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⑦

last update 게시일: 2026-10-06 14:21:34

ハウエルは、婚約者すら自分で選べない人生に辟易していた。

ルナリアのことが特に嫌いだったというわけではない。

ただ“親が決めた婚約者”という彼女との関係が、この上なく煩わしかったのだ。

だから「ハウエルンル〜ン、私、ルナリアさまにいじめられてるのぉ」と言われた時に、一も二もなく是非もなく、アナに肩入れしたのだが……その代償はデカかった。

のどかで気だるい昼下がり、ハウエルは執務室で書類仕事を片付けている最中だった。

もちろん、やる気はない。

「昼食の後ってさー、なんで眠くなるのかなー」

そんなことを言いながら、退屈紛れに書類の端にペンでぐりぐりと意味もなく丸を描いてみたりしている。

その時、遠くで、ドゴーンと豪快な音がした。

ハウエルの眠気が一気に吹き飛ぶ。

「な、なに? なんだ! 敵襲か⁈」

ドゴーン、ズガーン、バゴーンと、音は次第に近づいてくる。

そして、執務室の前でぴたりと止まった。

「と……止まった……?」

恐る恐るドアに近づくハウエルのすぐ目の前で……

スバゴーン!

「ヒィッ!」

打ち破られたドアの向こうには、無表情のレイヴンが立っていた。

彼は大きなハンマーを担いでいる。
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    ギルウェル王は一応は一国の王だから――果たすべき責任もあれば、守るべき民もいる。だが、相手が王国の最終兵器と呼ばれた男では、正直逃げ出したくはある。ただ王としてのプライドだけが、彼をかろうじて王座につなぎ止めていた。バーンと扉が開いて、最初にルナリアが入ってくる。「頼もー! ですわ!」続いてガイストが。「道場破りじゃないんだから」最後にレイヴンが。「ルナなら道場破りどころか完全粉砕も可能だろうな」ギルウェル王は精一杯背筋を伸ばして、一段高い玉座から三人を見下ろした。「よくぞここまで来た」まるでラスボスのような口のきき方だが、膝はすでにガクガクである。「あー、なんだ、まあ、穏便に行こう、穏便に」だが、レイヴンに慈悲はない。「ダメだ」「そこをなんとか」「ダメだ」「くっ、冷血漢めが!」ルナリアが義兄をかばう。「おにーさまはとても優しい人ですわ!」ギルウェル王とガイストが同時に叫ぶ。「「それ、お前にだけだから!」」実際、レイヴンはルナリア以外の人間には冷淡で冷酷だ。王国の魔導士としてギルウェル王に召し上げられてはいるが、おとなしく言うことを聞いた試しがない。「レイヴンよ、出撃じゃ、南の蛮族を討伐して参れ」「だが断る!」「なんで! これはこの国の平和を守るための重要な戦いじゃぞ!」「興味ないな」「お前が行かないと! 奴らにこの国を蹂躙されちゃうの! 数多の無辜の民が、戦いに命を落とし、泣きくれるのを見たくはないじゃろう?」「俺には関係のない話だな」「冷血漢っ!」これが、ルナリアが絡むとなると、話が変わってくる。「よし、こう考えてみよう、敵がこの国に攻め込んだ場合、真っ先に狙われるのは身分の高い者だ、ルナリア嬢は公爵令嬢だから……」「出撃する」「食い気味ッ?」ともかくルナリアが絡まないなら、他人の命などゴミクズ同然、顧みることもない。これがルナリアを絡めれば面白いほど思いのままに動かせるのだから、王にとってルナリアは使い勝手のいいレイヴンを操るための手駒だった。だが今、その手駒はレイヴンの手の中に……「いや、腕の中だな」王の眼前、しかも最終決戦の雰囲気だというのに、レイヴンはルナリアを抱き寄せてイチャコライチャコラしている。「ルナ、生贄にするんだから、殺さない程度にな」「任せてくださいませ

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    Xその頃、城では――「バカもんが、ほんっとバカモンが……」ギルウェル王は痛む頭を抱えながら、城内の被害箇所を見て回っていた。被害は甚大だ。まず大きな城門は粉々に叩き壊され、城壁も大穴が開けられて、もはや防衛の役になど立ちはしない。城の中はさらにボロボロ。影も形もないほど壁を打ち壊された部屋、扉を吹っ飛ばされ内装を粉々にされた部屋、瓦礫と化すほどに崩れ落ちた大階段……ギルウェル王の隣を歩く宰相が唸った。「これは、一から建て直した方が早いですな」「あああ、予算が、予算が……」胃の方もシクシクと痛み出す。ギルウェル王は痛む胃を押さえながら、最後に、被害が一番大きかった中庭へと向かった。かつてそこは、四季折々の花が植えられ、中央には大きな噴水と、その周りに神話を模した白大理石の彫刻を配した美しい場所であった。しかしいま、その全てが瓦礫と、剥き出しの地面に変わり果てている。例えていうならば、野花も咲かぬ荒野のような有様だ。その"荒野"のど真ん中に、反省のために正座させられたハウエルがいた。暖かな日差しが、毛髪を失ったハウエルの頭頂部を、うららうららかと暖めている。その陽気に当てられたのか、ハウエルは正座の姿勢のまま、うつらうつうつと船を漕いでいた。とても穏やかな光景だが、今のタイミングでは、ギルウェル王の気持ちを逆撫でするに決まっている。ギルウェル王は不肖の息子をどかっと蹴倒した。「この、バカモンが!」「きゃいん!」ようやくはっきりと目を覚ましたハウエルは、起き上がると、きゃんきゃんと喚き散らす。「何するんですか、父上!」「この愚息が! 反省はどうした!」「えー、だって、何を反省しろって言うんですかー」「みろ、この城の惨状を! これ、お前が迂闊にアクイール嬢を処刑しちゃったせいだぞ!」ギルウェル王は怒鳴るが、ハウエルはどこ吹く風。「だったらー、反省すべきは俺じゃなくてグランだと思うしー、それに見てくださいよ、この頭頂部! 一番被害を受けたのは俺なんですけどー」「毛がなくなったくらい、なんだ!」「ひでえ、毛は長い友達なのに……今、友を亡くして傷心中の俺を叱るんですか!」ギルウェル王が天を仰ぐ。「お前という奴は………」思えば、甘やかしすぎたのかもしれない。一人目の子供だということもあり、ギルウェル王の妻も、ハ

  • 処刑された悪役令嬢ですがサクッと禁忌を犯す程度のお義兄様に溺愛されて幸せですわ!   ⑨

    夜中、ルナリアはふと目を覚ました。焚き火はすでに燃え尽き、暗闇の中に熾火だけが赤く煌めいている。熾火の向こうに、バンジョーを抱えて眠るガイストの姿があった。そしてレイヴンは……「動けませんわ!」レイヴンは、ルナリアを背後からガッチリと抱え込んで眠っている。いつも無表情なレイヴンだが、もちろん寝ている時も無表情。ただ、その腕は、まるで離れることを恐れるかのように、がっちりとルナリアの腰を抱えて離さない。「もー、おにーさま、私はゾンビであって、ぬいぐるみではないのですわよ!」モゾモゾともがいて体勢を入れ替えて、レイヴンと向かい合わせになる。その動きにレイヴンがうっすらと目を開けて、寝言を呟く。「ルナ……」「はい、ここにいますわよ」それを聞いたレイヴンが、一瞬、ふわっと微笑んだ。そして安心しきったように大きくため息をついて、再び寝息を立て始める。ルナリアは、そんなレイヴンの寝顔にそっと指先で触れながら囁いた。「お兄様、これからはずっと一緒にいますわ、ずっと……」そう言いながらルナリアは、ハウエル王子との婚約を受け入れた日のことを、思い出していた。あの頃……ルナリアの両親は、将来的にはレイヴンをルナリアの婿に、と考えていた。なにしろレイヴンはともかくルナリアに四六時中ベッタリだったし、ルナリアの方もレイヴンの溺愛を受け入れておにーさまベッタリ。公式な発表がされていないだけで、婚約者として内定状態だったのである。そんなある日、ルナリアはギルウェル王に呼び出された。この時点でルナリアとハウエルは子供お茶会で顔を合わせる程度の“顔見知り”ではあった。だがハウエルはレイヴンと並べて明らかに見劣りがする。かたや寡黙でクールな天才児、もうかたやは王子であることを傘に着て高圧的な振る舞いが目立つバカ殿。顔面力だけ見ても、夜闇を思わせる黒髪黒目でスッと整ったクールなレイヴンと、一応美形の部類ではあるが甘ったるい蜂蜜色の髪に甘ったれたタレ目のハウエルでは、勝負にすらならない。だから、呼び出しの理由がハウエル王子との婚約の打診であることを知っていたルナリアは、はなっからこれを断るつもりでいた。開口一番、ルナリアは言った。「今回のお話、大変ありがたく思っておりますが……」「まあ待て」ギルウェル王が片手をあげて話を遮る。

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