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第3話

作者: 佚名
激しい痛みが身体を襲い、美咲は意識を現在に引き戻した。彼を押しのけて立ち上がり、その場を出ようとする。

「もう帰る」

蓮はその冷たい反応を見て、顔をさらに暗くした。

「美咲、そんなに俺の顔を見るのが嫌か。帰りたいなら帰ればいい。ただし、その前に一つやってもらうことがある」

「何」

美咲の額には大粒の汗がにじむ。痛みのせいで声まで震える。

だが怒りに燃える男は、それにまったく気づかない。冷たく口の端を吊り上げて言った。

「澪がな、俺への記念日のプレゼントにランジェリーを買いたいって言ってる。さっきまで俺に付き合って疲れてるから、休ませてやりたい。だから、お前が買ってこい。

よく覚えておけ。澪が気に入るまで何度でもだ。気に入るまで延々と買ってこい」

美咲は全身に走る激しい痛みに耐えながら、唇を噛みしめ、血がにじみそうになる。

「もし、行かなかったら?」

「お前は行く」

蓮は美咲に目もくれず、カードを一枚取り出して、そのまま彼女の顔に投げつける。

「一回で200万円、二回で400万円。美咲、お前は金が大好きだろ。金のためなら体だって平気で売る女だ。

よく考えろ。身体売って稼ぐより、ずっと楽だろ」

蓮の言うとおりだった。結婚してからの三年間、彼が彼女に触れるたび、事が終わるといつも百万円が投げつけられた。

それは、美咲を抱くための「代金」だと蓮は言った。夫婦であるはずなのに、彼は彼女に値段をつけていた。

そして今まではいつも、美咲は蓮の目の前でかがみ、床に散らばった札を一枚ずつ拾ってきた。

高額な輸入薬が必要だから。美咲は、生きたかった。

いつか医学の奇跡が起きて、医者が「すっかり治りましたよ」と告げてくれる日を、ずっと夢見ていた。

そのときこそ、あの誤解を全部、自分の言葉で説明できると思っていた。

けれど診断書は、すでに彼女に死刑を言い渡していた。美咲に残された時間は、一か月だけ。

今回は、今までとは違った。美咲はゆっくり首を振った。

「もうお金はいらない」

蓮は訝しげな視線で美咲を見つめ、それからふいに目を細めて笑った。

「どうした。やっと金より大事なものができたか?そんなに澪が憎いのか?

まあ、実の妹だもんな」

おかしな話だった。結婚して三年、美咲が彼に逆らったのは初めてなのに、蓮は不思議と腹が立たなかった。

むしろ少しだけ満たされた。美咲が澪を憎んでいるというなら、それはまだ自分のことを気にしている証だ。

だが次の瞬間、美咲の一言が、その笑みを凍りつかせた。

「蓮、一回400万円。払うなら、行ってくる」

血の気のない唇がかすかに震えている。けれど、その瞳には揺るぎない決意が宿っていた。

彼女は蓮に、ずっと自分を憎んでいてほしかった。そのほうが、自分が死ぬときに蓮が痛まなくて済む。どうせこの数年、彼は美咲を憎み続けることに慣れてしまっているのだから。

蓮は一気に感情の制御を失った。

「出ていけ!今すぐ買ってこい!澪が満足するまで、今日は帰ってくるな!」

美咲は床に落ちたカードを拾い、そのまま背を向けた。

いつの間にか、外は雨になっていた。

美咲は十数回も店を往復し、最後には髪の一本一本から水が滴り落ちるほどになった。澪が試着に飽きて疲れ、満足するまで解放されなかった。

家に戻るなり、美咲は熱を出した。体温は四十度にまで上がり、意識も朦朧としていく。

その朦朧とした意識の中で、美咲は十八歳の冬に戻っていた。

あの頃、彼女も蓮も貧しい学生だった。生活は苦しいが、蓮は心から彼女を愛していた。

真冬には、一度に五つもバイトを掛け持ちし、手にはひび割れができても自分の手袋は買わず、そのお金でブランド物のマフラーを美咲に買ってやった。

ふわふわと温かいウールのマフラーを首に巻いた瞬間、美咲はわっと泣き出した。自分なんか、こんな高いものに似合わないと言い、蓮を本当にバカだと責めた。どうして節約して、自分の手袋を買わないのかと。

蓮の手にはひどいあかぎれがあった。それを見るたび、胸が締めつけられた。

けれど蓮は、美咲の目をまっすぐ見て言った。

「美咲は世界で一番いい子だ。美咲には、一番いいものが似合う。俺はこれからも頑張って稼ぐ。稼いだ金は全部、お前に使わせる」

そして蓮は、本当にそのとおりにした。大金を稼ぎ、もう一度美咲を手に入れた。

だが――その金は、美咲に一番いいものを買うためではなく、札束のまま顔に叩きつけ、彼女を辱めるために使われた。
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