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第24話

Auteur: 墨香
その言葉が落ちた瞬間、VIPルームの空気が一瞬静まり返った。

株式会社スターエンターテインメントは駿人が一代で築き上げた会社だ。

業界最大手というわけではないが、独自のルートと幅広い人脈を武器に成長を続け、これまで送り出したタレントたちは芸能ニュースの見出しを半ば独占してきた。

港江のエンターテインメント業界は確かに巨大な市場だが、その華やかさの裏には底知れぬ泥沼が広がっている。

駿人がスターエンターテインメントをここまで大きくできたのは、資金力だけのおかげではない。

何より、この会社は駿人にとって、いわば道楽で始めた事業なのだ。

たとえ売却の話が出たとしても、真洋ごときに順番が回ってくるはずがなかった。

「アイツごときが?」

駿人は鼻で笑い、指先の灰を軽く払った。

「身の程を知れって話だな」

謙吾は肩をすくめる。

「でも提示額はかなり強気らしいぞ。案外、本気で獲りに来るかもしれない」

その直後、それまで黙っていた蒼士がふいに顔を上げた。

指に挟んだ煙草は半分ほど燃え、白い灰が今にも落ちそうになっている。

「スターエンターテインメント?」

駿人が振り返り、
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  • 八角さん、新婚ですから自制してください!   第158話

    扉の開く音が聞こえたのか、蒼士は目を開けないまま、かすれた声で一言だけ告げた。「氷を」紗寧は慌てて近づき、アイスペールを持ち上げて、氷をいくつか浴槽へ入れた。氷が水面へ落ち、ボチャンと鈍い音を立てる。細かな水しぶきが周囲へ飛び散った。氷を入れていた紗寧の手が、ふと止まる。反射的に蒼士へ目を向けると、漆黒の瞳と真正面から視線が重なった。蒼士は今、体を焼く欲望のせいで意識が朦朧としていた。突然目の前に現れた紗寧を、焦点の定まらない目で見つめている。彼女が本当にそこにいるのか、それとも再び夢を見ているのか、判別できなかった。「紗寧......?」紗寧は慌ててそばへ寄り、手を伸ばして彼の額へ触れた。「具合はどうですか?まだ苦しいですか?」蒼士は答えなかった。瞬きもせず、ただ彼女を見つめている。その視線に居心地の悪さを覚え、紗寧は小さく口を開いた。「ごめんなさい。何も知らなくて......」声が次第に小さくなり、申し訳なさそうな響きを帯びる。「体調が悪いと知っていたら、電話なんてしませんでした......」考えれば考えるほど、紗寧の罪悪感は強くなった。そのぶん、懸命に彼の世話をしようとする。アイスペールからさらにいくつか氷を取り出し、浴槽へ入れた。「氷は足りていますか?もっと入れたほうがいいですか?」蒼士は答えなかった。浴槽の縁へ背を預けたまま、紗寧の顔を見つめている。瞳を覆っていた朦朧とした色は次第に薄れ、代わりに、紗寧には理解できない感情が浮かび始めた。蒼士は考えていた。――横川は入口にいるはずだ。紗寧を浴室へ入れるはずがない。だとすれば、これは夢なのか?蒼士の思考が一瞬、現実から離れた。紗寧の夢を見るのは、これが初めてではない。ここで一緒に暮らすようになってから、何度も同じような夢を見ていた。目を覚ますたび、自分がまるで思春期の少年に戻ったように、衝動的で抑えが利かなくなった気がした。だから、目の前にいる紗寧も夢の中の存在であり、本物ではないのだろう。そう考えた瞬間、紗寧を見る蒼士の目が変わった。もしここが自分の夢の中なら――何をしても許されるのではないか?返事のない蒼士を不思議に思い、紗寧はその顔を見つめた。しかし

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