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第26話

作者: Raisaa
その日、指揮官用の天幕には、すでにディリアンが先に到着していた。

城を離れてからというもの、胸の奥が妙に落ち着かない。

理由は分からない。

だが、説明できない違和感が、ずっと心に引っかかっていた。

セレーネの姿が、何度も脳裏をよぎる。

本来なら、あの女の顔を思い浮かべても苛立ちしか湧かないはずなのに。

今日は違った。

グラント侯爵が戦況の説明を続けていたが、ディリアンの耳にはほとんど入っていなかった。

「ご理解いただけましたか、公爵閣下?」

その声で、ようやく意識が引き戻される。

ディリアンは冷ややかに視線を向けた。

「長すぎる」

天幕内にいる将軍たちが、思わず顔を見合わせる。

「と、申しますと?」

グラントが慎重に問い返した。

ディリアンは地図の一点を指で叩いた。

「先に仕掛ける。相手に考える時間を与えるな」

静寂が落ちる。

理にかなった策だが、同時に大きな危険を伴う。

ディリアンの戦い方は常にそうだった、速く、容赦なく、そして確実。

だが今回は、彼の視線がどこか戦場から逸れているようにも見えた。

「承知しました。公爵閣下の案に従います」

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