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第004話

Author: CHUE
last update publish date: 2026-06-22 23:02:22

 ドヒョクは、その十一桁の電話番号をじっと見つめていた。

 名前を登録しようにも、何と保存すればいいのか分からない。

 昨夜は、酔い潰れるほど飲んだわけではない。

 それでも朝になると、ようやく頭が冷えてきた気がした。

 そもそも、なぜ番号を聞いたのか。

 自分でもはっきり覚えていない。

 あの女と、この先どうするつもりだったのか。

 昨夜のことは、ちょっとしたハプニングとして終わらせればいい。

 そう自分に言い聞かせながら、ベッドを降りた。

 もしかすると、昨日を境に性欲が戻ってきたのかもしれない。

「兄貴! いらっしゃいますか? 入ってもいいですか?」

「何だ」

 そのままシャワーを浴びようとしたところで、扉の向こうから声が聞こえた。

「昨日、急にいなくなったじゃないですか。車もそのままでしたし……誰かが部屋に入ったとは聞いたんですが、戻られたか確認しに来ました」

「タクシーで帰った。ちょうどいい。車を取ってきてくれ。鍵ならここだ」

 ドヒョクは扉を開け、車のキーを放り投げた。

 訪ねてきたソンチョルは片手で受け止めると、開いた隙間からしばらくドヒョクの様子を観察する。

 見た限り、いつもと変わらない。

 酒の席を抜け出したことなど今まで一度もなかったから不思議ではあったが、パンツ一枚で眠っていた身体にも新しい傷は見当たらず、表情も普段どおりだった。

「分かりました」

 そう言ってソンチョルは去っていく。

 ドヒョクはシャワーを浴びながら、昨夜の出来事を思い返した。

 あの女の声。

 顔。

 話し方。

 そして、あの夜の空気まで。

「あ……」

 思わず股間へ目を落とし、すぐに顔を上げた。

 やはり、おかしい。

 主治医に診てもらうべきなのか。

 それとも、あの女にもう一度会うべきなのか。

 判断がつかない。

 だが、一つだけ確かめたいことがあった。

 昨日の相手でなくても同じなのか。

 それとも、あの女でなければ駄目なのか。

「テギュ」

「はい、兄貴」

 ドヒョクは部屋の内線電話で部下を呼び出した。

「ホン・ソンミンに連絡しろ。今日行くと伝えておけ」

「え? なんであの刑事に……。俺がやりますよ」

 ドヒョクはテギュを見つめ、それから軽く手を振った。

 部下に頼めば、組の中で噂になるのは目に見えている。

 外で片づけるのが一番だ。

 何を確かめるにしても、だ。

「酒でも飲もうって伝えろ」

「ホン・ソンミンって、いつも変な店ばっかり誘ってくるんですけど……」

 だからこそ選んだ相手だった。

 ドヒョクは「構わない」とだけ答え、テギュを下がらせる。

 そして大して選ぶほどでもないクローゼットからトレーニングウェアを取り出し、着替えた。

 余計なことを忘れるには、身体を動かすのが一番だった。

 最近は平穏すぎる毎日が続いていた。

 そんなことを思いながら、トレーニングルームへ向かう。

 そこでドヒョクは、部下たちが引くほど身体を追い込んだ。

 機嫌でも悪いのかと、誰もが顔色を窺っていたが、テギュが迎えに来るまで誰かに当たり散らすことはなかった。

 シャワーを浴び直し、テギュの運転する車の後部座席へ乗り込む。

 そして無意識のうちにスマートフォンを開き、またあの十一桁の番号を眺めていた。

 朝から何度も見返したせいで、もうほとんど覚えてしまっている。

「そんな真剣に何を見てるんですか。着きましたよ、兄貴」

「別に」

 ドヒョクはスマートフォンをしまい、車を降りる前に言った。

「あとで電話する。それまで待機してろ」

「お一人で入るんですか?」

「ああ」

 ドヒョクは一人で車を降り、静かな店の廊下を進み、一番奥の部屋へ入った。

「寂しかったのか? お前から飲もうなんて言い出すなんて」

 ソンミンがにこにこと笑いながら迎える。

 部屋には思った以上に人が集まっていた。

 ほとんどが女性だったが、その雰囲気はさまざまだ。

 派手な化粧をした者もいれば、ほとんどすっぴんに近い者もいる。

 男たちは皆、どこか緊張した面持ちだった。

「念のため、男女どっちも集めてみた」

「バカか、お前」

 ドヒョクは眉をひそめ、近くの席へ腰を下ろす。

 ソンミンがこういう男だということは昔から知っていた。

 だから、それ以上は何も言わない。

 確かめたいことがあって来たのは、自分のほうなのだから。

「どうだ? 違うか?」

 ソンミンの言葉に、ドヒョクは改めて部屋の中をゆっくり見渡した。

 だが、誰を見ても昨夜のような感覚は訪れない。

 昨日は、思い浮かべただけで反応したっていうのに。

 朝だからか。

 そんな馬鹿げた言い訳を考えながら、グラスを手に取る。

 酒を、というようにグラスを軽く持ち上げると、ソンミンは笑うだけだった。

 代わりにドヒョクの隣へ座った誰かが、少し震える手で彼のグラスへ酒を注ごうとする。

 ドヒョクは、その人物へ静かに視線を向けた。

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