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世界を騙した男②

last update Date de publication: 2025-01-22 13:39:51

「何処にいるんだろうカナタは」

ひとり呟くのは姉の紫音。

取材陣にもみくちゃにされて、やっと抜け出したと思ったら弟がどこに行ったかわからず会場内を彷徨っていた。

周りは自分より年上の人達ばかり。

何処にいても聞こえてくるのは弟の話。

「まだ学生だろ、彼方って子は」

「いや、学生だなんて馬鹿に出来ないぞ。あの五木隆が目を付けて今回の場を設けたくらいだからな」

「大体異次元へのアクセスなんて人類にはまだ早いんじゃないのか?」

彼方の発表内容に対して、賛否両論ありそうな声があちらこちらから聞こえてきて、つい言い返しそうになる。

「みんな分かってないなーうちの弟は天才なんですからね!」

プリプリしながらも周囲を見渡し弟を探すが一向に見つからない。

そのうち適当な席にでも座るかと、空いてる場所を探していると眼鏡をかけた一人の女性が前から手を振って近づいてきた。

「紫音ちゃん!やっと見つけたわ!」

「あれ!?茜さん!」

紫音に声を掛けてきたのは、斎藤茜。光が丘科学大学のOBで今は地球工学の研究者として働いている。

弟に誘われ大学の文化祭に行ったときに初めて知り合い、気があったからなのかプライベートでも遊ぶほどの仲でもある。

「そりゃあ来るでしょうよ、大学の後輩がこんな大きな舞台に出るんだから!」

彼方ともそれなりに付き合いがあり、私達姉弟からしたら保護者みたいな立場の人だ。

「でも彼方が何処に行ったか分からないんですよ……」

「彼方君は多分舞台裏にいるわよ?今日の主役なんだから」

「あ!そうか。そりゃ探しても見つからない訳だ」

肩を竦めて苦笑いをする紫音。

会場には所狭しと人が詰め掛けている。

紫音と茜は空いてる席を探しつつ、会場内を彷徨いた。

中にはテレビで見た事のあるアナウンサーなども視界に入り、それだけ注目を浴びているのだと再認識する。

「あ!ほら!壇上に出てきたわよ!そこの席にでも座りましょ」

そんなやり取りをしているとやっと壇上に彼方が現れたようだ。隣には五木って人が立っている。

大きな拍手と共に壇上にスポットライトが当たる。

「さあ、彼方君が唱えた異世界へのアクセス方法とやらを聞かせてもらいましょうか」

品定めするような眼つきで茜は壇上に目線をやった。

――――――

眼前に広がる無数のカメラや人の目線。

これから僕が全世界に向けて異次元への行き方を提唱するんだ。

もちろん本来の目的は伏せて。

納得させなければならない。

実際に立証実験までしなければならない。

そうでないと地球は…………

陰鬱とした気持ちについ俯いてしまったが、僕は気持ちを切り替え壇上へと立った。

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Dernier chapitre

  • もしもあの日に戻れたのなら   あの日の来ない日常を(エピローグ)

    アレンさん達と最後の別れから一年が過ぎた。僕はというと五木さんの口添えもあってか単位を失うことなく、卒業を迎えることができた。「明日から五木さんのとこでお世話になるんだっけ?」卒業式は姉さんも見に来てくれた。フォーマルな格好に身を包み、そんな質問を投げ掛けてくる。「そうだよ。就職はどうしようかと思っていたけど五木さんが是非ウチにって言ってくれてさ」「ふーん。でも五木さんってその業界では権威って言われているほどの人でしょ?そんな人からなんで声がかかったの?」姉さんは知らない。異世界のことも魔神のことも、もちろんアカリのことも。姉さんを巻き込むわけにはいかないだろう。何も覚えていないのなら、そのまま平和に暮らして欲しい。だからアカリとの出会いは大学で知り合ったことにしておいた。彼女だと紹介したらとても喜んでくれた。そういえば春斗は警備会社に就職が決まっていたな。彼ほどの身体能力の高さがあれば暴漢に襲われても返り討ちにするかもしれない。フェリスさんはレディース専門の服屋に就職していた。夢が叶ったと喜んでいたが、売上も高く今では副店長を任されているらしい。あの人は怒らなければめちゃくちゃ人当たりのいい方だからな。しかも綺麗な人だ。多分それが売上につながったのだろう。アレンさん達は元気にしてるかな。たまに異世界が恋しく感じることもあるけど、それも次第に薄れてきた。この世界で魔法はほぼ使えないし、今までの日常が戻ってきている。「どうしたの?ボーっと空を眺めて」「ああ、いや何でもないよ。それよりこれからアカリと出掛けるから、先に帰っててよ」「デートね!?アカリちゃんを泣かせたりしてはダメだからね!」姉

  • もしもあの日に戻れたのなら   別れ道⑥

    五木さんの合図と共に"黄金の旅団"の面々が魔力を流し込んでいく。電気が溜まっていくのはランプの点灯で分かるが、そのランプが十個全て灯ると五木さんが手で大きく丸を描いた。「準備はできたみたいだね」アレンさんが仲間に合図をして流し込む魔力を止める。「起動します!」僕がスイッチを入れると、どでかいドーナツが回転を始め真ん中の空間が歪み始めた。色が徐々に紫と黒色のマーブル模様になると異世界と繋がった証。今回は前とは時間も違う。恐らく魔界に繋がるかもしれないが前回のように魔物が待ち構えていることもないだろう。一応事前にアレンさんへ伝えているが、全員でゲートをくぐるなら向こうでいきなり殺されるようなことにはならないはずだ。「この電力なら起動してからおよそ五分しかもたないよ!」「分かりました!」五木さんが叫ぶ。五分か……急いでゲートをくぐってもらわないと。「アレンさん急いでください!もう既に一分が経過しています。次に起動することはできません」「君の名前はボクらのグランハウスに刻ませてもらうよ。カナタ君、もう二度と会えないけどボクは君を忘れない」「僕もですよ。アレンさん、今までありがとうございました」アレンさんと固い握手を交わす。団員みんなと握手している時間はない。「さぁ!急いでください!」「カナタ!お前はオレ達の盟友だ!来世で会おうぜ!」「カナタ君、元の世界に帰してくれてありがとう。この恩は絶対に忘れない」「カナタ、またな!」みな口々に礼をしてゲートをくぐっていく。残すはアレンさんとレイさんだ。「春斗、アカリ。本当にいいんだな」「何度も言わせるなよ。俺はこっちの世界が気に入

  • もしもあの日に戻れたのなら   別れ道⑤

    連絡を怠り姉さんからしこたま怒られた日からおよそ二週間。巨大な空間に鎮座する異世界ゲートがあった。「遂に完成したね……流石に私も眠くて堪らないよ」「そうですね……最後の方なんかほぼ徹夜でしたし。でもこれでやっと……」「異世界かぁ。私も行ってみたいけど、彼方君の話を聞く限り危ないところなんだよね?」五木さんと一緒にいる時間が長かったこともあり、異世界の話を沢山していた。そのせいか五木さんが異世界に興味を持ってしまったが、それと同時にどれだけ危険なのかも詳しく話しておいた。そのお陰もあってか、行きたいけど実行に移そうとは流石に考えていないようだった。「魔物に魔法……どれも空想上のものだね。研究者としては是非とも行ってみたいけど帰ってこれないとなるとなぁ」「悪いことばかりではありませんでしたが、こっちの世界の常識は通じませんからね。みんな当たり前のように魔法を行使しているので」「私も魔法の一つや二つ使えたらなぁ。どうかな?そのアレンさんという方に、元の世界へ帰る前に魔法を教えて貰えないだろうか?」この世界に魔素が殆どないことを説明し覚えたところで使うことができないと伝えると五木さんは目に見えたようにガッカリしていた。「そっか……魔法、使えないんだね。まあ仕方ない、とりあえずその方達を呼んでくれるかい?」僕はアカリへと連絡する。連絡先を知っているのはアカリと春斗くらいだ。すぐに全員を連れて行くとのことで待つことおよそ30分。研究所に現れた数十人の異世界人。老若男女問わずの集団はあまりに異質だったのか五木さんは目を丸くしていた。「どうも初めまして。彼らを率いているアレン・トーマスです」

  • もしもあの日に戻れたのなら   別れ道④

    五木さんとの共同研究は想像より早く進んだ。物資の手配も驚くほど早く完成まで後少しというところまでおよそ一ヶ月という短い期間で作り上げた。大型のリングがほぼ完成している姿を見ると、あの時あの瞬間を思い出す。僕がジッとリングを見つめていると五木さんが背後から声を掛けてくる。「どうしたんだい?」「いえ……なんだか夢見心地のような感じでして」「夢見心地?まあそうだね、実現まで後少しだからね。それより最近家に帰っていないだろう?ご家族が心配するんじゃないかい?」五木さんは勘違いしていたがわざわざ本当の事を話す必要もない。頷いた後そういえば姉さんに連絡するの忘れてたなとポケットから携帯端末を取り出す。「あ、めっちゃ不在着信きてる……」「ほら、言っただろう?今日は帰りなさい。研究に根を詰めるのは身体によくないよ」五木さんに促され僕は帰宅することにした。実のところこの一ヶ月、家に帰ったのは三度ほど、あまりに僕が不在にしているせいで姉さんがブチギレてそうだ。ビクつきながらソッと玄関の扉を開く。もう時刻は夜中の十二時を回っていた。足音を立てないようゆっくりリビングに足を踏み入れると、腕を組んで仁王立ちの姉さんと目が合った。「うおぁぁぁ!?」真っ暗なリビングでそんな事をされたら誰だってびっくりする。飛び退いたせいで尻餅をつき、鈍痛が僕を刺激した。「うぐぐ……いってぇ……」「彼方!なんでこんな遅いの!?」目が釣り上がっていてブチギレのご様子。

  • もしもあの日に戻れたのなら   別れ道③

    魔神討伐から三日が経ち、僕はある場所へと来ていた。その場所というのは五木さんの研究所である。この時間軸ではまだ出会っていない五木さんだが、どうしても見て欲しい論文があると直談判したところ快く会ってくれる事になったのだ。「君が例の見て欲しい論文があると連絡してきた彼方君かな?」「初めまして、城ヶ崎彼方と申します」研究室に入るなり五木さんはニコッと微笑んで手を差し出してきた。握手を交わすと五木さんは若干首を傾げた。「なんだか君とは初めて会った気がしないよ」五木さんの言葉に少しドキッとした。記憶が残っているはずはない。ただなんとなくそう感じただけだろう。「とりあえずそこに掛けてくれるかい?」僕は椅子に座り五木さんは僕の論文に目を通す。数十分は経っただろうか。出してくれた紅茶も既に飲み切っていて、五木さんの回答を待つのみなのだが、何を言われるか不安で仕方がなかった。「なるほどなるほど。これなら実現可能かもしれないよ。彼方君、どうしてこれを発表の場ではなく私に直接持ってきたんだい?」「五木さんではなければ理解は難しいかと思いましたので」「確かに。他の研究者なら何を馬鹿なことをと一蹴されていたかもしれない。でもこの理論なら実現ができる。もしかして共同研究にするつもりかな?」「そのつもりです。ただどうしても一つだけ、その異世界ゲートを起動する際に必要な電力が足りません。そこで僕のツテを使います」「そのツテというのを他の人には言えない、ということかな」五木さんは理解が早い。一から十まで説明せずともすぐに察してくれた。魔力で電力を補うなんて馬鹿げた話、信じてもらえないだろうけど実際にその目で見れば僕の話は嘘ではなかったと嫌でも信じざるを得ないだろう。だからこそ五木さんにだけ共有しておきたかった。魔力の概念が知れ渡ればどえらい事になるだろうから。「これだけ聞かせて欲しい。この異世界ゲートとやらを作るのは何の目的があるのかな」「それは&he

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    アカリがこの世界に残るのは分かったが、春斗はどうするんだろうか。僕はアカリと一緒にしゃがみ込んで項垂れている春斗の側までいくと、彼は顔を上げた。「ん?どうしたカナタ。と、アカリ」「いや、ちょっと聞きたい事があって。明日明後日ってわけでは無いけど異世界ゲートが完成したら春斗はどうするのかなと思ったんだ」「ああ、そのことか。それなら俺とフェリスは居残り組だぜ」春斗はまあ理解できる。大学で友人だってできただろうから。でもフェリスさんも残るというのはどういう了見だろうか。「おい、フェリス」「何かしら。疲れてるんだから――ってカナタ君もいたのね。ごめんなさい疲れてて気づくのが遅れてしまって」「いえ、大丈夫です。それよりもフェリスさんもこの世界に残るつもりだと今しがた春斗から聞いたんですけど、どうしてなのかなと気になったので」「ああ、そのことね。正直言えばこっちの世界の方が食べ物は美味しいし魔物はいないし、向こうではできなかった生活ができるからなの」フェリスさん曰く料理も平和さも全てが異世界より勝っているとのことで、帰るつもりは一切ないらしい。「アタシはこっちの世界で行きていくわ。だから今後はご近所さんねカナタ君。改めてよろしくね」「よろしくお願いします。でもフェリスさんってこっちの世界では何のお仕事をされていたんですか?」「まあそうね……ファッション関係、ってところかしら?」なんだ?フェリスさんの歯切れが悪い。もしかしてあまり聞かないほうが良かったかも。「ヘヘッファッション関係なんてよく言うぜ。フェリスの仕事は服専門通販サイトの運用じゃねぇか」「う、うるさいわね!ファッションはファッションでしょうが!」ああ、なるほど。よくあるECサイトを運営している会社に勤めているってわけか。 

  • もしもあの日に戻れたのなら   異世界アルカディア⑧

    馬車に乗り、窓の外を流れていく景色は街の風景から次第に草原へと変わる。街の外に出ると、途端にど田舎の風景になるのは、この世界ならではだろう。窓の外を見ていると、アレンさんから話しかけられた。「さっきロアン伯爵と何か話していたようだけど、何かあったのかい?」「この眼帯が御礼の品だと言われました。それと魔導具だとも」「あ!そうだった!!ロアン伯爵から伝えられていたんだった、ごめんごめん」アレンさんは苦笑いしながら、眼帯の説明をしてくれた。この眼帯に魔力を流すと自分の目のよう

  • もしもあの日に戻れたのなら   異世界アルカディア⑦

    「それにしてもこんな物まで貰ってよかったんだろうか」実はレーザーライフルを隠す為に、亜空間袋と呼ばれる物を入れておく袋を貰ったのだが、それがなかなかに凄い。中は亜空間魔法により拡張されているようで、一人暮らしのワンルーム程度の容量がある。物を取り出すときも、それを思い浮かべながら手を突っ込むと取り出せる。科学では説明がつかない、流石魔法具といったところか。「いいと思う。それ亜空間袋の中で一番小さい容量だし安い」これで一番小さいだと?「一番大きい容量の物だと、山すら入るから」「異世界アル

  • もしもあの日に戻れたのなら   異世界アルカディア⑥

    「そんなことより、その赤眼を何とかした方がいい。伯爵に眼帯でも用意させるから待ってて」「伯爵にそんなこと頼んでもいいのか?」「いいよ、あの伯爵はかなり変わってる人だから」変わってる?別に普通に気さくなおじさん、って雰囲気だったが。「ここ、城塞都市ハビリスは一番魔族領に近い。だからカナタのその赤眼についても何も言ってこなかった。色んな人が出入りする都市だから」本来なら僕の赤眼は何処に行っても奇異な目で見られるし、レーザーライフルも珍しく、目につくらしいがロアン伯爵は様々な人と触れ合う機会が多く、僕にも何も言って

  • もしもあの日に戻れたのなら   異世界アルカディア⑤

    僕との会話が終わるとロアン伯爵はすぐにアレンさんへと振り向き、話の続きをしはじめた。「それで……アレン様は8年前魔神討伐に出て行方不明となっていたのに、なぜ今になって戻ってこられたのですか?」「あー実はあの魔神討伐の旅で、魔神まで辿り着いたんだ。ただその時にしくじってね……」アレンさんは今までの事を話しだした。ロアン伯爵は頷きを交えつつ、時折驚きながらも聞き入っていた。「……なるほど。そんなことがあったとは…&h

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