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第七話:初めての眠り、初めての笑い声

Author: 新城凪
last update publish date: 2026-03-25 12:00:16

冬の朝の光が、高い窓から聖堂に差し込み、石の座は変わらず冷たい輝きを返していた。
アスイェは神座に腰を下ろし、マントの裾を床に垂らしたまま、長靴を無造作《むぞうさ》に組み、肘《ひじ》掛けに片手を預《あず》けている。
その目は閉ざされ、まるで、終わりの見えない長い休眠に、ただ黙って耐えているかのようだった。

赤子はアスイェにしがみついていた。
まるで、自分の小さな巣から這《は》い出したくない、小動物《しょうどうぶつ》のように。

赤子の髪は少しずつ伸びてきて、その輪郭《りんかく》から、ようやく性別が見えてきた。
このか細い命は、女の子だった。

女の子の体は、吸血鬼とは違う。
暖かく、脈打《みゃくう》つ生気を宿《やど》していて、静かに澱《よど》むものではなかった。

彼女は、アスイェのボタンを掴もうとするように、かすかに指先を動かした。
けれど、その指にはまだ十分な力がない。
だから、その仕草《しぐさ》はただ、触れたいと願《ねが》う影のように見えた。

そして、彼女は自分の頬をアスイェの胸に押し当て、かすかな声を漏《も》

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まるで、何かを確かめているように――ひとつの答えを、静かに待っているようだった。アスイェは、いつものように黙《だま》って赤子の前に立ち、しばらくその目を見つめた。そして、ゆっくりと――本当にゆっくりと、子を抱き上げた。その身は、最初まるで反応《はんのう》を示《しめ》さなかった。まるで、自分が揺籃《ゆりかご》から離れたことさえ、まだ気づいていないかのように。子の目は、ずっとアスイェの顔にとらわれたまま動かず、やがて、その小さな手を伸ばし、アスイェを抱きしめた。その手は、まだ小さすぎて、アスイェの首にさえ届かなかった。
「抱きしめる」というよりも――た

  • アスイェ•Asyeh   第四話:暗闇が苦手

    あの夜、灯は早めに落とされた。
暖炉に薪《まき》はもうなく、風の音も小さい。執事の姿もない。
アスイェと子だけがいる空間は、異様《いよう》なほど静かだった。壁に掛けられた古い織物《おりもの》は、かすかに揺れている。わずかな隙間から忍び込んだ夜風が、ほとんど聞こえないほど小さな音を、石造《いしづく》りの床の上に落としていた。アスイェは灯を点けなかった。
古い長椅子に腰を下ろし、手元には開かれていない本が一冊。
部屋の中は深い漆黒《しっこく》に包まれ、窓の隙間から差し込む月光だけが、布の上に落ちた銀糸《ぎんし》のように断続的に揺れていた。その光は、時折《ときおり》雲に遮られ、またふたたび現

  • アスイェ•Asyeh   第三話:寒いのがいや、鐘の音が怖い

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 石畳《いしだたみ》の隙間から這《は》い出す冷気は、古《ふる》びた木の扉さえ通り抜ける。 アスイェが目を覚ましたとき、火はすでに消えていた。暖炉《だんろ》の中には、白く乾いた灰が、うっすらと積もっていた。
 空気は冷えていたが、静かだった。 赤子は泣いていなかった。ただ、黙《だま》って、揺籠《ゆりかご》の中にいた。まぶたを閉じ、小さな身体を折《お》り畳《たた》み、浅

  • アスイェ•Asyeh   第二話:欲望がない化け物

    七日目の夜、雪は前よりも激しく降っていた。屋根には氷が張り、鐘が鳴るたびに、霧《きり》のような霜《しも》がぱらぱらと落ちた。暖炉《だんろ》には湿った薪《まき》がくべられており、今にも消えそうなほど弱い火が、かろうじて燃えていた。蝋燭《うそく》の油《あぶら》はなかなか溶けず、部屋の中には、温もりも得られないまま、埃の落ちる音さえ聞こえそうな静けさが満ちていた。その命は、白い布の中にあった。まだ目覚めていない。その名もないこれは、夜にだけ泣く。
ときには、泣くという仕草すら見せず、ただ口を開け、音も立てずに「泣いていた」。
まるで夢の中で、名もない何かを呼んでいるかのように。最初、

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