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監査 ― 紙の刃

ผู้เขียน: 吟色
last update ปรับปรุงล่าสุด: 2025-11-01 19:46:13

書けば動く。だから、書く者が刃になる。

朝の露台は、まだ冷たかった。

軒先に新しい布告が二枚、並んで揺れている。紙は白く、印は濃い。どちらにも同じ管理符が打ってあった――7-3-7。

「昨日も来た。……同じ印。版押し番号まで、いっしょ」

通りの書記見習いがぼやき、肩をすくめる。

リリィが近づき、紙の縁を目の高さでそろえた。指の腹で角をなぞる。

「番号、写しのくせに連番じゃない。……揃えすぎ」

「偽物が“本物の速さ”を真似してる」

ノエルが鈴に触れずに言う。目は布告から離れない。

セリアは紙と人のあいだに視線を往復させ、短く息を置いた。

「速さで本物を作らないで。……手で、確かめて」

通りを抜ける風が、二枚いっしょに鳴らした。片方は「告知」、片方は「解除」。同じ印影、同じ符。違うのは、紙の肌理の細さだけだった。

昼前、路地の角に人だかりができた。

摺り師が台を出し、布告の写しを両方“正”だと売っている。客は首だけ近づけ、声は遠い。

「口が三つ、耳が百。……今は聞くだけ」

ノエルが小さく笑って、すぐ笑いをしまう。

「止めるのは、呼べる時に」

リオンが答えると、セリアが頷きの途中で息を整えた。

「呼べないなら、そばにいる。……それだけでも」

庁舎前の広場は、人の足音が揃っていた。観測隊の簡易机が並び、薄い板に線が走る。

アーベルが現れる。白衣の袖口に砂、眼鏡の奥は眠らない目。距離を測るみたいに、こちらを一度だけ見て帳簿を開いた。

「観測は介入だ。……だから、遅くしただけ」

淡々とした声が、紙の上で止まる。

セリアが視線だけ上げる。

「遅らせても、刃は刃」

「書かれない名は、責任を持たない」

アーベルはページをめくり、さらりと指を払う。

リオンは喉で一度だけ息を押し上げた。

「名がないなら……守るほうを先に」

読み上げが始まる。

「出頭命令」――声は乾いて、印影は例の同一版。

呼ばれても、誰も自分の“その名”を持っていない。

署名台の前に立つと、照合票が横に置かれた。

書記官は筆の先を軽く整え、視線だけこちらに寄越す。

「一致率、七割未満。……規程だと、宙づり」

木の札が一枚、机の端に立てられる。“未署名”。

リオンは札を見て、それから空を見た。

「宙づりは……立ち止まれの命令?」

「立ち止まらない。歩幅だけ、合わせる」

セリアの声はやわらかく、最後を言い切らずに落とした
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