登入あれから数日後、助かったイフリークの国民達は他国の騎士団に救助されることになった。
絶望、それは誰しもがそう感じているだろう。 つい数日前まで、人と魔法で賑わっていたイフリークは見る影もなかった。 救助に来た他国の騎士団はイフリークの国民達を自分たちの国である南の大国 シルフに連れて行く事になり、カイル達も含めた騎士団や国民達は用意された100台以上ある馬車に乗せられた。 そこにはどういう訳かグレン達も乗る事になり、当然カイルはグレンに睨みを効かせる。 「おい…なんでお前がここに乗ってんだ?」 するとそれに対して軽く受け答えするグレン。 「俺たちは次に目指すところは南の大国 シルフだ。丁度いいと思うから乗らせてもらう事にした。、」 そのさらっと流した態度にとうとう堪忍袋の尾が切れたカイル。刀を鞘から抜き取った。 「ふざけんな、歩いて行けばいいだろーが!てめえの顔なんて見たくねえんだよ!」 「だ、誰か!団長を止めてくれ!」 「落ち着いてください!団長!」 カイルが今にもグレンに斬りかかろうとするので慌てて団員達が止めに入った。 「離せ!俺はこいつを許さない!イフリークは俺の…俺とエミルの…うっ…うぐぅ…!」 そしてカイルは剣を抜いたまま力なく泣き崩れてしまった。 その姿を見たグレン以外の全員は気の毒すぎて話しかけることも出来なかった。 いや、1人だけいた。 その人は人ごみの中を平然とした顔でこっちの方まで歩み寄ってきた。 そしてカイルの目の前までいくと、カイルは顔を上げそして驚いた。 「お前は…ハンジ!」 そう、幼い頃エミルと仲が良く、綺麗な顔立ちのハンジであった。 「エリオン君。あなたがエミルと過ごしたこの国はあなたの大切な故郷。それは私達も同じように思ってるわ。」 「だが、俺はエミルの約束を守れなかった…」 「いいえ。あなたはしっかり守ったはずですよ。あなたが騎士団団長としての責務をちゃんと果たしていること。そして、私達が今生き残っているのはエリオン君達騎士団のお陰よ。今は面影のない国になってしまったけど、また1からやり直しましょう。それまではシルフの皆さんのお世話になりましょう。」 「ハンジ…」 そしてカイルはハンジの胸元で再び泣いた。他のイフリークの人や他国のミーナでさえも、このやり取りを見て涙を流さずにはいられなかった。 しかし、グレンはこのやり取りを見てもなんとも思っておらず一言カイルに吐き捨てた。 「くだらん茶番だな。」 「ちょっとグレン!何よその言い方…ってコラー!無視するなー!戻ってきなさい!!」 グレンはそのままミーナに聞く耳持たず、そのまま馬車の中に入っていった。 「全く…、みなさん本当にすいません。」 「いや、ミーナちゃんが悪いわけじゃないから気にしないで。」 「そうよ。あなたは何も気にしなくていいのよ。」 エバルフとカレンはそう言ってミーナを励ました。 「しかしあのグレンって子、本当に怖いわよね。まるで心が無いような、何を考えてるのか全然分からないわ。」 「確かにそれは言えてるな。…なぁ、そーいえばミーナちゃんはなんでグレンと旅してるんだ?」 「それ私も気になったわ。あんな怖い人と旅するなんて、何か大きな理由でもあるんじゃないの?」 「それは馬車の中で話そうと思ってます。…カイルさんも、グレンの事を理解するのは難しいと思いますけど、事情だけでも私から話させて頂きます。」 「分かった。…出来れば、悪魔祓いの事も聞かせて欲しい。」 「私が知ってる限りであれば…。」 その後、イフリークの国民全員は馬車に乗り南の大国シルフを目指し走り出した。 そして、場面は変わりここは赤い地獄(レッドヘル)の悪魔界。 PDOを送り出した憤怒の悪魔は他の悪魔達を呼び緊急の会議を開いた。 今回の作戦は全て憤怒が考えた事であるため、場の雰囲気は最悪。誰も口を開こうともせず、ただただ憤怒を睨みつけるだけであった。 「まさか、PDOが負けてしまうなんて…」 まず、最初に切り出したのは色欲の悪魔だった。色欲はかなり深刻そうな顔をしているように見えた。 「しまうなんて…そんな…なぁーんて思ってるんでしょ?あんだけ調子乗ってた癖にまさかの失敗…ダサすぎて話にならないわ。」 「くっ!…」 色欲は憤怒を煽り、憤怒はそれに対して何も言い返せなかった。 しかし、怠惰の悪魔はそれに対して。 「だが、イフリークはもはや壊滅状態。それはお前の計画通りでは無かったのか?」 「あれは、聞いていない!」 「俺は聞いていない!あんな訳のわからねぇ黒い根っこで国を滅ぼすなんて、聞いて…ない…」 憤怒の取り乱しっぷりを見て、色欲は腹を抱えながら笑っていた。 「あはははっ!それはあんた!あんな訳のわからない人間の言う事を聞くからでしょ!?そんなの騙されたあんたが悪いよそれは!」 「くっ…言われてみればあのクソ人間が…」 「おい、そのPDOを作った人間というのはなんだ?誰の事だ?」 怠惰の男が聞くと、色欲が答えた。 「そういえばあなたはPDOの存在自体あまり知らなかったものね。いいわ、教えてあげるわ。あなたも知ってると思うけど、この悪魔界には現在獄魔以上の力を持つ者は私達3人以外いないのは知ってるでしょ?」 「あぁ、それは知ってる。」 「そう、だけど獄魔以上の悪魔は全然生まれないし他の悪魔祓いはどんどん強くなってきてる。そうなっては我々はいずれ滅ぶわ。そう思ってた時に、1人の人間がこの国に訪れた。人工的に強い悪魔を作り出すなんて馬鹿な事を言う人間がね。」 「その男というのは以前この建物の地下にこもってた奴か。奴は何者なんだ?」 怠惰の質問に色欲は答えた。 「彼は、この世の全てを恨み、全てを壊そうとしている男。右腕には死神、左腕には悪魔を宿した黒魔道士で悪魔祓い。ネル・ナイトフォース。」 黒魔道士、それは世界でいう危険思想を持った魔道士師でありその者達は強大な悪の魔力を持ち、その力が万が一暴走すれば国一つ滅してしまう程である。 その為、黒魔道士は存在しているだけで犯罪者というレッテルを貼られる。 「右腕に死神、そして左には悪魔だと?どんな化け物だよそいつは。まさか、悪魔祓いが俺たちに力を貸すとはな…で、そいつは今どこにいる?」 「もう居ないわ。どこに行ったのやら…まあ、もうあいつは要らないよ。どうせ一時的に仲間になってただけみたいだしね。」 「そんな事どーだっていーんだよ!!あの黒魔道士め!見つけ次第ぶっ殺してやるよ!!」 憤怒の怒りによって辺りの地面から凄まじい魔力の圧力が充満して壁や机などがミシミシと割れ初めていった。 「今は黒魔道士なんてどうでもいい。本題はこれからだ。現在、イフリークの生き残りは南の大国シルフの騎士団により移動中らしい。」 「確か、西と南の間にはティラーデザートって砂漠があったわね。そこを馬車で通るなら最低でも2日は掛かるわね。出来ればそこで仕留めたいけどどうしましょう?」 怠惰はしばらく考えたが次に首を横に振った。 「いや、いい。しばらくは奴らをほっておこう。これ以上我々の戦力を削る訳にもいかん。あの方の為にも先ずは俺たちと同じ悪魔をあと4人…集めなければならん。」 「あと4人…かぁ。出来れば顔も見たくないわ。ね、憤怒?」 「へ、今更どーだっていい。俺らはそれだけ重要な存在なんだよ。それに、この計画が成功すれば俺達は人間に変わりこの世界を支配できるんだぜ!こんな最高な事はねーよ!」 「はぁー…ガキだねホント。でも人間のいない世界の方が十分平和な生活を送れそうね…それで、怠惰はしばらく人間を放っておいてどうするつもり?」 「その話だが俺は奴らがシルフに着いてからにしようと思う。その内容だが…」 そして、再び悪魔達の会議が開かれた。 イフリーク跡地 ここは廃墟となった西の大国イフリーク。 あの戦いによって建物も何もない土地になり、今じゃ人っ子一人もいない場所になって… ……いたはずだった。 「……ふふふ、本当に何もない世界に変わってしまった。……まさに、計算通り。」 廃墟となったはずのイフリークに、1人の男が歩いていた。 高身長で黒いローブを纏い、袖は肘あたりで千切れているので両腕が見えるが両腕共にに黒い包帯を巻いた細身の男性で、右手には自分の身長よりも大きくて長細い杖を持っていた。 その男はひたすら歩いていると、目の前に赤く輝いた拳程度の宝玉が転がっていた。 その宝玉を拾い上げると男はローブをめくり、よく見えるよう顔を近づけた。 「遂に見つけたよ…これで3つ目だ。あと1つでこの世界を…世界を終わらせれる!ふふふふふっ…」 赤く輝く宝玉は男の紫の目と重なり、不気味な赤紫の目が宝玉に写っていた。 俺は、今でも微かだが覚えている。 あの日の地獄の様な光景を。大切な人達を目の前で失う絶望を。 …おい、逃げろ!早く逃げるんだ! 遠くの方から声が聞こえる…この声は… 「兄さんダメだ!俺は兄さんを置いて逃げるなんて出来ないよ!」 「ダメだ…流石の俺もこいつらは無理だ!」 銀髪の青年が何度言っても、黒髪の少年である弟は全然言うことを聞かない。 しかし、2人の兄弟の目の前にはこの世とは思えない化け物が血だらけになった爪をこっちに向けてくる。 「早く逃げるんだ!じゃないと俺たち殺され…危ない!!」 いきなり爪を伸ばしてきた悪魔はそのまま少年の方向に進んだ。 それを庇おうと兄は身体に防御系の魔力を纏って弟の盾になろうと弟を後ろに押しのけるが、それも虚しく青年の腹を爪は貫いた。 弟は押された衝動で後ろに倒れたため、頭上ギリギリで回避し後ろに倒れた。 だが、目の前で腹を貫かれた兄はそそまま後ろに倒れてしまい、化け物たちはそのまま兄の周囲に集まって体を貪ろうとする。 「に、…兄さーーーーん!!!」 「……夢か。…ここはどこだ?」 (ここは馬車の中だぜ。なんだ?夢でも見てたのか?) 寝ぼけているグレンに心の中から話しかけるリフェル。 現在、グレン達は昨夜イフリークを出て現在ティラーデザートという砂漠地帯を数百台の馬車で駆け抜けていた。 この馬車は空間魔法の力で外面は小さくても室内はとても広いため個別の部屋まで用意できるようになっている。 グレンとミーナもそれぞれ別の部屋を用意され、1人で落ち着けると思ったグレンは戦いの疲れが出たのかそのまま寝てしまっていた。 (ところでよ?さっきまでうなされてたが、何の夢みてたんだ?) リフェルの顔は見えないが口調が笑っているように感じたので一瞬イラッとするグレン。 「くだらん夢をいちいち覚えてられん。」 (あっそ。まあいーや。…そんなことよりさ!さっきミーナが他の騎士団の奴ら自分の部屋に呼んでたぞ?気にならねーか?) 「いや、興味ない。俺には関係ない事だ。」 (あっ、そうっすか…) リフェルはグレンの興味が出るような話題を振った感じで言ったがあまりの好奇心の無さに次の言葉を失った。 そしてすぐに口を開く。 (しかし、あの女…ミーナだったか?あれはいい女だぜ?顔つきも体つきも性格も最高じゃねえか。あーゆーの見るとこう自分の奥底に眠ってた欲望が目を覚ましやがる!そー思うだろ、お前も?) リフェルは低い声でグヘヘと笑う。 しかし、グレンは呆れて溜息を吐きながらいつも通りリフェルをあしらおうとする。 「ふん、そんなものには全く興味ない。俺はただ強くなる…それが俺の欲するものだ。それ以外の事には興味ない。」 (へぇー!相変わらずだな。…だが忘れるな。お前のその強いと望む心が俺を強くしてるという事をな。) 「その分俺も強くなるだけだ。いずれお前の魔力を根こそぎ頂くつもりだ。」 (…いーねぇー、その強さを欲する強欲に満ちた目…俺が見込んだ事だけはあるな。面白い、じゃあ俺を支配してみろ!ガハハハハハ!……) そしてリフェルの笑い声のトーンが下がっていき、やがて完全に消えた。 その頃、ミーナはカイルとカレン、エバルフとハンジを自分の部屋に呼び出していた。 それはグレンの事だった。 ミーナは他の人たちにグレンの事を知ってる限り話した。 レッドヘルの事、彼が何故悪魔祓いになったのか、そして何故ミーナはグレンと旅をしているのかを全て話した。 カイル達は黙ってそれを聞いていたが、ミーナが話し終わるとまず最初にエバルフが口を開いた。 「ミーナちゃん、君は本当に強いね。」 「え、私ですか?」 グレンの話のつもりが何故か自分の事を褒められたので一瞬戸惑いを見せるミーナ。 しかし、次にカレンが口を開いた。 「そうよ、あなたは悪魔にされた友達をグレンに目の前で殺されたのにも関わらず、あなたは絶望しないどころか彼を元に戻す為に危険な旅を始めるなんて、普通なら出来ないわ。」 「でも、私は何も出来ないし、旅って言っても具体的に何をしたら良いのか全く分からなくて…」 するとさっきまで黙っていたカイルとハンジも口を開く。 「いや、俺も2人と同じだな。あの悪魔の様なグレンを元に戻そうなんて普通思わねえよ。」 「そうね。ミーナさんを見てるとなんだがエミルを思い出さない?エリオンくん。」 「似てねーだろ。まあ、こういった真っ直ぐさは似てるな。」 「エミル…さん?」 エミルの事を知らないミーナはその場で首を傾げた。 「エミルはね、エリオン君が戦っても唯一勝てなかった幼馴染の女の子よ。…それでいてエリオンの彼z…。」 「ちが、違うぞ!デタラメ言ってんじゃねー!」 ハンジがミーナの耳元で小さく言ったつもりがカイルに聞こえ、顔を真っ赤にしながらうろたえた。 「団長、顔真っ赤ですよ?」 「(かっ、かわいいっ!…意外に年下もありかもしれないわね…今度の合コンで狙ってみようかしら?)」 「おい、お前が今何考えてるか顔見れば大体分かるが、10代は止めとけよ。」 「……」 エバルフにきつい言葉を言われてぐうの音も出ないカレン。 ちょっと会話の内容が良くわかってないミーナはそれを無視してカイルにエミルの事を聞いた。 「エミルさんって、そんなに強かったんですか?」 「強いな。まあその時の俺も弱かったのもあったが、それでもあいつには一回も勝てた事はねーな。」 「そうね。魔法も勉強も剣も凄かったもんねエミルは。エリオン君はいつも泣かされてましたわ。」 「お、俺は泣いてなんか…」 「学校で口喧嘩に負けた時に泣きながら土下座させられたりとか。」 「なっ!」 「エミルに剣で勝てないからってエミルの恥ずかしい事言ったら逆に自分の恥ずかしい事を永遠と言われてしまって精神的にズタズタにされたりとか…」 「いや、あの時は確かに精神的にはやられたけど泣いては…」 「いえ、泣いてました。」 「……」 何も言い返せないカイルにハンジの追い打ちは止まらなかった。 そして久しぶりに過去の恥ずかしい過ちを全部言われたカイルは精神的にズタズタにやられ、放心状態になってた。 「団長が辛そう。」 「お風呂覗いて殴られて泣くなんて、自業自得でしかないじゃん、団長。」 「他にもまだあるけど、続けて大丈夫?」 「やめて、これガチだから。」 壁にもたれた状態で弱々しく言い放つカイルを見て心の中で流石にやり過ぎたなと反省するハンジ。 「あははっ…そういえばエミルさんっていう人は今どこにいるんですか?イフリークの騎士団の方とかですか?」 ミーナの質問に2人は急に辛辣な顔を見せた。 ミーナの質問によって場が一気に凍ってしまった。 その空気を変えようとハンジが口を開く。 「エミルはね、エリオン君と私がまだ学生の時に親の都合で他の国に転校させられたの。私は教えてもらってて知ってたけどエリオン君には何も伝えずに…」 ハンジはチラッとカイルを見るが、カイルは壁にもたれた状態で下向いて微動だにしなかった。 「そうだったんですか…すいません。私が気を悪くする様な事を聞いてしまったせいで…」 「あなたは悪くないわ。けど、エリオン君にとってエミルはかげがえのない存在だったから余計辛いのよ。」 「カイルさんごめんなさい。」 「いや、いいんだ。…それに、あいつは南の大国シルフに転校したと聞いてるからもしかしたら会えるかもしれないし。」 「そうね。今頃エミルは何してるんだろ?」 「あいつの事だ。今頃騎士団か魔導師になってるかもな。」 「…会いたいな、エミルに。」 ハンジはボソッと聞こえないくらいの小さい声で言った。 馬車の先頭では、100台の馬車を誘導するためシルフの騎士団が馬たちを操縦していた。 イフリークからシルフまでの道はティラーデザートをまっすぐ進めば良いだけなので操縦はほぼしてないに等しく、操縦者はとても暇であった。 すると、操縦者の1人が痺れを切らし隣の人に話を持ちかけた。 「なぁ、知ってるか。このティラーデザートには最近名の通った盗賊がいるらしいぜ?」 「えっ!マジかよ…じゃあ今襲われたらヤバイだろ?」 「大丈夫だって!俺らにはイフリークの騎士団団長が付いてるんだぜ?まあ、盗賊もかなりのやり手で今まで襲われた人は生きて帰ってこれなかったそうだぜ。」 「それって、かなりヤバくないか?」 「ヤバイだろうな。しかもその盗賊は総勢はたったの3人なんだぜ?たったそれだけで今まで100件以上の通り人をこのティラーデザートで仕留めたのって凄いよな?」 「確かに凄いが、俺たちは一応騎士団だからな。いくら盗賊でも、俺たち騎士団を攻撃しようなんて無謀な事は考えないだろ。」 「いや、分からねーぞ?もしかしたらフッと目の前に現れて、俺たちを見つめた後にグサッと攻撃してくるかもしれないぞ?」 操縦しながら縁起でもない事を言うなとあしらう操縦者。 すると、目の前には灰色の被服を着た人が操縦席の前に立っていた。 「なっ!なんだお前…」 グシャッ!!グシャッ!! 2人たりとも鞘の剣を抜こうとした刹那、背後から現れた同じく灰色の被服を着た2人に首を斬られた。 ボトっと生首が落ちる鈍い音の後に体も一緒に倒れた操縦者2人。 操縦席の前に立っていた1人が他の2人に死体を指差してから外に指差した。 「その死体を外に放り出せ。今から作戦決行だ。」 その指示を受けた2人はその死体を外に放り出す為に、扉をガチャッと開けて操縦者の体だけを放り投げた。 「よし、お前らはいつものようにやれ。抵抗するものは殺せ。」 「「はっ!」」 2人は同時に返事すると周りから雷のような物が発生し、一瞬でその場から2人同時に消えた。 残った1人は操縦席にある他の馬車と連絡する為の通信機に電源を入れた。 そして電源の入った通信機に自分の声を入れる。 「中の者に告ぐ。我々は盗賊だ。この馬車の操縦は現在我々がジャックした。無駄な抵抗は止めて大人しく有りっ丈の金品を寄こせ。さもなくばこの中の者全員の命はない。」 馬車内 ザーッ………中の者に告ぐ。我々は盗賊だ。この馬車の操縦は現在我々がジャックした。無駄な抵抗は止めて大人しく有りっ丈の金品を寄こせ。さもなくばこの中の者全員の命はない。…ブツン いきなりの通信に訳のわからない状態になる馬車の中の人たち。 だが、すぐに理解した。 このティラーデザートには最近になって通り人達の金品を盗む盗賊がいて、その盗賊に襲われた者は生きて帰れなかったという事を。 その通信を聞いて待機していた騎士団の者達は非常用に準備した武器を持って自室から次々と出てきた。 出てきた騎士団達は剣を鞘から抜いて構えた状態で辺りを見渡していた。 「くそ!あの噂の盗賊達か…鞘から剣を抜いてないやつは今すぐに抜け!鞘から剣を抜く時でさえも奴らにしたら隙だらけだからな!」 騎士団の1人が他の者達に剣を抜くよう指示を出していく。 「よし、大丈夫だな…くそっ、寄りによってこんな時に…」 「「ぐわぁぁぁぁ!!!」」 後ろから叫び声が聞こえたので後ろを振り返った刹那、たったの数秒で自分以外の騎士達が全員斬られて倒れていた。 「なっ…」 そして、先頭の騎士も声を出そうとする前にはその首は胴体とは繋がっていなかった。 2人の盗賊の内1人が腕時計式の通信機に電源を入れ現状の報告をする。 「ーまずは1台、制圧完了。続いて2台目に移る。」 ー……了解。直ちに実行に移せ。……ブツン ミーナ達の部屋では先程の盗賊からの通信を聞いてから10分程経過しており、カイルとエバルフとカレン3人とも戦闘準備に取り掛かっていた。 「なんだ、さっきの通信は!盗賊だと?」 「ここ最近に名の通った盗賊ですよ!たった3人の小規模な盗賊ですけど奴らが目をつけた奴らは全員死ぬって噂が流れてますよ!」 「とんでもねー盗賊に目をつけられたな…ミーナちゃんとハンジはここで待っててくれ!俺と2人は盗賊を相手するぞ!」 「「はい!」」 それぞれに的確な指示を出していくカイル。 「2人は絶対にここから離れるなよ。ここから離れたら命は無いと思った方が…」 「グレンだ…グレンにこの事を伝えなきゃ!」 いきなりミーナが思い出したかの様に飛び上がり、自室を出ようとした。 「待つんだ!どこへ行くんだ!」 出て行こうとするミーナの腕を引っ張るカイル。しかし、ミーナは慌てて。 「グレンに知らせなきゃいけない!グレンにも戦ってもらわなきゃ!」 「今はダメだ!それに今あいつが戦ったらそれこそ被害が大きくなるだけだ!」 「でも!…」 「でもじゃない!あいつは強いから1人でも大丈夫だ!今は自分の命だけを考えるんだ!じゃないと…」 カイルが最後に言おうとしたと同時に、自室の扉がドンッと大きな音を立てて室内の方に倒れた。 そこから2人の灰色の被服を着ている人が入ってきた。 被服の2人はどちらとも鬼の仮面を付けていた為、顔は見えなかったがどちらも見ただけでどれだけヤバイか直感で分かった。 「…最悪だな…こいつらは、盗賊だな。」 カイルは苦笑いしながら大量の汗をかいていた。 そして1人の被服を着た人が口を開いた。 「これより、54台目の馬車の制圧作業に掛かる。」 その言葉と同時に2人は一瞬で消えた。 消えたが、それと一緒にエバルフとカレンが動き出し剣を一瞬で抜いた。 キイィィンッ!! そして金属がぶつかる音が部屋の中に鳴り響く。 ミーナは何が起こったのか分からなかったが、すぐにエバルフとカレンが2人の短剣を一瞬で防いだのだと分かった。 「ほう…俺たち2人の剣を止めるとは中々の騎士だな。……おもしれー。久々に本気出せるな!」 2人の攻撃を受けたエバルフとカレンは正直ビビった。 もうワンテンポ遅れたら確実に死んでいたと感じた。 「なあ、君たちの目的はなんだ?金か?生憎だが今我々にはこれといった金は用意できない。分かったらとっとと帰れ!」 カイルが口を開いた。そしてハンジとミーナを目で逃げろと言わんばかりの合図を送った。 それを感じたハンジとミーナは部屋から出ようとするがもちろんそれを盗賊が許すわけもない。 しかし、止めようとした盗賊はどういう訳か2人とも足を動かせなかった。 その間にミーナとハンジは部屋から逃げた。 「なんだ、これは?…影か?」 「そうだ…お前らは俺の影の領域に入ってしまった。もう身動きは取れないぞ。」 「なるほどな。ならば、これならどうだ。」 1人の男が体の周りから電気を発生させ、もう1人の男が部屋全体に広がる竜巻を起こした。 竜巻自体にそれほど威力は無かった為、3人にダメージは与えなかったが2人の狙いはそれでは無かった。 竜巻を起こした事でホコリが舞い、そのホコリがカイルの目に入りかけた為カイルの集中が切れ影の乱れが出てしまった。 その乱れによって解放された2人はすぐさまカイルに攻撃しようと瞬間で詰め寄った。 しかし、カイルはそれを封じるために双剣で2人の短剣を凌いだ。 「目くらましも無意味か…思ったよりもやるな、このチビ。」 「はぁ?」 その刹那、カイルの影が2人の体に巻き付き身動き取れない状態にした。 「ぐっ!この影!動け…な…」 「あーあ、団長を、怒らせたなこりゃ。」 エバルフは2人を哀れな目で見た。 「お前らはたった今、死罪に値する事を平気で言った。よって、お前ら2人は死刑とする。」 「なっ!?…」 そしてカイルは体幹を回旋させて双剣を振ると巻きついた影が竜巻の様に回転し、2人はズタズタに切り裂かれた。 だが、ズタズタにされていたのは2人の被服だけで遺体が見つからなかった。 「…あっぶねーな!もう少しでミンチになるとこだったぜ。」 「いや、僕はひき肉にされそうだったよ。」 「どっちでも一緒だろーが、バーカ!」 被服をズタズタにされた2人はどうやって回避したのか被服を脱いだ状態で目の前に立っていた。 被服が破れた1人は金髪で上にタンクトップとサファリズボンを履いた筋肉質な少年と、もう1人は緑髪で金髪の方とは違い細身でカッターシャツにジーンズを履いた現代の様な格好の少年だった。 2人は対照的な外見だが共通して2人の瞳は紅かった。 「その紅い瞳…月の民か!」 カイルは2人の紅い瞳を見て口を開いた。 エバルフとカレンもかなり驚いていた。 「月の民?まさか…あの時の。」 「他に生き残りがいたとは…通りで力強いと思ったら…。」 すると金髪の方が口を開いた。 「そうだ…俺たちは月の民の生き残りだ。…お前ら世界に見放され、哀れで惨めな人生を送ることになった月の民だよ!」 被服を着てた時はかなり落ち着いていたが月の民と分かった瞬間取り乱すように大声で怒鳴る金髪の少年。 取り乱す金髪の少年を緑髪の少年は冷静に手で止めた。 「ライク、落ち着け。今は任務の方が大事だ。こんな奴らに時間を取らされてたらリーダーに怒られるぞ。」 「…あぁ、分かってるよニケル。…くそっ、今になって思い出してきやがる…まぁ、被服が無くなったお陰でかなり動きやすくなったけどな。」 金髪のライクと呼ばれる男と緑髪のニケルと呼ばれる男が再び剣を構えた。 「来るぞ、2人とも。」 「「はいっ。」」 カイル達も来るかと感じたのかこちらも剣を構える。 そしてー ガキキイィィィィィィイン!! 激しい金属音が鳴り響く。 ライクとニケルは先程よりも早く、そして重い一撃をカイル目掛けて剣を振り下ろした。 カイルは双剣で二つの刃を受け止めると周りに雷と影が混じり合い、衝撃による突風が部屋全体に広がった。 「くっ…!なんて一撃だ…」 ライクとニケルはカイルが受け止めてから次の攻撃に移るのが早かった。 上から振り下ろして受け止められたと感じた直後、右にいたライクは体勢を低く構え、左のニケルは剣の振る勢いに任せて宙に浮いたまま構えた。 2人は構えると剣の刃に自身の魔力を注いだ。 ライクの剣からは雷が帯びて、ニケルの剣先から小さな竜巻が発生しその先をカイルに向けた。 ニケルの先からレーザーの様な竜巻の光線が発射され、ライクは雷の帯びた剣でそのまま居合切りし左に移動した。 左と右からの攻撃にかわす余裕のないカイルはそれをもろに受けてしまった。 ニケルの風の光線によって胸に穴が空き、ライクの居合切りで右の横腹を斬りつけられたカイルからは口から血を吐いて膝を着いてしまった。 「かはっ!…なんて…コンビネーションだ。」 あまりにも良すぎるコンビネーションにカイルは正直驚いた。 右から発射されるニケルの風の光線は普通なら右にいるライクも攻撃を喰らうはずだがそれをライクは居合切りでカイルにダメージを与えつつ回避する。 こんな早技で息のあった攻撃、普通は出来ないはずだ。しかし、この2人はその早技を合図なしでやってのけ確実に殺しにかかっている。 「団長!」 「なんだ、あの速さは…攻撃してから次に移るまでの間が速すぎる。」 これを見たカレンとエバルフも同じことを思っていた。 「よし!まずは1匹目だぜ!!次はこの2匹だな。」 「害虫は早く駆除しないとな。」 カレンとエバルフに剣を構える2人。 「同じ属性でもこうまで違うとは…」 「桁違いだわ…」 2人は思っていた。 このままやり合えば負けるのは自分達…勝ち目がない。 「おいおい!何だよこいつら、ビビってんじゃねーか。」 「まぁ、これだけの差を見せつけられたらそーなりますね。では、駆除の方を…」 すると後ろから影が現れ、ライクとニケルはその影に再び巻きつかれた。 「この影は…」 後ろにはカイルがどういう訳か無傷で立っていた。 「ば、馬鹿な!お前は俺の居合切りで仕留めたはずだ!」 「残念だな。俺は生まれつき傷の治りが尋常に早いんだよ。なんでかは俺にも分からんがな。」 「ぐっ!」 そして2人に巻きついた影がどんどん強くなっていく。 「お前らがさっきから使ってる魔法は初級魔法だな?通りで魔法の威力が低いと思ったが、お前らはその自慢の超人的な身体能力でカバーしてたって訳だ。」 「何ぃ?」 「だが、無駄だ。俺の影魔法に拘束されたら初級魔法ごときじゃ脱出出来ん。大人しく降参…。」 「「…俺たち(僕たち)を、舐めるなよ!」」 するとライクとニケルの紅い瞳が不気味に光ると、2人の体の筋肉が膨隆し、自身の属性の魔力が放出されながらカイルの影を引きちぎった。 その瞬間、ライクとニケルは紅い目を光らせた状態でその場から一瞬で消えた。 先に攻撃を仕掛けたのはライクだった。 ライクはカイルのみぞおちに雷で纏われた拳を打ち込んだ。 ライクの攻撃が当たってから直ぐにニケルの風を纏った足でカイルの顔に蹴りを入れ、カイルはそのまま壁まで飛ばされる。 飛ばされたカイルは壁にめり込み、その衝撃で口から血を吐いた。 「ぐはっ!…さっきまでとは威力が違う…だと?」 「そうだ、これが俺ら月の民が持ってる特殊な魔力、(妖力)だ!これで一瞬で片付けてやる!」 「何?妖力だと?」 妖力とは、月の民でも稀にしか持っていない希少な魔力でありライクやニケルの様に身体能力を底上げする他に自分の妖力も上げることが出来る。 その妖力の根源は太古に世界を脅かした化け物の魂が転生によって乗り移った物だと言い伝えられているが、それを詳しく知るものは1人もいない。 それでも、魔力では神級魔法を使うカイルより劣るはずだったが彼らには勝てるという自信があった。 「確かに、騎士団団長を相手に僕1人だったら当然負けるだろう。しかし、僕にはー」 「俺にはー」 「「こいつがいる!」」 ライクとニケルはお互いを目で見合い、2人同時に言った。 「まあ運が悪かったな。相手が俺達じゃ、どの道助かりはしない。」 「…どうかな?」 「あっ?」 「お前らの攻撃パターンは大体分かった。次で終わらせてやるよ。」 それを聞いた二人は馬鹿にした様に笑った。 「アハハハ!聞いたかよ今の?」 「ククク…まるで僕達を倒せると言ってるみたいだね?」 「倒すって言ったんだよ。この、俺の奥の手でな。」 するとカイルの足元から影が浮き出し、カイルの双剣を纏うと刃の部分が黒色に変色した。 影を双剣に纏った為、カイルの足元に影が無くなりカイルの瞳は黒色からライクとニケルの様な紅い瞳に変化した。 しかしカイルはその状態になったのに剣を構えるどころか剣を鞘になおし、一見無防備な状態だった。 そして。 「さぁ、どっからでもかかって来い。」 明らかに挑発しているカイル。 「舐めやがって…いいだろう、戦う気が無いなら遠慮無く殺してやるよ!行くぞ!ニケル!」 そしてライクとニケルは再び瞬間的に動いた。 二人はカイルの横に回ってさっきの様なコンビネーションでカイルに致命的なダメージを与えようとしていた。 しかし、二人は同時に剣を振り下ろそうとするがカイルはその攻撃を剣で受け止めようとせず前を向いた状態で二人の剣を交わす。 「「なっ!?」」 交わされた事に焦り、もう一度体勢を元に戻そうとした瞬間カイルは二人の顔を見ずにライクの頬を右肘で肘打ちし、左足でニケルの腹を蹴り飛ばした。 「がっ!…なんでだ?こっちを見てなかったはず!」 「くそっ!これなら…」 ニケルが妖力を強めた事によってさっきよりも強い突風を纏うと更に筋肉が膨隆しカッターシャツの袖がはち切れた。 ニケルはそれを纏った状態でカイルに向かう。 さっきよりも速く威力もあるはずなのに、カイルは息を切らすこと無く軽く交わしていく。 ニケルは瞬間で背後に回って剣でカイルの首を斬ろうとした瞬間、カイルは遂に双剣の一本を鞘から抜いた。 そして、自分の剣でニケルの剣を真っ二つに折ると腹を斬りつけ、ニケルは血を噴き出しながら倒れた。 「ぐあぁぁぁあ!!」 「大丈夫か!…このヤロー!舐めた真似を…」 「なんだ、この程度か…やめとけ、こいつだけでも俺にかなわなかったんだ。お前に何ができる?」 すると、倒れていたニケルがゆっくりと立ち上がった。 「…まだだ…まだだよ!ライク、二人の全妖力であいつを切り刻むぞ!」 「おう!」 すると、ライクとニケルの腕と持ってる剣が粘土の様に混ざり合い同化した。 同化すると二人の腕が鬼の様なこの世の物とは思えない恐ろしい形になっていた。 ライクの右腕は雷で帯びた鋼に変わり、ニケルの左腕は風は纏われていないが指先が鋭利な刃物に変化した緑色の鬼の手になっていた。 「いくぞ、俺達の奥義。ー雷神よ、地の者に神の鉄槌を!」 「ー風神よ、神なる風を我に与えよ!」 「「合体魔法(ユニゾンマジック)!風雷鬼斬(ふうらいきざん)!!」 するとライクの腕は黄色く、ニケルの腕は緑色に光り輝く。 その光に綺麗さは無く、濁りのある怪しい光だった。 そして二人はその腕の状態で目に見えない速さでカイルに突撃した。 しかし、それを見てもカイルは剣で対抗するどころか余裕の笑みを浮かべていた。 そして次の瞬間、カイルは両腰に下げている双剣を鞘から抜いた。 右の手で左の剣を抜き、左の手で右の剣を抜くとクロス状になる様に目の前に剣を振った。 ーー金属と金属がぶつかる音が聞こえ、そこから雷と風が合わさった衝撃が発生した。 二人がかりの攻撃だというのにカイルは押し負けるどころか逆に押していた。 「「ハァァァア!!」」 二人はそれに負けじと二人がかりで剣を押し続ける。 「なるほど、それがお前らの妖力。…本来、人と相容れないはずの物質を取り込む事が出来るという魔法とは別の特殊能力だな。…だが…それがどうした?」 そして、そのままカイルの剣はライクとニケルの鋼の腕にヒビを入れそのまま力で振り切った。 振り切るとライクとニケル、お互いの腕から腹まで斬り傷が入り、そのまま倒れてしまった。 「ガハッ!…強すぎるだろ…こいつ…」 「ハァ、ハァ、…僕たち…二人がかりで…しかも、本気のアレを…」 「残念だな、俺のこの赤くなった目は相手の影に反応する。どれだけお前らが目に見えない速さで移動しても相手の影さえ察知すれば相手の距離、力、速さが手に取るように分かる。そして…」 「…なんだ?…体が勝手に!」 「俺のこの黒く染まった剣で直接体に斬られた物は今から10分間、俺の思い通りに操れる。」 すると、ライクとニケルは斬られて動けない筈なのに体が勝手に立ち上がろうとする。 「さて、今からお前らは俺の言うことを無視することは出来ない。シルフの騎士団に引き渡す前にここで事情聴取を行うぞ。」 「誰がお前らなんかに…ぐっ!…がっ…なんだ…この胸が締め付けられるような痛みは…」 ライクの首には黒い影の縄が徐々に締め付けていた。 「言ったはずだ。今から10分間は俺の思い通りだと。さっさと話せ。さもないとそのまま影で絞め殺すぞ。」 観念したのかライクは抵抗をやめ、ポツポツと話し始める。 そして、ライクの口から衝撃の事実が放たれた。 「…12年前、俺たち月の民の殆どはあんたら騎士団に殲滅させられた。その事はあんたらも知ってるだろ?」 3人は知っていた為、黙って頷いた。 「なぜ、殲滅させられたか知ってるか?イフリークの騎士団団長。」 「俺はその時騎士団に居なかったから詳しくは知らんが、月の民の者がシルフに住んでる子供を撃ち殺した為だと昔聞いたが…」 「違う!俺らの存在が世界を脅かす存在だと勘違いしたシルフ王の命令だ!」 それを聞いた3人は言葉を失った。 それからライクは話を続けた。 シルフの王は本来相容れぬ筈の物質を自身に取り込む力を異端の力だと考え、そしてその力を扱う月の民もまた異端だという思い込みで殲滅を開始しようとした。 各4大国の騎士団の魔導士や、絶対的な魔力を持つ手練れの魔導士など当時の最強を集めた殲滅作業はより徹底されていた。 この当時はキュアリーハートの事件よりも前の出来事である為、グレンの様な悪魔祓いは存在していない。 月の民の者達は自ら持っている身体能力と妖力で立ち向かおうと戦うが、徹底された殲滅に用意された数には到底叶わず、殆どの月の民は皆殺しにされた。 「…そして、その殲滅の中運良く生き残ったのが俺とニケルだ。そして何もなくなった俺たちは生きる為に盗みを働いた。対象はシルフとイフリーク、どちらかを越えようとする者。俺らはそいつらの馬車をある所に誘導させそこで金品を盗み中の乗客全てを皆殺しにしてきたのだよ。もう一人を操縦席に残してな。」 「もう一人?もう一人仲間がいるってことか!?」 「仲間?…まあそうだな。確か8年くらい前かな?イフリークからシルフの学校に転校する為にここを越えようとした女だ。」 「イフリークから…シルフに…」 「当時僕たちも妖力を上手くコントロール出来なかったからもあるが、その女には手も足も出なかった。それで返り討ちに合うかと思ったんだけどどういう訳か僕たちの仲間にしてくれって言われたんだよ。」 「確かそうだったな、ニケル。俺女に力で敵わないって思ったのは初めてだよ。」 敵わない…イフリークからシルフに転校…どこかで聞いたことある… 記憶を辿って思い出そうとするカイル。 「…まさか!」ライクとニケルは城の裏側にある人気の無い場所へと移動した。 後ろから尾行していたロゼアは壁に隠れながら、ライクとニケルが話をしているのを覗き込んでいた。 …側から見れば只のストーカーにしか見えない。 壁の向こうではライクから先に声を掛けていた。 「で?どうしたんだよ。さっきも、お前一言も喋らなかったし。」 先程の会話でも、ニケルは浮かない顔をしながらグレンやグロードの話を聞いていた。 その理由は。 「…僕達とグロードさんの関係って、これからどうなるのかなと思って。」 「グロードとの関係?」 何を言ってるのか分からないライクだが、ニケルはそのまま説明を続けた。 「大恩あるグロードさんの事を、僕はずっと亡くした父親の様に思ってた。本当の父親じゃ無い事は分かってる。だけど、まるで親子みたいな今の関係性が僕は好きだったんだ。」 「けど、生き別れた本当の息子であるグレンが戻って来たら、もうそんな関係には戻れないのかなって…。」 ニケルの悩み。それは本当の息子であるグレンが戻ってきた以上、自分達はグロードの息子の代わりにはなれないという事である。 また今までの関係性も変わってしまい、もうグロードに相手にされないのでは無いかという不安もあった。 「勿論、グレンと再会出来た事は僕も嬉しいけど。…やっぱり良いな。本当の親が生きてるのって。」 月の民殲滅戦で両親を亡くしてるライクとニケル。特にニケルは子供の頃は甘えん坊であった為、親への未練はライクよりも強い。 親の居ない2人にとってグロードは父親同然。しかし、本当の父親になる事は出来ない。 そう思うとニケルは、少し寂しく感じていた。 それに対してライクは。 「ニケル…お前の言う様に、あいつは俺達の父親じゃねえし、俺達があいつの息子代わりになる事も出来ねえ。」 「……」 「でもよぉ、俺達とグロードとの関係性は何も変わらないと思うぜ。」 「…え?」 落ち込み俯いてたニケルはライクの顔を見た。 「俺もあいつの事は父親みたいに思ってたけど、どっちかと言えば師匠に近い感じだな。それに、あいつは面倒見が良くて、いつも丁寧に俺達の修行に付き合ってくれた。」 「優しい奴だからさ、例え息子が居ようと俺達との師弟関係まで変わる事はねえよ。」 「ライク…
魔導兵器ラウスを倒した事と、北の軍事兵器もグロードが破壊した事により、北の大国が今後攻撃してくる事は無いだろう。北の大国は多くの軍人と軍事兵器を失った事により、いずれ国の財政が崩れ破綻に追い込まれる事となる。戦う力を失った北の大国ウンディーネは結果的に敗戦国となり、これにより東北魔導大戦は事実上終結する事になる。しかし東の大国も無傷という訳にはいかず、今回の魔導兵器ラウスとの戦闘によって沢山の死傷者が出ていた。それだけではない。東の大国の主戦力が戦っている間、手薄になった城内にて更なる事件が起こってしまう。ノーム王の暗殺。戦いが終わった後、城内へ行くとそこは戦場と同じくらい凄惨な状況となっていた。医療班の人も殆どが殺されており、警備の者達に関しては、肉体が残っていれば運が良かったと思えるくらいバラバラに殺されていた。一体誰が実行したのかは不明。しかし、こんな事をするのは1人しか居ないとグロードは気付いていた。「…ベリエル!」見たところ胸部を刺殺(しさつ)されて殺されている様に見えるが、医療知識が豊富なグロードはノーム王の身体を少し触れただけで他の殺害方法で殺されたのだと判断する。「…内臓が全て潰されている。まるで身体の中をかき混ぜられたかの様に……許せない。」あまりにも残酷な殺し方をされている為、グロードは沸々と怒りを覚えた。この場には他にグレン、ミーナ、エミル、ライク、ニケル、フィナ、ネル、そして八握剣(やつかのつるぎ)のギンジが居た。カイルとロゼアとアルバスは意識を取り戻したが、戦いで受けたダメージが大きく、今は休んでいる。他の八握剣(やつかのつるぎ)も同様に、命に別状は無いが大掛かりな治療が必要な状態である為、カイル達同様にこの場には居なかった。ノーム王が殺されている姿を見て先に悲しんだのは、当然八握剣(やつかのつるぎ)のリーダーであるギンジであった。「ノーム王…くっ…何で、こんな事に!」ギンジは両手を握りしめ、悔しさと悲しみで顔を横に向きながら涙を流していた。王の懐刀である八握剣。そのリーダーともあろう者が他のメンバーを救えず、更には王の命さえも守る事が出来ず、ノコノコと生き残ってしまった。ーー俺のせいで…役立たずにも程がある!しかし、それに対してミーナが。「ギンジさん。自分のせいだなんて思わないで下さい。皆んな
そして更に4年後。ラウスは18歳になり、ルーファスは9歳となる。ラウスは高校3年の学年となり、全ての成績において優秀な成績を収めていた。幼い頃から教えられた事は殆ど完璧にこなすその姿を見て、いつしかラウスは神童と呼ばれ将来を期待される様になる。しかし、ラウスは魔法を仕事にする道は選ばずそのまま農作業を営み続ける道を選んだ。当然教師はラウスを説得するもキッパリと断った。自分の将来の夢よりも、ルーファスの側にずっと居る事の方が大事だったからである。こうして学生の頃はそれなりに有名だったラウスは、突如として公の場から姿を消したのだ。一方、ルーファスもラウス同様に成績が良かった。ラウスが合間を縫って勉強を教えているのもあるが、どうやらルーファスも少し教えればすぐ覚える事が出来るのだろう。「(流石は俺の弟だな。)」勉強を見ていたラウスは心の中でルーファスを誉めていた。ある日、ルーファスはこの家に元々住んでいた老夫婦の写真が飾ってある仏壇を見て質問してきた。「兄さん。この人達って、僕達とはどういう関係なの?」あの頃、まだ赤ん坊だったルーファスはこの家に元々住んでいた老夫婦の存在を知らない。「この人達はね、俺達の親みたいな人だよ。本当の親じゃ無いけど、親のいない俺達の面倒を見てくれた人だ。」亡くなった老夫婦の事をラウスは自分の親だと思っており、ラウスにとっては生きていく術を教えてくれた恩師でもあった。「そーなんだ。…じゃあ、僕達の本当のお父さんとお母さんは?」1番聞かれたく無い質問をルーファスは悪気なく聞いてくる。当然である。ルーファスは親の事を何も知らない為、本当の親が気になるのは当然の事。…そっか、あの時お婆ちゃんはこんな気持ちだったんだ。そりゃ、言いたく無いよね。ラウスはルーファスに聞かれた事により、あの時のお婆ちゃんの気持ちが少し分かった。あの時から親の事はあまり思い出さない様に生きてきたラウス。正直、あまり親の事を聞かれても何て言ったら良いのか分からなかった。只、ラウス自身が抱いてる気持ちとして言った。「…ロクでも無い人達だよ。父親は俺と母親を置いて出て行き、残された母親も親の責任を放棄して出て行った。」まだ子供に言うべき事では無いのだろうが、ついつい自分の感情任せに言ってしまったラウス。「そうなんだ。…でも僕、少し会
お母さん…何で帰って来ないんだよぉ…。俺1人でどうしたら良いの?どれだけ待っても帰って来ない母親のヒスイ。既に半日以上待っていたのだが帰って来る気配が無い。ラウス自身、半日以上何も食べていない為、空腹が限界を通り越していた。「おぎゃー!!」泣き叫ぶ弟のルーファス。生後3ヶ月の赤ん坊。お腹も空くし、オムツもしてるから替えてあげないといけない。その他にも、身体を清潔にしないといけない。…どうすれば…。ラウスは寝室で泣いているルーファスの所へ行き、様子を見た。「おぎゃー!おぎゃー!」「凄く泣いてる…こんな時、お母さんどうしてたっけ?」ラウスは普段、母親がどうやってルーファスの世話をしていたのか思い出していた。そしてヒスイが何をしていたのか思い出したラウス。「…まずは、オムツかご飯か。どっちかだけど…嫌だなぁ、オムツの匂いを嗅ぐのは…」それでも我慢してオムツの匂いを嗅ぐラウス。「…多分こっちじゃ無いか。じゃあミルク作らないと。」ラウスは台所にルーファス用のミルクが保管されている所を覚えていた為、そこに行ってミルク粉と哺乳瓶を取り出す。「えっと…先にお湯を温めるんだっけ?」初めての事でどうすれば良いか分からないラウス。しかし、取り扱い説明書があったので、それを見ながら何とか作って哺乳瓶に入れる事が出来た。「よし!後は水で冷まして…よし!」人肌まで冷まし、ラウスはそれをルーファスに飲ませる為、ベッドから起こした。「おーよしよし!ミルクだよ〜。」ヒスイが言ってた様に真似しながら、ルーファスにミルクを飲ませてあげるラウス。ルーファスは勢いよくミルクを飲んでおり、よっぽどお腹が空いていたのが見て分かる。半日、何も食べなければ大人でもお腹が空くに決まってる。「俺も何か食べないと…。」そう言ってラウスは戸棚にある非常食を取り出し、空腹を埋める為にそれらをお腹に詰め込んだ。見たところ、非常食やミルクの量から数日は持つだろうと判断した。しかし、この食料が無くなったらどうしようかと。ラウスはそれが恐怖で堪らなかった。「どうすれば…後、お金だけど。お母さんの貯金でどれだけ過ごせるのか…。」勝手にお金を使う事に抵抗感があるも、生きる為には仕方ないとヒスイが管理してる通帳を確認する。子供では見た事の無い数字に驚くラウスであったが、実際の
真っ暗な暗闇の中。1人の女性が下を向きながら何かを覗き込んで泣いていた。「…ラウス……ルーファス……どうして、こんな事に…。」その女性はヒスイであった。ここは死後の世界であり、この暗闇の空間は死後の世界へ行く前の道。死後の狭間である。ヒスイは死後の世界へは行かず、死後の狭間にある暗闇の空間で家族を見守りながら待ち続けていたのだ。そして現世を見ながら自身の息子達が戦う姿を見て涙を流していた。すると後ろから。「…2人が戦っているのか?」その声の主はヒスイの父親であり、グレンに龍技の真髄を教えた竜の民のドグマであった。後ろからドグマに言われたヒスイは、涙を流しながら振り返る。「…お父さん。」「ヒスイ。…お前も辛いのは分かるが、今の俺達には見守る事しか出来ない。」そしてヒスイの隣に座り、現世で戦うグレン(ルーファス)とラウス。2人の戦いを覗き込む。「信じるしか無い。グレン…いや、ルーファスの事を。そして、あいつの強さを。…きっとあいつが兄を救ってくれる筈だ。」ヒスイはグレン(ルーファス)が生後3ヶ月の時にこの世を去った。ドグマもヒスイが家を出てから、自分に孫が居る事も知らずに30年間虚しく過ごしてきた。しかし、その孫であるグレン(ルーファス)は偶然にもヒスイの父であるドグマと出会い、龍技の真髄を教えてくれた。運命が知らない内に引き合わせてくれたのだ。そして今、ドグマに教えられた龍技の真髄によりグレンは、魔導兵器となり殺戮の呪縛に囚われた兄ラウスを救う為に戦っている。自分の弟子であり、孫でもあるグレンをドグマは信じていた。「(グレン。お前の生き様を、今こそ見せてくれ。)」ドグマの墓前で言ったグレンの誓いに対し、心の中で返答した。信じる事しか出来ないヒスイとドグマは、ラウスとルーファスの行く末が少しでも救われる様に、両手を合わせて祈る。あの世でヒスイとドグマが見守る中、現世ではグレンとラウスの死闘が繰り広げられている。戮力体竜変(りくりょくたいりゅうへん)によって竜人化したグレンは先程とは違い、身体機能が大幅に強化される。自然魔力を体内に取り込む戮力体竜変。それにより身体に現れた竜の鱗は鋼をも上回る強度を誇る。その拳でラウスの胸部を殴る。バコォォォン!!!グレンの拳により、ラウスの硬い胸部は拳大の大きさに凹んだ。グレ
ミーナ達はネルの空間移動でカイルやエミルの救出に向かっていた。エミルはアルバスとロゼアを氷で作った台車に乗せて運んでいたが、その途中で見つけられる。意識を失っていたアルバスとロゼアはミーナの光の回復魔法によって意識を取り戻した。「あれ、ここは…。」目を覚ましたロゼアはゆっくりと目を開ける。「お、気が付いたか!大丈夫か!?」視界に入ってきたライクは心配そうに声を掛け、その声で徐々に意識がハッキリしてきたロゼア。「え…何で…?ライク?」「ああ。俺達は丁度さっき戻ってきた所だ。大丈夫か?」「…心配、してくれてるの?」今まで北の大国では心配される事の無かったロゼア。半分信じられないといった感じでライクに聞いた。「ああ。お前も俺達の代わりに戦ってくれてたんだろ?俺達が不在の中、良くやってくれたぜ。本当に感謝してる!」ライクは笑顔でロゼアに言うと、ロゼアは嬉しさで左目からジワッと涙が溢れてきた。ライクの笑顔を見れて良かったと、安心していたのだ。ネルも同様に、目を覚ましたアルバスに一言声を掛ける。「…僕との約束、ちゃんと守ってくれたね。」「…ごめん。倒す事は出来なかった。」「仕方ない。後はあの男(グレン)に任せよう。」短い会話ではあるものの、ネルは約束を守って戦ってくれたアルバスに感謝した。そして次はカイルの所にも空間移動した。転移した場所でカイルはボロボロの状態で倒れていた。ミーナとニケル。2人の回復魔法を使ってようやく意識を取り戻したカイル。普段タフなカイルであるが、意識を取り戻してもその声はか細く弱々しかった。「…みんな…帰ってたのか?…」「カイル君!エミル、カイル君が目を覚ました!」意識が戻った事を確認したミーナは慌ててエミルを呼んだ。エミルも慌てながらカイルの顔に近づいた。「カイル!」「エミル…良かった…無事だったのか…。」「馬鹿!いつもいつも!自分の事を後回しにして!本当に馬鹿!」ボロボロと涙を流しながらカイルに対して言うエミル。それに対してカイルは一言。「…ごめんな。」そうエミルに言うと、エミルは更に号泣しながらカイルの胸元で泣きじゃくった。「カイル君。連絡してくれてありがとう。今ね、グレンが戦いに行ってるの。」「グレン…そうか。なら、安心だな。」そう言うとカイルは安心した様に目を閉じて眠った
時は少しさかのぼり、現在ミーナとハンジはグレンの部屋に向かおうとしていた。 「グレンの部屋は確か…こっちです!」 ミーナはハンジをグレンの部屋へと誘導していく。 そして、グレンの部屋の前まで着いた。 「グレン、大変だよ!カイル君が盗賊に…って、あれ?」 部屋を開けるがどこにもグレンの姿が見当たらなかった。 「…いないみたいね。」 「本当に、グレンは…」 こんな時でも勝手な事をするグレンに呆れるミーナ。 「どこ行ったのでしょうか?」 「分からないです…でも、あまり自分から動かないグレンが自分から動くって事は何かあるって事だと思いますよ。…何か、嫌な事が起こ
そして現在、俺はこの国の危機を守らなければならない!そのために俺が…俺が…!! 「うわぁぁぁぁぁあ!!!!」 カイルが思いっきり剣を振ると黒い根っこは根元から一気に切り落とされ、切られた部分が霧散していった。 多少時間を稼げるが再生を続けるこの黒い根っこは10秒もあれば元どおりの状態に戻れた。 「このままじゃ…このままじゃ…」 諦めるな!カイル! エミルの声が頭の中で蘇った。 「そうだな、よし!俺も本気出さないとな。」 するとカイルの剣が黒く変色し、瞳が黒から赤く変わった。 「一発で止めてやる!」 カイルは縦に思いっきり振ると根元まで一直線に切れていった
グレンの魔力が溜まるまであと2分をきったがカイルにしてみたらこの時間は非常に長く感じた。 腕の筋肉が痙攣しすぎて既に感覚が無くなっていた。 「あともう少しだけ持ち堪えろ、騎士団の団長。あと少しでこの悪夢を終わらせてやるよ。」 「たの…むっ!」 しかし、黒い根っこは時間が経つに連れて再生するスピードを上げてくる為どんどん追い込まれていくのだった。 だめだ…追いつかない! そう思った時、カイルの頭の中で声が聞こえた。 「あんたって、すぐ諦めるよね。なっさけないなー!」 その声は綺麗な声であるが口が悪く少し男勝りな感じがした。 そして頭の中でその声の主を連想させた
「うわぁぁ!もう2人ともなんでこんなに強いのよぉ!」 この2人の衝突に巻き込まれたくないミーナは建物の陰に避難した。 2人は剣を交じり合わせながらお互いを褒めた。 「俺の双剣を直で受け止めた人はもしかしたら君が初めてかもしれないね。」 「お前も、俺の剣を受け止めるとは中々だな。」 「それは光栄だね。じゃあこれはどうかな?」 カイルは一旦グレンから離れると横一直線に2つの剣を振った。 するとグレンのそばにあった建物が斬れて上からぐずれ落ちてきた。 その建物の残骸を刀で真っ二つにし、再びカイルに近づこうとした。 「俺がこんなヤワな攻撃でダメージを与えれるわけない