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第29話:呼び戻す鎖

last update Date de publication: 2025-06-05 20:51:11
午前の陽射しが、ようやく医療棟にも差し込みはじめたころ。

リリウスは椅子に腰掛けたまま、黙って窓の外を眺めていた。

外の景色はどこまでも穏やかで、風に揺れる木々の音が静けさに溶けていた。

けれどその静けさの中で、彼の心は凪いでいなかった。

心の奥にわずかな安堵はある。けれど、それで終わるわけではない。

そんなとき、控えめなノックが響く。

「……失礼します」

入ってきたのはディラン。手には、封蝋の押された一通の手紙。王都の紋章が浮き彫りにされていた。

視線を落としただけで、リリウスの指先に、自然と力がこもった。

「王太子殿下からの直筆です。召喚状に近い内容かと」

黙って受け取り、封を切る。

便箋に並んだ文字は丁寧だが、その行間に滲むのは一方的な支配欲と、支離滅裂な情だ。

“リリウス=アルヴァレス

そなたは正式な番であり、王城への帰還を命じる。

先日の件は誤解と判断する。今ならば、全てを許そう。

君の場所は、まだここにある。”

「……許す、って。捨てたくせに、どの口で言うんだろうね」

呆れにも似た笑みが、リリウスの唇を歪めた。

「“誤解”で済むと思ってる時点で、あの人は何もわかってない。

めがねあざらし

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