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遊園地①

Auteur: 緋村燐
last update Date de publication: 2025-06-21 19:51:39

「ついたー! さ、めいいっぱい遊ぶぜ!」

 遊園地内に入った途端そう声を上げたのは小林くんだ。

 可愛い系な顔立ちもあっていつも以上に子供っぽく見える。

「まずはジェットコースターだろ!? 絶叫ものは外せないぜ!」

 でも工藤くんも続いてそんなことを言うので、子供っぽいのは小林くんだけではなさそうだ。

「ほら二人とも、女子を置いてけぼりにしない。本来の目的は交流を深めることだろ?」

 今にも走り出しそうな二人を止めたのは花田くんだ。

 見た目チャラ男っぽいけれど、何だか二人のお兄さんって感じに見える。

 三人とも学校で見ているときとイメージが違っていて新鮮だ。

「ああそっか、ごめん。女子は絶叫もの苦手な人いる?」

 叱られて工藤くんがこっちを見て言う。

 それでも絶叫ものに乗るのは絶対なのか、とあたしは内心苦笑した。

「あ、さくら苦手じゃなかったっけ? 大丈夫?」

 聞かれて、沙良ちゃんがさくらちゃんを見る。

「大丈夫だよ」

 笑顔でそう答えたさくらちゃんだったけど、ちょっと無理しているように見えた。

 本当に大丈夫なのかな?

 無理してまで乗りたいの?

 何で?

 疑問に思いつつ、突っ込まないでおく。

「じゃーあれ乗ろうぜ」

 と小林くんが指さしたのはこの遊園地の売りでもある一番大きなジェットコースター。

 これから乗るんだと思って見ているだけでドキドキして来る。

 ぞろぞろと向かう途中、花田くんが「飲み物買ってくるよ、皆何が良い?」と言い出した。

 みんなが思い思いのドリンクを口にする中、あたしは紅茶を頼んだ。

 一人だと持つの大変じゃないかな? と思っていると、さくらちゃんが名乗り出る。

「花田くん、あたしも手伝うよ」

「おう、サンキュ」

 そうして二人が離れていくと、あたし達は先にジェットコースターの行列に並びに行く。

 歩きながら美智留ちゃんが近付いてきて、こそっと耳打ちして来る。

「あのさ、本人に内緒で言っちゃうのもどうかと思うんだけど……さくらって花田のこと好きなのよ」

 それを聞いたあたしは驚いて美智留ちゃんを見る。

 確かに言われてみれば、さっきもさくらちゃんは頬をピンク色に染めていた。

 もしかして苦手なジェットコースターに乗ると言ったのも、花田くんと乗りたいからじゃないだろうか。

「だからさ、灯里もさくらのこと応援して協力してくれない?」

 メイクオタクなあたしは恋愛にはうとくて、どう協力すればいいのか分からない。

 でも可愛いさくらちゃんのためになるなら協力を惜しむなんてことはしない。

 というか、初めからそんな選択肢はない。

「もちろん良いよ!」

 と少し勢い込んで答える。

「あ、でも何をすればいいかとかは分からないよ?」

 そして今度は控えめに告げた。

 美智留ちゃんは「ありがとう」と言った後で具体的な協力の仕方を話してくれる。

「大丈夫、難しいことは頼まないよ。さくらと花田が二人でアトラクションに乗れるようにしてくれればいいから」

「うん、分かった」

 それくらいならあたしにも出来そうだ。

 飲み物を買いに行っていた二人とも合流して行列に並ぶ。

 人気のアトラクションだけれど、開園間際につくように早めに来たからかそれほど待たなくても済んだ。

「早和、乗ろうぜ」

 工藤くんがそう言って進もうとするのを花田くんが止める。

「だから慎也、目的忘れるなって」

「あ、そっか。じゃあ……日高、一緒に乗ろうぜ」

 そうして日高くんの返事も聞かず腕を掴んで先に行ってしまった。

「じゃあ早和はあたしと行こ?」

 美智留ちゃんがすかさずそう言って小林くんを連れていく。

「それじゃあ……」

 とあたし達を見回す花田くん。

 あ、さくらちゃんを選ばせないと!

 と思った瞬間、沙良ちゃんがあたしの腕を取った。

「じゃあ灯里、あたしと乗ろっか」

「うん、そうだね。行こう」

 沙良ちゃんナイス! と思いながら付いて行く。

 でも協力しようと軽く意気込んでいたのに、結局あたしは何も出来なかった。

 美智留ちゃんも沙良ちゃんも状況判断が早くて凄いなぁ。

 あたし、ちゃんと協力出来るんだろうか。

 不安になったけれど、取りあえず邪魔だけはしない様に気を付けよう。

 そう気を取り直し、あたしはジェットコースターを楽しんだ。

 絶叫ものに乗ったのは二年ぶりくらい。

 というか、遊園地に来たのも久しぶりだった。

 久しぶりのジェットコースターは絶叫しっぱなしで、喉が痛い。

 ドキドキハラハラで楽しくもあったんだけれど……。

 結果、あたしはさくらちゃんと日高くんと一緒にベンチで潰れていた。

「女子二人はともかく……日高、お前もか」

 小林くんが呆れの眼差しで日高くんを見下ろしている。

「……いや、ちょっと今日は寝不足で……」

 言い訳をする日高くんだけれど、気持ち悪そうでそれ以上は言葉が出せないみたいだった。

「三人は俺が見てるからさ、慎也たちは遊んで来いよ。一つか二つほど乗ってくれば三人も動けるようになってるだろ」

「そっか? わりぃな、司」

 と言いつつも、工藤くんは嬉しそうだ。

 まあ、遊びに来たのに潰れている人を介抱して時間が潰れるのは嫌だよね。

「心配だけど……花田が見てくれてるなら安心かな」

「さくら、灯里、大丈夫?」

 沙良ちゃんが言って、美智留ちゃんがあたし達を覗き込んできた。

 心配そうな顔にぎこちなく笑顔を見せる。

「大丈夫。ちょっと休めば動けるよ」

「あたし達のことは気にしないで……。遊んできて?」

 あたしに続いてさくらちゃんもそう言った。

 あたしよりさくらちゃんの方が辛そうだ。

 やっぱり無理しちゃってたのかな?

「そう? ……じゃあ花田、お願いね」

「おう、行って来いよ」

 そんなやり取りをして美智留ちゃんたち四人はアトラクションの方に向かった。

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