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16.夏祭り

last update Date de publication: 2026-08-21 17:02:53

「え?君は祭りに行った事がないのか?」

 カインが大袈裟に驚いてみせると、イレリアは拗ねたように口をすぼめた。

 その仕草も愛らしい。

 店番をするイレリアに会いに来たカインは、広場で夏祭りの準備をしている事を告げたが、イレリアは当たり前のように「行った事がない」と答えたのだ。

「なら、行かないか?店を閉めてから2人で」

「でも……」

 貧民街の人間が祭りなどに行くとどんな目にあうかわからない。

 イレリアはそう言おうとしたが、少しだけ惨めに思い、口をつぐんだ。

「祭りなんかの日は人でごった返してる。僕と一緒なんだし、大丈夫さ」

 カインがそう言うと、イレリアは少し思案してから覚悟を決めた顔で頷いた。

 カインの言う通り、広場は人でいっぱいだった。

「ほら、蜂蜜水だよ」

 カインが屋台から慣れた手つきで買った蜂蜜水を、イレリアに手渡してくれた。

 一口啜ると心地よい冷たさと懐かしい甘さが喉を通り過ぎていく。

「昔、風邪を引いたりした時に師匠が薬湯に混ぜてくれてたのは蜂蜜だったのね」

 イレリアが顔を綻ばせると、カインは少しムッとした。

 数度会っただけの薬師は、青白く不機嫌そうな顔を
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