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知り合う②

Penulis: 緋村燐
last update Terakhir Diperbarui: 2025-05-30 17:21:19

「紅夜は……学校に行ったことないの?」

「……」

 生まれたときから黎華街に住んでいると言った紅夜。

 この街には学校なんて無い。

 街から出られないと言った彼は、どうしていたんだろう。

「……」

「……」

 沈黙が重い。

 特に怒ったりしている雰囲気は感じないけれど、やっぱり聞かれたくなかったことなんだろうってのは分かった。

 沈黙に耐え切れなくなって、答えなくても良いと言おうとすると――。

「……学校は、行ったことないよ」

 静かな声音で答えてくれた。

「俺はこの街からほとんど出たことはないし、基本的に出ることはない。学校には通ったこともない」

 寂しさとか、悲しさとかの感情はない。

 ただ淡々と静かな声が言葉を紡ぐ。

「義務教育課程はホームスクーリングで教えてもらったし、伝手のある融通の利く学校に在籍だけはしていたから一応中卒までは学歴がある。あとは……いずれは高卒認定もらえるように勉強だけはしてるかな」

「そう、なんだ……」

 それしか言えなかった。

 怒っているわけでもなく悲しんでいるわけでもないのに『ごめん』というのは違う気がして……。

 だから、私は代わりに笑顔を向ける。

「教えてくれてありがとう、紅夜」

 謝罪の代わりに感謝を示す。

 でも、紅夜はそんな私に少し驚いたように目を開き、妖艶さをたたえた笑みに変える。

「いや……代わりに俺からも質問があるからな」

「質問? 私に?」

 何が聞きたいんだろう?

「このリングと交換するって言ったあのヘアクリップ。大事なものって聞いたけど……なんで?」

「え?」

「誰かから貰ったもの、とか?」
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