現実と異世界を往復したら無敵になりましたが謙虚です

現実と異世界を往復したら無敵になりましたが謙虚です

last updateLast Updated : 2026-09-12
By:  うきぐもOngoing
Language: Japanese
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ゲーム廃人大学生の俺がオンラインゲームの力を現実に身に着けて、あっちの世界とこっちの世界を行ったり来たり。 元2アカウント目のキャラだった相棒も何故か異世界では現実のパートナーとして存在してて、最強タッグは今日も異世界でまったりと無双しつつ、時々現実世界の無理難題も解決していく、ほのぼのではないほのぼの系リアルファンタジー

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Chapter 1

第1話 なんか伝説の武器をだせるようになった

寝転がったベッドの上で両手を伸ばす。

何も持っていない手の内に、剣を握るようなしぐさをする。

「エクスカリバー」

シュポン(効果音)

つぶやきとほぼ同時に、手の中に冷たく輝く剣が出現。

その間0.5秒

……なんかゲームの中にあった伝説の武器を、現実世界で自由に取り出せるようになった……。

――――――――――――――――――――――――

俺の名前は湊陽一(みなと よういち)

医療系の大学に通う23歳だ。

日中は大学の研究室で実験を繰り返しす真面目な学生。

だが家では……

『ソーマファンタジー』というゲームをひたすらプレイしている。

ソーマファンタジーは世間によくある、剣や魔法が活躍するネットゲーム。

高校に入った頃からプレイしている上に、大学に入ってからは重課金なのでステータスはすでに最高。

数年かけて入手するような装備を何種類も揃えた。

全てを極めた為、普段は淡々と日課をこなすだけの生活である。

だが先日、新たに実装されたボスとの戦いで久しぶりに時間を忘れて熱狂し、つい朝までプレイしてしまった。

ほとんど睡眠をとらないまま学校に行こうと自転車に乗ったら用水路に落ち……。

目が覚めたらソーマファンタジーの『中にいた』

それが昨日。

そこは巨大な異空間。

目の前には最後に戦ったボス『カオスドラゴン』。

誰かの声に促されるままに戦い続け、なんとかそいつを倒した。

そしたらお礼を言われ、気がついたらいつものベッドの上に戻っていた‥‥‥。

それが今。

――――――――――――――――――――――――――

(冒頭のシーンに戻る)

俺の手の中にはなんか、伝説の剣がある。

どうやらソーマファンタジー(略してソーファン)で手に入れた装備、アイテムがすべて出せるようなのだ。

何と表現すればいいのか難しいが、どうやら異世界での持ち物やステータスをすべて引き継いでいるとでも言えばいいのか。

最初は動揺したものの、数時間経った今はかなり慣れた

ソーファンにおける『エクスカリバー』の性能は……

・時々光属性追加ダメージ

・特殊必殺技使用可能

・装備している限り持続的にHPが回復

さらにソーファンの世界では、独自の設定により

『現在の装備を見た目に反映させない』

ができる。

つまり自分の意思で表示させない限り、周りからは普段着に見える。

防具もチェック。

「竜鱗甲」

再び呟く。

ズシっと身体に重量が来る。

龍の鱗を加工して作った伝説の鎧。

・属性攻撃に耐性

・一定の割合で属性攻撃を吸収

・最大HPの10%以下のダメージ無効

設定でこれも外からは見えないようにする。

ダメージ無効とは……?

さっそく実証実験。

ガスコンロに火をつけて恐る恐る手を差し伸べてみた。

なるほど確かに熱さは感じない。

なんとなく熱いものに触れているという感覚はある。

冷凍庫から氷を握りしめても同様。

冷たいものだという実感はあるが永遠に握りしめてられる。

ステータス画面を見ると、自分の最大HPは3098だ。

これはゲームのソーファン時代と同じ。

……確かレベル1のキャラだと20前後とかだったはず。

日常におけるダメージがどれぐらいなのかは不明だが……

とりあえず300以下のダメージ無効、は強そうだ。

何がどれぐらいのダメージなのか、少しずつ検証してみたい

他にもたくさんある。

そう考えながら、空中にアイテム欄を表示する

なんというか……脳内の倉庫に大量に収納されてて、いつでも呼び出せる感じ。

そして……。

昨日から始まった異常な設定はそれだけじゃ終わらなかった。

風呂場のドアを開けると……そこには淡く輝く扉がある。

これを抜けると、どこかの森の中につながるようになったのだ。

扉をくぐると、柔らかな木漏れ日の光がサッと差し込む。

優しい風が吹き、草の匂いや土の匂いは、それだけでもう異世界を感じさせる。

「おかえり?」

そこにいたのは少し尖った耳をした、とても小柄な女性。

長い髪をくるくると巻いて結い上げている。

年齢は不詳だが、見た目だけなら少女と呼んでもおかしくない。

「うん」

俺は自然にそう応えた。

リアルに会ったのはこれが二回目のはず。

なのに俺はこの女性を最初から知っていた

なぜなら――。

このとても見覚えある小さな女性は……

『俺がソーマファンタジーの中で2アカウント目として動かしていた』

キャラクターだからだ。

ゲームの中では俺自身が動かしていたキャラ。

だが今、目の前にいるこの女性は……明らかに自分の意思で生きている。

彼女の名は『マリチ』といい、魔力と素早さに優れた魔妖精という種族。

もしこの見覚えのありすぎる異世界人が自分の知っているマリチであれば、すべての魔法を極めた魔導士であり、すべてを破壊できる格闘家だということになる。

それも実証してみたいが……今、目の前にいる『マリチ』は俺の自キャラではない。

この世界に生きている実在の人物なのだ。

なので彼女のステータスなどは、今後少しずつ敬意をもって確認したい。

マリチは俺の顔を見ると、にっこり笑って言った。

「そろそろ砂漠の皇帝が湧くころだよ。行くよね?」

「え、あ、うん」

『実際に』会ってまだ数日なわけだが、向こうは……

『旧知の仲で長い間ともに冒険してきた相棒』

という体で接してくるのが不思議な感じだ。

まるで幾度となく繰り返してきた作業であるかのように、さっそく冒険準備を始める。

様々な目的のあるソーマファンタジー。

メインのストーリーの奥深さもさることながら、キャラや装備の強化もやりごたえのあるゲームである。

強い装備を手に入れる手段は大まかに分けて二つ。

伝説の武器を手に入れるか、強力なモンスターを倒すか。

(または手に入れた素材を加工)

モンスターから手に入れた武具やアイテムは他人に売却することができ、この世界の冒険者における大きな収入源となっている。

そして先ほどマリチが言ったモンスター。

『砂漠の皇帝』

広大な砂漠に雨季が訪れた際、ほんの短い期間だけ出現する巨大な古代昆虫の一種である。

この世界では、多くいる個体の中でも特別に強力なモンスターに、固有の名称が与えられることがある。

この個体もそういう存在のうちの一体だ。

そういったモンスターはこの世界ではネームドモンスターと呼ばれ、レアな装備や素材をドロップする。

今回の『砂漠の皇帝』は、俺の知識に照らし合わせると中級ランクのモンスター。

そこそこ腕に覚えのある冒険者の小遣い稼ぎにはちょうどいい。

「さっそく行こうか~」

彼女は転移呪文の詠唱を開始した。

移動用の魔法は本来は長大な詠唱時間を要するのだが、魔法系クラスを極めているマリチの場合は、ほとんど一瞬である

ブォォーーン(効果音)

唸るような音とともに辺りは闇に包まれた。

次に、急に強い光が差し込んだかと思えばそこはもう広大な砂漠である。

-熱砂の砂漠-

広い遠浅の海に面した鳴き砂の砂漠で、連日強い風が吹く。

砂は強風によりはるか遠くから飛んできたものが積もっていったもので、砂漠というよりも海に面した砂丘とでもいう地形。

点在している岩の周辺には雨水がたまり、南国風の木が密集して生えている。

その中でもひと際大きな木々が集まっている場所にそれはいた

砂漠の皇帝『デューンエンペラー』

ムカデにトンボの羽が生えたような姿で浮かんでおり、とにかく巨大だ。

クジラぐらいあるかもしれない。

「タイミングよく沸いてるなぁ。ありがたいね」

ソーファンの世界におけるネームドモンスターは、一度倒した後に再び出現するまでにかなり長い時間を要する。

砂漠の皇帝の出現周期はおよそ三日ほど。

タイミングよく出会えるかも運だし、もたもたしてると誰かが倒してしまう。

ゆえに今のこの状況はかなりラッキーというわけだ。

と、思ったが……。

「あれ~?……誰か先にやってるなぁ~……」

と、マリチは苦笑い。

近づくにつれ、剣がモンスターの固い装甲にあたる音や、魔法の炎がはじける音が聞こえてくる。

さらに距離を詰めているとなんとなくわかってくるが、どうも戦況は芳しくないようだ。

「なんか負けそうかね?」

マリチが呟くのと同じぐらいのタイミングで前衛にいた戦士風の青年が、こちら側に大きく弾き飛ばされてきた。

「マズいな」

「手伝おっか」

マリチがゆるく詠唱を始める。

「宇宙を統べる星界の王、我が求めに応じ疾くきたれ。いでよ真龍~」

それはまるで日常会話の一節のような軽い調子だ。

呼び出す者の名を唱えつつ、手を複雑に交差させる。

すると目の前に現れた光の魔法陣から巨大な銀色の竜が躍り上がった

「あ。やっぱマリチは召喚できるんだ…」

俺とマリチは基本的にずっと同じクエストをこなしてきている。

なので習得しているクラスやスキルは同じである。

なので俺に出来ることはマリチもできるし、逆もしかり。

とはいえ今設定しているクラスはマリチが『召喚士』、俺が『ルーンナイト』

『ルーンナイト』は防御系クラスである。

精霊たちの力を取り込んで魔法防御力を飛躍的に高めることができる。

「エンチャントスピリット、氷神」

全身に白い霜のようなオーラがまとわりつく。

一瞬にして氷の精霊の力を纏い、剣を抜いてデューンエンペラーに近づく。

モンスターは前衛風の金属鎧を身に着けた青年を弾き飛ばし、次に後ろの白魔導士を攻撃しようとした時だった。

ギギッ!

剣を抜き放った俺の気配を察知したのか、突然方向転換してこちらへ向かってきた。

「ヨーイチのヘイトの方が圧倒的に勝ってるみたいね」

この世界には『ヘイト』という概念がある。

要は敵からの狙われやすさであり、殺気みたいなものだと考えればわかりやすい。

元々盾クラス(前に出て敵の攻撃を受けるクラス)を好んでいたせいで、俺の装備は基本的にヘイトが上がりやすくなっている。

モンスターはまっしぐらに俺に向かって噛みつき攻撃をしてきた。

が。

ガギギギッ!

かじられてもダメージは入らない。

「こいつクラスだと無傷か」

どうやら今の俺の強さだと、中級クラスのネームドモンスターの攻撃でもノーダメージらしい。

ということはこの世界での俺のステータスは、ゲーム時代のものをそのまま引き継いでいると推定できる。

「誰かわからないけどありがとう!」

「助かります!」

そしてもう一人横に控えていた狩人風の青年もお礼を言ってくる。

「かたじけない……!」

どうやら俺たちよりも先に戦っていたこの冒険者の3人組は、まだまだ初~中級クラス……レベルにして30ぐらいか

「倒しちゃってもいいかな?」

ガスゴス殴られながらもノーダメージの俺を見ながらマリチが呟く。

先に戦っていた彼らの獲物を横取りするような行動はあまり推奨されないが、俺が殴られながらボーっとしているのも変な話だ。

待っていても3人組が戦況を覆してこいつに勝てるとは思えないしな……。

しばし考えた後、俺はうなずく。

マリチが横目でそれを確認する。

「了解した。では。真龍の咆哮発射~。世界を制する滅びの光~」

マリチののほほんとした詠唱に連動し、前に浮かんでいた巨大な龍が空高く羽ばたく。

そして敵を見据えた位置で静かに静止すると、口元にチリチリとエネルギーが収束し始め……

そこから一気に強力な光が溢れ始める。

目の前の敵に集中して死闘を繰り広げていた三人。

ようやくマリチが従えていたのが最高位の召喚獣であることに気づく。

『はわああああ最高位召喚術…!!』

3人は目を見開いてその光の凝集に驚愕し、慌ててモンスターから飛び退る。

その直後。

シュドッ――。

目もくらむほどの閃光が、モンスターの身体の大半を貫いた。

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第2話 果てしなくオーバーキル
果てしなくオーバーキルで『砂漠の皇帝』を倒した後。人助けとはいえ『横取り』はよくない……(誰かが先に戦っていた敵の戦利品を、途中参戦した者が手に入れる行為はマナー違反なのである!)というわけで。ドロップアイテムは3人組の冒険者たちにお渡しして、何の成果も得られずに帰ってきた俺とマリチ。とりあえず戦闘後に彼らと話した内容や街の様子などにより ある程度わかってきたことをまとめてみよう。まず一つ目俺とマリチのような最高ランクのキャラは今のところ他にいなさそう。イメージとしてはソーマファンタジーがまだ始まったばかりの世界。……俺たちが持ってる装備やクラスは、まだ存在すら知られていないかもしれない。一言でいえばレベル上限が50の世界で俺たちだけ120。次に感じたのは、自分たち以外にも冒険者は多く存在しているということ。そのほとんどが初心者から中級者までの低レベル帯のようなので、未だに倒されたことのないネームドモンスターやシナリオボスが多くいる様子。先ほど秒殺したデューンエンペラーも、今のこの世界ではそれなりに高位のモンスターらしく、あの3人組は一攫千金かつ大幅ランクアップを狙ってのチャレンジだったようだ。そして最後に『マリチ』の存在。俺がこの世界に来なければ、一人だけ別次元の強さで存在していたことになる彼女。今まで何をどうやって過ごしていたのだろうか、普通に聞いてみた。「んー。ずっと森の奥にある妖精族の村で静かに暮らしてた」だ、そうだ。冒険に出たこともなく普通に暮らしていたが、俺と出会った瞬間に過去のことを思いだしてすべてのスキルや魔法が使えるようになったらしい。俺と似たような状況だな。俺の中ではずっとプレイしていたもう一人の自分だし、この新しい世界では誰よりも信頼ができる頼れる相棒であることは揺らがない。マリチも俺のことはずっと一緒に冒険してきた仲間だと思っているようだ。そもそもこの世界がいつから存在して彼女がどう生きてきたのかは知る由もないが、この辺は少しずつ解明していけたらいいなと思う。 あと、大問題が一つ見つかった。マリチが普段過ごしている古代樹の森の中の小さな家。そこの裏庭にあった『現実世界と行き来できる扉』がなくなった。そもそもマリチには元々その扉は見えなかったという。俺が来た時もそこに扉があったという認識
last updateLast Updated : 2026-08-25
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第3話 冒険者ギルドで
冒険者ギルドで突如話しかけられた俺たち”全身皮剥狂” ザクトズルトそれがオーク部隊の小隊長の名である。「ぜんしんかわはぎきょうってすごい肩書だなあ……」マリチは苦笑する。俺たちに声をかけてきた騎士風の女性(どうやら隣国の王立騎士団の小隊長さんだったようだが)の語った内容。それはある地方都市の領土内にある小さな村…… そこがオークの一個小隊に占拠されたというのだ。二人の冒険者はそこの村出身で、地形や街の構造をよく知る者たち。そしてまだ生存者も多いであろう村に、今すぐにでも救助に行きたいと切望している。話を聞きながら、ぼそぼそと言葉を交わす俺とマリチ。「ザクトズルトっていやあミッションで初期に戦った記憶あるなあ」「今だと多分通常攻撃で1発だと思う」「何か気になることでも……?」騎士小隊長が怪訝そうな表情で聞いてくる。「え、あ、いや何でもないです。まあ行きますか。退治に」あまりにも日常のテンションで答える俺をみて、さすがに心配そうに聞いてくる。「密林の王を討伐されただけのことあって、さすが剛毅ですね。だがしかしザクトズルトは残忍な性格で、しかもなかなか狡猾だと聞きます。(早口)」「そ、そうですよ!貴方たちお二人でもあの屈強なオーク小隊にはさすがに手こずると思います…」「なんせ数が多いですし!」地元出身者の二人の冒険者も口々に焦りを伝えてくる。「まあ……」俺はおもむろに冒険者二人と騎士団小隊長の手をつながせる。そして冒険者のうちの一人の青年の肩に手を置いて振り向く。それを見てマリチがパッと俺の手を掴み、転移魔法を詠唱する。全ててきぱきと、有無を言わさず速やかに進行。ブォォォン『えええーーーー』ミッションで一度行ったことのある場所には基本的に転移可能だ。 まあ、平たく言うと俺たちはこちらの世界のどこでも大体いける。騎士は領土内の人だし、冒険者たちも出身がそこなはず。つまり全員そこに行ったことのあるメンバーなので、転移が可能である。突然の出来事に動揺する3人を引き連れ、一瞬にして村の入口に到着した我々。「おお……懐かしいなあ……二年ぶりか……」「うん……でも入口の門とかは壊されてるし……」「そしてあの邪悪な紋様。奴らの仕業だな」騎士小隊長の指さす方向には、獣人たちが信奉する神のおどろおどろしい紋様が、血のよ
last updateLast Updated : 2026-08-26
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第4話 「お!」
「お!」「マリチには見えないけど、あるんだね。例の扉が」俺は静かにうなずき、扉の取っ手に手をかけた。そしてゆっくり開きながらマリチの方を振り返る。彼女はにっこりしながら手を振った。 ――――――――――――――――――――――ドアをくぐるとまばゆい光に包まれ、一瞬吸い込まれるような感覚になる。その後、目が覚めるような青空が視界に入り……「えっ?」俺は空の上に出た。「もしかしてドアの向こう側はまさかのランダム配置!!?」マズイ。魔導士系のジョブであれば何とでもなりそうだが、今はルーンナイトいちおうサブクラスというシステムがあり、もう一つ予備クラス『ブロックナイト』がついているのだが、この現状を打破するには……?!今、自分の体勢がどうなってるか最早わからないが、ものすごい速さで落下していることだけは確かだ。「イチかバチか!絶対防御!!」現在の高度も不明。ならば少しでも早い方がいいと判断し、俺はサブクラスのアビリティ『物理攻撃無効』を発動させた。その直後。ズドンッッッ!!地面? に落ちた。ものすごい土煙が巻き起こり、周囲にはちょっとしたクレーターができている。さすがに軋む身体を少し動かしてみるが、どこかが痛む等はないようだ。「耐えた……か」どれほどの高さから落ちたかはわからないが、時間にしておそらく10秒ぐらい? 空気抵抗があるから実際にはわからないが、時速300キロぐらいでてた?てことは時速300キロの土の塊にぶつかっても無傷でいられることは分かったな。 (アビリティ使用という条件下ではあるが)土煙も晴れてきた頃合いを見て、俺は自分が作ったクレーターから這い上がった。ザワ……ん? 思ったより多くの人がいる。そして土煙の中の人影(俺)の方に向かって目を凝らしている。さっと周囲を見渡した感じ、ここは神社の境内とかそんな感じの場所だ。なるほど……?俺は周りに集まりつつあった人たちの視線を素早く避けてクレーターの中にそっと引き返すと、手のひらを上に向けて転移魔法の呪符を取り出した。うん。逃げよう。ブォォォン我ながら英断である。頭の中で思い浮かべたのは独り暮らしのアパートの自室。実は一瞬ソーファン世界の街を想像したのだが、上手くいかなかったのだ。つまりこっちの世界とあっちの世界は、転移魔法では移動できない
last updateLast Updated : 2026-08-26
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第5話 向こうの世界で
とりあえず事件は解決したのでそのまま学校は行った。そして学食で早めの夕食を摂りながら冷静になって考える。ふむ……こっちにもでるんだモンスター……雑な考察だけど、俺が向こうの世界と行き来することによって特異点になっていて、二つの世界がどうのこうの……に違いない。もちろんこれからも冒険はするし、その過程で出会ったモンスターは倒す。そしてあの世界が大好きでプレイヤーをやってた俺が、それを現実で感じられるリアルの異世界生活もやめるわけはない。むしろ俺のライフワーク。そうなるとまたこっちにモンスターが出るのかもしれないけど、そのときはまた倒す。法則がわからないから対策はできないが、俺と出会わない限り向こうのモンスター達は実体化しないのなら、そう被害は出ないだろう(という希望的観測)もし何か起きたとすればそれはこのルールを作った異世界の女神様のせい……でもこの先向こうの世界でもっと強力な災害級のモンスターを倒すことになって、それがこっちの世界に出るようなことがあったら……そのときはどうなるんだろうな……―――――――――――――――――――――――――――――――――この時、俺はとても大事なことを忘れていた。向こうの世界で最初に戦った最強の存在『カオスドラゴン』のことを。でもまあ、それはまだ先のお話――――――――――――――――――――――――――――――――― 向こうの世界で倒したモンスターとこっちに入り込んでくる事象がリンクしているのであれば、この先どこかに『砂漠の皇帝』デューンエンペラーや、一個小隊のオークがやってくるはずである。学校からの帰り道。信号待ちで自転車を停止させながらの思考。もし俺の行動と関連したところに湧くのか?なら、出そうなのは通学路の国道や、買い物で寄っているスーパー周辺、大学構内……でも少しずつ進みながら索敵レーダーに意識を集中させるも、検知範囲内にモンスターを示す赤い光は存在していない。今のところ何か起きそうな様子はないが……。「ねえ湊(みなと)君じゃない?」「うわあ!!」至近距離で背後から声をかけられて俺は思わず飛び退った。あまりにもレーダーに集中するのはヤバいな。 気をつけよう。「え、何? 急にゴメン」振りむいたところに立っていたのは大学の同級生、日枝薫(ひえ かおる)小柄で眼鏡
last updateLast Updated : 2026-08-27
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第6話 まったくゲームに縁のなさそうな
まったくゲームに縁のなさそうな大学の同級生が、まさかのMMORPGプレイヤー?さすがの予想外な事実に驚きが隠せない。「日枝(ひえ)さん、まずうちに来てくれない?」「え。湊(みなと)君の家?」「うん」「……まあ、そこに何かがあるからなんだろうね。行くよ」はっきり言って俺の学校での生活態度は真面目である。そもそもに我々の学科は真面目な人間が多く、勢いで異性に何かをするような人間はほぼいないので、そこは信頼があったようだ。彼女は徒歩だったため、俺は自転車を押して彼女を家まで案内していった。そして……なんとなく予感があったものの、確証はない『あの事象』を確認に行く。「ちょっとここで待ってて」そういってアパートの階段の前で待ってもらう。地方都市の学生アパートなので、ロビーなどは存在しない古い造りだ。俺は家に入ってすぐに浴室のドアを開けた。……やはりあった。『淡く輝く扉』俺はすぐに外に戻ると、日枝さんを呼んだ。…… ……「どういう現象なんだろうねこれ」「さあ……」見えている。彼女には扉が見えることはまずはっきりした。頭のいい人ってのは状況判断が早くて助かる。 変に驚いたり疑ったりされても面倒なだけだ。「開けていいの?」彼女は俺の方を見ながらためらいがちに聞いてきた。俺にはそれに答える権利もないと思ったが、一応俺の家の中にある扉だからそういう意味では俺が判断するもの? なのかもしれない。「いいんじゃない?」彼女の手が淡く輝くドアのノブを掴んだ。少しずつ白い輝きがあふれてくる。吸い込まれるように歩いていく彼女の背中に、俺はゆっくりとついていった。 ―――――――――――――――――――――――「おかえ……誰!?」庭の植物に水をやっていたマリチは、こっちを見るなり言う。「え、あ、初めまして。私は湊くんの友人で日枝薫(ヒエ カオル)と言います」「これはご丁寧に。私はマリチ。輝く古代樹の森のマリチ=マコチ」きちんとお辞儀をしつつ、丁寧に答える。基本的にマリチはいいやつなのだ。突然出会った、人ならざる魔妖精族のマリチにしばらく目を奪われていた日枝さんだったが、やがて周囲のすべてが今までの世界とは違っていることに気づく。目の前にある古代樹、そこを這う小さな虫、その前を飛ぶ小さな鳥……どれをひとつとっても、すべて
last updateLast Updated : 2026-08-28
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第7話 転移した先は
転移した先は雪山である。雪の下には何万年も融けたことのない永久凍土が地中深くまで続いている。極寒の地ではあるが、ソーファンの世界に寒暖を感じるパラメータがないせいか、寒いなとは感じるもののなんとなく過ごせないほどではない。とりあえず山頂に続く尾根を歩いていた我々であったが……。「天壇山脈としか情報がないんだけど何処なんだろうね」マリチは立ち止まって言った。「山脈って言っても広すぎるな」「伝承ではもっとも高い二つの頂きと書いてあったから、あの二か所の山頂を目指せばいいんじゃないかな……」ここから見える山頂はまだ遥か遠くだ。「足が速くなる呪歌とか歌おうか…?」日枝さんは恐る恐る提案した。彼女のサブクラスは『吟遊詩人』だ。歌に魔力を込めて様々な補助効果をパーティ全員に与えることができる。迷わずうなずく我々。ファンタジーの世界は便利だ。走り続けても疲れはステに反映されない。 (けど現実世界ほどではないが疲れるのは疲れる)呪歌の力で3倍速になった我々はひたすら走り続け、程なく(といっても小一時間)南天峰とよばれる方の山頂に到着した。山頂は標高も相まって、植物などは一切生えていない荒野である。一見すると何か生物がいるようには見えないが……。「ところどころに大きなクレーターみたいな窪みがあるね」天壇山脈が火山であるという話は聞いたことがない。 なのでこの地形は竜同士の戦いの跡なのだろう。ということは、ここの主はそう遠くない場所にいるはずだ。とか考えてると、一番大きいクレーターの前まで進んでいたマリチがこっちを向いて手を振っているのが見えた。下をのぞき込むと、巨大な灰白色のドラゴンが丸くなっているのが見える。「さすがに大きいねえ」「けどがっつり寝てくれて助かった」「……身体が傷だらけで……ちょっと痛ましいけど」ゲームだろうが現実だろうが、敵意のないものを攻撃するのは気が引ける。しかし、彼らの存在は人類に(結果的に)悪影響を及ぼしているので討伐することに抵抗感を持ってはいけないのだ。 ファンタジー世界は現実世界と違い、モンスターや獣人たちとの生存競争が常に行われている場所である。「早速準備しよう」「さすがに本気で行こうかね」どんな攻撃がくるかはわからないが、即死や破魔の攻撃が一番怖い。 光耐性や闇耐性をあげ、防御魔法
last updateLast Updated : 2026-08-29
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第8話 初めて異世界で
(余談)初めて異世界で夜を過ごした日枝さん。 さすがにマリチの家の布団で3人は寝られないし、知らない世界で一人で寝るのは怖い。ということで。 ギルドの宿を二部屋とって、俺は一人部屋、マリチと日枝さんが二人部屋で寝た。着々と異世界生活満喫中。――――――――――――――そして探索日当日。ギルド前の大広場に勢ぞろいした天壇山脈古代遺跡探索団のメンバー。 実に100人強。各国の代表チームが一つずつに、各国冒険者ギルドから集まったレベルもクラスもばらばらの冒険者パーティが16チーム。参加資格は天壇山脈のふもとの町に転移できることが条件。 もちろん補給、救難、利便性などを考えてだ。100人にも及ぶ冒険者たちは、探索団の団長からいろいろと細かい説明を受ける。 その後、引率兼、護衛でもある俺たちに向かって大声を揃える。『よろしくお願いします!!!』それを受けて、拳を天に突きあげなら叫ぶマリチ。「みんな頑張ろー!」それに応える冒険団。『ウォーーー!』なにこれどういう状況?日枝さんがツツツとこっちに寄ってきてぼそっと呟いた。「何かカリスマ的人気者になってるみたいよマリチさん」「そうなんだ……」真顔でその集団を見つめていた俺に対し、彼女は「でも、現実世界では得られない栄養分がここにはあるね」と、言って笑った。なんだかんだ楽しめてるんならいいか。それに俺も、これだけの祭り(ゲームなどの大型イベント)は久々だ。「では出発する!」今回の冒険隊のリーダー、王国騎士団クリクラさんの掛け声により、続々とメンバーの転移が始まった。 ――――――――――――――――――――――――――― 現実の世界でいう超古代文明とは『とても古い時代にあった文明』という意味に過ぎない。 だが、ファンタジー世界の超古代文明といえば、だいたいは 『高度なロストテクノロジーを使って栄えていた古代の超文明』 なのである。ソーマファンタジーの世界には、1万年前に超古代文明があったことが分かっている。その文明は、空中都市を始めとして世界中のありとあらゆる場所に都市を建造し、至る所に星のエネルギーを吸収する装置などを設置していた。そして多くの遺跡が今も残っており、一部にはまだその機能を維持しているものもある。天壇山脈には地理的に規模の大きな遺跡があることが
last updateLast Updated : 2026-08-29
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第9話 星の持つ力
ソーファンの世界では星の持つエネルギー『星核』が物語の中心になっている。その力が世界中の様々な場所で結晶となって露出し、人々に恵みをもたらしている。古代王国はその力を意のままに操り繁栄したが、やがて巨大なエネルギーの暴走により滅びた。俺がゲーム世界で最後に倒した『カオスドラゴン』は、暴走した星のエネルギーを喰わせて鎮めるために作り出した、人造の神獣である。もちろん星のエネルギーは喰らいつくせなかったし、限界までそれを吸収したせいで神獣も暴走したという、ファンタジーあるあるなのだが。天空都市『トュリーヤ』には、超古代文明時代の王宮や、星核の力を取り出したり制御するための研究所などが多く残されている。なお、この世界には暴走した『カオスドラゴン』 (もちろん暴走する前はそんな名前ではなかった) を倒すために産み出された武器が、いくつか残されている。そしてそれがこの世界における最強の装備になっている。俺の持っている片手剣、両手剣。 マリチの持っている両手拳、両手杖は、すべてその『星核装備』だなお、この世界だとまだ実装されていない段階だと考えられるので、俺たちと他の冒険者たちの間には越えられない壁がある。「以前ミッションで来た宮殿とはまた違う場所だね」   俺とマリチはリアルに出会ってからまだそんなに多くの冒険を共にはしていない。 ……にもかかわらずミッションを一緒にクリアした記憶がある。という事は、やっぱりずっと二アカウント目でプレイしていたマリチなのだ。マリチの存在は未だに一番の不思議だ。「ほんとに空の上にあるんだね……こっちの世界に来てから感動の連続だ」「ね」「最初ここに来た時は戻れない可能性を考えて絶望しかけたけど、今は好奇心がそれを上回ってる……」日枝さんが眼下に見える雲を眺めながら言った時、横にいたマリチが小さく呟いた。「わたしはヨーイチたちの世界を見られないのかなー?」え?俺は思わずマリチの顔をみつめた。マリチは遠くの空に浮かぶ雲を見つめたままだ。「マリチさんも私たちの世界に来れたら面白いのにね」マリチが何者か知らない日枝さんは、無邪気にそう言った。だが異世界の住人であるオークや、様々なモンスターたちが現実世界に来たのであれば、同じく異世界の存在であるマリチがあちらに行くこともいつか可能なのでは?もしそ
last updateLast Updated : 2026-08-30
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第10話 今回侵入した遺跡は
天空都市トュリーヤ調査団の活動は、一旦幕を引いた。今回侵入した遺跡は、資料的価値は乏しい場所であったため、あれ以上の調査は無意味であったと思われる。今後、古代王国の兵器が地上にどの程度の影響を及ぼしうるかは、さらなる調査の結果が待たれる。 (まあ破壊出来なかったので最終的にミッションで古代人に発射されますけどね)さて。連合国使団と冒険者ギルドのメンバーたちから報酬と称賛を存分に受け取った我々が、まず向かった先。それはマリチの家の庭にある古代樹の根っこである。「あった……!」そこには淡く輝く光る『扉』竜退治から古代遺跡探索と、今回もなかなかのハードワークであった。ホントなら今すぐにでも寝たいが、扉はいつ消えるかわからない。何より現代人の我々には、やっぱり家の方が落ち着いてゆっくり休めるし。「ウ~ン」俺がおもむろに扉の方に歩み寄った時、マリチが急に唸りだした。「見えないけど……何かがそこにあるのはわかる気がする!」とんでもないことを言い出したぞ。「え。そうなん? ……じゃあもしかして触れたりするか?」俺はドアの取っ手のところを至近距離で指さした。「よし。やってみよう」マリチは袖をまくり上げてジリジリと手を伸ばしてきた。そして……思い切って……。握る!ドラゴンの角をもへし折るそのパワーで! ・ ・ ・ ・ ・ ・すかっ「はうっ」「無理だったか」「マリチさんには感知できないんだ……」マリチは基本的にポジティブで自信家である。憮然とした表情はしているが落ち込んだりはしない。魔妖精族の女性が、元々陽気で好奇心旺盛だということも関係あるのかも。「そっち世界の人間だけずるいな?」「ははは……確かに。まあ、またすぐ戻ってくるよ」「行ってらっしゃいなの」後ろで手を振るマリチに対し、日枝さんが深々とお辞儀をする。そして俺たちはドアをくぐった。くぐってから思ったが、そういえばこの前は空に出て落ちたんだったな……。今回もうかつに飛び込んでしまったが果たして…… ――――――――――――――――――――――――――――ん?なんだか薄暗い場所に出たな。足場もきちんとある。ギシなんだか古い板の間のような床。周りをよく見ると隙間から光が差し込んでいる……。 つまりここは木造の古い建物の中ってわけか。
last updateLast Updated : 2026-08-31
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