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第十八話「世界を巡る」

last update Última atualização: 2025-11-11 18:54:20

「この地図は世界に隠されている秘宝を魔法で全て網羅してるの」

「交渉のつもり?」

 マリアが広げた魔法の地図をひょいと覗き込むパトラ。

「バカね、悪魔は欲しいものは奪うのよ」

 レアなマジックアイテムに心惹かれ、パトラはその地図を手に取って詳しく見たくなった。

「ねぇ、一緒に旅をしない?」

 マリアが思い切って誘いの声をかける。

 ドキッとしたパトラは伸ばしかけた手を慌てて引っ込めた。

(ほら、これをこうして……)

「そこの二人っ! コソコソ何してるの!」

「わっ」

 アプリを使って記憶の一部を消すか、直近行動の強制、こちらへの攻撃を辞めさせようとしていたオルド達だったが、すぐにパトラにバレてしまった。

 パトラは男どもを御すると再びマリアと話し始めた。

「死ぬのが怖いんだね。分かるよ、わたしも人間だった時は怖かった」

「仲良くなりたいほうが強いかなぁ。だってあなた角も羽も尻尾もないし、普通の可愛い女の子じゃないの」

「騙されちゃ駄目だマリア! 悪魔は人間に化けるのが上手い、少女の姿の本体はきっとグロテスクな化け物だぞ! 大蛇みたいな!」

「うるさいなー、あのヒョロガリ…」

 外野の声にイラッとするパトラ。

「パトラちゃん、広すぎるこの世界を、自分の目で色々見たいと思わない?」

 マリアはパトラに歩み寄って手を繋ごうとした。

「この印の数が、全て未知の世界……」

 パトラは魔法の地図に興味津々であった。地図を見ながらパトラは迷った。そしてこの女の言葉にも。

「待て! 不用意に近づくと危険だマリア!」

(女はいいとして、あいつは殺そうかな)

 パトラは片手に魔力を込めて、カイのほうへ向き直った。

「く、来るか」

「待ってよパトラちゃん」

 後ろから止めるマリアに何故か後ろ髪を引かれるパトラ。

「……いいわ、この地図をくれるなら見逃してあげる。魔導師に悪戯したことも」

「えっ、いいのか、あいつの仲間じゃないのか」

「わたしにとっては大したことでもない、それにもっと楽しそうな遊びを教えてくれたしね」

 パトラは静かに微笑みマリアから地図を受け取る。

「じゃあね、マリア、これありがとね」

「一人で行っちゃうの?」

 魔法の地図を手にしたパトラはマリアを連れてはいかず一人、炎衝飛行レイブンの呪文を唱え飛び去っていった。

「旅立ったか。さすがマリア。上手くやったな、あの
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  • フルダイブMMOで現実改変できる『箱庭』アプリの話   第十九話「外法」

    「そうか、ダニーは自ら消滅を選んだか……」「でもまた転生できるんでしょ?」 ミニオルドの落胆の言葉に明るく返すマリア。「アプリにはダニーさんの名前が残っていなくて」 カイはずっと気になっていた事を話した。「彼はきっと次の器を指定しなかった、我々は選ぶことができる、転生する先を」「となるとダニーさんは箱庭内でそのまま…まさか」「リスク前提なんだ、箱庭への転移は。それを行うプレイヤーは殆ど居なくなった。物質的に消えるのだ、命が」 カイは恐る恐るもう一つ告白をした。 ステータスをバグらせようと、自分のデータを開いたままアプリを強制終了させたり、他にも色んな無茶な操作をしていた、その悪影響が箱庭界に出ていないか、と。「そんなやり方では恐らく何も影響しないから安心しろ」 そう言ってオルドは少々沈黙した。「カイ………そんなに強くなりたいか、どうしても」「なりたいっす」「話していなかった方法が一つある。箱庭は地球を模した星として生きている、前に話したな、命を触媒にした回復魔法のことを。それは箱庭システムにも当てはまる。お前の推測は半分当たっている、生体エネルギーつまり肉体と魂を、命そのものをアプリに転送すれば、箱庭の壊れたシステムを甦らせ、エラーの修復を可能にするかもしれない。もちろん命懸けのこの方法はまだ誰も試してはいない」「……」「命を全て捧げずとも個人のステータス改変くらいなら、生体エネルギーを大幅に使えば起こせるかもしれんな。通常のやり方とは違う、アップロードを必要としない外法、当然バグる可能性は大きい。ステが数値化できないものになったり、減ったり初期化したり、最悪、奇形な化け物になったりする覚悟がいる。ただしこの博打の成功例が全くないわけではない」「やります、オレ」 カイは即答した。「生体エネルギーって…死なないのよね?」 心配そうにマリアが確認する。「そこは加減する、だが結果は運次第だ」「目を閉じ脱力しろ」 早速オルドは開発者のマウスを操作して、カイの腕に浮き出たUSB端子口とノートパソコンを専用ケーブルで繋ぐ。 カイの元々血色の悪い顔色がみるみる土色になり、頬はげっそり痩けて萎み、目には赤黒いクマが深く刻まれていく。栗色の髪は全て白髪となり、縮んだ身体を包むローブがだるだるになった。 呪術など

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