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第930話

작가: 浮島
彼はゆっくりと遥樹を抱いていた手を離し、声を落として言った。

「まあまあ、落ち着いて話そう」

遥樹は視線を落とし、スマホをちらりと見ただけで、何も言わなかった。

寧音はどうしても、遥樹の口からその女性のことを聞き出したかった。

遥樹は、彼女が何年も想い続けてきた男だった。

恋愛という意味では、二人の間に進展はなかったものの、関係自体は年々近づいていると感じていた。

いつかは想いが通じると信じていたのに、まさか別の女に先を越されるとは思ってもみなかった。

しかも、告白したのは遥樹のほうだった。

彼女は遥樹の恋人に対して敵意を抱いてはいたが、壊そうとも、割り込もうとも思ってはいなかった。

ただ、自分がどこで負けたのかを知りたかっただけだ。

寧音は遥樹の目を真っ直ぐに見つめる。

「遥樹、教えて?」

ここ数年、自分の気持ちはすべてさらけ出してきた。

恥ずかしいとも思わない。

人を好きになるなら堂々と、負けるなら負けるで、はっきり負けたい。

遥樹は彼女を見上げた。

その視線は、これまでと何一つ変わらない。

好意も親しさもなく、あるのは距離感と礼儀正しさだけだった
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