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第172話

Author: ルーシー
先生や友達に玲奈のことを話すとき、陽葵の背筋はぴんと伸び、顎を高々と上げて、目の中は誇らしさでいっぱいだった。

その姿に、玲奈は思わず口元をほころばせた。

けれどふと隣に目をやると――愛莉は陽葵の後ろに隠れるように立ち、リュックの紐を握りしめ、うなだれて肩を震わせていた。

泣いているのだと、一目でわかった。

玲奈の胸はぎゅっと縮み、すぐに娘を呼びたくなった。

だが、唇まで上った言葉は喉奥で固まり、どうしても出てこなかった。

その間に陽葵は校門から駆け出し、玲奈の手を自然に取った。

我に返った玲奈は、背後から取り出した小さな包みを差し出した。

「ほら、欲しがっていたピンクの小さなヒョウのぬいぐるみ。

おばさんが買ってきたわ」

受け取った陽葵は飛び跳ねて喜び、声を弾ませた。

「ありがとう、おばちゃん!おばちゃん大好き!」

感謝を繰り返したあと、陽葵は玲奈にしゃがむようせがみ、頬ずりをし、何度も抱きついてきた。

校門の内側でそれを見ていた愛莉は、リュックの紐を強く握りしめ、目を見開いて陽葵を睨みつけた。

――あれは自分のママなのに。

なぜ陽葵が抱きしめているのか。

なぜ自分のママが、陽葵を迎えに来るのか。

胸の奥が押し潰されるように苦しい。

悔しくて、悲しくて......けれどママは自分を見てくれない。

玲奈は陽葵の頭を撫で、髪を整えてやると優しく言った。

「陽葵、先生にさよならを言って」

「先生、さようなら!」

陽葵は元気よく手を振った。

そうして玲奈と陽葵は、大小二つの傘を並べ、雨の中を並んで歩き出した。

校門の前に残された愛莉は、鉄の門をつかんで叫ぶ。

「ママ!」

だが、雨音と陽葵のはしゃぐ声にかき消され、玲奈の耳には届かなかった。

そのときようやく宮下が駆けつけ、出て行こうとした玲奈と鉢合わせる。

「奥様」

変わらぬ恭しい呼びかけに、玲奈は立ち止まる。

陽葵はおしゃべりを止め、顔を上げて玲奈を見た。

玲奈は落ち着いた声で指示を出す。

「宮下さん、悪いけど愛莉をお願い。

帰ったら早めに洗面させて、ちゃんと休ませて。

スマホは長く遊ばせないで」

細やかな言いつけに、宮下は何度も口を開きかけたが、結局言葉を呑み込んだ。

玲奈もそれ以上、耳を貸す気はなかった。

「さあ、陽葵。

帰りましょう」

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Comments (4)
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美桜
あなたの好きなララちゃんは、あなたのお父さんだけが好きなんだよ〜。母親は好き勝手に扱っていい人じゃないんだぞ!冷たくされたら腹立てるとか、どんだけ自己中なの!?
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カナリア
ママだって人間です 心があるのです 都合よく使っても許されるような待遇は娘にもない
goodnovel comment avatar
煌原結唯
愛莉が先にママを捨てたんだから、自分の行いが自分に返ってきただけ。そんで 「されたコト」を被害者ヅラして沙羅やパパに訴えるんだべねぇ★あゝヤダヤダ
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