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第970話

作者: 歓乃
28年も母娘として暮らしてきただけあって、美雪には彰菜が何を言いたいのかわかった。顔をしかめ、言い訳するように口を開く。

「私はただ、無事にこの国から出たいだけで、何かするつもりなんてない。凛さんと海斗さんにここまで追い詰められなかったら、私だってこんなことしなかったもの。だから、お母さん。私を責めないで、責めるなら凛さんを責めてよ。だって、今まで敵だった柚葉さんとまで手を組んで、私を追い詰めるなんてやりすぎだよね」

彰菜は何度も口を開こうとしたが、やはり声は出ない。ただ激しい怒りを込めて、美雪を睨みつけることしかできなかった。

美雪が彰菜から視線をそらし、ドアの方を見ると、本当にボディーガードたちがいなくなっていた。

美雪は少しだけ胸をなでおろす。

少なくとも、利明を脅すことには成功したらしい。

その直後、彰菜の携帯が鳴ったので、美雪はすぐ電話に出た。

「もしもし、お兄ちゃん?警察には知らせてないよね?わかってると思うけど、私はもうこの国から出られないし、警察にも追われてる。追い詰められたら、何をするかわからないよ?自分が助からないなら、一人くらい道連れにしたっていいと
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    28年も母娘として暮らしてきただけあって、美雪には彰菜が何を言いたいのかわかった。顔をしかめ、言い訳するように口を開く。「私はただ、無事にこの国から出たいだけで、何かするつもりなんてない。凛さんと海斗さんにここまで追い詰められなかったら、私だってこんなことしなかったもの。だから、お母さん。私を責めないで、責めるなら凛さんを責めてよ。だって、今まで敵だった柚葉さんとまで手を組んで、私を追い詰めるなんてやりすぎだよね」彰菜は何度も口を開こうとしたが、やはり声は出ない。ただ激しい怒りを込めて、美雪を睨みつけることしかできなかった。美雪が彰菜から視線をそらし、ドアの方を見ると、本当にボディーガードたちがいなくなっていた。美雪は少しだけ胸をなでおろす。少なくとも、利明を脅すことには成功したらしい。その直後、彰菜の携帯が鳴ったので、美雪はすぐ電話に出た。「もしもし、お兄ちゃん?警察には知らせてないよね?わかってると思うけど、私はもうこの国から出られないし、警察にも追われてる。追い詰められたら、何をするかわからないよ?自分が助からないなら、一人くらい道連れにしたっていいと思わない?」目の前の娘が、あまりにも冷静な声で恐ろしい言葉を並べていくため、彰菜は耳を疑った。20年以上育ててきた娘ではなく、まるで見知らぬ人間を見ているようだ。「美雪、お前には人の心ってものがないのか!」電話の向こうで、利明が怒鳴った。「私、もともと心臓が悪いから、強いストレスはよくないのに、凛さんたちはここまで大ごとにして私を追い詰めてる。私だって、好きでこんなことしてるわけじゃないの」美雪の声は変わらず落ち着いていた。ここ数日間、ずっと人目を避けながら逃げ回ってきた。幸い、誰もが警察から出ている情報を細かく確認しているわけではないため、知人を頼りながら、どうにか身を隠すことができていた。だが、自分を捜しているのは警察だけではなく、ほかにも人が動いている。おそらく、海斗が手配した人間だろう。その両方から追われている以上、危険を承知で賭けに出るしかないのだ。「私が望んでるのは一つだけ。この国から出られるようにして」この国を出られれば、追跡にも手続きが必要になるため、その間に身を隠せる、美雪はそう考えているらしい。利明もその狙いを察していた。「お前がこの国か

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