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第497話

Autor: ラクオン
梨花はてっきり、智子が自分を訪ねてきたのだと思い込んだ。

向かいのドアが開いていたせいで、部屋を間違えたのだろうと。

智子が彼女の家に来ることはそう多くないし、歳をとったせいで記憶力が衰えていたとしても不思議ではない。

間違えるのも無理はない話だ。

竜也はくつくつと喉の奥で笑った。

「この人の記憶力は、まだまだ健在だよ」

梨花はきょとんとした。

竜也と智子さん、知り合いなの?

疑問を口に出す間もなく、智子が笑い声を上げた。

「間違ってなんかいないわよ!世間は狭いものねえ、まさか孫があなたの向かいに住んでるなんて。二人とも、もう顔見知りなんじゃ……」

言いかけて、智子の視線がふと、竜也と梨花の固く結ばれた手に留まった。

彼女は目を丸くし、言葉を途切れさせた。

「あ、あなたたち……」

その顔には驚きと喜びが入り混じり、どちらの感情が勝っているのか判別できないほどだ。

「ずっと俺を彼女に紹介したいって言ってただろう?」

竜也は片眉を少し上げてみせた。

「だから自分から売り込みに行ったんだ。ばあちゃんの顔に泥を塗るような真似はしてないよ」

その様子は、どこか得意げだ。

梨花はいよいよ訳が分からなくなった。

一体どういうこと?竜也と智子さんが、なぜそこまで親しいの?

竜也ほどの身分の人間に、一般人が縁談を持ちかけるなんて普通はあり得ない。

梨花の頭の中では、どうあがいても話が繋がらず、混乱するばかりだ。

我に返った智子は、竜也の元へ駆け寄ると、その肩をバシッと叩いた。

睨みつけるふりをしているが、口元は笑いを隠しきれていない。

「この馬鹿!やっと貰い手が現れたっていうのに、どうして黙ってたのよ? あんたの結婚を心配して、こっちは夜も眠れなかったんだから!」

智子が心配している最大の理由は、名家と呼ばれる連中の品性を熟知しているからだ。

どいつもこいつも強欲で、結婚を遊びとしか考えていない。

竜也の身が固まらない限り、彼もいつかあの薄汚れた世界に染まってしまうのではないかと、気が気ではなかったのだ。

そうなれば、どんな嫁を連れてくるか分かったものではない。

でも、もう安心だ。

結婚の目処が立っただけでなく、相手はずっと前から目をつけていた娘なのだから。

胸につかえていた重荷が、ようやく下りた気分だ。

智子は納得した
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