LOGINだから、潮が煌を助けてくれと頼みに来た時、良平は冷たくあしらったのだ。そして次に受け取った知らせが、煌の訃報だった。そう思い返すと、良平の心はさらに重くなった。だから、死んだ人間のことを考えても仕方ない、と自分に言い聞かせるしかなかった。気持ちを切り替え、良平は葬祭場に向かった。傘をしまう際にうっかり水滴を喪服に飛ばしてしまい、少し汚らしい姿になってしまった。良平と翔太が近づいてくるのを見た潮は、慌てて起き上がり、両手を広げて彼らの前に立ちはだかった。「出て行って!煌をあなたたちなんかに合わせないから!」潮の目は真っ赤に充血し、憎しみが渦巻いていた。その目で、良平を睨みつける。「実
潮の顔色は土色になり、震える声で尋ねた。「な......何を言っているの?」大輔夫妻は娘をかばい、すぐさま優奈に反論した。「無茶な言いがかりはやめてくれ!証拠はあるのか?煌は、どうせ死ぬ運命だったんだ!病気になったのを、うちの娘のせいにするなんて。煌が死んで、頭がおかしくなったんじゃないか!」しかし、清子だけは何も言わなかった。優奈は清子の背中を睨みつけて告げた。「私の言っていることが本当かどうか、あなたが一番よく分かっているはずでしょ?」「だったら......」清子は振り返り、憎しみに満ちた優奈の視線を見つめ返す。「煌を死なせたのは、あなたにも責任があるわ。私が彼の診断書を受け
優奈が抵抗せずにいると、潮の罵詈雑言はどんどんと酷いものになっていく。しかし、優奈は何も聞こえていないかのように、うつむいたままスマホで葬儀社の人とやり取りをした。その日、潮は声が枯れるまで優奈のことを罵り続け、最後には何も言えなくなった。煌を失った潮は、すべての気力を失い、葬儀は優奈に任せるしかなかった。今、葬祭場の外は雨が降り続いており、潮の泣き声が一層悲しく響く。煌が死んでしまってから、潮はずっと泣き続けている。目は真っ赤に腫れ上がっていたが、涙が枯れることは決してないように見えた。それに比べて、優奈の目はまるで枯れ果てた井戸のように、乾ききって空虚だった。雨が吹き荒れる中
北都に小雨が降る中、飛行機は無事着陸した。空港を出て車に乗り込むと、聖天は礼から電話を受けた。「煌が昨夜、亡くなった」聖天は思わず凛の方を見た。その視線は複雑だった。視線が合った瞬間、凛は何かに気づいた。「何かあったの?」「ああ、煌が亡くなった」聖天は礼の言葉を繰り返し、落ち着いた口調で言った。凛の顔色がわずかに変わった。心に言いようのない感情が湧き上がってくる。結局のところ、かつては愛し合った二人なのだから。しかし、もう二度と会うことはない。だから、なんの感情も湧かないと言えば、それは嘘になる。ただ、残るのはため息だけだった。煌はこの世を去ってしまったのだ。彼は生涯、権力
今夜は月が綺麗で、気分も最高だ。こんなにも幸せを感じたのは初めてだった。まるで空気までも甘く感じる。......その夜、聖天と凛の名前がトレンド入りし、ランキングのトップに躍り出た。マスコミやインフルエンサーたちは、二人のツーショット写真をこれでもかというほど投稿した。それでも、コメント欄にはもっと見たいという声が殺到していた。ネット民だけでなく、多くのファンも二人のページに押し寄せ、大いに盛り上がっていた。【ついに!ついに!推しが正式に発表した!】【聞きたいことは、いつ妊娠するのかってことのひとつだけ!今のうちに覚悟を決めておかないといけないから......】【気づいた人いる
夜になった。凛は、体のラインを美しく引き立てるドレスに身を包み、首元には、数億円は下らないジュエリーが静かに光を放っていた。その立ち姿だけで場の空気が変わるほど、気品と存在感に満ちている。彼女の持つ洗練された気品が、表情のひとつひとつをいっそう際立たせ、息を呑むほどの美しさを放っていた。聖天は、凛のドレスと同じ色合いのスーツに身を包み、中に着ている黒シャツのボタンは2つほど外され、そこから綺麗な鎖骨を覗かせている。普段の完璧な姿とは違い、今夜の聖天はまるで羽を広げたクジャクのように、どこか奔放でそして自然体だった。二人が一緒に会場に入ると、自然と多くの視線を集めた。そのほとんどが、隠