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第6話 大学の後輩

مؤلف: 相木ふゆ彦
last update تاريخ النشر: 2026-07-20 18:16:00

沙織は、昼食の時間で塔矢フレグラスの会社を出た。

昨夜、連絡してきた大学時代の後輩、朝霧司がきているはずだ。

待ち合わせ場所には、 スーツの若い眼鏡の男がひとまち顔で立っていた。

「鮎川先輩、お久しぶりです」

「久しぶり、司くん」

最後に会ったのは、沙織の結婚式だったと思う。

知的で端正な顔には、大学時代の面影より、より大人びている。

司の黒いスーツにはひまわりのマークの弁護士バッジが光っている。

司が取り出した名刺には、朝霧法律事務所・代表弁護士と書かれている。

「鮎川先輩、戦いましょう。財産がなにも割り当てられないのはおかしいです。無償でいいので、僕にやらせてはくれませんか?」

司と沙織は、近くのカフェに入った。

サンドイッチとコーヒーを頼み、テラス席に座る。

司に、改めて離婚した状況を話すと、眼鏡ごしにその眼光が冷たくなっていく。

「一切の財産放棄、婚費ゼロ、精神慰謝料ゼロ……先輩、これがどれだけ異常な内容か、わかってますか」

沙織は、食欲はなかったが何か食べねばならないと思って、一生懸命にサンドイッチを食べる。

「二人で協力して生活を維持していたのなら、法律でも婚姻中に築いた財産は夫婦の共有財産として認められているんですよ?」

「私、あの家をただ出たくて、それで、離婚届にサインをして……」

隼人の発言からして、会話が成立するとは思えなかった。

そして、沙織にはそんな隼人と離婚調停で長々と戦う気力もなかった。

ただ、こんな男とはもう関わりたくない。

その気持ちだけで、飛び出したのだ。

それでも、今朝の電話で裁判だと言い放った隼人の声は本気だった。

弁護士である司に、そのことも説明する。

「それこそ、共有財産として言い張るのかも……でも、このことは美里にはまだ内緒にしていてね。そのうち自分で話すから」

「わかりました。それにしても隼人さんが、先輩のお金を欲しがっている? 異常ですね」

ホットコーヒーを飲んだ司が、眼鏡を拭く。

その表情は、サークルや大学で見た親しみやすい司にはなかった表情だった。

「不貞行為による民事上の責任――慰謝料ですね。それに、窃盗罪、状況によって横領罪。財産分与・慰謝料などの民事責任にもなります。それに、結婚中に出来た先輩の財産ですが、創作者は鮎川先輩だけ。隼人さんは研究・開発に一切関与していない。独占ライセンス契約は離婚後に締結された。現在の収益は離婚後の契約から生じたものである。以上の四点で、隼人さんが言う”共有財産として半分”というのは成立しません。塔矢フレグラスがわに伺えば、特許やライセンス契約などもあるでしょうし……むしろこっちから、慰謝料を取りましょう」

「すごい。知加子ちゃんに感謝しなきゃ。司くんに伝えてくれて、隼人から――高山から逃げられるかもしれない」

もう、隼人と呼ぶ必要はない。

すでに離婚した他人だ。しかも沙織からたかろうとする、見苦しい元夫。

書類を作成する司は、あっという間にコーヒーを飲み干す。

「鮎川先輩、僕に任せてください。もう大丈夫ですよ」

どこか別人のような、それでいて確かに面影のある横顔。この後輩はもう、かつて自分の後ろをついて回っていた青年ではない。

仕事ができる、それでいて怜悧な姿は、立派な男に見えた。

司は書類を打ち出すと、その場で小型印刷機で書類をすぐさま打ち出した。

今すぐ速達で隼人の会社に送るという。

「なんなら、直接隼人さんの会社まで僕が持っていきますよ」

「いいえ、そこまで面倒はかけられない」

沙織は慌てて手を振った。

無償でここまでやってもらってもいいのか、不安がよぎる。

「面倒だなんて」

司は笑った。

「先輩のお役に立てればそれで充分です」

奏多が二人を目撃したのは、偶然だった。

窓辺でコーヒーを飲んでいた奏多は、沙織と親密そうに歩きながら話している朝霧司が見えたのだった。

「朝霧か……」

笑い合いながら歩いていく二人の後ろ姿を見ると、奏多は数秒間押し黙る。

指先がほんの少し強張ったが、結局は声をかけずに車へ戻った。

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تعليقات (2)
goodnovel comment avatar
相木ふゆ彦
実はさらに増えます!
goodnovel comment avatar
ブラックコーヒー
さわやかな二枚目登場。なんかにわかに賑わってきましたね沙織さん
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