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第7話

Penulis: 苺大福
退院後、遥は急ピッチで結婚式の準備に取り掛かった。

わずか三日で、双方の両親が式場から招待状のデザインまで、すべてを取り決めてしまった。

遥は指輪を選び、ウェディングドレスを数着試着するだけで、花嫁としての務めを終えたことになった。

桐山家の御曹司は体が不自由で外出できないため、彼女は一人でドレスショップへ試着に向かった。

そこで思いがけず、見覚えのある二人の姿に出くわした。

「瀬戸さん?」

先に口を開いたのは結奈だった。

彼女はこれ見よがしに奏人の腕に指を絡ませ、目尻を上げて値踏みするような視線を向けた。「奇遇ですね、あなたもドレスを見にいらしたんですか?」

奏人は、彼女の純白のカシミヤコートに視線を走らせ、眉をひそめて冷ややかに言った。

「どうしてどこにでも顔を出すんだ?」

「奏人、そんな言い方しないで……」

結奈は彼の耳元に唇を寄せたが、その声はわざとらしく周囲に響いた。「瀬戸さんは一人でドレス選びなんて、ただでさえ可哀想なんだから……」

その言葉は波紋のように広がり、周りでドレスを試着していたカップルたちが次々と好奇の視線を向け、ひそひそ話がそこかしこで始まった。

遥は口元に薄い笑みを浮かべ、ディスプレイされたレースの裾を指先でなぞった。

「神崎さん、この店を買い取りでもしたの?私がドレスを試着するのに、いちいち許可が必要なのかしら?」

結奈は言葉に詰まった。

奏人は冷ややかな視線で彼女を睨みつけ、棘のある口調で言った。「そんなに結婚を焦っているのか?俺に捨てられたからって、手当たり次第に男を見繕ったのか?」

「誰が……」

遥が怒りを露わにしようとしたその時、店長がタイミングよく歩み寄ってきた。「瀬戸さん、試着室の準備が整いました」

特別試着室には、サテンのウェディングドレスが静かに掛けられていた。腰回りのラインストーンは夜空に散りばめられた星のように、照明の下で柔らかな輝きを放っている。

遥がそのドレスを身に纏って試着室から出てくると、周りの人々は思わず息を呑んだ。

少し離れた場所に立っていた奏人は何気なく視線を向けた瞬間、手に持っていた経済誌を取り落とした。

彼の視線は遥に釘付けになり、無意識に喉仏が動いた。

「奏人?」

結奈の声が静寂を破った。奏人の視線を追った彼女の顔から、瞬く間に笑みが消えた。

彼女は慌てて近くの店員の腕を掴んだ。「瀬戸さんが着ているあれ、私も気に入ったわ。試着させて」

店長は困惑した表情を浮かべた。

「申し訳ございません。こちらは桐山家の若様がミラノで特注された一点物で、裏地には瀬戸さんのお名前が刺繍されております。もしよろしければ、似たデザインのものをご紹介いたしますが」

奏人は勢いよく顔を上げ、驚愕に目を見開いた。「桐山家の若様だと?桐山蒼真のことか?」

「ええ」

遥はドレスの裾を払った。薬指のダイヤの指輪が冷たい光を放つ。「私、蒼真と結婚するの」

奏人は彼女を見つめた。その瞳の奥には激しい感情の波が渦巻いている。

信じがたい事実、欺かれたことへの怒り、そして自分でも認めたくない一抹の動揺。

「いつ桐山と知り合ったんだ?」

遥は肩をすくめた。「少なくとも、あなたと別れた後よ。どこかの誰かさんみたいに、二股をかけるような真似はしないわ」

彼女は意味ありげに結奈へと視線を流した。

結奈は顔を赤らめたり青ざめさせたりした後、たまらず声を絞り出した。「奏人とあなたの間にはとっくに愛なんてなかったじゃない。私たちは真実の愛で――」

「シーッ」

遥は人差し指を唇に当てた。

「黒木さん。あなたたちが車の中で楽しんでいた前の晩、彼は私と息子と一緒に食事をしていたのよ」

彼女の口調は穏やかだったが、その言葉は鋭い針のように急所を突いていた。「略奪愛なんて、言い訳すればするほど墓穴を掘るだけよ」

奏人は目の前の彼女を見つめながら、ふと大学時代、赤いドレスを着て弁論大会に出ていた彼女の姿を思い出した。棘のある薔薇のように、鋭い才気を放っていたあの頃を。

結奈が反論しようとしたのを遮り、奏人が先に口を開いた。「俺への当てつけのために、あんな桐山家の病人と結婚する必要があるのか」

「病人には病人の良さがあるわ。少なくとも一途だもの」

遥は涼しい顔でレースの手袋をはめ、綺麗に整えられた眉を少し上げると、バッグから金箔押しの招待状を取り出した。

「今月の十五日、お二人ともぜひ見にいらして」
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