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夫が心を入れ替えたと思ったのに、結局嘘だった
夫が心を入れ替えたと思ったのに、結局嘘だった
مؤلف: 無限

第1話

مؤلف: 無限
3年前、神谷汐里(かみや しおり)はついに神谷陸(かみや りく)への想いを断つ決意をしたのだが、空港に向かう途中で事故に遭ってしまった。

汐里が目を覚ますと、ベッドの横で陸が膝をついていた。彼は涙ながらに、汐里に誓った。

「汐里、俺の腎臓を使って生きろ。これからは、もう二度と馬鹿なことはしないから」

後になって誰もが口を揃えて言った。愛する人を失いかけた恐怖が、あのいつも享楽的で不真面目だった神谷家の御曹司を、完全に変えたのだと。

汐里もそう信じていた。

汐里は10年も陸を想い続けてきたし、陸も汐里を救うために、自分の臓器まで差し出してくれたのだから。

それからの3年間、それまでは毎晩派手に遊び歩いていた陸だったが、まるで別人のようになったのだ。

煙草も酒もやめ、仲間たちとの縁も切り、毎日決まった時間に帰宅するようになった。

さらには、傾きかけていた神谷グループの事業も立て直し、今や業界の誰もが一目置く社長になっている。

汐里に対しても、非の打ち所がないほど完璧に向き合ってくれた。

寒がりな汐里のために、家中の至るところにカーペットを敷き詰め、汐里が夜眠れないと言えば、ベランダで一緒に夜空を眺めてくれた。

汐里の友人たちは言った。「汐里、あの大事故も無駄じゃなかったんじゃない?だって、あんな遊び人だった人を、ここまで一途な人間に変えたんだから」

汐里もそう思っていた。彼が本当に心を入れ替えてくれて、そしてこの先もずっと、二人で一緒に生きていけると。

だが、あの雨の夜、その幻想は打ち砕かれたのだった。

汐里が仕事の接待でクライアントと共にバーを訪れたとき、ふと視線が廊下の突き当たりに向く――

すると、そこには女の腰に手を回しながら、VIPルームへと入っていく陸の姿があった。

振り返った女の顔を見た瞬間、汐里はその場に凍りついた。

なぜなら、見知った顔だったから。

島袋玲(しまぶくろ れい)。3年前、南表島での土砂崩れから自分たちを救い出してくれた、あの伝統集落の娘だった。

当時、玲が陸からの謝礼を断っていた姿を、汐里は今でも覚えている。

「人を救うのは当たり前だから」と言い捨て、玲は颯爽と原始林の中に消えていったのだ。

「申し訳ありません、木下社長。少し急ぎの用事ができてしまいましたので、私はこれで失礼させていただきます」

汐里はクライアントにそう告げ、返事も聞かずに彼らを追った。

VIPルームの厚いドアがわずかに開いていたので、近寄ってみると、中から聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「やあ、陸。ここでお前に会うなんて久しぶりだな」

陸の昔馴染みである新田嵐(にった あらし)が茶化すように笑う。

「最近また飲みの席に顔を出すようになったと思ったら……なるほどな。美人さんを見つけてたのかよ。

前までは、汐里さんにべったりで、離れたら死ぬみたいな勢いだったくせに。挙げ句の果てには『遊び人の改心』だの『妻のために腎臓を提供』だの、大芝居まで打ってさ。

で、今はその茶番も終わって、本来の自分に戻ったってわけか?」

汐里はドアの隙間越しに、陸がゆっくりと煙草を吸い込み、ふっと笑うのを見た。

それは、もう長い間見ていなかった、昔の彼らしい……少し不敵で、危険な香りがする笑みだった。

陸が静かに口を開く。「汐里が死ぬかもしれないってなった時、俺は本当に怖かったんだ。

もし本当にあいつが死んだら、一生自分が追い詰めたという罪悪感を背負って生きることになるって思ってさ」

陸は煙草の灰を落とすと、どこか遠くを見つめているような目で続けた。「あの時は、本気で自分を変えようと思ったよ。

それまでの生活で、汐里の命まで奪ってしまいそうになったんだから。だから、汐里を大事にしよう、これからは償っていこうって」

嵐が眉を吊り上げる。「それで?」

陸はふっと鼻で笑い、煙草を灰皿で押し潰した。

「でも、そんなの無理だって分かったんだ。気が滅入るぐらいにな。

朝起きたら書類を確認して、夜は接待。家に帰れば『愛妻家』をして、汐里の機嫌を取る生活。

極め付きは、汐里の顔を見るたび、頭の中で誰かが『陸、お前のせいでこいつは死にかけたんだ。一生かけてその罪を償え』って囁くのが聞こえるんだよ」

廊下に立つ汐里は、爪が深く食い込むほど、手のひらを握りしめていた。

この3年間、彼が与えてくれた優しさ、気遣い――そして、自分のために変わってくれたと思っていたことも、ただの長い『罪滅ぼし』に過ぎなかったなんて。

だが、自分はそんなことには微塵も気づかず、真実の愛だと信じ込んでいた。

「でも、玲と会ってから、俺は変われた」と陸が話を続ける。その声は、汐里が聞いたこともないほど晴れやかだった。

「玲はそれまでの俺を思い出させてくれたんだ。自由に生きて、やりたいことをして……無理をしたり、求められる人物像を演じなくてもいいんだって思えた。

だから、玲の前にいるときだけ、俺は『神谷社長』でも、『汐里の夫』でもなく、『神谷陸』っていうただの人間でいられる」

嵐が冷やかし半分に、にやっと笑う。「じゃあ、なんだ……前のお前に戻ったってことでいいのか?」

「戻ったなんてもんじゃないさ」そう言いながら、陸は玲の額にそっと口付けをした。「玲は俺に新しい人生をくれたんだよ」

嵐が面白がるように聞いた。「じゃあ、汐里さんはどうするんだよ?まだ愛妻家を続けるのか?」

陸が答える前に、玲がふっと顔を上げ、彼女の澄んだ声がBGMに重なる。

「続けるわけないでしょ、そんな面倒なこと」

玲は陸の首に腕を回し、きらきらとした都会育ちにはない、無邪気さと奔放さが入り混じった瞳で見つめた。

「陸くん、うちと一緒に南表島へ帰ろうよ。あそこなら、すっごい自由だよ?それに、汐里さんのせいでこんなになっちゃったんでしょ?もう、気にしなきゃいいじゃん!」

玲は何かを思い出したように、もっともらしく続けた。

「それにさ、汐里さんが事故に遭った時も、陸くんは汐里さんに腎臓を用意してあげたじゃん。だから、もう恩返しなんて十分じゃない?

まあ、その腎臓もお金を積んで他の人から手に入れたものらしいけど……でも助けたのは本当なんだからさ」

「玲」陸が顔色をさっと変え、慌てて玲の口を塞ぐ。「そのことはあんまり言うなよ」

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