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第755話

Author: かおる
まさか、輝が、まだ彼女を狙ってくるとは。

しかも、今度は命まで奪おうとして。

航平の表情が一瞬こわばった。

「......輝、君に何か言ってこなかったのか?」

「何も。

そもそも顔を出すわけないわ。

それに、あいつは今S市にいないはずよ」

航平は伏し目がちにコーヒーを見つめた。

苦い香りがふわりと立ち、彼の目の奥に潜む複雑な表情を隠すようだった。

ふいに、航平が問いかけた。

「星......少し前に、輝が裸にされて晒された事件、知ってるか?」

「少しだけ聞いたわ」

だが、特に気に留めなかった。

あの性格だ。

恨まれる相手も多い。

多少の報復を受けたところで、驚くような話ではない。

航平は星の横顔を探るように見つめ、静かに言った。

「......それが原因で、輝が君を恨んだとは思わないか?」

星は眉を寄せた。

「どういうこと?

あんなこと、私とは関係ないでしょう」

しかし、その問いに含まれた意図をすぐ悟った。

「......まさか、それを私のせいだと決めつけた?」

航平の表情には、言いにくさと迷いが浮かんでいた。

葛藤の末、ついに告げる決心をした。

「星......あれは、雅臣がやったんだ」

星は言葉を失った。

「雅臣は、輝が調子に乗りすぎだと......少し痛い目を見せたくなったらしい。

本当は、輝が復讐するなら雅臣に向かうと思っていた。

しかしまさか、君を狙うなんて......ごめん」

最後の「ごめん」は、か細い声だった。

突然の事実を前にして、星はその謝罪を聞き逃した。

——雅臣がやった?

星の胸に苛立ちがこみ上げる。

彼女と輝の因縁は、すでに決着したと思っていた。

雅臣が輝を躾けるのは自由だ。

しかし、その尻拭いを星にさせるのは話が違う。

その結果が今だ。

星は大会へ出られず、仁志は重傷で入院し、自分の手も傷ついた。

輝は明らかに殺意を持って襲ってきた。

――これは助けたのか?

――それとも、害を増やしただけなのか?

星の雅臣への嫌悪は、さらに深くなった。

航平は星の表情を慎重に窺いながら言った。

「星......雅臣は清子を助けたかっただけなのかもしれない。

だから、君にヘイトを集めさせて、大会に出られなくなるよう仕向けた......」

星の瞳がわずかに揺れた。

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