Share

第101話

Author: 森の小鹿
「蘭のふしだらな様子が気に入らなかったみたいでね。何人かの上流階級の奥様方が腹を立てて、そのまま服を引き裂いたのよ。そうしたら、蘭は許してくれって必死に頼んでたんだから。

今思い出しても、ほんと笑えるわ。でも、その時の奥様方ときたら、あんたの母親があんな姿になってるのが、面白くて仕方なかったんでしょうね。賑やかな大通りまで引きずり出して、服を全部脱がせてから、その場で踊るように強要したのよ。

でも、泥酔してた蘭は、こっちが支えてやっても立てないくらいで……深津市社交界一の華なんて呼ばれてたのに、あの夜で全部終わっちゃったの。

最後に許しを乞う時のあの目つき……ふふっ。今でも忘れられないわ」

得意げに語る翠は、急に声を上げて笑い出し、復讐の快感に完全に酔いしれているようだった。

奈緒はうつむいたまま、自分でも気付かぬうちに動きを止めていた。

先ほど翠が話していた内容は、奈緒の断片的な記憶とすべて一致している。

ある夜、母親が突然自分を賃貸アパートの部屋に閉じ込め、そのまま一晩帰ってこなかったことを、奈緒はぼんやりと覚えていた。そして翌朝戻ってきた母親は、服がすべて引き裂かれ
Continue to read this book for free
Scan code to download App
Locked Chapter

Latest chapter

  • 我が子より他人の子?産後ワンオペ妻の離婚   第303話

    充が血を吐いたのは、仁哉への怒りで極度に興奮してしまったせいだった。そして倒れたのは、このところほとんど食事も取らず、もともと体力が落ちていたうえに、先ほど我を失ったように仁哉を何発も殴ったことによる、一時的な酸欠状態から来たものだったらしい。医師は改めて点滴と輸液を行い、必要な検査を一通り終えた。しばらくしてようやく目を覚ました充は、ぼんやりと天井を見つめていた。胸の奥に居座る鈍い痛みは少しも消えていない。記憶が走馬灯のように駆け巡り、これまで歩んできた人生が、鮮明に思い出される。充は環境に恵まれ、生まれながらにして成功の道へのレールが引かれていた。誰もが羨み、人々の注目を集める完璧な存在。あらゆる場面で頂点に立ち続けてきた充は、自分が負けることなど絶対に受け入れられなかった。だが、充本人だけが知っていた。自分の前には、どう頑張っても越えられない壁がある……仁哉だ。仁哉はかつて最も信頼していた親友であり、同時に、どうしても乗り越えられない存在でもあった。充の優秀さは、日々の努力の積み重ねで手に入れたものだったが、仁哉の才能は、まるで生まれた時から神に与えられたもののようだった。充が全力を尽くしてようやく届く場所に、仁哉はほんの少し背伸びをするだけで、あっさりと手が届いてしまう。二人は幼い頃から共に育ち、それぞれの家や業界の中で常に比較されながらも、肩を並べて進んできた。今まで、充は仁哉に何一つ負けてはいなかった。だが、その「負けていない」という結果を得るために、充はいつだって持てる力の全てを使い果たしてきた。だが、仁哉は?いつだって余裕があった。まるで当たり前のように、何事も思い通りにこなしていく。世界そのものが仁哉の味方をしているかのように、全てを手に入れていた。そして今、自分の結婚生活は崩壊寸前。「離婚」という刃が、いつ振り下ろされてもおかしくない状況だ。そんな時、まだ自分と奈緒の関係が完全に終わってもいないのに、仁哉は真正面から宣戦布告をしてきた。人生のあらゆる場面で競い続けてきた相手と、愛する人まで奪い合うことになるなんて。先ほど仁哉が口にした言葉が、何度も頭の中で繰り返される。必ず奈緒を守ると言い切った、あの揺るぎない眼差しと、絶対に譲るつもりはないという覚悟。それが充の心を追い

  • 我が子より他人の子?産後ワンオペ妻の離婚   第302話

    仁哉の眉間に皺がよった。険しい顔で充を見つめる。「僕と奈緒さんじゃなくて、そこまでして美紀を信じるのか?」拳を握り締める充の瞳には、溢れんばかりの怒りが渦巻いていた。「俺は、自分の目で見た事実しか信じない」仁哉の表情がさっと冷たいものになった。「そうか……なら、もう君に話すことはないよ」充が美紀を庇うつもりであることは明白だった。それに、ここは充の病室。これ以上居座る理由もないと判断した仁哉は、背を向けて立ち去ろうとした。ところが、仁哉が背を向けたその瞬間、突然充が襲いかかってきた。鋭い一撃が仁哉の右肩に叩き込まれる。「奈緒と堂々と関係を持って、俺の病室に勝手に入ってきただけじゃなく、美紀のことまで疑った……無事に帰れると思うなよ!今日こそ今までの借りを全部まとめて返してもらうからな!俺はお前を親友だって信じていたのに、裏では奈緒に手を出しやがって。仁哉……もう我慢の限界だ」不意を突かれた仁哉は抵抗できず、そのまま床へ押さえつけられた。充の容赦ない拳が、仁哉の身体に何度も振り下ろされる。一発、また一発……憎しみが込められた拳は鉄のように重くい。そんな拳が容赦なく顔面へ叩き込まれ、仁哉は目を開けることもできなかった。仁哉が反撃を試みようとした矢先、美紀が病室の入り口まで走り寄り、控えていたボディーガードを呼び込んだ。すると、仁哉の手足を押さえ込んだ二人のボディーガード。身動きのとれなくなった仁哉に充が一方的に暴力を振るい続ける。仁哉の口元から血が流れるのを見て、さすがに焦った美紀は、慌てて止めに入った。「充さん、やめて!仁哉が死んじゃう!そんなことになったら、栗原家に酷い目に遭わされちゃうよ」その声でようやく充は我に返り、拳を止めた。床に倒れている仁哉を見下ろし、低い声で告げる。「仁哉、奈緒にはもう近づくな。それでもお前らがまだ関係を続けるというのなら、今度は絶対に許さないからな。栗原家に力があるのは知っている。でも、青木家だってそう簡単に潰される家じゃない。もしお前が潰しに来るなら、こっちだって受けて立つさ。だが、一人の女のためにそこまでする価値が本当にあるのか?一度よく考えてみろ」ボディーガードたちが仁哉を放した。仁哉はゆっくり立ち上がると、口元の血を親指で拭う。胸の奥に溜

  • 我が子より他人の子?産後ワンオペ妻の離婚   第301話

    固く拳を握った仁哉が、入り口に立っていたのだ。その表情は深く沈み、全身からは怒気が立ち上っている。仁哉は瞬きひとつせず美紀を見据えた。その視線に美紀は思わず身をすくませ、震え出す。彼女は慌てて充の背後へ隠れると、その腰に両腕を回し、さらに強くしがみついた。反射的に彼女を引き離そうとした充だったが、美紀の震えを感じ取り、その手をそっと下ろすと、冷たい目で仁哉を睨みつけた。「よく俺の前に顔を出せたな。とっとと消えろ」仁哉は表情を変えないまま、美紀を指差す。「あの動画を見せたのか?」充の表情がさらに険しくなった。「まさか……お前たちがあんなことをしていたとはな……」仁哉は怒りを押し殺し、暗く沈んだ瞳で充を静かに見つめた。「僕たちがハメられたっていう可能性は考えないのか?」そう言うや否や、仁哉は充の背後に隠れていた美紀の腕を勢いよく掴んで、強引に引きずり出した。「美紀、本当にやってくれたな!君はただ愚かなだけなんだって思っていたけど、それは違ったみたいだな。愚かなだけじゃない……根っから腐ってる」美紀はよろめきながらも、充の服を離さないように必死に掴む。仁哉の怒りに燃える視線を見た充は、すぐに美紀の前へ立ちはだかり、声を荒げた。「悪いのはお前と奈緒だろ!なのに、なんで美紀に当たり散らすんだよ!仁哉、まさか美紀がお前を押さえつけて、奈緒の上に覆いかぶさらせたとでも言うつもりか?」仁哉は真っ直ぐ充を見返した。その目は怒りで赤く染まっている。「美紀が奈緒さんの飲み物に薬を入れたせいで、奈緒さんは意識まで失ったんだ。なあ、充……本当に君は簡単に騙されるんだな。君は僕と奈緒さんがそんな愚かな人間だって思ってるのか?」しかし、充は鼻で笑った。「そんなこと俺が信じるとでも?お前たちの酒に美紀が薬を盛るなんて、こいつがそんなことできると思うか?怒りで仁哉のこめかみに青筋が立つ。「……」この瞬間、仁哉は奈緒が感じていた疲労を、初めて心から理解した。充という男は、もう完全に思考が凝り固まっている。たとえそれが真実であろうとも、自分が信じたくないものは何一つ受け入れず、自分の思い込みの中に閉じこもり続けているのだ。内心ほくそ笑んでいた美紀は、ここぞとばかりに泣き崩れる。「仁哉…

  • 我が子より他人の子?産後ワンオペ妻の離婚   第300話

    美紀はすぐに携帯を取り出すと、急いでSNSの検索画面を開く。これも、彼女の計画の一部だった。奈緒と仁哉が一緒に歌っている動画は、すでに美紀が裏で操作したことで、トレンド入りしていた。美紀の瞳に、一瞬邪悪な色が浮かぶ。その動画をタップし、充に見せつけた。画面の中で歌う二人を見て、充の胸の奥は張り裂けそうなほど痛んだ。顔を覆う充の指の隙間から、一滴の涙がぽとりと落ちた。奈緒が青木家を苦しめ、株価を操作し、雨の中でひざまずく自分に見向きもしなかった……そんなことはまだ受け入れられた。でも、離婚が成立する前から他の男と堂々とスキンシップをとり、逢瀬を楽しむなんて。この映像は、本当の意味で充の心をずたずたに切り裂いた。充は深く息を吸い込んで呼吸を整える。そして、ぼやける視界で、もう一度静かにその動画を見つめた。自分は奈緒とこんなふうに、大勢の前で一緒にラブソングを歌ったことなど一度もない。だが、奈緒の歌声を聴いたことはあった。それは、奈緒が青木グループに加わった1年目の忘年会。奈緒は同僚たちによって、半ば強引に舞台へと上げられた。当時の奈緒は今よりずっと華奢で、舞台の上に立つ姿は、冷たく澄んだ、まるで蕾のまま咲こうとしている雛菊のようだった。誰もが彼女は緊張すると思っていた。しかし、彼女は洋楽の伴奏をリクエストすると、堂々と歌い始めたのだ。最初は少し探るようだった声が、次第に力強く広がっていく。まるで雪の中で凛と咲く白梅のように、すべての束縛を振り払い、自由を求める強さと決意を歌に乗せていた。その歌声は、そのまま充の心へも突き刺さった。充は奈緒から視線が離せず、そして曲のクライマックス……彼の心の奥深くにあった何かが、強く揺さぶられた。あの夜、充は「奈緒」という名の、歌声に強き意志を宿した短髪の女性を胸に刻み込んだ。今、動画の中で響く、澄んだ美しい歌声。色鮮やかなライトに照らされ、まるで花のようにキャンプ場に咲き誇る奈緒。それは、どこか懐かしくて、同時にあまりにも遠い存在に感じられる。こんなにも鮮やかで、美しい歌声を持つ女性は、自分の妻だというのに――別の男と共にラブソングを歌っていた。その動画を見れば見るほど、歌詞のひとつひとつが鋭いナイフとなって充の心を切り裂いていく。動画を見終えた充は、耐えきれず衝動的

  • 我が子より他人の子?産後ワンオペ妻の離婚   第299話

    充の鋭い視線が、美紀に向けられた。その表情には、明らかな苛立ちが滲んでいる。「こんな夜中に、わざわざそんなくだらない話をするために来たのか?」美紀への苛立ちは、もう何日もかけて充の中に積み重なっていた。特にこの入院生活の間、充は何度も何度も、奈緒が出産する前後に起きた出来事を頭の中で振り返っていた。もしあの日、美紀が転んで帝王切開などになったりしなければ、自分は海外の仕事など放り出して、すぐに奈緒の側に向かっていたはずなのに。その後もそうだった。美紀が産後の時期にわがままを言い続けた。悪夢を見たから来てほしい、産後うつで死にたい、離れないでほしいと泣きながら自分を何度も引き止めた。そんな彼女を心配したせいで、自分は結局、奈緒の産後の大切な時期をほとんど一緒に過ごせなかったのだ。今になって冷静に考えると、仁哉や奈緒との関係が壊れたのには、美紀の存在が大きく影響していると思う。そして今また、彼女は栗原家で大きな問題を起こし、自分をどうしようもない混乱の渦中へ引きずり込んだ。もし幼い頃からの付き合いがなければ、とっくに美紀のことなど相手にしていない。そんな充に向かって、美紀は携帯を突き出し、録画していた映像を再生した。充はベッドの背もたれに寄りかかったまま、何気なく画面へ視線を向ける。しかし、ほんの一瞬見ただけで、彼の漆黒の瞳が急激に沈んだ。次の瞬間、充は携帯を奪い取り、画面を食い入るように見つめた。ほんの数秒の間に、彼の表情は疑惑から驚愕、そして怒りへ。そして最後、その怒りは凄まじい憎悪へと変わっていった。充は携帯を粉砕しそうなほど強く握りしめ、目を血走らせる。「美紀、この動画……どこで手に入れたんだ?」「私もその場にいたから、私が自分で撮ったの。奈緒さんと仁哉は車の中で、抱き合って、キスまで……それに、電気まで点けてたんだから。誰かに見られることも、どうとも思ってなかったみたい。本当に、最低だよね……」充は青ざめた顔で美紀の肩を激しく掴んだ。「ありえない!俺と奈緒はまだ離婚も成立していないんだ。奈緒がそんなことをするわけないだろ?!奈緒はそんな節操のない人間じゃないし、仁哉だってそんな男じゃない!」理性を失いかけていた充は、怒りに任せて点滴の針を引き抜くと、ベッドから降りようとした。美紀は慌て

  • 我が子より他人の子?産後ワンオペ妻の離婚   第298話

    動画が仁哉と奈緒が歌っている場面に差し掛かったとき、仁哉の視線がキャンプ場の入り口に止まった。そこを指差して、仁哉が言う。「そこを拡大してください。そう、その女です」キャンプ場の管理人が動画を拡大した。ぼんやりとではあるが、確かに顔が見える。その女を一目見るや、仁哉の瞳に鋭い光が走り、彼は瞬時に立ち上がった。「奏介、この女の映像をすべて切り出して、証拠として残しておいて。誰がやったのか分かった。今すぐ問い詰めに行ってくる」仁哉は振り返ることもなくその場を飛び出して行き、奏介の視界からその背中はあっという間に消えた。奏介はあんぐりと口を開けたまま、モニターの中の女を見つめた。この……この女?普通の女にしか見えないし、画質も粗く、顔なんて見えやしないのに。これだけで誰か分かったのか?さすが設計をやっている人間は違うな。観察眼が鋭すぎる。奏介は心の中でつっこみながらも、素直に仁哉の命令に従って黙々と作業を始めた。仕方ない。仁哉が本気になった時は、このやり手の弁護士ですら怯んでしまうほど怖いのだ。奏介はかなりの時間をかけ、その女のキャンプ場での行動履歴を追跡し、証拠を固める。そして調べた結果、自分たちがテントを離れた際、その女が確かに自分たちのテントへ近寄ってきていた。そしてその後、すぐに立ち去っている。テントに遮られて決定的な瞬間こそ映っていなかったが、この女が怪しいという仁哉の直感は正しかったようだ。……美紀はあの動画を手に、充の病室へ向かっていた。深夜にもかかわらず目を開けたまま、うつろな目で天井を見つめていた充。奈緒との離婚が迫っていることを思い出すだけで、呼吸は乱れ、胸が締め付けられるように痛む。充は仕事でも恋愛でも、容易く諦めるような男ではなかった。だが、今はどうしようもない現実が目の前にある。奈緒の冷たい態度は、毎日少しずつ彼の心に突き刺さる棘のようで、抜くこともできないし、飲み込むこともできない。ただ、痛みだけが残り続けるのだ。すべてのプライドを捨て、奈緒の家の前で3日間も跪いた。それも、あれほどの豪雨の中で……奈緒が見ていないはずがない。万が一見ていなかったとしても、家には使用人もいるのだから、奈緒に伝えているはずだ。それなのに、奈緒は一度として姿を見せなかった。

  • 我が子より他人の子?産後ワンオペ妻の離婚   第1話

    「充、今日で赤ちゃんが産まれてから1ヶ月経つの。私たちを迎えに来てくれない?」青木奈緒(あおき なお)は、おくるみに包まれた娘を抱きながら、期待を押し殺した落ち着いた声で言った。しかし電話の向こう、夫の青木充(あおき みつる)は感情の起伏がなく、平坦な声で言った。「すまない、急に予定が入った。運転手にお前たちを迎えに行かせるよ」出産も、産後の大事な時期も、充はずっと仕事で忙しいと言ってそばにいなかった。今日は赤ちゃんと一緒に産後ケアの施設から帰る、記念すべき日なのに、やっぱり彼は来てくれない。奈緒は切なくなったが、それでもこぼれ落ちそうになる涙を必死にこらえた。「…

  • 我が子より他人の子?産後ワンオペ妻の離婚   第7話

    一方、荒れ果てたリビングを眺めながら、充は力なくソファに腰掛け、タバコに火をつけ、胸が締め付けられるように苦しかった。「井上、俺は奈緒に優しくしてこなかったかな?あそこまで怒ることないだろう?」恵は、床を掃きながら、そっと声をかけた。「旦那様は奥様にとてもよくしてらっしゃいますよ。ご結婚されてから5年、お二人が言い争うのを見たことがありません。ですが、子供を産んだ後の女性は気持ちが不安定になりやすいんです。産後うつにもなりやすいですし、旦那様の支えがもっと必要なんですよ」充は眉をひそめた。「産後うつだって言うのか?でも、他の女は子供を産んだって、こんなに変わったりしない。今

  • 我が子より他人の子?産後ワンオペ妻の離婚   第6話

    それから、蛍は奈緒が傷つくのを心配して、充から返信ひとつないことは、結局言い出せなかった。そして、奈緒が退院するまで、充は結局、姿を見せなかった。退院後、二人は黎と香織を連れて、碧瀾郷へと引っ越した。そこは、奈緒が半年前に入手した、リノベーション済みのマンションの一室だった。蛍の家はその真向かいの部屋で、隣同士に住むのは大学時代からの二人の夢だったのだ。だから半年前、蛍の向かいの部屋が売りに出されたと聞いて、奈緒は迷わず購入した。部屋には家具や家電が揃っていたが、まだどこか殺風景だった。蛍はすぐに自分の家から布団やポットなどの日用品を運んできた。奈緒は買い物リストを

  • 我が子より他人の子?産後ワンオペ妻の離婚   第5話

    「産後の回復がかなり遅れていますね。出産時に出血が多かったですし、低血糖で倒れやすい状態です。しっかり栄養をとって、気持ちをあまり高ぶらせないようにしてください」診察が終わっても、奈緒はまだ眠ったままだった。医師は病室で蛍に病状を説明した。隣で聞いていた香織が、ため息をついた。「奥様は産後の肥立ちが悪くて……最初の2週間はお乳が張って痛くて食事が喉を通らなかったんです。その後は赤ちゃんが夜泣き続きで……それでも奥様は自分で母乳をあげていたから、夜もまとまって眠れていませんでした。昼間は仕事もしていて、体が回復する暇もなかったんですよ」それを聞いて、蛍は怒り心頭になりそうだった。

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status