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勘違いと逃走

last update Date de publication: 2026-04-19 17:45:28

それから数分後、渡された私服に着替えたカンナは、部屋の外へと出た。

(あのYという声の指示に従ってしまいましたが、本当に大丈夫でしょうか? 私の助けになるという言葉は信用できるかもしれませんが)

歩く間も、彼女の疑念や想像は止まらなかった。

(しかし、次の指示は一体何なのでしょう。"この町に住む、私と同年代くらいの少年に接触しろ"と言っていましたっけ?)

当てもなく、町中を彷徨うカンナ。すれ違う人々の中には、まだ条件に合う男はいない。

(それにしても接触、とはどうすればいいのでしょうか? ただ声をかければいいのか、後をつけて、自宅を特定すればいいのか……いえ、それはいけませんね)

あれこれ考え、ふと視線を上げたカンナの前には、一人の少年が歩いていた。

少年の背丈はカンナとほぼ同じ。カンナは意を決して、少年の目の前に躍り出た。

「あの、少しよろしいでしょうか?」

「……はい、何か?」

突然現れた少女から、間違いなく自分に向けて言われた少年は面食らった。

(どうしましょう、何と言えばいいか全く考えていませんでした。謎の声に導かれて、あなたに接触することになりました。などと言っても理解されるはずはありませんし……)

声をかけてから、カンナは考えこんでしまっていた。

ずっと黙ったままの彼女を不審に思ったのか、少年は逆に声をかけた。

「あのー、大丈夫?」

「はい、私は問題ありません」

「それならいいけど。俺、用事あるから。失礼」

少年は踵を返して、来た道を引き返そうとした。

「待ってください」

チャンスを逃すまいと、カンナは再び少年の前へと立ち塞がる。

「何? 変な宗教の勧誘なら、お断りなんだけど……」

カンナは咄嗟に考えた答えを口にした。

「あなたと、お近づきになりたいのです」

少年は一瞬固まり、我に返った時にはまごついていた。

「あの、それはどういう、意味……?」

「ですからあなたとお近づきに」

「へっ?」

カンナは一歩踏み出す。少年は思わず、半歩下がった。

「なりたいの」

「ちょっ」

カンナはまた一歩踏み出す。少年は動揺して、今度は動けなかった。

「です」

少年との距離、約10センチの所で、カンナは足を止めた。視線はお互いの瞳を見つめている。

涼しい顔をしたカンナと対象的に、少年の顔は紅潮し汗が頬を伝っていた。

「そ、そういうのはなんていうか、初めて会ったばっかじゃ……お互いのことをよく知ってからじゃないと……」

(言われた通りにしましたが、これで正解なんでしょうか? そういえば、お近づきになりたい、では接触ではなく接近ですね。私としたことが、間違えました)

考えるカンナには少年の言葉は届いていなかった。

カンナは勝手に考えをまとめると、少年の手を掴み、両手で握った。そして更に紅くなった彼の顔を見つめた。

「これでいいのですか?」

「い、いきなり何を……。あっ、ヤベ遅れる。悪いけどこれで!!」

「あっ、待って……」

しかし少年は、無理矢理手を振りほどくと一目散に去ってしまった。

 カンナは立ち尽くし、彼の背中を見送るしかなかった。

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