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第677話
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慌てて元旦那を高嶺の花に譲った後彼が狂った 第1036話
海人は口元を引き上げて笑った。「お前、そんなにゴシップ好きなら、ジャーナリストになればよかったのに。ファッションなんて、もったいない才能の使い方してるよ。それなら、社会の害悪も一掃できるかもね」来依は彼をぺしっと叩いた。「私が聞きたいのはそういうことじゃないの」海人は実のところ、明日菜のことは詳しく知らなかった。高杉家とはあまり親しくなく、この手の話は清孝の方が詳しい。「揉めてたのは知ってるけど、詳しくは清孝に聞いた方がいい」来依はじっと彼を見つめた。その視線に、海人は少し気まずくなった。「……なに？」来依は腕を組み、目を細めて言った。「まさか、私が清孝に聞くのを狙ってるんじゃないでしょうね？そうすれば、彼がそのネタを使って、私に紀香との仲を取り持たせようって？」「……」海人は眉間を押さえながら言った。「やっぱり、お前には見透かされてるな」来依は得意げに顎を上げた。「当たり前でしょ」海人は彼女の顎を指先で軽く持ち上げた。「別にお前に解決してほしいわけじゃない。清孝自身、彼女との問題にはちゃんと向き合うつもりさ。ただ、お前から紀香の本音を聞いてもらえたらと思って」「向き合うつもりなら、彼女の気持ちくらいわかってないと変でしょ？」「……」本当のところ、海人もあまり深入りする気はなかった。けれど、清孝は親友のような存在。自分のために尽力してくれた相手に、できることはしたかった。恋愛には簡単に首を突っ込めないにしても、遠回しに釘を刺すくらいはできた。「無駄な遠回りをしない方法もあるだろ」来依は何も分かっていないわけではなかった。彼らがまだ仲直りしていない時期に、海人と清孝の連携プレーを見せつけられたこともあった。──この二人、策士ぶりでは引けを取らない。「ゴシップのために友達を裏切るなんて、俺には無理」「あんたが判断してくれていいよ。でも私、ゴシップが聞けないと眠れないんだよ。お腹の子が元気に育つかどうか……あんた次第ってわけ」「……」──それなら、やっぱり嫁と子どもが大事だ。海人は手を挙げて、誓うようなポーズを取った。「誓って言うけど、詳しいことは本当に知らない。ただ、檀野明日菜の性格はもともとああいう感じで、子どもの父親が誰かとか、そういう
慌てて元旦那を高嶺の花に譲った後彼が狂った 第1035話
来依は彼の顔を手で向けさせ、そっとキスを落とした。「……」海人は目を閉じ、呼吸を落ち着かせようとした。「なに？嬉しすぎて、旦那を殺して祝おうって気分？」「何バカなこと言ってんのよ」来依は彼の頭をぺしっと叩いた。「こんなめでたい日に、縁起でもないこと言わないで」海人は彼女の手を握りしめた。「じゃあこれは、どういう意味？俺が苦しんでるの見て、楽しいってこと？」「そんなわけないでしょ。あんたがつわりで辛そうなの見て、こっちの方がどれだけ辛いか。お腹が空いてるって分かってるのに、どうすることもできなくて、もう、イライラしちゃう」「……それ、言う前にまずその笑顔どうにかして？」来依は腹を抱えて笑い出した。そのまま彼の腕の中に崩れ込むように笑い転げた。海人は呆れたように言った。「ほんとに、お前には敵わない。何でも聞いていいよ、わざわざ変な手使わなくても」来依は上体を起こして言った。「それより、何か食べてよ」「いらない」食べるって言葉聞くだけで、吐き気がする。「自分のことは分かってる」「あんた、胃が弱いのよ？分かってるで済む話じゃないでしょ」海人は彼女の問いを待たずに、話し始めた。「前に言わなかったのは、青城って男が疑り深くて、ちょっとでも隙を見せると、警戒心が強くなるから。検査も何度もやって、確実にしたかったし、秘密裏に進めてたから、情報が漏れたら困るってのもあった。それに、この結果を発表するタイミングも大事だった。世間に納得してもらうには、ベストな瞬間が必要だったんだ」来依は心底感心したように息を吐いた。「なんで、私が何を聞こうとしてたか分かったの？」海人は彼女のことなんてお見通しだ。そんな小細工、好奇心を隠すための演技にしか見えなかった。「ちょっとは俺のこと責めてるだろう。だからわざとじらして、気にさせたんだろう？」「あら、バレた」海人は彼女の頭をくしゃっと撫でて、バスルームへ向かった。来依はついていった。「どこ行くの？」「シャワー」「空腹で熱いお湯浴びたら、ふらっとするわよ？」「冷水で浴びる」「ごめん……」来依は顔を赤らめ、気まずそうに目をそらした。「さっきはちょっと……」「気にするな」海人は彼女と目線を合わせ
慌てて元旦那を高嶺の花に譲った後彼が狂った 第1034話
「まず……先に謝らせてくれ。ずっと隠してたことがある」海人がそう口にしたとき、来依の好奇心は最高潮に達していた。「何よ、早く言って！」海人は段階を踏んで話すつもりだったが、来依がこの真実を知れば、悲しみよりも喜びの方が大きいと判断し、率直に伝えることにした。「河崎清志は……お前の本当の父親じゃない」静寂が訪れた。来依の目がだんだんと見開かれ、目玉が飛び出しそうなほどに驚いていた。言葉を失い、口を開けたまま、声が出なかった。ほんの一瞬、彼女は自分が聞き間違えたのではと錯覚した。長年の闇の中で生きてきた日々──殴られ、罵られた記憶が、スライドのように脳裏を駆け巡る。ずっと、そんな父親がいること自体が、自分の「汚点」だと思っていた。外では強がって、「心なんてない」なんて口にしていたが、内面は劣等感と敏感さで満ちていた。海人を好きになってからは、毎日が不安だった。いつかその過去がバレて、彼に迷惑をかけてしまうのではと。なのに今になって──河崎清志が実の父親じゃないなんて。本来なら、喜ぶべきこと。シャンパンでも開けて、祝杯をあげたくなるくらいの「吉報」。でも、今の気持ちは、ただ一言では言い表せなかった。感情がごちゃ混ぜになり、涙が頬を伝ってこぼれた。一滴、また一滴。海人の手の甲に落ちていった。まるで熱湯をかけられたように、海人の手がわずかに震えた。彼は彼女をしっかりと抱きしめ、すべての感情が出尽くすまでじっと支えていた。来依が泣いたのは、ほんのしばらくの間だった。涙が乾いた後、頭がすっきりして、胸いっぱいに湧き上がる歓喜が、体中を駆け巡った。彼女は海人の腕の中から飛び出し、酒を取りに走った。「これはお祝いでしょ！泣き寝入りなんてできないわよ、今日は酔っぱらうまで飲む！」海人は彼女から酒瓶を取り上げ、グラスごと元の場所に戻した。少し真剣な顔で言った。「妊娠してるんだよ」来依はようやく思い出したように、手をお腹に添えた。「嬉しすぎて……すっかり忘れてた」お酒がダメなら、誰かと喜びを分かち合いたくなった。彼女はスマホを手に取り、南に電話をかけようとした。しかし、海人がそれを止めた。「今の時間、彼女は出られない。それに、どうせ知ることになる」
慌てて元旦那を高嶺の花に譲った後彼が狂った 第1033話
紀香は佐夜子の隣に座り、変顔をして安ちゃんをあやしていた。「レッドカーペットに出てくれなきゃ、素敵な写真なんて撮れませんよ〜」「まあ、この子は口がうまいわね。私、もういい歳よ。今の若い子たちなんて、どの子も元気で綺麗でしょ」「でもそれとは違うんです。雰囲気というか……オーラ？どんな若い子も敵いませんよ、ほんとに」そんな風に話している間に、鷹は南の手を引いて、向かいの家へと戻っていった。ドアを閉めるなり、彼は彼女を抱き上げ、まっすぐバスルームへ。このところずっとミャンマーにいて、見るだけで我慢していた。禁欲期間が長すぎた。南は彼の急ぎぶりに、苦笑混じりに見つめた。──さっきは「今夜は娘と寝る」なんて嬉しそうに言ってたくせに、もう娘のことは頭から消えてるじゃないの……彼の火照った手を押さえながら、尋ねた。「清孝を送っていったとき、何か話してた？」鷹は今、それどころじゃなかった。ただ、彼女を抱きしめていたかった。南には、止める術がなかった。城壁は次々と崩されていく。疲れ果ててベッドにくたりと沈み、まぶたが落ちかけたその時、彼が耳元で囁いた。「本当に離婚なんて、あるわけない」「気にするな」……その頃。海人が帰宅してすぐ、来依は彼の様子がいつもと違うことに気づいた。だが、何も聞かずに、ただこう尋ねた。「顔色悪いよ、また吐いた？」海人は靴を脱ぎ、来依の手を取り、ソファへと座った。「大丈夫」来依の手が、彼の服の裾から中に滑り込んできた。海人はその手を押さえ、黒く澄んだ目で彼女を見つめた。「ダメだ、お前には刺激が強すぎる」来依は彼を睨み、手を引っ込めた。「腹筋くっきり。何も食べてないんじゃない？」「……」嘘をつこうとしたが、結局うなずいた。「レモン水は飲んだし、夜は食べなくても大丈夫」「一日何も食べてないじゃない」「そんなことないよ。残したやつ食べたろ？」「全部吐いたでしょ」来依はすぐに明日菜に連絡を取ろうとした。「せめて栄養補助になる薬でももらわないと、こんな調子じゃ体がもたない」海人は彼女のスマホを奪い、彼女を抱きしめた。顎を彼女の肩に置きながら言った。「明日飲むよ。今日は、お前に話したいことがある。すごく大事なこと
慌てて元旦那を高嶺の花に譲った後彼が狂った 第1032話
あの子の輪廻の道を汚すことになったとしても。「同じ舟に乗ってるんだ。飛び降りようったって無理。一緒に沈むしかないんだよ」そのとき、鷹のスマホが二度震えた。彼は口元を引き上げた。「鉱山事故の遺族が、ようやく口を割った。そっちは？人身売買の線、突き止めたか？」ちょうどその頃、海人のもとにも二郎たちからの報告が届いていた。彼は腕時計をちらりと見た。「まずは家に戻る。明日片付ける」鷹も特に異議はなかった。──連中に、今夜ぐらいは眠らせてやってもいいか。いや、実際のところ、眠れている者などいなかった。海人の側が静かであればあるほど、連中の不安は増していた。彼に会おうにも会えない。まるで頭のないハエのように、家の中をうろつき回るばかり。中には、白髪が一晩で増えた者さえいた。……鷹が家に戻ると、安ちゃんの部屋はにぎやかな雰囲気だった。南は彼を見て微笑んだ。「今夜、紀香ちゃんがうちに泊まるって。安ちゃんと遊びたいってさ」鷹は彼女の手を取って、優しく言った。「うん、君が決めてくれればいい」麗景マンションの向かいに買った家は、十分広く、ふたりの時間も邪魔されない。紀香も空気が読めるタイプで、到着早々「安ちゃんの部屋で寝るね」と言い、あの夫婦の空間には立ち入らなかった。安ちゃんは鷹を見るなり、腕をいっぱいに広げて、「う〜あ〜」と甘えるように声を上げた。「パパ、外から帰ったばかりだから、まずは手を洗ってからね」南は安ちゃんを抱き上げた。すると安ちゃんは、ぶちゅっとキスをしてきた。唾液が少しついたのを、南は拭き取りながら言った。「安ちゃん、もうすぐ幼馴染ができるかもよ。嬉しい？」佐夜子が笑って言った。「そんなこと、まだわかる年頃じゃないでしょ」そのとき、安ちゃんが南を見つめて、ふいに叫んだ。「ま……ままぁ！」南は目を見開き、驚きと喜びに満ちた声で叫んだ。「鷹、今の聞いた？！」「お義母さん、さっきママって、呼んだよね？」「紀香ちゃん、聞こえたよね？」三人がほぼ同時に答えた。「聞こえた！」南は安ちゃんのほっぺを軽くつまんだ。「お利口さん、もう一回呼んでごらん？」でも、安ちゃんは鷹の方を探していた。鷹は手を洗い終えると、安ちゃんを抱き上げた
慌てて元旦那を高嶺の花に譲った後彼が狂った 第1031話
鷹は、海人の曖昧な態度を見て言った。「お前、着替えて戻ってくるなんて、来依がバカじゃない限り、どこ行ってたかすぐバレるだろ？」海人はベルトを締めながら答えた。「最初から、察してたよ」鷹はそれ以上突っ込まず、話題を変えた。「親子鑑定の結果、来依にはまだ話してないんだろ？」「これから帰って話す」……市郊外。一郎は、親子鑑定の報告書を青城に手渡した。青城はその書類に目を通し、最後の「血縁関係なし」の文字を見て、凍りついた。信じられなかった。「そんなはずは……」もし来依が河崎清志の実の娘でなかったとしたら――来依自身は、海人の『汚点』ではなくなる。彼女の実の両親が有名無名にかかわらず、少なくとも河崎清志の娘であるよりは、何倍もマシだった。「海人が俺を騙すために、これを見せてるだけだ！だから、あいつは話の途中で急に立ち去ったんだ！きっと俺の計画が効いたんだ！だからお前ら、今になって必死なんだろ！」一郎は彼に一蹴りを喰らわせた。「ふざけんな、誰がこんなこと捏造する暇あるってんだ。若様はお前みたいなクズに時間使いたくないだけだよ。こんな仕事、俺らで十分だ。お前ごときに、うちの若様の時間を使わせるなんておこがましいにも程がある。それに、うちの若奥様が河崎清志の娘だったとしても、うちの若様はちゃんと花嫁として迎えに行くよ。お前とは違う」青城はその現実を受け入れられなかった。それじゃ、彼が失った恋人は何だったのか？海人が来依の家の前まで車で来たとき、一郎から電話がかかってきた。彼はすぐには車を降りず、通話ボタンを押した。「片付いたのか？」「いえ……若様……」一郎は口ごもった。「喋れねぇなら、その口いらねぇぞ」「待ってください、若様！青城が、どうしても死ぬ前に、あんたと話したいって言うんです」一郎は、五郎より頭が回る。こんな内容を五郎が言ってきたら、海人は気にも留めなかっただろう。だが、一郎からだと、少しは考えた。「スピーカーモードにしろ」「話せ」一郎はスマホを青城の前に突き出した。「海人……お前はどうして、愛する人と結ばれることができたんだ？」海人は冷たく鼻で笑った。「それが、お前の秘密ってやつか？」青城には理解できなかった。神様はどう
