تسجيل الدخول「社長、何かいい事でもありましたか?」「なぜ?」「表情が穏やかですので」「あった。楽しみもあるしな」俺は芹沢の運転する車の後部座席で、会議の資料を読んでいた。今回の契約が締結できれば、桐生コーポレーションにとっても大きな利益となる。「社長、首に何か……」俺はその痕を指でなぞった。知英は俺の想像していたよりも何十倍、いや、何百倍と独占欲が強かった。その証拠に、俺に痕をつけた人間は知英が初めてだ。「可愛いだろ」「仲がよろしいようで。しかし、お父様には知られないようにご注意を」「ああ。その時が来たら、こちらから乗り込むさ」俺の人生は俺が決める。もう誰にも奪わせない。______________________会議は滞りなく終わった。先方との情報交換は実に有意義な時間だった。俺は社長室で一息ついた。それも束の間、芹沢が社長室のドアをノックした。コンコンコン……「入れ」「失礼します。社長、水野様が今夜、食事でもどうかと仰っておりますがいかが致しますか?」「もちろん断れ。どうせ、ホテルに連れ込む気だろ。前は薬を盛られたからな。変態野郎に付き合う時間はない」「承知しました」下心が見え見えの女社長を相手にするのは、少々骨が折れる。以前の俺ならば、その下心さえも利用して契約を掴み取っていた。しかし、今の俺はそんな陳腐でくだらないものなど興味がない。今夜は、知英の待つ家に早く帰るのだ。それが俺の最優先事項なのだから。「社長、水野様が取引を全面停止すると仰っていますがどうなさいますか?」誘いを断られたからって、やることが幼稚過ぎる。こんな相手と対等にビジネスが出来る訳がない。こちらの方から願い下げだ。「芹沢、それで水野社長が満足するのなら好きにやらせろ」「承知しました」さぁ?どう出る?俺を支配していると勘違いしていたのだろう。だったら教えてやる。あんたが居なくてもこの会社は成り立つってことを。______________________「社長、水野様が正式に取引を停止しました」「そうか」「それから水野様が、社長が懇意にしている取引先にも近づいているようですが……」「なるほど。あの人がやりそうなことだな」「手を打ちますか?」「いや、今は泳がせろ。うちと離れたいものはそれでいい」「承知しました」芹沢は俺がこの会社の社長に就任した
翌朝、目を覚ますと、規則正しい寝息をたてて、桐生が眠っていた。寝顔も美しい桐生に、私は見惚れた。「ほんとに綺麗」「何が?」「起きてたの!?」「うん、誰かさんが俺の顔を触るから」桐生は私を手招きした。そして、私の額にそっとキスをした。「おはよ、知英ちゃん」「お、おはよう/」「さてと、今日は何しよっか?」「翼さん、仕事でしょ?」「折角、現実を忘れてたのに」桐生は項垂れた。私はそんな桐生を抱き締めた。「夕飯作って待ってるね」「それ言われたら、頑張るしかないだろ」私は気づいた。桐生が、〝俺〟と言っていることに。私の前で桐生が自分らしくいられるのならば、こんなに幸せなことはない。私には桐生の全てを受け止める覚悟がある。「知英ちゃん、起きるからキスして」「どうしよっかな」すると、桐生は私の膝に頭を乗せた。甘える桐生が可愛くて、愛おしい。私は桐生の髪を優しく撫でた。「ね、どうして私の前で煙草吸わなかったの?」「知英ちゃんが、煙草の匂い嫌いだと思って」「翼さんは本当に人のことをよく見てるね」「知英ちゃんだけだよ。他の人は興味無い。俺は、知英ちゃんにだけ好かれればそれでいい」この発言を真顔で言える桐生の愛は、どれほど重いのだろう。その愛が全て私に向いている。私は桐生のお陰で、愛される喜びを知った。「これからは、私のために我慢しないで。翼さんのやりたいようにして。私は翼さんを信じて、傍に居るから」すると、桐生は起き上がった。そして、引き出しから煙草を取り出した。「ここに隠してあったんだ」「わるい」「謝らないで」桐生は煙草を一本咥えた。私はライターを手に取り、煙草に火をつけた。私の行動に桐生は驚いた表情を浮かべた。そんな桐生に私は微笑んだ。「知英ちゃん、君って子は……」 「なぁに?」「我慢しなくていいんだよな?」私は頷いた。桐生の欲情した瞳が私だけを見ている。桐生は私に何をくれるのだろう。最高の快楽か、それとも初めての快感か。桐生は私を壁際に追い詰めた。そして、ゆっくりと顔を近づけた。私は反射的に目を閉じた。「口開けて」私は桐生に言われた通りに小さく口を開けた。「ゆっくり吸って」「ゴホッ……ホッゴホッゴホッ……」「むせちゃったね」口の中が煙草の匂いと味で充満している。正直、私の口には合わなかった。「ど
いつも私を守ってくれる桐生が、今は壊れそうに泣いている。私は桐生の心の痛みに気付けなかった。いつだって桐生は、私のことを一番に考えてくれていたのに。私は桐生の流した涙を指で優しく拭った。そして、桐生を強く抱き締めた。桐生は愛されるべき人だ。私は桐生以上に愛が深い人を知らない。「翼さん、ありがとう」「どうして俺から離れない?」「言ったでしょ?あなたを愛してるからって」「ほんとに……?」「うん。この先もずっと」桐生は私の頬に恐る恐る触れた。その手は震えていた。私は桐生の手に自分の手を重ねた。私に本当の愛をくれた人を拒む理由はない。「さっきはごめん。怖い思いをさせた。だから、知英ちゃんが俺に触れてほしくないなら……」「翼さんが触れてくれないなら、私から触れるだけ」私は背伸びをして、桐生の唇にキスをした。「知英ちゃん……/」「翼さんが照れてる所、初めて見た」「それは知英ちゃんがいきなりキスするから」「だめだった?」「ううん、だめじゃない」「私だって、翼さんに好きでいてもらいたくていい子でいたの。本当はもっと触れて欲しかった/」改めて口にすると、恥ずかしくて顔が熱くなるのを感じた。だけど今は桐生に伝わって欲しい。私は言葉では足りないくらい桐生を愛しているのだから。「これからは私に隠し事しないで」「分かった」「ひとりで危険な事もしないで」「分かった」「約束だよ?」「ああ。約束する」すると、桐生が私を抱き締めた。香水の匂いに混ざって煙草の匂いがした。そのせいで、先程の桐生とのキスが脳裏に蘇り、私は耳まで赤くなってしまった。私は桐生に悟られまいと俯いた。「知英ちゃん?」「なんでもない/」「顔赤くない?」「ううん、そんなことないよ/」「ふーん」「私、そろそろ寝室戻るね」「待って」桐生は私を後ろから抱き締めた。先程まで泣いていた桐生はどこへいった?私は、すっかり桐生のペースにのまれてしまった。「隠しごとはなしなんでしょ?」 「そうだけど……」桐生は私の髪をかきあげ、耳元で囁いた。「知英ちゃん、どうしたの?」「だから……/」「なに?」桐生の吐息が耳にかかった。あっという間に、全身の力が抜けていく。更に桐生は、私の耳を甘噛みした。「あっ……//」思わず漏れた声が恥ずかしくて、私は口を手で塞いだ。そのまま桐生
「俺が怖い?」「怖くない」「ならどうして泣いてる?」「……気持ちよくて/」俺は咄嗟に知英から離れた。先程、知英と触れ合った余韻がまだ残っている。これ以上触れると、俺の理性がもたない。「翼さん……」そんな目で俺を見るな。頼むから、知英の理想の“桐生翼”で居させてくれ。「ねぇってば」知英は俺のバスローブの袖を引っ張った。俺は、知英から背を向け、呼吸を整えた。「部屋に戻って」「いや/」すると知英は俺の背中に抱きついた。折角、俺から逃げる機会を与えたのに。知英は元彼に裏切られたばかりなのに、人を疑おうとしない。このまま俺は、清らかな心を持っている知英をこの手で汚してしまうのだろうか。「これは知英ちゃんのためだよ」「それなら尚更ここに居る」「だから分かってくれよ」それは俺の心の叫びだった。俺の良心が、知英を傷つけたくないと訴えた。汚れた俺が、知英に触れてはいけなかった。だが、今更、後悔しても遅い。俺はもう知英を手放せない。たとえ、知英が俺から逃げようとしても。俺は知英と向き合った。そして、ゆっくりと距離をつめ、知英の顎に触れた。知英は瞬きもせず俺を見つめていた。「本当の翼さんを見せて」「この部屋からただでは帰れなくなるよ」「それでもいい」「俺に失望するかもしれない」「しないわ」「どうして言い切れる?」「あなたを愛してるから」知英は俺を見つめ、唇に一瞬キスをした。この瞬間、俺は理性を失った。俺は机に知英を押し倒した。そして、真っ白な首筋に痛いくらいに噛み付いた。「いたっ」「俺から逃げるな」俺のキスから逃れようとする知英を、俺は無理やり押さえつけた。そして、俺は知英の唇を貪るように何度も何度もキスをした。「翼さん……苦しっ/」知英は俺の唇を噛んだ。「あーあ、知英ちゃんも俺を拒むんだ」「そんなつもりは……」俺は唇に滲んだ血を親指で拭った。そんなこと初めから分かっていた。本当の俺は、誰にも受け入れてもらえないことを。母親でさえ、俺を拒んだ。俺は誰からも愛されないのだ。ならば、力づくでも俺のものにすればいい。「知英ちゃんを救った救世主は、ろくでもないクズだったと」「私、そんなこと思ってない。翼さんは私を救ってくれた。今の私があるのは翼さんのお陰」知英が綺麗事を並べた。どんな言葉も今の俺には響かなかった。だからここで、
こんなにハマるつもりはなかった。俺は誰も幸せにできないと思っていた。俺には冷酷なあいつの血が流れている。目的の為ならば、手段を選ばない。結婚さえも道具として扱う。自分の子どももあいつにとってはただの駒でしかない。そんなあいつは、外に女を作り、俺の母親を捨てた。母親は心を病んで壊れていった。だから俺にとって愛は幻想に過ぎなかった。人を好きになることは一生ないと思っていた。あの日、俺は父親の用意した見合いの席に向かっていた。もちろん、父親の期待を裏切り、見合いをぶち壊すために。どうせなら、盛大に壊してやろうと機会を伺っていた。その時、知英が俺の胸に飛び込んできた。偶然の出来事だった。だが、その瞬間、俺の運命は変わった。“一目惚れ” 俺がこの言葉を口にする日が来るなんて、想像もしていなかった。知英の涙を見た時、俺は彼女に強く惹かれた。よく知らない相手なのに、知英を守りたいと思った。こんなことは生まれて初めてだった。自分で言うのもだが、俺は顔がいい。そして、金もある。今まで堕とせなかった女性は居なかった。しかし、これまでの遊びとは違う。俺は本気で知英が欲しくなった。そこで俺は、知英にプレゼントを渡した。知英が前を向いて歩くための服と靴を与えた。知英は美しかった。俺に微笑む知英は、どの女性よりも魅力的だった。だが、知英の心は金では買えなかった。俺はそれが嬉しかった。やっと、俺自身を見てくれる人に出会えた。その人と結ばれたらどんなに幸せだろうか。俺は知英を手に入れるために、本当の自分を隠して、知英の理想の桐生翼を演じることにした。知英の前ではヘビースモーカーな俺が、一切、煙草を吸わなかった。しかし、匂いに敏感な知英に一度、気付かされそうになった時は肝が冷えた。俺が目的のためならば、相手を痛めつけることもいとわない冷酷で非道な人間であることは、絶対に知英に知られてはならない。俺は隣で眠っている知英の髪を優しく撫でた。知英が毎日幸せであるように。それが俺の願いだ。俺はバスローブを羽織って、そっとベッドから起き上がった。書斎に入った俺は、煙草を一本咥え、火をつけた。一日ぶりの煙草は、身体に沁みた。コンコンコン……「翼さん、いるの?」あろうことか、知英が書斎の前に来た。俺は慌てて煙草の火を消した。「仕事を思いだして」「入ってもいい?」ここで断るのも余計
「翼さん……/」「嫌だったらやめる」「ううん、嫌じゃない…///」桐生は自宅に入ると、玄関の壁に私を追い詰めた。桐生の吐息を感じながら、私は目を閉じた。すると、桐生は私の唇を貪るように何度もキスを繰り返した。いつも優しい桐生が、こんなにも激しく私を求めてくれる事が嬉しかった。「翼さん、ここじゃ……やだ……」「うん」桐生は私をいとも簡単に抱きかかえて、寝室へと運んだ。いつも、桐生が寝ているベッドはとても広々としていた。そこに、私はそっと寝かされた。「知英ちゃん、身体は平気?」「平気」「辛かったらやめるから」「我慢しないでって言った//」「知英ちゃん。あなたって人は……」「なに?」「何も知らないって顔して、いつも僕を煽ってくる」「私、そんなつもりは……んっ…///」桐生が私の口を無理やり塞いだ。すると、桐生の舌が私の口内に侵入した。慣れない感触に私の身体は痺れを感じた。「自分が今、どんな顔してるか分かる?」「え……?」私はキスの余韻で、頭がぼぉーとしていた。そんな私の頬に桐生は優しく触れた。「俺は君の前ではいい人で居たいんだ」聞き間違えではない。今、桐生は“俺”と言った。私の知らない桐生が目の前にいる。もっと桐生を知りたい。私は自ら、桐生のネクタイを引っ張りキスをした。「翼さん……」「君が望んだことだ」「はい」桐生はネクタイを解き、私の両腕を縛った。自由を奪われた私は、桐生のされるがままだ。桐生の指が私の身体をなぞった。桐生の視線が恐ろしい程に色っぽかった。「俺が怖い?」「ううん、怖くない」桐生が私の首筋に吸い付いた。甘い痛みが全身に走った。「ごめん、俺はもういい人でいられない」桐生が苦しそうに呟いた。どんな桐生であっても私を救ってくれた人には変わりない。私は桐生だから好きなのだ。桐生が与えてくれるものならば、全て受け止める覚悟はできている。「翼さんが好き。叫びたいくらい」私は桐生に微笑んだ。私の気持ちは桐生に伝わっただろうか。桐生はしばらく私を見つめてこう言った。「もう二度と傷つけさせない」「うん」「だから俺の傍を離れないで」私は頷いた。離れるわけがない。桐生が居ない人生なんて私には考えられない。桐生は私の腕を縛っていたネクタイを解いた。両腕にはうっすらと痕がついていた。桐生はその痕に丁寧に舌を







