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第4話

Author: パクチー好きの静香
【あんたが横から割り込んだから別れたんでしょ。ほんと最低。人の男奪っといて何様?】

【妊娠してるんだって?だったら早く堕ろしなよ。絶対産まないで。美波がかわいそうでしょ】

【もう美波の方選んでるでしょ。しがみついても無駄だって。いい加減、二人の邪魔するのやめなよ】

騒ぎは日に日に大きくなり、三日間もニュースの話題を独占していた。

修一が私の置かれている状況を知らないはずがないのに、彼は何ひとつ動かなかった。

わかっていた。彼は、私が折れるのを待っているだけだった。私たちの関係の中で、いつだって強いのは彼のほうだったから。

着る服にも口を出して、食べるものにも口を出して、しまいには私の行動まで把握しようとする。

やさしさは全部、美波に向けて。私に向けられるのは、強引さと冷たさだけだった。

自分は私がいなくても平気でいられるって思わせておきながら、私には、彼がいなきゃ何も残らないと思い込ませようとしていた。

昔みたいに、また私が泣いて謝るのを待っていたんだ。

そしてもう一度、自分の腕の中に閉じ込めて――どこにも行けないまま大人しくしていろって。

でも――

もう、あの頃の私じゃなかった。

だから四日目に、修一は戻ってきた。

その日はひどい雨だった。

彼は全身ずぶ濡れで、どれだけ外に立っていたのかもわからないほどだった。

私を見る目は暗く複雑で、悲しそうにも、どこか傷ついたようにも見えた。

こちらへ歩き出しかけて――

ふいに自分の体が冷え切っていることに気づいたらしい。

慌てて上着を脱ぎ捨てる。

それから私を抱きしめ、くぐもった声で言った。

「健診はもう予約してある。今度は絶対、俺も一緒に行く。

漬物のことも……悪かった。あのときは俺が止めるべきだった。

変な噂もただの行き違いだ。もう会社にも話は通してある。これ以上、お前が悪く言われることはない」

修一は黙ったまま私を見つめていた。

――またここで、私が折れるのを待っている。

突き放しておいて、最後に少しだけやさしくする。

それが、彼のいつものやり方だった。

でも私は知っている。

美波がいる限り、修一が最後に切り捨てるのは――いつだって私だ。

こんなふうに、誰かと取り合うみたいな関係には、もう疲れていた。

私は何も言わず、そのまま寝室へ戻った。

修一があとを追って入ってこようとしたとき、スマホが鳴った。

美波からの着信だった。

修一はスマホを握ったまま、しばらく画面を見つめていた。

強く握りしめているのに、それでもすぐには出なかった。

シャワーを浴びたあと、彼はベッドに入り、後ろから私を抱き寄せた。

低く押さえた声で言う。

「俺とあいつはもう終わってる。余計なこと考えるな」

私は腰に回されたその手へ目を落とした。

そこには――いつの間にか、あの結婚指輪が戻っていた。

けれど、もう二度と、昔には戻れないと――私は知っていた。

翌朝、目が覚めたその日は――

私が中絶手術を受ける日だった。

しかも修一は、よりによって私のために妊婦健診の予約まで入れていた。

彼が初めて、付き添って病院へ行こうとしていた日だった。

普段は落ち着いている修一が、このときばかりは妙にそわそわしていた。

持ち物を何度も確かめては、またバッグを開け直している。

そんな彼を見ながら、私は決めていたことを話そうとした。

そのときだった。

スマホが短く通知音を鳴らした。

修一は反射的に画面を開き――次の瞬間、表情が固まった。

手からスマホが滑り落ちる。

床に落ちた画面には、血のにじんだ手首の写真が映っていた。

修一はそれを拾い上げると、そのまま外へ飛び出そうとした。

「待っ――」

呼び止めるより早く、彼はすがるような顔で言った。

「今回だけだ。これで最後にするから。美波が危ないんだ。放っておけない!」

私は小さく笑って、彼が手にしていた書類を受け取った。

そして静かに言った。「行って。私はただ、自分のものを返してもらいたかっただけだから」

修一は一瞬だけ立ち止まった。

けれど考える余裕なんてなかったのだろう。

そのまま背を向けて、足早に出ていった。

――けれど途中で。

ここ数日の私の様子を思い出したのか、不安に駆られたように引き返してきた。

そして突然、強く抱きしめられる。

「先に病院で待っててくれ」

言い聞かせるような声だった。

「今度こそ、必ず行くから」

そう言い残すと、彼はもう振り返らなかった。

私はその背中から目をそらし、タクシーで病院へ向かった。

手術室へ運ばれていくその瞬間――

ようやく、深く息をつくことができた。

麻酔が少しずつ体に回っていくにつれて、まぶたが静かに重く沈んでいった。
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