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14話

Author: 東雲桃矢
last update publish date: 2026-06-21 23:09:03

「物件も決まったことだし、母さんは温泉に入るわ。百合も一緒にどう?」

「私は後で入る。母さん、楽しんできて」

「そう? 百合も後で入らないと。せっかくこんなに素敵なホテルに来たんだから」

「そうね、今夜入るわ。取引先に連絡しないといけないの」

「分かった。あんまり根詰めすぎないでね」

 百合は母を見送ると、秋明にメールをした。

『母と一緒に熊谷家から出て、ホテルに泊まってるわ。私達と母さんの物件も、なんとか決まった』

 メールを送信してスマホをテーブルに置いて外を眺めると、人々が思い思いにプールを楽しんでいるのが見える。

「私も、楽しめたらいいんだけど……」

 不安で胸がいっぱいで、せっかくの高級ホテルも、楽しむ余裕がない。自分の弱さにうんざりしてため息をつくと、電話が鳴った。秋明からだ。

「もしもし?」

「今どこにいるんだ?」

 感情のこもっていない、淡々とした声。この冷たい声には慣れそうにない。

「月ノ宮ホテルよ」

「うちのホテルに泊まるなら、事前に言えばいいものを。母親の説得には成功したんだな?」

「えぇ、なんとかね……」

「どう説得した?」

 尋ねられ、言葉に詰まる。

「説得
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     迷った挙げ句、百合は自宅に帰ることにした。秋明の書斎に入り、鍵付きの引き出しを開ける。引き出しの中は以前と同じだ。 百合は椅子に座ると、封筒を手に取り、アレグリアの文字を指先でなぞる。アレグリアがどんな宝石店だったのかは、百合は知らない。存在自体を知ったのも、最近だ。「ここに、手がかりが……」 ずっと見たいと思っていたのに、真実が近づいていると思うと、言いようのない恐怖に手が止まってしまう。「もう、情けないわね、私ったら。知るために探偵を雇ったりしてたのに。はっきりさせないと意味ないでしょ」 自分にそう言い聞かせ、封筒を開けた。中には数枚の写真と、書類が入っている。「これは……」 写真は昔のもので、若い宝生夫妻が、赤ん坊を抱っこして店の前で笑っている。看板には、アレグリアと書かれていた。 他の写真には、幼稚園児くらいの百合や、店内が写っている。最後の1枚に、百合は釘付けになった。「もしかして、これって……!」 写っていたのは、ひとつのネックレス。台座にはドーム状の赤い宝石がはめ込まれており、宝石には薔薇が彫刻されている。「これが、ローズジュエリー……」 古い写真越しでも、その美しさや繊細さが伝わる。実物はもっと美しいだろう。矢絃や秋明が欲しがるのもうなずける。この技術を手に入れたら、きっと売れる。 しばらく写真を眺めた後、書類に目を通す。書類には、アレグリアの売上が書かれていた。どの数字も好調に見える。こうして見ると、アレグリアが愛されていたと分かるが、潰れた理由は分からない。「よし、行こう……!」 百合は書類や写真を封筒に戻すと、クリアファイルに入れ、大きめのバッグにしまい、車を走らせた。 ついたのは藤子の家。どうやら収穫を終えたらしく、畑はがらんとしていた。 インターホンを押すと、藤子が眠そうに目をこすりながら出てきた。「あら百合! 

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