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第6話

مؤلف: まってて
その言葉が会場に響いた瞬間、空気が一変した。

無数の視線が、一斉に紬希に突き刺さる。好奇、軽蔑、侮蔑――あらゆる色が混じり合っている。

「死体の化粧?女がそんな仕事してるなんて、縁起が悪いにもほどがあるだろ」

「考えただけで鳥肌が立つ。なんでああいう人間がこんな場にいるんだよ」

「俺なら絶対に嫁にはもらわないね。毎日死人に触ってるような女、どんな穢れが染みついてるかわかったもんじゃない」

ざわめきの中で、紬希は手のひらに爪が食い込むほど拳を握りしめ、青ざめていく顔を伏せ、必死に平静を保とうとしていた。

凪紗はくすくすと体を揺らし、紬希に向かって手招きした。

「紬希さん、せっかくだからステージに上がってきてくださいな。こんなにお客様がいらっしゃるんですもの、あなたの『お客様』が見つかるかもしれませんわよ」

逃げ場のない視線に押し出されるようにして、紬希は一歩、また一歩とステージへ歩を進めた。

客席のあらゆる視線を正面から受け止め、深く息を吸い込んだ。そのままマイクの前に立つ。

透き通った声が、宴会場に響いた。

「私は自分の仕事を、恥じたことは一度もありません。亡くなった方がきちんとした姿でこの世を旅立てるように、そしてご遺族に最後の安らぎを届けるために――それが、私の仕事です」

言い終わるかどうかのところで、誰かがぱちぱちと手を叩き始めた。まばらな拍手が少しずつ広がり、やがてひとつの大きな波になる。

紬希は、凪紗の毒をはらんだ視線と真正面からぶつかった。これ以上ここにいては、何をされるか分からない。澪璃の顔が脳裏をよぎった瞬間、紬希は弾かれたように宴会場から駆け出していた。

だが正面の扉を出たところで、背後に腕をねじ上げられ、ボディーガードに押さえ込まれた。

紬希は力なく笑い、目を閉じる。目を閉じたまま、次は何をされるのかと身をこわばらせた。

間もなく、凪紗が険しい顔で出てきた。弦夜がその隣に控えている。同じように沈んだ顔をしていた。

凪紗は紬希の前まで歩み寄り、冷たく笑った。

「紬希、いい気分だったでしょうね、あのスピーチ。自分の仕事にそこまで誇りがあるなら、望み通りにしてあげるわ」

紬希の全身の血が凍った。体中の細胞が逃げろと叫んでいる。けれど手首を押さえられ、指一本動かせない。

震える声で、凪紗を見据えた。

「何をするつもり?」

凪紗は鼻で笑う。

「今さら怖くなったの?もう遅いわよ」

紬希は思わず弦夜に目を向けた。助けを求めるように。

だが弦夜はうつむいたまま、紬希の視線を避けるように顔を背けている。一言も、発さなかった。

黒い目隠しをされ、両脇を抱えるようにして車に押し込まれた。

暗闇の中の一秒一秒が、引き延ばされたように長い。心臓がどくどくと鳴り、自分がどこへ連れていかれるのか見当もつかなかった。

やがて足の下に、柔らかい砂の感触があった。潮の匂いのする風が顔を打ち、波が岸を叩く音が聞こえる。

海だ。

目隠しを乱暴に剥がされると、目の前に暗い海が広がっていた。

凪紗が紬希の顎をつかみ、意地悪く赤い唇を歪めた。

「紬希、あなた死人と関わるのが好きなんでしょう?なら今日は、自分が死体になる気分を味わわせてあげる」

ボディーガードたちが大きな石を運んできて、紬希の体と石を麻縄できつく縛り上げた。

――沈めるつもりだ。

問いただす間もなく、体が乱暴に持ち上げられた。

凪紗の声が、冷酷に響いた。

「落としなさい」

海に投げ込まれた。石の重みが紬希を猛烈な速さで海底へ引きずり込んでいく。

凍てつく海水が口と鼻に流れ込み、一瞬で息が詰まった。

もがこうにも手足はきつく縛られ、沈んでいく自分をただ感じることしかできない。

窒息の寸前、縄が激しく引かれ、水面へ引きずり上げられた。

息をつく暇もなく、また沈められる。

一回。二回。三回。

それが、九十九回も繰り返された。

紬希が最後に岸へ引き上げられたとき、もう息も絶え絶えだった。全身は氷のように冷たく、意識はとうに朦朧としている。

だが、体の痛みなど。

胸を抉るような絶望に比べれば、何でもなかった。

五年間愛した男。かつて自分のために全てを捨てたはずの男は、最初から最後までただ冷ややかに、自分が溺れ苦しむのを眺めているだけだった。「やめてくれ」の一言すら、口にしなかった。

もう――持ちこたえられなかった。意識が、完全に暗闇に落ちていく。

……

再び目を開けたとき、夜は明けていた。見慣れた病室の天井が視界に入る。

克海がソファで書類に目を通していた。気配を感じたのか、すぐに顔を上げる。

「白石さん、気がつきましたか」

書類を置き、克海の表情が重くなった。目の奥に、抑えきれない怒りが渦巻いている。

「安心してください。あなたが受けた仕打ちは、僕が必ず代償を払わせます」

紬希は蒼白な顔のまま、虚ろな目を向けた。

「……結構です、篠原社長。何もいりません。ただ澪璃を連れて、ここから無事に出られれば、それだけで」

克海はそれ以上無理に踏み込まず、ポケットから名刺を取り出し、ベッドサイドのテーブルにそっと置いた。

「僕の個人的な連絡先です。今後何かあれば、いつでも。――まだ表に出るわけにはいかないので、今日はこれで」

そう言い残して、静かに病室を出ていった。

克海が去って間もなく、病室のドアが再び開いた。

凪紗が、悠然と入ってくる。

ソファに腰を下ろし、脚を組み、見下ろすように紬希を見た。

「さすが、毎日死人に触ってるだけのことはあるわね。しぶといこと。両親を死に追いやったくせに、自分だけは図々しく生き延びるなんて」

その言葉が、見えないハンマーで紬希の心を打ち砕かれたような衝撃となった。

両親は――確かに、自分のせいで命を落とした。だがその事実は、弦夜にしか話していない。なぜ、凪紗がそれを知っている。

紬希の動揺を見透かしたように、凪紗が目を細め、楽しそうに笑った。

「なんで私が知ってるか不思議?弦夜本人が教えてくれたのよ」

凪紗がゆっくりと顔を近づけた。二人にしか聞こえない声で、一語一語、刻むように。

「私が知ってるのは、あなたの両親のことだけじゃないの。あなたと弦夜が本当の夫婦で、澪璃が――お二人の実の娘だってことも、ちゃんと知ってるわ」
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