ。 「──うん、うん……。そうよね。苓さんに忘れられちゃった事で、絶望している暇は無いわ。仕事もあるし、今後も苓さんと会う機会は沢山ある。苓さんに私を改めて知ってもらおう」 私はそう気合いを入れると、ぐっと握りこぶしを握って自分の部屋に戻った。 誰か──。 恐らく、涼子だろう。 涼子から送られてきたあんなメッセージなんかに、私は傷付いたりしないんだから──。 ◇ 翌日から、私は今まで以上に仕事に打ち込むようになった。 時折、本部長室にやってくる志木チーム長や矢田主任は不思議そうに、心配そうに私を見てくるけど、特に彼らから何かを言われる事は、無い。

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  • あなたの「愛してる」なんてもういらない   153話

    病院の院長が同席した診察室は、とても重苦しい空気と、緊張感に包まれていた。 整形外科の医師に怪我の処置をしてもらい、医師が口を開いた。 「全治2週間ですね。3日ほどは絶対安静にしてください。お風呂も湯船に浸からず、シャワーで済ませてください」 「だそうだが、茉莉花。その足だと不便だろう?入院しておくか?」 「と、とんでもないです!家に戻りますお父様」 入院なんて、大袈裟だと思う。 多分松葉杖を使えば動き回る事

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    譲ってください、ならまだしも「譲ってくれますよね?」とそれが当然と言うように宣う涼子に、空いた口が塞がらない。 本気で呆れると、言葉も出てこないのね、と私は新しい発見に感動すら覚えてしまう。 だけど、涼子自身は私がうんともすんとも言わないのが気に食わなかったのか、少しばかりむっと眉を寄せ、頬を膨らませた。 そして少し離れた場所にいた御影さんに助けを求めるように話しかける。 「ど、どうしよう直寛……。藤堂さんが私を無視するわ……酷い……」 御影さんは、はぁと小さく溜息をつくと私と苓さんに向かって足を踏み出した。 近付いてくる御影さんに、苓さんがさっと私の前に体を割り込ませ、立ち塞

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