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第 306 話

Author: 水原信
海咲は顔を洗っていた。洗顔料をたっぷりと使い、さらにはハンドソープやボディソープまで使った。

空気にはほのかなクチナシの香りが漂っていた。

それは海咲の好きな香水の香りだった。

こんなことをしているのは、彼の体についた匂いを消そうとしているからにほかならない。

彼の体につく匂い――それは鼻を刺すタバコの臭い、強い酒の匂い、そしてあの男の血の匂い。

海咲の手が一瞬止まり、表情も固まった。

だがすぐに説明した。「考えすぎよ。離婚する理由は、あなたも知ってるでしょう」

――時間が来たのだ。

しかも彼はこれまで一度も、本気で彼女を引き止めようとはしなかった。

彼女が去らなければ、これからも美音との関係
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