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第9話

Auteur: まってて
あの頃、二人の全財産をかき集めても、たかが知れた額だった。

けれど弦夜は、誰よりもわかっていた。ドレスが紬希にとってどれほど大きな意味を持つか。

それは結婚という道を歩み出す象徴であり、この人と一生を共にするという、紬希が心の奥にしまい込んできた願いそのものだった。

だから歯を食いしばって、自分たちに手が届く範囲で一番小さなレンタルショップを探した。

紬希はいつだって俺の懐事情を気遣ってくれた。一番安くて、デザインも地味なドレスを選んだ。

だが弦夜には見えていた。紬希の視線が何度も、ショーウインドウのマーメイドラインのドレスに吸い寄せられていたことを。あんなに憧れるような目をしていたのに、ほんの数秒見つめただけで視線をそらし、笑ってこう言ったのだ。

「これで十分すてきよ」

それが、二十年余りプライドばかり高かった弦夜が初めて味わった、「金がない」という惨めさだった。

六畳一間のアパートでも、地に足がついていると思えた。

毎食、腹を満たすだけの質素な食事でも、耐えられた。

服が擦り切れるまで着ても、気にならなかった。

けれど――紬希が本当に欲しかったドレスの一着すら
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