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僕だってチートがあれば苦労なんてしていない
僕だってチートがあれば苦労なんてしていない
مؤلف: 結城慎二

朱夏-ある中年のつぶやき-

مؤلف: 結城慎二
last update تاريخ النشر: 2026-06-01 06:00:11

「人生やり直せたらなぁ……」

 そう思っていたことが僕にもありました。

 ありましたが……。

 だからってこれはないんじゃないでしょうか?

 こんな状態で前世の記憶が蘇るとか、神様の仕業だとしたら「あんたバカぁ!?」って罵ってやりたい。

 いいや、一発殴らせろ。

 こんな切羽詰まった状態だが、現在の状況を冷静に確認分析だ。

 まず、ここは村はずれの雑木林をちょっと入ったところ。

 この辺は子供達がよく遊ぶ場所で僕も勝手知ったる何とやらだ。

 つまり、普段は危険のほとんどない場所で、そんな林の比較的幹の太い木をできるだけ登った枝の上にいる。

 僕の名前は、えーと……そう! ジャン・ロイ。

 …………。

 ギャバンなのかシャイダーなのか、どっちかにしろ! 混ぜたら中国系みたいじゃないか。

 いかんいかん、前世の記憶に引っ張られて現世の記憶があやふやだ。

 ひとまず現世の記憶だけを整理するぞ。

 年齢は確か明日十五歳になるはずだ。

 …………。

 じゃあ、明日蘇れよ前世の記憶っ!

 まぁそれは今は置いとけ。

 なんで僕は、こんなところにいるのか? それは、村が盗賊団に襲われたからだ。

 こんな田舎の村にお宝なんてあるわけないじゃないか! って、少年としては悪態つくところなんだが、前世の思考が邪魔をする。

 だよなぁ、収穫期に農村襲えば食いもんにありつけるわな。

 運の悪いことに今回の盗賊団は食いもん奪うのに村人を殺す系の盗賊団だったらしく、僕は母ちゃんに背中を押される形で村を逃げ出しここまでたどり着いたわけだ。

 なんだ、うまく逃げだせたんじゃん。

 とか、思っているそこのキミ。

 そんなわけないじゃないか。

 僕の下を盗賊団の手下たちがウロウロしてんだよ。

 くそっ、皆殺し系盗賊団だこいつら。

 襲った村の村人を全員殺すことで自分たちの身バレリスクを減らそうってんだ。見つかったら百パー確実に殺される。

 ──というのが、今の状況だ。

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أحدث فصل

  • 僕だってチートがあれば苦労なんてしていない    考えてもみなかった

     こう言っちゃうのは傲慢と取られるだろうけど、所詮小規模な農民の反乱だ。  反乱自体はおそらく苦もなく鎮圧できると思う。  問題は、そのあと村をまとめて秋を迎えられるかと言うことだ。  一致団結できなきゃとてもじゃないけど男爵の正規軍とは戦えない。  参ったな……キャラバンが残っていれば頼もしいんだけど、ギラン派もそこまでアンポンタンじゃないだろう。  まず間違いなく、いないときを見計らってことを起こすはずだ。  僕ならそうする。  それにしたって、ジョーはギランをどう言う意図でもって村にスカウトしたんだろう?「どうするつもりですか?」「ん?」「反乱です。速やかに粛清しますか?」 ……怖いこと言うね。「粛清はよくないな。恐怖政治は町人が萎縮するし、進んで協力してくれなくなる。なにより不満が募って反乱が連鎖しかねない」 とはいえ、反乱するに任せるなんて無策も統治能力を疑われるし、今後の僕の計画に町人を巻き込む際の障害になる。「……さて、どうしたものかなぁ……」「いっそのことその主とやらを倒してしまうと言うのはどうですか?」 …………はっ!?「いやいや、相手は主だよ?」「しかし、帰ってきたものがいないわけでもないのですよね?」「五体満足で帰ってきた人はいないんだよ?」「でも、村人ですよね?」 …………確かに。「仮に倒せなかったとしても、主の正体が判れば今後の対応も適切にできるのではありませんか?」 一理ある。「でも、町の主戦力に死なれちゃ今後の計画が……いや、反乱が起きてもダメージはでかいわけで……。んーん…………」「新しく町に来た五人は請負で怪物退治などもしていたそうじゃありませんか」 そういえば、そんなこと言ってた言ってた。  ある種の傭兵ってところだな。  オルグの襲撃から村を守った話を数日前にカイジョーに聞いたわ。  そんな実力者たちなら、いくらでも金儲けでき

  • 僕だってチートがあれば苦労なんてしていない    困るなんてもんじゃない

     発展したとはいえ戸数は五十に満たない。  お隣さんとは二、三十シャルは離れている。  僕は慎重を期して、お隣さんの一軒に隠れるようにギランの家の様子を見張ることにする。(じゃあ、頼むよ)(任せて!) リリムがギランの家に飛んでいく。  見える範囲にいればリリムが聴いた音を聞けるって言ってたけど、暗闇でリリムが見えない状況だとどうなるんだろう?  多少の心配をしながら暗闇の中、リリムを凝視する。  ただでさえ小さいんだからよっぽど集中しなきゃ見失う……かと思いきや、あ〜らびっくり、光って見えるじゃあーりませんか。  これが関係性ってやつかと感心していると、リリムが家にだどりついたようで、中の様子が聞こえきた。  どうやら扇動演説してるようだ。「……領地を追われたり、才能を買われてこの村に移民させられた」 誰々がいるんだろう?「そのことは別に構わない。それ自体は自分たちで決断したことなのだから。だが、この村でも一握りの人間が横暴にも権力を振るっている!」 それって、僕のこと?「今年になってから来たものは日も浅いので判らないだろうが、この村だってよその村と変わりない。我々の要求など踏みにじられて顧みられることもない」 それは言い過ぎだろう。「それが証拠にここにいるドブルの弟ガルムたち三人が、主の森とやらに迷い込んだと言うのに奴らは捜索さえしようとしない。見殺しだ。何故だ!」 それは君たちが短慮だからさ。 …………。 いけね、ついな。  ダメだね、ファースト世代は(前世だけど)。「本来なら奴らは誠実にこの局面を打開しなければいけないと言うのに『主』怖さに村人を見捨てるなどと言う言語道断の決断をした。我々はこの悲しみを怒りに変え、村を悪逆非道な村長一味から奪わなければいけない!」 ──っと、声が聞き取りにくくなってきたぞ。(リリム)(なに?)(聞き取りにくくなってきた。僕

  • 僕だってチートがあれば苦労なんてしていない    素敵な関係

    (リリム)「なに?」 僕はルダーとクレタを見る。  二人ともリリムにちらりと視線を向ける。  声が聞こえたんだろうな。(この念話っての? リリムも声に出さないでできるの?)(できるわよ) うおっ!  なんか変な感覚だ。  心地良いとは絶対言えないけど、嫌な感覚とも言えない。  それにしたって随分クリアに聞こえるもんだ。(そりゃ、雑音なしの思考の塊だものクリアに決まってるじゃない) ……個人的感想にまで返事しなくてもいいよ。(で、なに?)(きっと一部の人たちが、集まって話し合いをすると思うんだ。ちょっと探りたい)(おっけー) …………。(なに?)(リリムって魔法使えたよね?) 僕の知っている限り、明かりを灯す魔法と眠りの魔法が使えるはずだ。  ってことは、他にも使えるんじゃないかと考えたっていいだろ?(例えばだけど、リリムが見聞きしたものを直接僕が見聞きできるとか、そんな素晴らしい魔法が使えたりしない?)(スマホのビデオ通話みたいな?) 地球世界のこと詳しいな……。(そんな感じ)(さすがにそんな都合のいい魔法は使えないなぁ)(だよねぇ)(音声だけだったら魔法じゃなくて私とジャンの関係性でなんとかなるけどね) まじで!?(ただし、私が見える範囲にいないと繋がらないし、長時間は無理よ)(充分だ)「オギン」 僕が呼ぶと、僕の背後から声がする。  !? 心臓に悪い。「たぶん納得いかない奴らが密会すると思う。集まり出したら僕を呼びにきてくれ」「かしこまりました」 …………。「そのあとは、僕が館にいるていを装ってほしいんだ」「留守番ですか?」「そうとも言う」「かしこまりまし

  • 僕だってチートがあれば苦労なんてしていない    ただでさえ領主対策に頭悩ませてるのに

     事件は起きた。  そう、バカが三人テリトリーに侵入したんだ。  テリトリーを侵した奴が三人いると報告を受けた僕は、雑木林の巡回をしていたメンバーだけでなく、ルンカー職人と炭焼き職人も村へ引き揚げさせた。  直後に「主の咆哮」が森から響く。  鬱蒼と繁る森から聞こえてくるいつもの低く長いものじゃない。  村の中まで振動する激烈な音だ。  なぜ、僕が主の咆哮と判るかって?  そりゃ、聞いたことがあるからだよ。  町人が何事かと中央広場に集まってくる。「お館様」 誰かが僕を見つけたことで町人の視線が僕に集まる。「なにがあったんですか?」「誰かが主のテリトリーを侵したらしい」 サビーからの報告を受けている僕はその誰かを知っているわけだけど、町人たちは知らない。  すぐさま安否確認が始まった。  増えたといっても百人足らずの小さな町だ。  あっという間に誰がいないか判明する。  バンブル、ビービー、ガルムの三人だ。  三人とも反お館派で、町の不良グループでもある。  三人とも一応成人してるけどね。  イゼルナが過呼吸で倒れる。  ガルムと付き合っているって噂だった。  ガルムといえば、ドブルの弟だったな。  「年をとってからの子だったこともあって、親父のデジンが猫っ可愛がりしている」と、よくドブルが愚痴ってた。  そういうドブルもたいがい甘やかしていたからこういう事態になったとも言える。「助けに行こう!」 ドブルがいうと、三人の親族を中心に賛同の声が上がる。「お館様」 町人の視線が改めて僕に注がれる。  そんな目で見てもダメだよ。「無茶だよ。これ以上被害を増やすわけにはいかない」「まだ死んだと決まったわけじゃない!」 確かに村の過去の記録には何人かの生還事例があるけれど、生還率は数%。  それも五体満足で戻ってきたものはいない。  僕の記憶にある三件

  • 僕だってチートがあれば苦労なんてしていない    森の主

     新参者が増えるとよく起こる習慣や物の考え方の違いによる軋轢もなかなか無視できない。  こう言っちゃなんだけど、「村人」は「村人」なのよね。  前世の都会人みたいに適度に隣人を無視するってのがなかなかできない。  ついついお節介を焼いたり、気に入らないことに口出しするとかでいらないいざこざが起きる。  そのたんびに僕が仲裁するんだけど、必ずしも双方納得ずくって裁可が下せるわけもなく、不満がたまって矛先が僕のところへ向くことが避けられない。  着の身着のままで逃げ込んでくる人たちもいるんで、物資不足も心配だ。  これから男爵相手に一丁事を構えるって言う準備に結構資源を割いてたりするんで、なおさらだ。  村の自給自足の根幹である畑仕事もしなきゃいけないし、外貨獲得のための特産品生産もやめるわけにいかない。  本格的な戦闘で男爵軍と渡り合うための訓練も生き残り戦略には欠かせない。 そして、最大の問題が「主」の存在だった。  新しくきた人たちには、雑木林の奥の森が「主」のテリトリーであるってことをいの一番に話して聞かせている。  僕自身で。  元々の村の唯一の生き残りである僕が、実体験も交えて口を酸っぱくして注意しているのに、不用意にテリトリーに入ろうとする奴が後をたたない。  主に十代の思慮の足りない奴らが度胸試しかなんかのつもりで「主」のテリトリーを侵そうとする。  サビーたちに雑木林の巡回警備をしてもらっているから事故は起きてないけど、困るんだよ。  本当に。  やばいんだよ。  とにかく。  見つけるたびに緊急集会を開いて「主」とテリトリーについて話してるのにさ。  いい加減頭にきたんで 「次にテリトリーを侵そうとする奴は無視してくれ」 とサビーに頼んだのが、キャラバンが来てカシオペア戦隊の五人が加わった翌日。  事件はその十日後に起きた。

  • 僕だってチートがあれば苦労なんてしていない    急速な発展には負の側面がつきまとう

     前世でなにをしてきた人かは知らないけれど、このあたりの用意周到さは壮年期に太平洋戦争を経験した凄みとでも言うんかね?  そりゃあ情報と物資の重要性をよう知ってるはずだわ。  頭でっかちな僕とは根っこが違う。「それにしたって賑わってるなぁ。もうちょっとした町だな」 うん、今日の五人を入れて人口九十人に届くよ。  野盗討伐戦後、村の町化計画を策定した際に人口規模百二十人と提示した。  目標まであと三十人だ。  当初計画では二ケ年かけて到達する計画だったのに秋までには達成しそうな勢いである。  急速な発展はいくつかの問題を発生していて、とても頭を悩ませている。  シ○シティ並みに次から次へとよく問題が発生するよ。  まず、住宅問題。  当初、簡易宿泊所で家ができるまで生活してもらうという予定だった。  貨幣経済が割とすんなり受け入れられたのをみて、一軒家以外に長屋も作る計画に変更した。  賃貸住宅を作ることで建設費と施工日数を減らすことに成功してはいるんだけど、なにせ人口流入が想定以上なので建設が追いつかず、バラック生活・キャンプ生活の人も出ている始末。  バラックに居ついてスラム化されると問題なんで早急に解決したいんだけど、リソース全部ぶっこむわけにもいかずにいる。  同じく人口増加に起因する食料問題。  現在は配給制だけど、本来男爵との戦のために備蓄に回すべき分を吐き出して対応しなくちゃいけない状況だ。  北に拡げている耕作地は、種蒔きできたのが従来の畑の五分の一程度。  百五十人規模にでもなったら配給を絞らなきゃならない事態になりかねない。  せっかく貨幣経済が回り始めたのに村内主力産業である外食産業がポシャっちゃう。

  • 僕だってチートがあれば苦労なんてしていない    都市伝説は真実だった

    「じゃあ次は概要ね」 と、リリムは言う。「世界の概要は現世の知識があるから割愛ね」 あらま。「あなたは転生の際にDNAってやつに細工されていてね、神様曰く人よりちょっと優秀になってるそうよ」 え? ちょっと?「そこはとても優秀になってんじゃないの? テンプレ的に」「いくら世界に干渉できる環境にある神様だってそんなことホイホイしたら世の中のバランスが狂っちゃうでしょう?」「異世界転生は世界のバランスを崩さないのか?」「崩すわよ。それなりに。そもそも

  • 僕だってチートがあれば苦労なんてしていない    さゔぁいぶ-後篇-

     村に戻った僕は村人の埋葬をする。  人の死には慣れている。  現世の僕が、だけど。  この世界は前世の世界と違って文明水準が高くない。  当然医療水準も高くない。  田舎だからってのはあるかもしれない。  大きな街はもしかしたらすごく発展しているのかもしれない。  魔法のある世界だから、当然治癒魔法もあるはずだ。  でもそれがどれくらいの効果があるかもわからない。  だからこの村はよく人が死んだ。  子供は特によく死んだ。  僕にも姉と妹がいたらしい。  妹の方はかす

  • 僕だってチートがあれば苦労なんてしていない    さゔぁいぶ-前篇-

     僕は十五歳の朝を木の枝の上で迎えた。  この世界の元服、つまり成人の儀式が行われる日だ。  確かに一生忘れられない日にはなったけど……切ない。  あまりにも切ない。  秋とはいえ、昼頃になればそれなりに暖かくなる。  今日は天気もいいので昼頃にはむしろ汗ばむほどの陽気になった。  慎重にあたりの気配を確認しつつ、木から降り集落に戻ると、まだプスプスとくすぶっている焼け跡の中を歩く。  あたり一面、嫌な臭いが立ち込めているのは、村人の焼けた臭いだろう。  昨日から何も食べてないのに込み上げてくる胃液を吐き出し

  • 僕だってチートがあれば苦労なんてしていない    泣ぬれるは枝の上

    「逃げたのはガキ一匹か」 と、僕の真下で傷だらけのごつい男が言っている。  こいつが盗賊団の頭目と見た。「へい、多分」「多分だと!?」「へ、へ……」 あたふたした下っ端が頭目にぶん殴られ、仰向けにぶっ倒れる。  気絶してろ!  盛大に気絶してろよ、でなきゃここにいることがバレる。  僕の祈りは天に通じたのか、そいつは白目をむいて動かない。「このさらに奥に行ったかもしれませんぜ」「ならいい」 頭目は、一言吐き捨てて踵

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