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第 114 話

Author: 一笠
「夏目さん、こっちに来て。少し話したいことがあるの」

美雨は奥様たちに目もくれず、凛の手を引いてその場を後にした。

奥様たちはその場に立ち尽くした。自分たちの言葉がブーメランのように戻ってきて、心に突き刺さった。

「どうして夏目さんが入江先生と知り合いだってことを教えてくれなかったのよ!」

「私たち、あんなこと言っちゃったけど、もし夏目さんが入江先生に告げ口でもしたら、これから作品を買えなくなっちゃうじゃない!」

「そうよ、わざと私たちを入江先生に嫌わせるように仕向けたんじゃないの?」

奥様たちは一斉に雪を責めた。

雪は心の中で叫んだ。私も今初めて知ったのよ!

しかし、すぐに気を取り直し、毅然
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