後部座席。
むくれていたかと思えば、もういいとばかりにドアに寄りかかって目を閉じた雪乃を見て、悠一はフッと微笑った。
今朝、したくもない結婚の式を行う為に支度をして出かけることに、イライラが止まらなかった。
こんな無駄なことをしている間に会議の一つでも開きたい…そんな風に思って、式が始まっても早く終わらせる事ばかり考えていた。
久しぶりに会う藤堂雪乃は確かに世間で言われているような『完璧な令嬢』そのもので、美しく、淑やかで、頼りなげな儚さが見る者に庇護欲を抱かせていた。
そんな彼女の姿に悠一は益々嫌気がさして、控え室で一瞥した後はその姿を目に映す事すらしなかった。
なにか言いたげに眉根を寄せ、薄くその唇を開いた姿は苛立ちしか生まなかった。
悠一は祖母のような、男に頼らなければ生きていけない女が大嫌いだった。
いつも何かある度に甘えてきて、自分の為に誰かが何かをする事が当たり前のようにその恩恵を享受して、平気な顔をしているのを見ると吐き気がしてくるのだった。
そういう女は大概弱々しく、涙に潤んだ瞳で頼んでるのに頼んでないような遠慮がちな物言いをする。
頼みたいならはっきり「お願いします」と言えばいいのに言わない。相手が自主的に手を貸したようにもっていくのだ。
そういうのがとにかく苛つく。
ビジネスの場で、そんな何枚もの舌を持った連中の相手をしているのだから、私生活くらい腹の探り合いはやめたいのだ。
だから悠一は彼の母親のような裏表のない、笑いたければ笑い、泣きたければ泣き、怒りたければ怒る…そんな素直な女が好きだった。
藤堂雪乃は子供の頃、確かにそんな女の子だった。
だからたぶん、彼女は悠一の初恋の相手だった。
それがだんだん成長するに従って彼女は悠一の嫌いな女に成長していき、世間からは『完璧な令嬢』だとか言われていたが、彼にしてみれば腹黒い強かな女になったとしか思えなかった。
いったい何があったらあのお転婆がこうなるんだ!と腹が立ったのを思い出した。
でも、それもどうやら杞憂だったようだ。
式の途中、何故か急に自分を見て怯えたように一歩後退ったのを見た時は少し胸が痛んだが、その後本当に嫌そうに式を拒んで癇癪を起こした姿は、確かに昔のお転婆で奔放だった彼女を思い起こさせた。
変わらないのは、お転婆でも、貞淑でも、その瞳に宿る自分への想いだった。
自惚れでも何でもなく、それは厳然たる事実だった。
ならば、問題ない。
悠一はこの後新居に待ち受けるものに雪乃がどんな反応をするのか気になったが、彼女が自分を愛していればきっと受け入れるだろう…そんな風に思って少し気が楽になった。
一方、雪乃は。
彼女は目を瞑っていても寝ている訳ではなかった。
ただ悠一と、これ以上関わりたくなかった。
雪乃が初めて悠一に会った時、彼女はとても汚かったと思う。実際彼女を見た母親が、その姿に小さな悲鳴を上げたのだから。
でも悠一は驚いたように目をパチパチさせただけで、手にしていた本をゆっくりと座っていたソファに置き、そして言ったのだ。
「大丈夫?」
「平気。ありがとう」
そう言って笑うと彼も微笑ってくれた。
冷たそうな表情がふわっと優しくなって、胸がどきどきした。
それから隣で手を握ったまま、泣いたせいでしゃくりあげている春奈(はるな)をチラリと見て眉を顰めた。
「どうしたの?」
顎で妹を指して尋ねた悠一の顔はもう元に戻っていて素っ気なかったが、その声にはまだ気遣いが残っているように思えた。
「迷子になって不安になっただけよ」
「ふーん」
そうして彼は春奈を頭の先から足先まで品定めするように見て、一つ息をついた。
「いい加減泣き止みなよ。もう戻って来れたんだから」
ヒック…
春奈の大きくて丸い、可愛らしい瞳が驚きに見開かれた。
彼女はこれまでこんなに突き放した扱いを受けたことがなかったのだ。
「お兄ちゃん…」
「…馴れ馴れしいな」
雪乃は悠一の嫌悪に染まった瞳を見て、ほんの僅かだが気持ちが晴れるようだった。
わかる。春奈は時々すごく面倒くさいの。可愛いけど、彼女が泣くと私が怒られるし、ずっと引っ付いてきて全然離れないの。
雪乃は心の中でちょっとだけ不満だった気持ちを悠一が分かってくれたように勝手に思って、うんうんと一人頷いていた。
悠一は、目の前で雪乃が顎に手を添えて納得したように頷く姿に小さく笑った。
可愛いな…。
そんな風に思われているとは知らず、彼女はぱっと顔を上げ、言った。
「着替えて来るわ。こんな姿見られたらうちのママなんか卒倒しちゃうかもっ。またおやつ抜きにされたら大変!」
「おやつ、くれないの?」
そう言うと、彼女はニカッと笑って
「大丈夫よ、隠してあるのがあるから!」
と得意気に言って、じゃあね!と悠一に手を振った。
「うん。またね」
悠一もニッと笑って頷き、それで2人の会話は終わった。
雪乃に連れられて行く春奈が、振り返ってじっと見ていたことは無視した。
今世で双子と対面して1週間が経った。この間、悠一は驚くほど育児に協力的で、ミルクを作って飲ませ、ゲップをさせて宥めたり、おむつの汚れを確認しては取り替えたり、お風呂に入れてスキンケアをしたり…とかなりのスキルを身につけていた。ただ、なぜか子供たちを外に連れ出すのだけは禁止しており、いくら言っても散歩など連れ出す事はやらず、日光浴が必要だと言えばわざわざ日当たりの良い部屋を改装して大きな窓を設け、十分な日差しが差し込むようにしたのだった。そんな調子だから、検診なんかも邸の方に保健師や医師、看護師を呼び寄せて行った。「このままずっと閉じ込めて育てるつもり?」納得のいかない雪乃が尋ねると、悠一はまたか…というようにため息をついた。「そんなつもりはない。ただ、今は駄目だ」「どうしてよ。いつならいいの?」この質問には眉を顰めるだけで、答えてくれなかった。雪乃は苛ついて、最近よく使う捨て台詞「頑固爺っ」と呟いて悠一の書斎を出て行った。悠一は今日、午後過ぎまでに急ぎの仕事を終え、残りの仕事を持って帰って来たというのにそんな言葉を投げ付けられ、俺、可哀想じゃない?と思い、フッと笑った。悠一を知る者が今の自分たちを見たらきっと、目玉が飛び出るほど驚くに違いない。彼は少し考え、それから携帯で秘書の真木宗太(まきそうた)を呼び出し、指示した。「そうだ。春奈に伝えろ。戻って離婚届にサインするように。断ったら?次に会うのは裁判所になる。それからこれ以上の支援はしない。そう言え。返事を先延ばしにしようとしたら即支援打ち切りだ。3日以内に戻るように伝えろ」『わかりました』通話を切ると、悠一は眼鏡を外して疲れの滲む目元を軽く揉みほぐした。やっと終わりにできる…。悠一は1年前、突然春奈が自分の前に現れてから起こった数々のゴタゴタを思い起こし、今それがやっと解決しそうだと安堵し、はぁ…と息をついた。「雪乃…」その名を呼ぶだけで、胸の中に温かい気持ちが湧き上がる。少年の頃に見失った想いがまた再び蘇ってきたことに、自分でも知らず微笑みを浮かべていた。
白川麻衣の実家STグループは大手の通販会社を経営しており、洋服だけでなくインテリアや生活用品、雑貨小物までありとあらゆる物を販売していた。中でもファッション関係は彼らの強みで、ベビーから年配層まで、カジュアルから正装、礼服、ドレス、部屋着や寝衣、肌着、ランジェリー等々…およそ扱ってない物はないのでは?と言われるほど幅広く扱っていた。しかも自社ブランドも持っていたので価格的にも抑えめで、もちろん高級品の取り扱いもあったので、販売対象も一般家庭から富裕層まで網羅し、希望があればオーダーメイドも受け付ける為、デザイナーまで抱え込んでいた。この最早通販会社とは言えない一大企業を担う白川哲司(しらかわてつじ)は麻衣の父親で、雪乃は彼女を通じて自分のデザインが商売になるのかを見てもらい、そしてその機能性を考慮した高いデザイン性に目をつけた彼に、スカウトを受けていた。「それは駄目よ、お父さん。彼女は自身のブランドを立ち上げたの。で、私とこの子ー」「よろしくお願いします」「友香と雪乃の3人でデザイン事務所を開いたのよ」雪乃と麻衣よりも2歳年下の友香がペコリと頭を下げ、麻衣はフフンと得意気に父親に対して顎を上げた。「私に黙ってそんな事を?資金はどうしたんだ?」白川哲司が娘を心配して眉を寄せるのを、雪乃は微笑ましげに見つめた。「心配ないわ。まだ開いたばっかりで小さな事務所だし、人だって私たち3人だけだから。後のことは稼いでから考えるわ」その無謀とも思える楽観的な計画の無さに呆れたように苦笑する哲司は、雪乃をちらりと見てしばらく考えに沈んだ。そして徐ろに提案した。「どうだろう。うちは縫製事業もしているから、君のデザインをうちに売ってくれないだろうか?もちろんデザインの価格はその都度交渉させてもらうとして、利益還元もきちんとさせてもらうし、それに君にとっては名前を売るチャンスになると思うんだが?」雪乃を始め、麻衣も友香も、その破格の申し出に瞳を輝かせ、特に麻衣はすぐさま父親に飛び付いて喜びを伝えた。「ありがとう、お父さん!大好き!」「いい歳をして、やめなさい」そう言いながらも嬉しそうに目を細める父娘の姿は、雪乃の胸の中に一抹の寂しさと羨ましさを湧き上がらせた。雪乃の両親は格別厳しかったり、冷淡だったりしたわけではない。たぶん世間一般的な、どこにでもいる
とあるマンションの一室。藤堂雪乃は手元のスケッチブックに描いた子供服のデザイン画を見て、「うん」と満足そうに頷いた。前世、子供たちの世話に日々明け暮れ、外に出かけることすら容易にできなかった時、ただなんとなく始めたベビー服のリメイクにいつの間にか楽しみを見出していた。ここ、こういう風になってたら着替えやすいのに…とか襟にはこの生地使った方が柔らかいし、スタイとしても使えるように取り外しとかできると便利よね〜とか。色々考えて、暇を見つけてはチクチク縫ってリメイクしていた。おかげで裁縫の腕も上がって、そのうち子供も大きくなって手が離れたら1からデザインして子供服作るのもいいな…なんて思って、いそいそとデザイン画なんてものまで自分流だけど描いていた。まぁ、結局作れなかったんだけど。雪乃はその頃の事を思い出しながらスケッチブックを埋めていき、その経験が今世で役立つ事を皮肉に思った。「わぁ〜、沢山描いたのね!」声の主は親友の白川麻衣(しらかわまい)で、もう一人、3人で起ち上げたこの小さな事務所の、経理等全般を任せている原友香(はらともか)も驚いて目を見開いていた。2人は雪乃が夢中になってデザインを描いているのを邪魔しないようそっと昼食を買いに出て、たった今戻ったところだった。「どうかな?」買ってきた食事を側のテーブルに置いて広げ始めた2人に、デザイン画を差し出しながら尋ねた。2人は顔を見合わせて、すぐさま彼女の描いた様々な子供服のデザインに目を通した。「いいですね!私、これ好きですっ」友香が満面の笑みで褒め称える。「うん」麻衣も満足そうに頷いた。「明日、早速うちに行こう!これならイケるよ」そう言って、彼女もニコリと笑った。
「さっきから〜なんのぅ話しをぅしてるんですか〜ぁ?」突然背後から割り込んできた声に、悠一も直也も、電話越しの雪乃も黙り込んだ。「廉、大事な話をしてるんだ。あっち行ってろ」「えぇ~?大事な話ってぇ、なんですかぁ?」酔ってるな…。普段チャラけたキャラで場の雰囲気を楽しませる廉だったが、今夜は自分の敬愛する兄貴分である悠一の結婚祝いということで、ずいぶんと酒が過ぎたようだった。「ていうかぁ、な〜んで、呼んでくんなかったんすかぁ?結婚式ぃ〜」「……」「あ、わぁかった〜。したくなかったんでしょ〜?結婚〜」「おい…」いい加減絡まれるのに苛ついてきた悠一が、低い声で威圧した。「死にたいのか…?」ヒッ…ク……その瞬間、並木廉は覚醒したかのように目をパチパチさせてぴっと姿勢を正した。「す、すみませんっしたぁ!!」バッと頭を下げてすぐさま2人から離れた。「…たく。飲み過ぎだ、あいつ…」直也は仕方ないな…とでもいうように苦笑いをして悠一を見た。悠一は切れた雪乃との通話を惜しむように、スマホをじっと見つめていた。「かけ直すか?」「…いや」おそらく出ないだろう…。でもーそして画面に表示された時計を見て、外した眼鏡をかけた。グラスに残った酒をまた一口飲み、唇を潤した。トゥルルルル…「雪乃?」まるでかかってくるのがわかっていたかのような速さでスピーカーボタンを押し、応えた。『早く帰って来て。そろそろお風呂の時間よ』「わかった。今から出る」『うん』通話を終えた悠一がスツールから立ち上がり、2人の会話に驚いて固まっている直也に向かって言った。「先に帰る。後は適当にして」「あ…わかった。……て、待てっ」脱いだ上着に手を通していた悠一が目線を寄越す。「風呂って、子供の?」「そうだ」「お前が入れてるのか?」「そうだ」「……」淡々と答える親友の姿に、直也は言葉を継ぐことができなかった。嘘だろ…。悠一が子供の風呂とか……世話してる??あり得ない………。今も直也が目にする悠一の姿はいつもと同じ、一分の隙もないもので、つい今しがたの会話を聞いていなければとても信じる事ができなかった。だがー「直也、また」片手を上げてそう言い、背を向けた彼の足取りはどこか余裕がなく、そのくせ目元が僅かに緩んでいることに気が付いた直也は内心少し嬉
U市中心部繁華街。ファッションビルが建ち並ぶこの街は昼間若者たちで賑わう活気ある場所だったが、夜になるとその様相をネオン煌めく大人の街へと変える。その中でも『Shangri-La』(シャングリ・ラ)というクラシカルな趣きのバーには2階にVIP個室があり、あらゆる層のお金持ちが夜な夜なお酒を酌み交わし、商談であったり、単に友好を深めたりと利用していた。ただ、同じ階の奥にあるVIP室は特別で、利用できる人間がある程度決まっていた。那須川悠一はその個室を年間で予約しており、彼の招待がなければ誰であろうと使うことが許されなかった。その部屋には専用のバーカウンターがあり、専用のバーテンダーやウエイター、そして接客要員の女性たちがいた。彼らは特に教育が施され、この部屋を利用する特別な人物たちに対応すべく、店側との秘密保持契約まで結ばれていた。つまり、ここであったこと、見たこと、聞いたことは全て"見ざる 言わざる 聞かざる"という事を徹底していた。もし万が一にもリークされるような事があった場合、店もそこにいた者も全てが平穏な人生を送ることができなくなる覚悟がいる…という事だった。それを堅苦しいと思う人間は利用しないし、安心できると思う人間は集ってくる。悠一は元来真面目な性格なので、酒を注いだり話し相手になったりというような女性は必要としなかった。が、必要とする人間もいるということでいつも人数を揃えているが、決して自分に近づけようとはしなかった。それは今夜も同じで、彼の友人が彼の結婚を祝してパーティーを開いてくれていたが、彼自身は親友といえる長谷直也(はせなおや)とずっと静かに酒を飲んでいるだけだった。「那須川悠一さんの結婚を祝して、かんぱ~い!!」弟分を自称する並木廉(なみきれん)の音頭で皆がグラスを合わせ、何度目かの乾杯をする。あちこちから掛けられる「おめでとうございます!」という言葉にグラスを掲げてお礼とし、主役である悠一は一時落ち着かなかったがやがてそれも次第に静まって、皆が思い思いに騒ぎ始めていた。それを見回し、悠一は一つ息をついた。「どうした?」親友の長谷直也に問われて彼は「いや…」と言い、だがその顔には疲れが滲んでいた。悠一は長年、自身の事情についてこの親友以外にはほぼ誰にも語っておらず、今夜も内心の複雑な心境を吐露したいと、そし
「春奈との離婚が成ったら必ず籍を入れる。だから子供たちを俺たちの子供として育ててくれないか?」真剣な顔でそう言われたが、雪乃の返事は決まっていた。「いやよ」「!」まるで「なんでだ!?」と言っているかのように目を見開いて固まる悠一に、雪乃はバッグから出したハンカチで目尻に残った涙を拭いて言った。「離婚の見通しも立ってないのに、口約束でそんなことする訳ないでしょう?」「でも俺だけじゃあ、子供は育てられない」「…中川さんたちがいるじゃない。今までできてたんだから、できるわよ」「雪乃……」指先が白くなるほどきつく握られた悠一の手に、彼は額をつけてため息をついた。「お願いだ…」「いやよ」「雪乃!」「なによ!」2人の睨み合いに周りがオロオロとしていた。「雪乃……頼むよ…」「……」絞り出すような声音で苦しげに言う悠一。小高ですら、こんな彼の姿は初めてだった。悠一は那須川家の後継者として、常に将来人の上に立つ立場になるに相応しい人物となるよう、厳格に育てられた。それ故にそのプライドは山のように高く、こんな風に誰かに懇願する姿など想像したこともなかった。それだけ雪乃を気に入っているということなのだろうが、やり過ぎはよくない。きっと今も胃痛がするほど悔しいに違いない。小高は悠一の青褪めた顔と手の甲に浮く血管に、心配げに眉を顰めた。一方雪乃は、そんな悠一を訝しげに見ていた。なんなの…?前と全然違うんだけど…。まさか、私が前と同じようにしないから??じっと見ていると悠一が言った。「駄目か…?」「…」「雪乃?」「……ずるいわ」ひどいっ。そんな顔で言われたら断りづらいじゃない!いつもは冷たく見下すような視線しか向けてこなかった悠一が、まるで縋るように…そう。まるでご主人にいたずらが見つかって、ごめんなさいのうるうるお目々で見上げてきている"ワンちゃん"みたいで…。はぁぁぁ……雪乃は大きく息を吐いて、渋々頷いた。「わかった」それを聞いて悠一はぱっと顔を輝かせた。「本当か!?」「……仕方ないでしょっ」だって、ほんの数時間前まで2人は10年越しの夫婦だったのだ。いくら10年間ずっと片思いのような関係性だったとはいえ、子供たちは愛情を持って育てたし、夫の悠一から優しい微笑みも言葉も向けられなかったけれど、それでも雪乃は彼を