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檻を飛び出し、羽ばたけ大空へ​
檻を飛び出し、羽ばたけ大空へ​
Penulis: 満天星ちゃん​

第1話 ​

Penulis: 満天星ちゃん​
「部長、海外への転任を申請します。これからはずっと、国際線専門で勤務させてください」

南国航空の運航本部。江本深雪(えもと みゆき)は、パリッとしたパイロットの制服に身を包み、凛々しい姿でまっすぐな視線を向けながら、手元の申請書を差し出した。

部長の進藤哲生(しんどう てつお)は顔を上げ、真顔で彼女を見つめた。

「深雪、本気なのか?行ってしまえば、もう二度と国内線には戻れないんだぞ」

深雪の唇に、自嘲気味な笑みが浮かんだ。

「はい。両親はすでに亡くなりましたし、夫とも……離婚するつもりです。国内には、もう未練のある人は誰もいません。これからは、ただ空を飛ぶことだけにすべてを捧げたいのです」

彼女の固い決意を察した哲生は、それ以上引き留めるのをやめ、胸の中で深いため息をついた。

「そこまで言うなら、もう止めはしない。君は南国航空で唯一の女性機長だ。もっと広い世界へ羽ばたくべきだろうな。

深雪、広い空へと飛び立つ運命の鳥もいる。その翼は、生まれつき遠くを目指すためにあるんだからな。異動の手続きが整い次第、すぐに声をかける」

……

運航本部を後にした深雪は、うららかな陽気を見上げ、胸のつかえがすっと下りていくのを感じている。

家に戻ると、すぐにテーブルの上に置かれた小さなギフトボックスが目に入った。

江本武志(えもと たけし)は金縁の眼鏡をかけ、ソファに座って本を読んでいる。深雪の帰宅に気づくと、冷ややかな視線を向け、ぶっきらぼうに言った。

「テーブルの上のあれは、お前への誕生日プレゼントだ。おめでとう」

深雪は自嘲するように唇の端を歪め、力なく呟いた。

「私の誕生日は昨日よ。間違ってるわ」

その言葉に武志はわずかに目を見開いたが、すぐにまた口を開いた。

「次は覚えておく」

彼はいつもそうだ。何が起きても淡々としており、まるで彼の心にさざ波一つ立てることさえできないかのようだ。

「次は覚えておく」という言葉は、深雪がこれまで何度耳にしたか分からない。

なのに、武志は一度たりとも覚えていたことがないのだ。

そこへ、執事が恭しく歩み寄ってきた。

「旦那様、バラが空輸で届きました。庭師に手配し、細心の注意を払って手入れをさせております。

ネックレスもサザビーズのオークションで無事に落札いたしました。それから、浜田様のお気に入りのレストランも、すでに手配済みでございます」

武志は小さくうなずき、言葉を添えた。

「鈴は静かな場所を好む。誕生日当日は、店を貸し切りにするよう手配しておいてくれ」

彼が事細かに指示を出すのを聞きながら、深雪はただ、これ以上ないほどの皮肉を感じている。

浜田鈴(はまだ すず)の誕生日はまだ三ヶ月も先だというのに、武志はこれほど大げさに支度を始めている。

けれど自分の誕生日が昨日というのに、彼は覚えてもいなかった。

愛しているか、愛していないか、これほど残酷な天と地の差を生む。

深雪と武志はお見合いで出会った。

最初の顔合わせの席で、彼は唐突に結婚を申し込み、彼女は迷うことなくそれを受け入れた。

ずっと前から、彼に密かな恋心を抱いていたからだ。お見合いの相手がまさか想い人だなんて、神様がどれほど自分の味方をしてくれているのだろう、と当時は思った。

だからこそ、結婚してからの三年間、彼が家に帰ってくるのは片手で数えられるほどしかなくても、一年間で会話する回数が百回にも満たなくても、夜を共にする時、その瞳の奥に一欠片の温もりが宿っていなくても。

彼女はそれを喜んで受け入れていた。彼は生まれつき冷淡な性格だと思い込み、それなら自分は尽くせる限りの妻でいようと心に決めたのだ。ただ彼と生涯を共にできればいい、それ以上の贅沢は望まないと。

だが、それも三ヶ月前、鈴が突如として姿を現すまでのことだった。

いつも氷のように冷徹だった武志の顔に、それほど狂喜の表情が浮かぶのを、深雪は初めて目にした。

それはまるで、長い間よどんでいた湖に突然激しい波が立ったかのようだった。

そしてその日、深雪は初めて知った。自分が出会うより前に、武志には心から愛した初恋の相手がいたことを。その相手が鈴であり、二人は若い頃に愛し合っていた。しかし、彼の愛が最も深かったその年に、彼女は「死んだ」のだと。

彼女の訃報が届いた時、誰もが羨むエリートだった武志は、迷わず手首を切って後を追おうとした。

彼の両親が間一髪で駆けつけたため、一命は取り留めたものの、彼は長い間身も心もボロボロになり、朝から晩まで酒を飲み、ただ虚ろな日々を過ごしていた。

やがて、見かねた両親が死を辞さない覚悟でお見合いを迫り、なんとかその心を闇から救い出そうとしたのだ。

武志の心を最も美しく彩った人は、もうこの世にいない。これからの人生で誰と隣り合おうとも、それはただ適当に選んだ相手に過ぎない。

だからこそ、初めてのお見合いの席で、彼は迷うことなく結婚を口にしたのだ。

だけど、誰も予想していなかった。三年前に亡くなったはずの鈴が、まさか生き返ったかのように戻ってくる日が訪れるなんて。

鈴が現れたことで、深雪の脆く壊れやすい結婚生活は、木っ端微塵に打ち砕かれてしまった。

あれほど冷徹な男でも、誰かを深く愛することができるのだと、今さらながら深雪は思い知らされた。

武志は毎朝早く起き、鈴の大好物であるツナマヨサンドを丁寧に作る。車を一時間走らせ、雨の日も風の日も休まずに届けている。

鈴が好んで使う高級ブランドのカバンやジュエリーをすべて把握し、毎日欠かさず花束を贈っている。

鈴が少し機嫌を損ねてメッセージを返さないだけで、武志は一晩中眠れず、真夜中であっても彼女の機嫌を取ろうと飛び出していく。

そんな光景を、深雪はこのわずか三ヶ月の間に、嫌というほど見せつけられてきた。

だけど救いは、もう二度とそれを目にしなくて済むということだ。

三年間の結婚生活で、彼女が武志の心に踏み込んだことは一度もなかった。

ならば、これからは彼を自由にしてあげよう。それはきっと……自分自身を救うことにもつながるから。

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