LOGIN相沢ひまりは、ほとんど眠れないまま朝を迎えた。
テーブルの上にはスマホ。
画面には、有名企業から届いたDMが表示されている。
『イラスト制作についてご相談があります』
何度見ても消えない。
夢ではないらしい。
「……どうしよう。」
ひまりは頭を抱えた。
依頼を受ける。
そのたった一歩が、とてつもなく怖かった。
もし期待外れだったら。
もし「こんなものか」と思われたら。
もし自分に本当は才能なんてなかったら。
そう考えるだけで胃が痛くなる。
すると、スマホが震えた。
『働きたくないな〜』
神崎蒼からだった。
思わず吹き出す。
朝から第一声がそれなのか。
『おはようございます、ニートさん』
送る。
数秒後。
『まだニートじゃない』
『じゃあ何なんですか?』
『働きたくない人』
『同じです』
『ひどい』
ひまりは少しだけ笑った。
昨日まで、こんなふうに自然と笑えなかった気がする。
すると、再びメッセージが届く。
『で、依頼は受ける?』
笑顔が消える。
指が止まった。
『まだ迷ってます』
『そっか』
『……怖いんです』
正直に打ち込む。
すぐに返信が来た。
『じゃあ、今から会おう』
『え?』
『話したい』
『でも……』
『大丈夫』
それだけだった。
不思議だった。
その三文字だけで、少し安心する自分がいる。
一時間後。
ひまりは駅前のカフェにいた。
窓際の席。
そこへ蒼がやってくる。
今日もラフな格好だった。
黒いパーカーにジーンズ。
やっぱりニートっぽい。
「おはようございます」
「おはよう」
蒼は席に座るなり言った。
「眠れてないでしょ」
「……何で分かるんですか」
「目の下」
ひまりは慌てて目元を触る。
蒼が小さく笑った。
「分かりやすい」
何だか悔しい。
「それで?」
蒼が真面目な顔になる。
「どうしたい?」
「え?」
「受けたい?受けたくない?」
ひまりは俯いた。
答えは決まっている。
「……受けたいです」
小さな声だった。
「うん」
「でも、怖いです」
「うん」
「失敗したらどうしようって」
蒼は少し考えてから言った。
「失敗したら、また描けばいい」
「え?」
「一回駄目だったくらいで終わりじゃない」
当たり前のように言う。
「でも……」
「相沢さん」
蒼が真っ直ぐこちらを見る。
「君、自分に厳しすぎ」
ドキリとした。
「百点以外は失敗だと思ってる」
「……」
図星だった。
「でもさ」
蒼はコーヒーを一口飲む。
「世の中って、そんなに厳しくないよ」
「そうですか?」
「うん」
少し笑う。
「少なくとも俺は、君の絵なら見たい」
胸が温かくなる。
この人は。
本当に迷いなく言う。
「……何でそこまで信じられるんですか」
すると蒼は首を傾げた。
「だって、上手いから」
「それだけ?」
「それだけ」
ひまりは思わず笑ってしまった。
何だろう。
この人の言葉には余計なものがない。
だからこそ、真っ直ぐ届く。
その時だった。
「……相沢ひまりさん?」
突然、声を掛けられた。
振り返る。
二十代前半くらいの女性だった。
「あっ……」
「やっぱり!」
女性の顔がぱっと明るくなる。
「私、子供の頃、ひまりちゃんのドラマ大好きだったんです!」
ひまりは目を丸くした。
「え……」
「毎週観てました!」
女性は少し照れながら言う。
「今でも録画残してるんですよ」
胸が熱くなった。
そんな人が。
まだいる。
「ありがとうございます……」
女性は嬉しそうに笑った。
「応援してます!」
そう言って去っていった。
しばらく、ひまりは動けなかった。
蒼がぽつりと言う。
「ほら」
「え?」
「オワコンじゃない」
言葉が出ない。
「一人でも応援してくれる人がいるなら、それってすごいことだよ」
ひまりの目が潤む。
「……最近、誰にも期待されてないと思ってました」
「俺は期待してる」
即答だった。
「さっきの人も期待してる」
窓の外を見る。
人が行き交っている。
自分なんて誰も見ていないと思っていた。
でも、違った。
見てくれている人がいる。
覚えていてくれる人がいる。
そして。
信じてくれる人もいる。
ひまりは深く息を吸った。
そして、スマホを取り出す。
企業からのDMを開く。
指先が少し震えている。
「……決めました」
蒼が見る。
ひまりは画面を見つめたまま、小さく笑った。
「受けます」
返信を打つ。
『ぜひ、お受けさせていただきたいです。よろしくお願いいたします』
送信。
ピコン。
メッセージが送られた。
その瞬間。
胸がどくん、と鳴った。
怖い。
でも。
それ以上に。
少しだけ、わくわくしていた。
蒼が微笑む。
「おめでとう」
「まだ何も始まってませんよ」
「始まったよ」
「え?」
蒼は窓の外を見ながら言った。
「君が自分で一歩踏み出した」
その言葉に、ひまりは目を見開く。
そして。
ゆっくりと笑った。
「……そうですね」
気付けば、昨日までよりも空が明るく見えた。
人生なんて、もう終わったと思っていた。
でも。
もしかしたら。
まだ始まってもいないのかもしれない。
そして、この時のひまりはまだ知らない。
このイラスト依頼が、自分の人生を大きく変える第一歩になることを――。
第四話 完
発売から二週間が過ぎたある日の朝。相沢ひまりは、コーヒーカップを両手で包み込みながら、窓の外を眺めていた。スマートフォンには、毎日のように読者から感想が届いている。『子どもが寝る前に毎日読んでいます』『親子で笑顔になれる絵本でした』『続編を楽しみにしています』一つひとつの言葉を読むたびに、胸が温かくなった。その時、スマートフォンが震える。神崎蒼からだった。『今日は時間ある?』ひまりはすぐに返信する。『あります』『出かけよう』『どこへですか?』少し間が空き、返事が届く。『着いてからのお楽しみ』ひまりは思わず笑った。「珍しいですね」***午後。待ち合わせ場所で合流した二人は、ゆっくりと街を歩いていた。「神崎さん」「うん」「どこへ行くんですか?」「もう少し」「秘密ですか?」「うん」相変わらず短い返事だった。それでも、不思議と安心できる。しばらく歩くと、大きな商業施設が見えてきた。中へ入り、エスカレーターで上の階へ向かう。到着したのは、大型書店だった。「本屋さん?」「うん」「何か探すんですか?」蒼は何も答えず、児童書コーナーの方へ歩いていく。ひまりも後をついていった。そして、その瞬間だった。「あ……」思わず足が止まる。目の前には、大きな特設コーナーが設けられていた。色とりどりの絵本が並ぶ中、一番目立つ場所には、自分の絵本が何冊も積まれている。手書きのポップには、大きくこう書かれていた。『大人気! 発売後すぐ重版決定!』『親子で読みたい、心温まる一冊』『スタッフおすすめ!』さらに棚の横には、小さな子どもたちが描いたイラストまで飾られていた。「すごい……」ひまりは小さく呟く。夢を見ているようだった。店内には親子連れが次々とやって来る。「これ、この前読んだ本だ!」男の子が嬉しそうに指を差す。「もう一回読んで!」母親は笑顔で本を手に取った。別の場所では、小さな女の子が表紙を見つめていた。「このうさぎさん、かわいい!」父親がページをめくる。「読んでみようか」そんな何気ない会話が、ひまりの耳に届く。「神崎さん……」声が少し震える。「うん」「本当に読んでもらえているんですね」蒼は静かに頷いた。「届いてる」その一言だけで十分だった。***ひまりは、少し離
発売から一週間。朝早くから、出版社の編集部は慌ただしい空気に包まれていた。「三浦さん!」営業部の若手社員が、資料を片手に編集部へ駆け込んでくる。「各書店から、また追加注文です!」「また?」担当編集者の三浦は驚いた表情で資料を受け取る。発売初日から好調だった相沢ひまりの絵本は、一週間経った今も勢いが衰えるどころか、さらに注文が増え続けていた。全国の大型書店。街の小さな書店。オンライン書店。どこでも売れ行きは好調だった。「在庫が足りません!」営業担当が声を上げる。「このままだと来週には初版がなくなります!」編集長も資料を見つめながら大きく頷いた。「これは予想以上だな」会議室には次々と関係者が集まってくる。印刷会社への確認。流通会社との調整。書店への連絡。編集部全体が慌ただしく動き始めた。その様子を見ながら、三浦は思わず笑みを浮かべる。「やっぱり届いたんだ」誰よりも信じていた作品だった。その思いが形になり始めていた。***午後。緊急の編集会議が開かれる。編集長が資料を机へ置いた。「結論から言います」部屋の空気が引き締まる。「重版を決定します」その一言と同時に、編集部から拍手が起こった。「おめでとうございます!」「これはすごい!」「発売一週間ですよ!」「ここまで早い重版は久しぶりです!」三浦も思わず立ち上がる。「ありがとうございます!」編集長は笑顔で頷いた。「作者にも早く知らせてあげてください」「はい!」三浦は急いでスマートフォンを取り出した。***その頃。ひまりは自宅で次回作のラフスケッチを描いていた。以前のような焦りはない。好きだから描く。その気持ちを忘れないように、一筆ずつ丁寧に線を重ねていた。スマートフォンが震える。画面には三浦の名前が表示されていた。「こんにちは、三浦です!」電話の向こうの声は、いつも以上に弾んでいた。「こんにちは」「おめでとうございます!」「え?」「重版が決まりました!」「……え?」ひまりは言葉を失う。「今、何とおっしゃいましたか?」「重版です!」「発売一週間で重版が決定しました!」しばらく沈黙が続く。「相沢さん?」「……本当ですか?」「もちろんです!」「書店さんから追加注文が相次いでいます!」「たくさんのお子
朝。相沢ひまりは、目覚まし時計が鳴るより少し早く目を覚ました。今日は、ずっと待ち続けてきた日だった。机の上には、一冊の絵本が置かれている。表紙には、優しく微笑む子猫と、小さなうさぎ。その下には、はっきりと自分の名前が印刷されていた。作・絵 相沢ひまり何度見ても実感が湧かない。「今日から、この子たちが全国の本屋さんに並ぶんだ……」小さく呟き、そっと表紙を撫でる。発売日。夢だった日が、ついにやってきた。***午前中。出版社では朝から慌ただしく電話が鳴っていた。担当編集者の三浦は、営業担当からの連絡を受けて目を丸くする。「えっ、本当ですか?」受話器の向こうから、明るい声が聞こえる。「はい。各書店さんから追加注文の問い合わせが入っています」「もうですか?」「発売初日とは思えない勢いです」電話を切った三浦は、大きく息を吐いた。「これは予想以上だ……」すぐにひまりへ電話をかける。「おはようございます、三浦です」「おはようございます」「おめでとうございます!」「ありがとうございます」「実は、発売初日から追加発注が続いています」「えっ?」ひまりは思わず聞き返した。「本当ですか?」「はい。予想を上回る反響です」「まだ午前中なのに……」「書店さんから『もっと送ってください』という連絡が何件も来ています」ひまりはしばらく言葉を失った。「そんなことって……」「あります」三浦は笑った。「良い本だからです」その言葉に、ひまりの胸が熱くなる。***午後。ひまりは帽子を深くかぶり、神崎蒼と一緒に大型書店を訪れていた。今日は読者として、本屋へ来ただけ。誰にも気づかれないように店内へ入る。児童書コーナーへ向かうと、一番目立つ平台に、自分の絵本が積まれていた。「……あった」ひまりは立ち止まる。「本当に並んでる」夢ではなかった。子どもたちが次々と絵本を手に取っていく。「ママ、この絵かわいい!」「読んで!」小さな女の子が嬉しそうに抱きしめる。母親はページをめくりながら微笑んだ。「優しい絵だね」その言葉を聞いただけで、涙が込み上げそうになる。さらに少し離れた場所では、店員が新しい本を平台へ補充していた。「あれ?」ひまりは首をかしげる。「もう減ってる……」蒼も平台を見る。確かに、積まれ
午前十時過ぎ。インターホンの音が静かな部屋に響いた。「はい」玄関を開けると、宅配業者が大きな段ボール箱を抱えて立っていた。「お届け物です」「ありがとうございます」ひまりは両手で受け取る。思っていたよりも重い。送り状を見ると、差出人には「YouTube」と記されていた。「……え?」思わず目を丸くする。胸がどきりと高鳴った。急いで箱を部屋へ運び、テーブルの上へ置く。「もしかして……」思い当たるものは一つしかなかった。スマートフォンを手に取り、神崎蒼へメッセージを送る。『神崎さん、お時間ありますか』数分後。『ある』『大きな荷物が届きました』『今から行く』短いやり取りに、ひまりは思わず笑みを浮かべた。***しばらくして蒼が部屋を訪れる。「こんにちは」「こんにちは」蒼はテーブルの段ボールを見るなり、小さく頷いた。「届いたね」「やっぱり、これですよね?」「たぶん」ひまりは緊張した面持ちでカッターを手に取る。「開けます」ゆっくりと封を切る。|緩衝材《かんしょうざい》を取り除くと、一枚の手紙が入っていた。「手紙?」そっと取り出し、読み始める。『チャンネル登録者数十万人達成、おめでとうございます。あなたの努力と創造性が、多くの人へ笑顔と感動を届けています。その功績を称え、このクリエイターアワードを贈ります。』ひまりは何度もその文章を読み返した。「私に……?」声が震える。蒼は静かに微笑んだ。「相沢さんに」その下には、丁寧に包まれた銀色のプレートがあった。ひまりは両手で持ち上げる。「わあ……」思わず息をのむ。鏡のように輝く表面。中央には再生ボタンのマーク。そして、その下には。**Aizawa Himari**チャンネル名が美しく刻まれていた。「本当に……私の名前」目頭が熱くなる。子役を辞めた日。芸能事務所を追われた日。自分には何も残っていないと思っていた。そんな自分の名前が、今こうして世界に一枚だけの盾へ刻まれている。「夢みたい……」涙が一筋、頬を伝った。***蒼は銀の盾を静かに見つめる。「重い?」「はい」ひまりは少し笑った。「思っていたより重いです」「努力の重さ」蒼らしい一言だった。ひまりは思わず吹き出す。「そうかもしれませんね」しばらく二人で銀の
翌日の朝。 相沢ひまりは窓を開け、ゆっくりと深呼吸をする。春の風が頬を優しく撫でた。机の上には、昨日描いた子猫のイラストが置かれている。仕事でもない。誰かに見せるためでもない。ただ、好きだから描いた一枚。その絵を見つめていると、不思議と胸が温かくなった。「……もう一度、描いてみようかな」自然とそんな言葉がこぼれる。ペンタブレットの電源を入れる。真っ白なキャンバスが映る。以前のような恐怖は、まだ少し残っていた。それでも、昨日とは違う。ペンを持つ手は震えていなかった。一本。また一本。ゆっくりと線を重ねていく。完璧じゃなくていい。上手じゃなくてもいい。好きだから描く。その気持ちだけを大切にしながら、ひまりは久しぶりに一枚のイラストを描き上げた。画面の中で、小さなうさぎと子猫が並んで花畑を歩いている。「描けた……」思わず笑みがこぼれた。その瞬間、スマートフォンが震える。神崎蒼からだった。『どう?』短いメッセージ。ひまりは描き上がったイラストの写真を送り返す。数秒後。『笑ってる絵だ』その一文を見た瞬間、胸の奥がじんわりと温かくなった。「ありがとうございます、神崎さん」小さく呟き、スマートフォンをそっと置いた。***午後。ひまりはパソコンの前へ座る。今日は配信予定の日だった。休止のお知らせを出してから、初めての配信になる。配信画面を開く。開始時刻までは、あと三十分。 相沢ひまりは、マイクの位置を何度も直しては、深呼吸を繰り返す。「……大丈夫」そう呟いてみる。けれど、胸の鼓動は少し早かった。配信を休止してから初めて、みんなの前へ戻る日。「待っていてくれるかな」期待よりも、不安の方が少しだけ大きい。机の上には、昨日描いた子猫のイラストが置かれていた。その絵を見つめると、自然と肩の力が抜ける。「よし」ひまりは小さく頷き、配信画面を開いた。 待機画面には、すでに多くのコメントが流れていた。『今日かな?』『無理しないでね!』『配信があったら嬉しいな』『待機!』『ひまり先生、おかえり!』まだ始まっていないのに、「おかえり」という言葉が並んでいる。ひまりは目を潤ませた。「まだ始めてもいないのに……」待っていてくれた人がいる。それだけで十分だった。深呼吸をする
朝。今日も柔らかな陽射しが窓から差し込み、部屋の中を優しく照らしていた。相沢ひまりは、ゆっくりと目を覚ます。ここ数日続いていた胸の重苦しさは、少しだけ軽くなっていた。昨日、公園で神崎蒼から言われた言葉が何度も頭に浮かぶ。「休むのも仕事」その一言に救われた気がした。とはいえ、机の上にあるペンタブレットを見ると、まだ胸が少しだけ締めつけられる。「今日は……描かなくてもいい」自分にそう言い聞かせ、部屋を出た。***昼前。ひまりは近所のスーパーへ買い物に出かけた。牛乳やパンを買い、帰ろうとした時だった。近くの小さな公園から、子どもたちの笑い声が聞こえてくる。自然と足が止まった。「少しだけ……」そう呟き、公園へ入る。休日ということもあり、多くの親子が遊んでいた。鬼ごっこをする子。砂場で山を作る子。ベンチでは、お母さん同士が楽しそうに話している。ひまりは少し離れたベンチへ腰を下ろした。その時だった。「できたー!」元気な声が響く。五歳くらいの男の子が、大きな画用紙を高く掲げていた。近くにいた保育士らしき女性が笑顔で尋ねる。「何を描いたの?」「ぼく!」得意げに見せる絵には、大きな丸い顔。体は棒のような一本線。腕も足も長さが違う。空には紫色の太陽。木には赤い葉っぱ。犬は水色だった。ひまりは思わず見つめる。「すごいね!」保育士が笑う。「どうして太陽が紫なの?」男の子は胸を張った。「好きだから!」「犬はどうして水色なの?」「かっこいいから!」「木が赤いのは?」「きれいだから!」どの答えにも迷いがない。周りの子どもたちも次々と画用紙を見せ始める。「わたしは虹をいっぱい描いた!」「ぼくは恐竜!」「これはママ!」どの絵も自由だった。上手い下手なんて誰も気にしていない。ただ、描きたいものを思いきり描いている。ひまりは、その光景から目が離せなかった。「……そうだった」小さく呟く。子どもの頃。自分もそうだった。空をピンクに塗ったことがある。猫に羽を描いたこともある。先生に「自由に描いていいよ」と言われるだけで、胸が躍った。誰かに評価されるためじゃない。賞を取るためでもない。ただ、描くことが楽しかった。「私……」いつから忘れてしまったんだろう。ーーー帰宅したひまりは