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王の再編 ―― クルス視点

Author: ふりっぷ
last update publish date: 2026-07-18 07:10:15
 魔王城の最上層。

 結界と演算陣に囲まれた制御室は、

 戦場よりも遥かに静まり返っていた。

 無数の魔導スクリーンには、

 各国の外交動向――

 そして、ヒマリの心拍が、

 リアルタイムで映し出されている。

 一番手前に。

 一番大きく。

「……第二軍、王都防衛中核配置。

 合理性評価、七十八点」

 冷たい声が、誰もいない制御室に落ちる。

「情緒的判断、二十二点。

 だが、その誤差が、この国の人間的安定を

 飛躍的に高める」

 無数の演算式が、空中で解体と再構築を繰り返す。

「理解はできる。

 だが――納得は、しない」

 スクリーンの中で、ヒマリが立ち上がった。

 クルスは、彼女の行く先を、無意識に目で追っていた。

 かつて女性の形をしていた身体は、今は違う。

 肩幅が広くなった。

 顎の輪郭が鋭くなった。

 声帯の周波数が、わずかに低くなった。

 理由は、演算済みだ。

 ヒマリの視線が、無意識に追う顔の輪郭。

 ヒマリの心拍が、安定する声の周波数。

 ヒマリが、信頼できると判断する身体的特徴。

 すべて、データがある。

(最適化は
ふりっぷ

「染め上げよう」という言葉、 支配なのか、愛着なのか、 クルス自身も分かっていないと思います。

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  • ゴミとして捨てられた聖女、王国を奪う   救済という名の混乱

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  • ゴミとして捨てられた聖女、王国を奪う   クルスの独断

     魔王城・コアルーム。  制御室の扉が、内側から封鎖されていた。  ヒマリは知らない。  フェルマーも知らない。  クルスだけが、知っていた。 スクリーンに、ロンデル公国の地図が広がっている。  都市の配置。  王都軍の駐屯地。  魔王城旧魔物の残存分布。  クルスは、それを静かに見下ろしていた。「……整理しよう」  誰もいない部屋で、声に出す。  ヒマリの習慣が、移ったのかもしれない。「ジギスムントは布告を出した。  ロンデルの感情は、今、怒りに振れている」  スクリーンに、観測データが流れる。 ロンデルの人心反応ログ。  フェルマーが見ていたものと、同じ映像だ。  ただし――  クルスの目には、別のものが見えていた。「ヒマリを虐殺者としてロンデルに行かせる訳にはいかない。  聖女はロンデルにとっての救済者であるべきだ」 クルスは、指を動かした。  魔王城深層の、旧魔物管理区画へアクセスする。  そこには、ノリスが魔王だった時代に  制御できず放置された魔物たちが眠っていた。 フェルマーの異世界召喚の実験体、本能だけで動く個体群。  数にして、十七体。 「……使える」 クルスは、慎重に計算する。  条件は三つ。  一、ロンデルの都市部は狙わない。    民間人への被害は最小に抑える。  二、王都軍が「迎撃できる」規模に留める。    ヒマリが救済に動ける余地を作る。  三、魔物の出所を、追跡できないよう処理する。「第三条件が、最も難しい」  魔王城の魔物だと知られれば、  ジギスムントの「自作自演」という布告に  根拠を与えてしまう。 だから―― 「ロンデルと王都の国境付近、  旧街道沿いの野生化区域から誘導する」  既に野生化した魔物が徘徊している区域がある。 そこへ誘導すれば、出所の特定は困難になる。 「完璧ではない。  フェルマーなら七割の確率で気づく」  クルスは、一拍置いた。 「だが、そこまでだ。  この作戦の有用さに気付けば、追及はしない」    そして、ヒマリには百パーセントで気づかれたくない。  だから、先に動く。 ヒマリが知った時には、もう結果が出ている。

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