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第 2 話

Author: 水沼早紀
last update Last Updated: 2025-01-25 22:01:55

「……あ、あのっ……」

「ん?」

「……ほ、本気、ですか?」

「本気だよ。 だって、それが俺が望んだ゙お礼゙だからね」

「……で、すよね」

なんでこうなっているんだろう……。お礼をしたいと言ったら、なぜかその日の夜、ラブホテルに来てしまっていた。

彼が放った言葉は、わたしの身体でお礼をしろってことだった。 まさかとは、思ったけど、やっぱり……。

あの時は通学途中だったため、夜また駅で待ち合わせをしようと言われた。 連絡先の書いた名刺を渡され、その番号に終わったら連絡してと言われて、現在(いま)に至る。

今いるのは、ラブホテルの一室。 ちょっと高級そうなラブホテルで、少しゴージャスな感じの雰囲気だった。

「……お酒は飲める?」

「えっ、お酒、ですか?」

「うん。飲める?」

「は、はい。飲め、ますけど……」

「じゃあとりあえず、俺たちの出会いに乾杯しようか」

「えっ……。あっ、はい……」

シャンパンの入ったグラスを渡され、お互いにグラスを合わせて乾杯した。

「ん、美味しい……」

このシャンパン、今まで飲んだ中で一番美味しい。口当たりが爽やかというか、飲みやすい……。

「よかった。気に入ってくれたみたいだね」

「は、はい……」

なんていうか、ちょっと緊張する。 こんなオシャレな部屋でシャンパンを飲むなんて、今までしたこともなかったし。

大人な雰囲気に、なんとなく慣れなくて、ちょっと緊張する。

「……大丈夫?」

「へっ!? あ、だ、大丈夫です……」

なんかわたし、挙動不審……?

「もしかして、緊張してる?」

「……あ、はい。少しだけ」

「大丈夫だよ。リラックスして」

「そんなこと、言われても……」

こんな大人な方と一緒に過ごすなんて、初めてだから、緊張しちゃうよ……。

「そういうとこ、可愛いね」

「……え?」

そして彼の大きな左手は、わたしの頬にそっと触れた。

―――ドキッ!

なぜだか分からないけど、すごくドキドキしてるのが自分でも分かる。 こんなにもドキドキするなんて、初めてで……。

思わず、顔を背けたくなる。 優しく撫でられた頬が、真っ赤になるのがわかって、熱を持つのもわかる。

……ど、どうしよう。 なんかもう、目を反らせない……。

「……そんなに可愛い顔されると、もう我慢出来ないんだけど」

「えっ……?」

そう思った時にはもう、わたしは言葉を出せなくなっていた。―――彼の唇が、深く重なったからだ。

「んっ……っ」

もう何も考えられなくなっていた。 気が付いた時にはもう、わたしはベッドの上に倒れ込んでいて……。

「んっ……ちょっと待ってください……」

「待たないよ。早く、お礼させて」

着ていた服のボタンを外され、下着姿にさせられ、恥ずかしさが込み上げて来る。

「っ……あっ」

触れられたところが熱くて、頭の名がおかしくなりそうだった。

「待って……くださいっ」

「待たないって言ったでしょ。……その反応、可愛いね」

「な、何言って……っ」

やっぱりこの人は、有無を言わさない人だ……。こんなにも大人な人なのに、せっかちなところは少し子供みたいで……。

なんというか……少しだけ、くすぐったいような気持ちになった。

だけど、彼に抱かれた時、わたしは間違いなく彼の腕の中で温もりを感じた。

「あっ……あ、んっ……」

彼に抱かれたのは初めてなのに、何度も抱かれているかのような気持ちになった。 お礼をしたいと言ったのはわたしなのに、こんなにも優しく、だけど情熱的に抱かれたのは初めてで、もう何も考えられなくなっていた。

「はぁっ……っ……」

時々漏れてくる、彼の甘い吐息が、わたしの理性をさらに狂わせた。 彼のことがもう好きになりそうなくらい、彼のテクニックにハマっていく。

さすが大人な男って感じだった。……今まで何人の女の人を抱いたんだろうってくらい、テクニックがあって、もうわたしの理性は保てそうになかった。

「やぁっ……んっ……あっ」

ギシギシと揺れるダブルベッドが、その二人の保てそうにない理性を物語っていた。 その理性を埋めるかのように、わたしは彼の身体を何度も求めてしまった。

「んっ……もう、ダメッ……です……」

「俺ももう……ダメだ……」

ずっと優しく情熱的だった彼も、最後には理性を手放すかのように、思いっきりベッドを揺らした。

そしてそのまま、二人で暗闇の中へと堕ちていった……。

「……大丈夫?」

「はい……大丈夫です」

わたしはベッドから起き上がると、グラスに残ったままのシャンパンを一気に飲み干した。

まだ身体に染み付いている、彼の温もり。そして彼の香水のニオイ。

あんなにも激しく、だけど情熱的に抱いてくれた人は初めてだった。 もう自分が自分じゃいられなくて、何もかも忘れそうになった。

なんでこんなこと、思うんだろう。……ただ一度だけの関係なのに。

「……え?」

突然、後ろから抱きしめられた。

「……君とこのまま離れるのは、なんだか名残惜しいな」

そしてバックハグをしたまま、耳元で甘く優しい声でそう言った。

「……でも、お礼ならもう、終わりました……」

本当はまた彼に抱かれたい。 そう思っている自分がいる。 だけどその気持ちを隠すように、その言葉で隠した。

そんなことを思ってしまったら、わたしは彼から離れられなくなってしまいそうで。……そのことを悟られたくない。

「……でも君だって本当は、俺にもっど抱かれたい゛と思ってるんじゃないの?」

だけどそんなのは、すぐにウソだってバレる。 彼にわたしの心の中を、見透かされているみたいだった。

……悔しい。だけどそのとおりだ。

「……ち、違います……」

だけどそんなことを口にできる訳もなく、ウソをつく。

「……んんっ!?」

だけどその言葉はすぐに、彼の唇で塞がれた。 悔しいけれど、彼も分かっている。

わたしが彼のことをもう、好きになっていることを。 そしてまた、抱いてほしいと思ってることを。

だけど彼はかなり歳上で、わたしみたいな子供になんて、相手をしてくれるとも思っていない。

だから今日だけでいいから、愛してほしいなんて、思ってしまう。……本当は、そんなこと、望んではいけないことだとわかっていても、もう止められない。

わたしはもう……。歳上の大人な彼に、心も身体も、恋をしてしまっているんだ……。

「あっ……いやぁ……っ」

何も考える暇もなく、彼の愛撫が始まっていく。

「かわいいね、もう濡れてる。 やっぱりまた俺が欲しいんだね」

「ちがっ……あぁっ……っ、んっ」

結局その日、わたしは自分の理性に負けてしまい、また彼の腕の中で情熱的に抱かれた。 それは二人が限界を迎えるまで続いた。

……ああ、もう、わたしは彼に敵わない。 彼のニオイ、彼の体温、彼の言葉。全部に溺れてしまっていた。

もう引き返すことは出来ない。……そんなことさえ、思ってしまった。

真夜中の三時半過ぎ。わたしは、彼の腕の中からそっと抜け出して、静かにシャワーを浴びた。彼の体温やニオイ、全部消し去るように隅々まで洗った。

彼のことを必死で忘れようとして……。

シャワー後に服を着替えて、枕元に五千円を置くと、カバンを持ってそっと静かに部屋を出た。

* * *
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