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【第2話】環境

last update 게시일: 2025-11-13 12:38:17

「も、もふもふだぁ」

 余裕で標準よりも重い十キロ以上はありそうなむっちりボディにされてしまった私を抱き上げ、はあはあと息を荒げまでして、瞳がヤバイ雰囲気になっているこの興奮気味の《男》の名前は【剣叶糸つるぎかなと】という。《狼》の《獣人》だ。195センチの高身長とガタイの良い体にグレーの尻尾と頭部の耳がとても似合っている。

 支配階級である《貴族》に籍を置きながらも彼がこんなボロ屋で生活している理由が、今尚補佐達から送られてきているデータで、彼のフルネームを知ってやっと私にもわかった。

 それは、彼が《平民》出身の《獣人》だからだ。

 私の知る限りは例外なく、···では、《獣人》は全て《貴族》である。だが様々な理由から平民階級の中でだって獣人は産まれる。そりゃそうだ、平民と火遊びをする貴族だっているし、彼の様に先祖返りというパターンもあるのだから、どんなに《貴族》の中で《獣人》という優秀な血統を囲い込もうとしたってそもそも無理があるんだ。

 だけど、平民の家系に生まれた《獣人》は、まず間違いなく産みの親の元には居られない。

 クズ親が《貴族》に売っていたり、良識のある親であっても人身売買を生業にしている者達に子供を攫われて売られたりもしてしまうからだ。特殊な例ではあるが、産院の医師達が『赤子は死産だった』という事にして、大金と引き換えに、そのまま貴族に手渡した事件も過去にはあった。

 ——そんなこんなで結局《獣人》は全て《貴族》の元に集められるのだが、『平民出身である』というレッテルは一生其の者を苦しめる。特に、この国の貴族達に与えられた特権的習慣で、『獣人の赤子』には洋風の名前をつける為、彼の様にその名前ですぐに『平民出身だ』とわかってしまうパターンなんかは最悪だ。どんなに優秀であろうがその血統だけで卑下され、馬鹿にされ、素晴らしい功績を上げようが評価されない。だけど『名は体を表す』文化が根強いせいで、名付けの時点で《名前》が魔術によって《魂》に刻まれてしまい改名なんか出来やしないのだ。

(……だから彼は、此処に一人で暮らしているのか)

 剣家は《男爵》の爵位を持つ。彼を『買える』くらいなので裕福ではあるのだろうが、爵位は低いからあまり権力は無い。そして《貴族》だからって全員が全員《獣人》ではなくて、むしろ《人間》である者の方が多い。今の剣家で《獣人》は叶糸だけなので、『陞爵などの為の道具』としての期待や重圧が彼の肩のみに重く伸し掛かっているのだろうなと、この部屋の、膨大な知識を彼に押し付けるような惨状を見て思った。

「ヤバイ、可愛い」

 私のぼてっ腹に顔面を埋めてスーハーしている姿を見ると、過酷な環境に置かれている感じは少しもしないが、彼の置かれている立場はまず間違い無く相当弱いのだ。

「あー……良い匂いする……。全然獣臭くないって事は、ペットのマーモットが迷い込んで来た、のか?」

 腹に顔を突っ込んだまま、多分そんな感じの事を言っている。そりゃそうだ、本物のマーモットなどではないのだから私が臭いはずがないじゃないか。自分ではわからないがきっと花の様な匂いのはずだ。……そうでなければ困る。じゃなければこの状態はかなり恥ずかしい。

「飼い主を探す、か?……あー、いや……」

 小声でボソボソと言いながら私の腹からやっと離れてくれた。だが腕に座らせるような感じで私を抱き、あるのかないのか不明な首元にそっと触れてきた。

「首輪が無いから、野生の子だな」

 叶糸は勝手にそう決め付けやがった。そもそも獣ですら無いので飼い主を探すという無駄な行為をしないでくれると思えば、まぁ悪くない決め付けなのかもしれない。だが、そもそも『野生のマーモット』なんか、この国にはいないぞ?というツッコミは心の中だけに留めておこう。まぁ、この体ではそもそも言えないけども。

 それにしても……彼の顔を近くで見ると目の下のクマがすごかった。部屋の床や本棚の中だけじゃなく、机の上も勉強道具でいっぱいだ。確か彼の現在の年齢は十九歳。国内最高峰の魔術大学の薬学部に通っているらしいから、勉強に課題にと、連日追われているのだろうな。

(家の周囲にあった庭はきっと薬草園だろう)

 ちらりと覗いた他の部屋には実験道具や錬金術系の道具まであったから、家でも薬品の調合をしていそうだ。

「住む所がないから此処に入り込んで来たんだな。じゃあオレが責任持ってお前を飼ってやるから、安心していいぞ」

 軽く体を持ち上げられ、互いの額をコツンとつぶけてくる。酷いクマのある顔で、寂しさの混じる顔で無理に笑われると、私は身じろぐ事すら出来なかった。

 机の方に足を向け、私を抱えたまま叶糸がパソコンをいじり始めた。『マーモット 食性』と調べているから、早速私の食事の心配をしてくれているのか。『本物じゃないんで何でも食べられますが?まぁ、食べずとも平気でもあるし』と伝えたい所だが、彼の強い《認知》が邪魔して言葉を発する事が出来ないままだ。このままでは彼が私の《後継者》である事も、『えげつない程の魔力を失い、もう死に戻る訳にはいかない所まで来ている』事すらも伝えられない。

(……これって、かなりマズイ状況なのでは?)

 額から冷や汗が伝うような気持ちになった。必死にどうにか出来ないかと声を発してみはしたが、意味を持つ音は一切出てこない。コレがせめてインコやオウムみたいに声帯が人間に近い生き物であったのなら話は違っただろうに。

「草食か。野菜も果物も、自分でも育てている物があるから、なんとか養っていけそうだな」

 暗い部屋の中でホッとした声がやけに響く。『もしかすると……自分の腹を満たすのも困難な程度にしか食事も貰えていないんじゃ?』と思うと、私の小さな手は無意識のまま彼の服をきゅっと掴んでいた。

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