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黒潮の門 ― 世界を呼ぶ声 ―

Author: 吟色
last update Huling Na-update: 2025-10-22 08:56:04

朝。

同じ光が、同じ角度で落ちている気がした。

水の街はよく働き、よく黙った。

露店の棚を並べる手つきも、昨日と同じ音を出す。

誰かが笑って、誰かが頷く。名前だけが、どこにも置かれていない。

「なあ、昨日……ってあったっけ」

ノエルが片手をひらひらさせて、鈴に触れずに止めた。

リリィは肩をすくめる。笑いの形だけ作って、目は笑わない。

「昨日は……あったと思う」

リオンが答えると、セリアが横顔を見た。

目だけで問い、すぐに外へ滑らせる。

「“思う”って言葉、もうあてにならないかも」

ヴァルドは風を嗅いで、短く喉を鳴らす。

「同じ匂いだ。昨日と」

言葉が薄くて、音だけ厚い。

そのとき――胸の紙片が、潮の匂いを立てた。

薄い面が、指先の脈に合わせて光る。

〈第四接続:黒潮の門 反応率73%〉

「……行くか」

誰が言ったのか、はっきりしない。

でも、足は同じ方向へ動いた。

水都の外縁。海と陸の境。

白いものが浮いていた。輪。波。

近づくほど、音が少なくなる。呼吸だけが残る。

「ここが……“門”」

リオンの声は、自分の喉で小さく跳ねて、すぐに鎮んだ。

「開いてるようで、閉じてる」

セリアがひとつ息を置く。

ノエルは縁を覗き込み、指先を引く。

「見てるだけで……落ちていく気がする」

輪は海に触れず、海は輪に触れない。

ただ、境界のまま、そこにある。

波間で、光が集まる。

少女が立っていた。前より淡く、輪郭が水に溶けかけている。

セリアの足が、反射で一歩出る。

少女は目を細めて、笑いにもならない笑みを作った。

「……また“呼んだ”のね」

リオンは首を横に振って、すぐ止める。

「呼んでない。ただ……届いた」

「“届く”ことが、いちばん壊すのよ」

言葉が引いて、沈黙が押し返す。

潮の呼吸みたいに、会話が寄せては返す。

「世界は、名を失って静かになった。あなたは、まだ動かそうとする」

「止めたままじゃ、生きられない」

「じゃあ、壊しながら生きるのね」

否定の形は作らない。喉が鳴るだけ。

輪の白が、海の青を少しだけ薄くする。

「だから、私は記す」

背から落ちた声に、振り向くまでもなく分かった。

アーベルがいた。海風で外套が揺れ、眼鏡が光を拒む。

「封印の構文は、あなたの父が残した。

開くほどに、記録は削れる。

あなたが書くたびに、世界は“修正”される」

リオンは紙片を握る。光がじわ
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