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ピロトーク:それぞれの想い

Auteur: 相沢蒼依
last update Dernière mise à jour: 2025-07-10 06:56:55

「本当にごめんなさーい。渋滞的なものにハマって、イけなかったの♪」

(渋滞的なものって車の渋滞じゃないのかな? ほかになにがあるんだろ)

 不思議に思って郁也さんを見上げると、眉間に深いシワを寄せて睨み付けるように、葩御稜を見ていた。

 この日が訪れるまで、彼らの話題をあえて避けて神経を遣っていた日々――郁也さんがもう、えらく機嫌が悪くなるからだ。

「初めまして、編集長の三木と申します」

 三木編集長さんが爽やかに挨拶をしながら、彼らとにこやかに握手をした。

(――僕らも進んで挨拶すべきだよね?)

 郁也さんを肘でツンツン突くと、すごくおもしろくなさそうな顔して、プイッとそっぽを向く始末。人見知りの激しい僕から挨拶なんて無理だよ。

 大人気ない郁也さんの態度に困り果てていると――。

「ちょっ、桃ちゃんおひさ~♪」

 芸能人スマイル全開の葩御稜が目ざとく郁也さんを見つけ、首に腕をぎゅっと絡めて、いきなり抱きついてきた。隣にいた僕はその様子に驚きつつ、じりじりと後退せざるをえない。

「やっ、いきなり抱きついてこないでくださいっ」

 すごーく顔が真っ赤になってる。もちろん、郁也さんが怒っているからではない。

「だってぇ桃ちゃん、すっげー怒ってるんだもん。俺が待たせたから、寂しくなっちゃった?」

「んなワケないですって! 離してください」

「やぁだ♪ 機嫌が直るまで、このまま抱きしめちゃう」

 葩御稜に楽しそうに抱きしめられている、真っ赤な郁也さんを複雑な心境で眺めながら、少し離れたところにいる克巳さんをちらりと横目で捕らえた。

 スタッフの人とほほ笑んでなにかを話しているようで、さりげなくふたりの様子を見ている感じに見えた。

 恋人が芸能人でああいうパフォーマンスが日常だと、見慣れちゃうのかな。どうしてあんなふうに、平気な顔して笑っていられるんだろう。僕は今の郁也さんの現状に、かなり落ち込んでいるというのに。

 自分の感情との違いに内心気落ちしている僕の肩を、誰かがそっと叩いてきた。あたたかい手のひらから、安心感みたいなものがじわりと伝わってくる。

 置かれた手を追って隣を見ると、三木編集長さんがなにやら目配せして、イチャイチャしているふたりの方にゆっくりと歩いて行ってしまった。

「すみませんねぇ。時間が押してるんで、そろそろ桃瀬を解放してやってはくれませんか?」

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