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#3

last update Veröffentlichungsdatum: 03.04.2026 06:56:56

ようやく狭い空間から解放された。でも先輩の視線は、さっきより鋭い。

ていうか、可愛いって。それこそ言われたことがない。

朋空先輩は案外乙女なのかもしれないな。心の中で頷いて、彼の隣に腰を下ろした。

「可愛くはないですけど……先輩は、何で研究室に来なかったんですか? 赤城先輩から行くように言われてたんでしょ?」

「行くわけないだろ。お前の同意を得たとか言ってたけど、絶対強引に言わせたんだと思った」

さすが、察しがいい。先輩は一見気だるそうだけど、実は周りをすごく見てて、思慮深いんだろう。

でも、そんな先輩だから……尚さら力になりたい。

「俺、先輩を助ける為なら何でもします。だから遠慮しないで、研究室をつかってください」

上半身だけ彼の方に向き、力強く言い放った。

朋空先輩は尚も迷ってる様子だったから、彼の手を引いて無理やり研究室へ連れて行くことにした。

睡眠研究会に割り当てられたのは四階の一番奥にある、資料室の隣の空き部屋だ。教室の半分もないけど、簡易ベッドを置くには充分な広さ。

窓とドア側の窓ガラスにも暗幕を掛けていて、防音のパーテーションを置いている。

ほんとは更に耳栓もしたいところだけど、そこまでするとドアを叩かれても気付けないからやめた。先生が来たときに対応できないと、同好会の存続も危ぶまれるから。

「先輩、このエアーベッド結構寝心地良いんですよ!」

「これ持ち込んでること、先生は知ってんの?」

「知りません」

「バレたらひと悶着ありそうだ……」

先輩はある程度きょろきょろして、パーテーションの中に入ってきた。

「ベッドはクイーンサイズだからぎりぎり二人でも寝られると思います。でも俺はしばらく来ないので、この部屋は先輩がつかってください」

「お前は? 来ないのか?」

「そうですねぇ……。部屋も狭いし、これからはバイトしようかなって思ってる」

から、と言って振り返った。

その瞬間唇に柔らかい何かが当たり。───視界が真っ暗になった。

え?

……温かい。

それが何なのか確認したかったけど、後頭部を手で押さえられ、腕を掴まれる。逃れることはできなかった。

「ん……ふっ……!」

息ができない。苦しさのあまり咳き込んだとき、ようやく目の前に色が戻った。

先輩の唇に絡めた、みだらな糸つきで。

「な。な、な、な、何」

「キス」

状況が理解できず口をパクパクさせる俺に、先輩は「ほう」と頷いた。腹立つぐらい無表情で、切れ長の瞳を細める。

「その反応は初めてみたいだな。良かった」

「はい!?」

反応って。

いきなりキスされたら、誰だって動揺するだろ!

キャビネットのガラスに映る自分の顔は確かに真っ赤だったけど、むしろこの程度で済んでるのは冷静な方じゃないのか?

「何するんですか! 冗談きついですよ!」

「冗談っていうか、さっきのお返しだよ。俺をからかったお返し」

「さっき?」

「ほんと、素直過ぎてタチ悪いな」

それだけ言うと、先輩はキャスターのついたパーテーションをどけた。

「まぁそれはともかく。お前がいないのに部屋は借りられないよ。この話はナシな。じゃ」

「いやいやいや!!」

先輩の乱高下激しい行動についていけない。でも負けるな、俺!

今しがたファーストキスを奪われたことも忘れて、部屋を出ていこうとする先輩の腕を掴んだ。

「わかりました、これからもここに来ます! だから空き教室で寝ないでください!」

あんな無法地帯で、無防備に眠るなんて危険過ぎる。

子どもの頃は確かに、先輩にはよくしてもらった。マンションに引っ越したばかりの頃。知り合いがひとりもいない環境で、親が帰ってくるまで家に上げてもらったこともある。

感謝してるんだ。随分時間が経ってしまったけど、今こそあの時の恩に報いたい。

必死に引き留めると、彼は徐ろに振り返った。

「わかった。それなら安心だ」

「よ、良かったです。お願いだからもう、変な場所にひとりで行かないでくださいね」

「変な場所って何だよ。学校内だろ」

二人で部屋を出て、無人の廊下に躍り出る。

ひとまず胸を撫で下ろしてると、今度は優しく頭を撫でられた。

「ありがとな。本当は、またこうやって話せるだけでも嬉しい」

ハッとして見上げると、彼は泣きそうな顔で笑っていた。

どうしてそんな苦しそうなのか……訊きたいけど、それを訊くのは野暮な気がして、ぐっと堪えた。

ぶっちゃけ、同じ気持ちだし。

「俺も……です。先輩って呼ぶの、ちょっと不思議な感じするけど」

「じゃあ呼び捨てでいいよ。タメ語でいいし」

「いや〜それは……他の人に見られたら殺されそうなんで」

学校の姫にナメた口を利いたら、それこそ集団リンチに遭いそう。

でも朋空先輩は、依然として可笑しそうに笑ってる。

笑い事じゃないぜ……と思ってると、不意に耳元で囁かれた。

「心配ないよ。これからは俺が守るから」

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Aktuellstes Kapitel

  • 帰ろうよ、朋空先輩   #2

    朋空先輩は、昔家に帰りたくなかった俺を救ってくれた。────だから俺も、家に帰ろうとしない朋空先輩を放っておけなかったんだ。時間が流れるのは本当に速い。自分が進まないと置いていかれてるような怖さがある。残酷。……だけど時間が解決してくれることもあるし、悪いことばかりじゃないんだ。俺は眠り姫並に知名度が上がってしまったけど、ファンクラブの人達の協力もあり、楽しく学校生活を送れた。( 三月か )カレンダーをめくり、春の暦を数える。季節は流れ、あっという間に卒業式を迎えた。俺も来月からは三年生。受験を控え、忙しい毎日が始まる。気を引き締めないと……!誰にも名前を覚えてもらえない睡眠研究会は、後輩の子に譲ることにした。俺ももう寝てるわけにはいかないし、あの研究室は朋空先輩と過ごす為の場所になってしまっていたから……もう留まる理由はなかった。あ、ベッドはさすがに問題なので家に持って帰った。睡眠に関する資料は残してるから、後は後輩が好きなように使ってくれたら嬉しい。桜は咲いてないけど、卒業式当日は晴れやかな青空だった。いつもと変わらない。けど落ち着かない、特別な日。体育館から卒業生が退場し、保護者も順々に帰っていく。あっという間に寂しくなった空間を後にし、俺も移動した。絶対に見つけるなら校門だな。大勢ひとが立ち話をしている門で捜していると、不意に肩を叩かれた。「入ちゃん! やっほー」「赤城先輩。卒業おめでとうございます」「ありがと。やー、思い返すとマジであっという間だったな。入ちゃんもやりたいことあったら後回しにしないで、やった方がいいよ。この感じだと次は気付いたとき四十路だから」「それは気が早すぎですって」苦笑しながら、いつもと変わらない調子の赤城先輩にお辞儀した。本当に色々あったけど、彼にも感謝しかない。なんとボタンまでくれたので、有り難くポケットに仕舞った。「でも先輩、好きな女の子にあげなくていいんですか?」 「あ、違う違う。これはアレ、あいつが来たら見せな」「あいつ?」誰のことかと不思議に思ってると、また誰かに名前を呼ばれた。「入川君!」「あ、進堂先輩も卒業おめでとうございます」俺のファンクラブの自称会長。彼はやつれた顔で俺の手をとった。「はぁ……これから毎日入川君の顔を見られなくなると思うと、胃に穴が空き

  • 帰ろうよ、朋空先輩   #1

    ────朋空君って、本当に綺麗よね。そんな言葉を何回言われただろう。普通なら喜ぶことだろうけど、自分はうんざりしていた。見た目だけであれこれ想像を巡らせる大人、じろじろ見てくる他人、嫌みを言う同級生。全員が敵に見えた。容姿を褒める言葉は呪詛のように聞こえる。多分、あの頃は軽くノイローゼにでもなってた気がする。小学生のときにそんな状態だから、学校の先生にも相当心配された。俺が一方的に周りを跳ね除け、心を閉ざしてるように見えたらしい。君の態度にも原因があると言われて、何て返せばいいか分からなかった。どっちが先に原因をつくったのか、という話をしてるみたいだ。けどそんなことすら考えてると疲れる。もう何でもいいし、どう思われても構わない。先生が言うように、俺の性格が壊滅的なんだ。日に日に卑屈になっていたときに、同じマンションに引っ越してきた少年と出会った。彼は見るからに気弱そうで、クラスにひとりはいるタイプ、という印象だった。母は、彼のお母さんとよく話していた。でも親が仲良いからって子どもも仲良くなきゃいけない理由はない。適当に挨拶して別れようと思ったけど。……そういえば、いつも誰かを待ってるみたいだった。ひとりが好きなタイプ、友達作りが苦手なタイプ……色々見てきたけど、その子はただ、時間が過ぎるのをじっと待っていた。何をするでもなく、腫れた目でぼうっと空を見ている。初めて見かけたときは本気で心配したけど、段々色んなことを思うようになっていった。どうせならゲームとかしてやり過ごせばいいのに、とか。俺ならいくらでも時間の潰し方を教えてあげられるのに、とか。勝手なことをたくさん考えた。あとになって、ウチと同じく母親しかいない子なんだと知り、尚さら上手く生きろ、という気持ちが降って湧いた。美人か必ずしも得するとは限らないが、弱いと生きづらいのは確かだ。教えてあげたい。……けど。自分から話しかける勇気は出ず、日々が流れた。そんなとき、偶然話すきっかけができた。母と買い物に行った帰りに、公園にいる彼を見つけたのだ。正直、やった、と思った。そんな風に喜んだ自分にも内心びっくりした。今まで、誰かと話すが億劫で仕方なかったのに……俺はどうやら、彼とはずっと話してみたかったみたいだ。不思議。話し出してからのめり込むのも早かった。人見知りなのに自分に

  • 帰ろうよ、朋空先輩   やめたい、やめたくない

    俺がこのマンションに引っ越してきたばかりの頃。意外と同じ学区に通う小学生がいなくて、最初はかなり寂しかった。鍵っ子だったし、人見知りが災いしてクラスメイトと打ち解けるのも時間がかかって。( 何でここだったんだろう…… )母も忙しいから、仕方ない。誰にも弱音は零せないけど、いつも考えていた。引っ越しでばかりだから部屋は綺麗で片付いているけど、それが返って虚しい。自分しかいない部屋は、まるで世界から遮断された空間のようだった。マンションの隣に併設された公園に向かうも、誰かに声をかける勇気はない。ブランコに座って、ただ時間を潰していた。『あら。雅月君、こんにちは』そんなときに声を掛けてくれたのは、同じマンションの住人。母とよくお喋りしてる女性、辰野さん。『こ……こんにちは』人見知りが炸裂して声が全然出なかったけど、彼女は笑顔を浮かべた。『そうだ。朋空は会うの初めてよね? このあいだ四階に越してきた入川さんの息子さん、雅月君よ』あれ。息子さんいたんだ。しかも俺と同じぐらいの。恐る恐る見ると、彼はわずかに首を傾げた。『今何してんの?』『え』突然訊かれて、露骨に狼狽えた。別に誰と待ち合わせてるわけじゃないし、やることもない。ただボーっとしていた……って言ったら、初対面から変な奴だと思われちゃうかな。責められてるわけでもないに、怖くて俯いてしまう。そんな俺に、その子は鞄から取り出したお菓子を見せた。『これ美味いんだ。一緒に食べようよ』『え。で、でも』絶対根暗だと思われたのに、意外だった。彼は俺の隣のブランコに座ると、チョコがたっぷりついたお菓子を渡してくれた。そうこうしてる間に、辰野さんは近くの自販機で飲み物を買ってきてくれた。『朋空、お母さん先に帰ってるから。雅月君のことよろしくね』『うん』よく分からないけどよろしくされてしまった。頂いたジュースを飲み、そわそわしながら隣の彼を窺う。すごくかっこいい……。今まで見たことないぐらい、綺麗な男の子だった。もう少し髪を伸ばして喋らなければ女の子に間違われそう。俺ももっと小さいときは女の子だと思われたことがあるけど、彼の場合は美人という言葉がぴったり当てはまった。でも、朋空って名前良いな……。『前はどこに住んでたの?』『え。ええと……』それから、彼とたくさん話した。今

  • 帰ろうよ、朋空先輩   #5

    一瞬固まったけど、慌ててかぶりを振る。先輩には申し訳ないけど、初めて聞いたようなふりをした。先輩は少し怪しげにこちらを見ていたけど、それ以上は触れずに話を続けた。「高校入る前から、かな。もう知り合ってから三年ぐらいになる」「そうだったんですか……い、良い人ですか?」語彙力ない俺はそれ以外に訊き方が分からなかった。朋空先輩は案の定吹き出し、腕を組んだ。「そうだなぁ。多分、良い人だよ。優しいし、俺の進路についても相談乗ってくれるし」「多分」と付けてしまうのは、結婚してから豹変する人がいるから、と笑った。「俺の前の父親が、モロそういうタイプだった。母さんには幸せになってほしいけど、もうそういう目には遭ってほしくない。……と思ってる」「……」確かに、未来のことは誰にも分からない。特に夫婦は当事者同士のことだし、俺みたいな他人が下手に口を出していいことでもない。「でも、先輩のお父さんになる人だから。……なにかあったら、先輩もちゃんと気持ちを伝えていいと思います。お母さんの為にも」最後の方は消え入りそうな声になってしまったけど、何とか言えた。先輩は頷き、俺の額にキスした。「そうだな。今は見守って……ちゃんと祝福しようと思う」「……うん」引っ越しのことは訊けなかった。でも、再婚の話を聞けただけで充分だと思った。あれもこれもって訊くと、俺の頭もパンクしそうだし。今は見えてるものだけ、ひとつずつ拾っていこう。横になって、先輩の腕枕で眠りに落ちる。この瞬間を大切にしたい。周りから見ればただ寝てるだけ。でも俺にとって、これはデートとそんな変わらなかった。俺達しかいない場所で、人目を気にせず触れ合える。これはこの部屋でしかできないことだ。まどろみの中で手を繋げば、眠りに陥るのは一瞬。アラームが鳴るのも一瞬だ。さっき瞼を閉じたと思うのに、もう十八時を知らせる音楽がスマホから鳴っている。「う〜ん……」ちょっと残念な気はするけど、デートはまだ終わってない。「起きましょうか……」同じ方向。同じマンションに帰れる今は、幸せ継続。隣ですやすやと眠る恋人の頬をつつき、声をかけた。「朋空先輩。帰りましょ」◇「あっという間だな」帰り道、朋空先輩は呟いた。「お前と過ごしてるとあっという間。授業中はあんなに長いのに」「ははっ! 俺もそうです」

  • 帰ろうよ、朋空先輩   #4

    そうだ、……これだ。俺が先輩にしたいこと。喜んでほしいことは。自分の部屋を出て、真っ直ぐキッチンに向かった。買ったは良いけど全然使ってなかったお弁当箱を取り出し、目の前に佇む。問題は、やっぱり中身のラインナップ。眉間に皺を寄せながら考えていると、リビングでテレビを観ていた母がやってきた。「あれ。雅月、お弁当持ってくの?」母は、今まで時間がある時は俺に弁当を作って持たせてくれていた。仕事が忙しくなってからは俺も自分で作っていた。とは言え二年に上がってからは、めんどくさくて売店に頼ってしまっている。でも今回は、自分の為に作るんじゃない。「うん。とりあえず、明日だけ?」「そうなの。お母さん作ろうか?」「あ! ありがとう、俺が作るから大丈夫!」俺が食べるわけじゃないし、俺が作らないと意味がない。母の提案は申し訳ないけど断り、久しぶりに弁当作りを開始した。いつもご飯を作ってるのに、弁当に詰めるメニューとなると緊張する。しかも、好きな人に渡すなら尚さら……。とりあえず厚焼き玉子は上手くいった。甘めにしちゃったけど、彼の好みだったら良いな。茹でブロッコリーとミニトマト、それから定番のウィンナー。メインはゆかりのおにぎり。彩りは我ながらばっちりだ。……よし。完成!何だかんだやってたら日付が変わりそうだった。これで寝坊したら笑えない。すぐに台所を片付けて、明日の為にベッドに入った。先輩、喜んでくれるかな……。どきどきとわくわくが同じ量放出されて、アドレナリンが出まくってる。結局また興奮して、あまり眠れなかった。( でもちゃんと起きれたからオッケーってことにしとこう……。 )ふらつきながら家を出る。いつもの時間に通学路へ出ると、朋空先輩を見つけた。「先輩、おはやいございます」「おはよう。何かろれつ回ってないけど、大丈夫か?」先輩は振り向きざま、俺のことを心配そうに見つめた。「何か目の下のクマもすごいし。……昨日寝てないのか?」「いえ、ちょっとは寝ました。放課後寝るから大丈夫ですよ」学校に到着し、校門を抜ける。人が多くなる前に渡そうと思い、手に持っていた紙袋を掲げた。「朋空先輩。その……弁当作ってきたんです。め、迷惑じゃなければ……食べてください」「弁当!?」「わわっ。弁当です」先輩は珍しく大声を上げた。俺もちょっとびっく

  • 帰ろうよ、朋空先輩   #3

    ううん……悩む。結局何も思いつかずに放課後を迎えた。研究室へ行こうとすると、ちょうど朋空先輩を見つけた。「朋……」すぐに駆け寄ろうとしたけと、同じタイミングで先輩に話しかけた男子がいた。おっと……。思わず口を押さえ、足を止める。「あの、辰野先輩。良かったらちょっとお話できませんか……?」どうやら一年生のようだ。恥ずかしそうに声を掛けてるから、多分朋空先輩に好意を持ってるんだろう。何もなければ応援してしまいたくなる。でも朋空先輩と付き合ってる俺としては、胸が痛くなった。先輩は何て返すんだろう……。不安に押されながら様子を見守っていると、朋空先輩は優しい声で、その男の子に振り返った。「ごめんね。今日はこれから用事があるんだ」「そ、そうですか。すみません、引き止めて」「ううん。君も気をつけて帰ってね」おぉ。さすがに慣れてる。二人のやりとりを見て、ホッとした。男の子に見つからないよう遠回りして研究室に向かう。部屋の前へ行くと、朋空先輩がこちらを見て笑った。「お疲れ」「お、お疲れ様です。すぐに鍵あけますね!」職員室で借りてきた鍵を取り出し、ドアを開ける。部屋に入ると、突然ドアに押しつけられた。「ち、ちょっと先輩っ?」「もう少しこのままでいさせて。体力回復してんだ」そのままぎゅっと抱き締められる。先輩からすれば抱き枕に思いきり抱き着いてるような感覚なんだろうけど、俺はめちゃくちゃ心臓に悪い。「ところで、さっき廊下にいただろ。何で声掛けなかったんだ?」「うぇっ。み、見えちゃいました?」「チラッとな」朋空先輩は体を離し、俺の顔を覗き込む。「……あの子が、先輩に告白するのかと思って……声掛けたらまずい気がして、隠れちゃいました」「隠れる必要はないだろ。OKするわけないんだから」「でも、躊躇はしちゃいますよ。可愛い子でしたし」先輩から視線を外し、俯く。ただでさえ可愛い子が照れくさそうにしてたら、勝てる気がしない。そう言って項垂れると、先輩は俺の腰を引き寄せた。「確かに可愛い子だったな」「や、やっぱり」「でも、俺は可愛いだけで付き合ったりしないから」ドアの鍵がかかる音が聞こえた。俯く俺の顔に手を添え、ゆっくりと上向かせる。「俺が欲しいのは、ずっと前からお前だけだよ。……雅月」「先輩……んっ」唇を塞がれる。以前

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