Share

7.忘却のキス効果なし。

Penulis: 桜立風
last update Tanggal publikasi: 2026-03-12 08:44:55

「…なんだと?」

「だから、忘却も操作も、私にはできてません」

「いつからだ…?」

片手で額を押さえ、神西課長はため息まじりに聞いてくる。

「…初めは一瞬忘れましたけど、すぐ思い出しました」

「…なんで早く言わないんだ?」

「言ってもどうにもならないんじゃないですか?」

めぐみに言われたことを思い出す神西。忘却のキスは、し続けなければならない…

「…お願いだ。鈴…いや、凛花?」

急に雰囲気を変えてにじり寄ってくる神西に、あっという間に抱きしめられた凛花。

「誰にも秘密にしてほしい。背中のカマのこと、それから…」

「わかってます。私には見えるけど、危なくないんですよね。扱えるのは本人だけだし…」

「あぁ…その通りだ」

ことさら大きくため息をつくと、神西は凛花にあることを教えた。

「人間に正体がバレたことが上に知られると…獣にされてしまうという言い伝えがある」

「獣って、狼とか…狐とか狸とか?」

「あぁ。家畜…って聞いたこともある」

「…家畜!豚とか鶏とか?」

つい笑ってしまった凛花を、笑えない神西がじっと見つめた。

「…とにかく姿を変えるらしいが、何しろ前例がない。どんなものに変えられてしまうか、わからない」

「なるほど。…それが怖いんですね」

「怖いって…いうか、困るよな。だって獣か家畜だぞ?…この美しい俺が」

眉間にシワを寄せ、ナルシストぶりを見せる神西を、凛花は明るく笑い飛ばす。

「言いませんよ。…ただし」

「…ただし?」

「今夜は出かけないで、もっと死神の仕組みを教えてください」

背伸びをして肩を抱く凛花。

神西は、イエスと言うより他なかった。

約束通り、マンションに帰ると神西が先に到着していて、何やら料理をしていた。

「あの…なにを料理しているんですか?」

「ニワトリだ」

「…にわ…っ!」

ドンッとまな板に乗せられたぐったりしたニワトリ…シンクには、レタスが洗ってボールに入れてある。

なんか…取り合わせがおかしい気がする。

「…ちょっと待ってくださいっ!!」

大きめの包丁を上から振り下ろそうとする先に、ニワトリの首…

慌ててその腕を取り、包丁も取り上げた。

「一羽丸ごと、誰が食べるんですかっ?…だいたい、どうしてニワトリを?」

「死神がカマを振り下ろすのは人間だけじゃない」

「…は?これ、課長が仕留めたんですか?」

「仕留めたってゆーか、寿命だから向こうに送ってやっただけだ」

親指であらぬ方向を指すので、そちらに目をやる。…要するに、葬ったということだとわかる。

「…で、魂の抜け殻がコレ」

今度はその親指をまな板のうえでのびているニワトリに向ける。

「ダメダメ!だめっ!ダメダメっ!ニワトリをさばくなんてダメっ!もってのほかですっ!」

神西は凛花に指示され、ニワトリを袋に入れ、近くの料理屋に持っていくことになった。

「…もうっ!後は私がやるので…課長はサッサとお風呂に入ってきてください!」

「なんだ…人間はニワトリを食べないのか…」

「食べますけど、さばくところからは普通始めませんっ!」

ハッキリ言われ、やや意気消沈した神西。言われた通り、おとなしくバスルームへと向かった。

何をどうやったらこんなにビショビショにできるのか…呆れてキッチンを片付けているうちに、凛花は猛烈な空腹を感じた。

今日はデリバリーを頼もう。

…神西に好みを聞こうか迷ったが、結局自分の好きなものを注文してしまった。

「あ…モーレツイーツで、私の好きなものを頼んじゃいましたけど、嫌いなものとかありました?」

「…嫌いなもの?」

ペタペタと足音が聞こえて…お風呂から出てきたのだろうと、何気なく振り返った。

するとそこに、神西がいた。確かに、神西が…

とっさに目に入ったモノから少しずつ視線を上げていき、神西のクールで美しい顔面にたどりついて…

「…ぎゃーっ!」

初めて悲鳴が出た。

慌てて向き直って、両手で顔を隠す。

「…何やってるんですか??…バスタオルとかっ…下着とか、隠しません?!…普通!」

「…は?何を慌ててる?」

「…下半身を隠してくださいって言ってるんですっ!」

しっかり見てしまった。まぶたの裏に一瞬で…大きなモノが焼き付いた。

大きな…?…いやいやっ!大きなモノなんて、そんな破廉恥なっっ

「…風呂から出ると、下着を身につけるのか、人間は」

凛花の言うことを無視して、隠さないまま窓辺へ歩いていく神西。

「…ちょっと待ったっ!外を歩いてる人に見られますよ!」

顔を背けて大きなモノを見ないように、神西の腕を引き、窓辺から離す凛花。

…ふと、違和感を覚えた。

お風呂から上がったばかりなのに、腕が冷たい。凛花はバスタオルを持ってきて、神西の腰に巻きながら、さりげなく背中にも触れてみた。

…やっぱり、冷たい…

「驚いたか?」

「…はい?」

「風呂なんか入っても温まることはない。当然だろ?だって死神なんだから」

その顔が、少しだけ寂しそうに見えた。そういえば、人間界にいるのは何故なんだろう…凛花は神西をソファに座らせ、もう一枚持ってきたバスタオルで髪を拭いてやった。

「寒い…っていう感覚がないんですね」

「暑いって感覚もないぞ?」

「じゃあ例えば、一緒にいる人が寒がって、温めてあげなければいけない時は…」

「…さあ?そんなシチュエーションに遭遇したことがないからわからん」

ゴシゴシ髪を拭いてやると、たまに香る神西のフレグランスを感じた。

「お風呂では温まれないけど、香水はつけるんですね」

シャワーの後の習慣かと思ったが…神西の答えは意外だった。

「いや…この香りは、体臭だな」

後ろにいる凛花を見上げるように、ソファの背に頭を乗せる神西…瞳の色がグレイだと、初めて気づいた。

そんな目に下から見つめられて…途端に頬に熱が集まるのを感じる。

「…こんないい匂いが体臭ってうらやましいですね」

タオルを片付けるため離れようとして、パシっと手首をつかまれた。

考えてみれば、神西は今…上半身裸だ。(さっきまでフルチン)薄暗い室内の明かりの下で、筋肉に陰影がついて、やたら色っぽい。

「なん…ですか」

「タオルを片付けるなら、これも…」

せっかく巻いたバスタオルを腰から外そうとして…慌ててその手を止める。

「女性の前でフルチンはいけませんよ?タオルを取るならサッサと服を着なさい!」

腕を取って引っ張り、立ち上がらせて、神西の部屋へと押し込んだ。

…いろいろ想定外で、妙な疲れを感じる。死神の生態を理解するまでしばらくかかりそうだと凛花は思っていた。

Lanjutkan membaca buku ini secara gratis
Pindai kode untuk mengunduh Aplikasi
Komen (1)
goodnovel comment avatar
yuu
色々ありすぎて笑いが止まらない! 魂の抜け殻もあちらに送られた後、もう少し配慮してほしかったんじゃない? 流石死神!やることが斬新だわ。 でも凛花ちゃんを思ってお料理したんですよね... 凛花ちゃんも最終的にストレートに言っちゃってるし、二人の掛け合いが楽しい! 体臭がいい匂いとか羨ましいな〜。 課長には謎がまだまだありそうだね。
LIHAT SEMUA KOMENTAR

Bab terbaru

  • 死神上司の危ない…キス💋私に魔力は効きませんが?   67.死神を終えて Side.蓮 

    「お願いです……まだ死にたくない!」俺を見る事ができた人間は一定数いた。ブルブル震えながら、恐れおののいて立つこともできず、それでも必死に距離を取ろうと後ろへ後ろへ移動していく。「……死にたくない?」ひどく痩せた青白い顔で、細い腕には点滴の針が刺さった跡が痛々しいのに。「私が死んだら……子供が、親が、泣きます。……だから、死ぬわけにいかないんだ!」誰かのために命をつなごうとする人間は強い。……カマを振ってそれを断ち切るのが死神の仕事なのに、俺は何度もそんな人間を見逃してきた。ありがとうございます……後ろ姿にそう言われたことも何度もある。けれど……そんな人間に待っている現実を俺は知っている。だから……自分のやっていることが正しいと思ったことは一度もない。「あの……大丈夫ですか?」カマを振れないでいたある日、人間界に落とされたと知った。諦めた俺は、ソツなく過ごして多少は遊んで……時期が来たら冥界に戻るだろうと思っていたのに、鈍臭い女子社員に声をかけられたのだ。恐る恐る……という感じで見上げるのは、丸い目の女子社員、鈴原凛花。仕事が出来ない目の上のたんこぶ……「…神西課長、背中に大きなカマを背負ってるから、ずっと気になって」「は?お前……これが見えるのか?」あの日から始まった、俺の死神人生のカウントダウン。まさかあの……出来損ないの女子社員に、人間に転生する手助けをしてもらうなんて思ってもみなかった。「え……ここを譲る?」凛花の父親が亡くなって2年。絆と縁から、意外な提案を受けた。「うん。俺たち……死神に戻ろうと思ってさ」「……でも、カマが振れなくて、人間界に落とされるのが嫌で逃げ回ってたって……」「あぁ。ふんわりした戦いだったけど、死神最高幹部にも勝って、それなりに役割もわかったけどさ。逆に、何もはっきりしてないって思ったんだよ。全部中途半端な気がして」絆の言葉に縁も言う。「だからもう一度死神としてやってみようと思って。……聞いたらさ、ずいぶん人手不足らしいよ。……いや、神手不足か!」2人はそう言って、自分たちが運営してきたこの会社を譲るというのだが……「蓮に給料を払えるくらい稼げばいいやってことで、たいした活動もしてないからさ、蓮がやってみたいことに業種を変えてもいいと思う」「もちろん、俺らに金を払う必要なしね

  • 死神上司の危ない…キス💋私に魔力は効きませんが?   66.両親、乗り越えた過去、そして未来

    蓮と穏やかな眠りにつき、しばらくたってからのこと。……ベッドが揺れる気配がして、凛花は目を覚ました。「……ルルアが泣いてる。連れてくるから待ってて」先に気づいたのは連。身軽に凛花を飛び越え、暗闇の中ドアに向かっていく。やがて蓮に抱かれてルルアがやってきた。泣いてる、とは言っても少しむずがっていたくらいで、すでに蓮の腕のなかで寝息を立てていた。「……お義父さん、ベビーベッドにもたれるようにして寝てた。帰るまでに何度か起きちゃったのかもな」父にとっては目のなかに入れても痛くない可愛い孫。夜中に何度起こされても翌朝赤い目になっても、すこぶる機嫌よく朝を迎えてくれる人だ。「孫に起こされて寝不足だって、病院のスタッフに嬉しそうに愚痴るんだって……!」「親バカならぬ祖父バカっていうのか?」小さな声で話しながら、声を上げずに蓮と笑い合う凛花。……こんな風に夜中に起こされても笑えるとは、なんて幸せなひとときだろう。凛花はルルアを蓮にまかせ、隣室で眠る父の様子を見に行った。……ベビーベッドに孫がいると勘違いして、また柵にもたれてやしないか気になったから。父は、仰向けで穏やかな表情で眠っていた。ふと……花の香りが鼻腔をくすぐった気がして、見慣れた室内を見渡す。凛花は少し考えて、胸がちゃんと上下しているか確認した。それが……虫の知らせだったのかもしれない。幸せを感じて感謝を抱いて……こんな日常が続くことを願ったのに、日々は突然変化していくものらしい。……翌朝、父は起きてこなかった。救急車を呼び、その場で死亡が確認された。警察が来て事情を尋ねられ、あっという間に葬式の準備が整う。「お父さん、何の迷いもなかったのかな……」「あちらの世界に行くことか……それは、なかったのかもしれないな」祭壇に飾られた笑顔の父。喪服に身を包み、凛花は涙目で見上げた。父の人生を思う……後悔は、やり残したことは、なかったのだろうかと。自分たちは『死の番人』という役割を持っていると自覚したばかりだ。なのに父は、何の迷いもなくあちら側へと行ってしまった。「あぁ……そうか。お父さんは、お母さんがいる世界に行けたのかもしれない」亡くなるときは、親族が迎えに来るという。父の場合はきっと母がやって来たのだろう。「だとしても……突然すぎない?」涙があふれる凛花を、ルル

  • 死神上司の危ない…キス💋私に魔力は効きませんが?   65.2人の使命

    空を舞うようにして移動していた。どこに到着するのかわからないのに、蓮とつないだ手のぬくもりだけは確かで、恐怖はまったくない。人間たちが夜の街を歩いているのが小さく見える。遅くまで仕事をして家路につく人、気晴らしに酒を飲んだ帰りの人もいるのだろう。私も、ついこの間まであちら側の人間だったのに……本当に、人生は何が起こるかわからない。「あの家だな」凛花に声をかけた蓮は、彼女の腰に手を回し、支えるようにしながら大きな一軒家のベランダに降りた。「……え、大変……」ベランダに倒れている人がいる。手首のあたりから流れている赤い血は、彼女自身のものだろう。とっさに助けようと駆け寄る凛花を蓮は止めた。その視線をたどると、ベランダの端に不思議なものが見える……泣いている女の子だ。年齢は想像した通り、中学生くらい。向こう側が透けてしまって、明らかに様子がおかしい……蓮は口元に人差し指をまっすぐに立て、その少女を見守るようジェスチャーしてきた。きっと、この子の泣き声が聞こえたんだ。いったいどうしたのだろう。先に見つけた血を流して倒れている子と、着ている服が同じだ。……ということは、肉体と魂?死にたい……迎えに来て、お母さん……ここからどうすればいいの、お母さん、助けて……しばらく泣き続けた少女は、今度は母親を呼び始めた。頭に直接入ってくるようなか細い不安そうな声……女の子はこんな事態になって困ってるんだ。母親はきっとすでに亡くなっているのだろう。近くにそれらしい人はいないか、凛花はとっさに目で探す。「だれ……」ふと少女がこちらを向いて、視線を泳がせていた凛花と目が合った。「あ……私は、」「怖がらなくていいよ」しどろもどろになる凛花の代わりに蓮が答える。緊張したように固まる少女は、再びどうしたらいいか困っているように見える。そこで、こちらから話しかけてみることにした。「……この子は、あなただよね」一般的に「遺体」と呼ばれる体を指さして聞いた。「うん……」「自分で、切っちゃったの?」手首からの出血は、明らかにリストカットに見える……けれど、少女の心の声が聞こえてきた。「気づいたら、体の外に自分がいて、こんな風になるとは思わなかった」意図しない出来事?死を望んだわけではないと、少女の悲痛な思いが伝わってくる。「そうだったん

  • 死神上司の危ない…キス💋私に魔力は効きませんが?   64.子供が生まれた

    「結婚おめでとう!」やがて結婚式の日がやってきた。集まってくれたのは、絵里奈、康太夫婦、鮫島、無理を言ってめぐみ、そして絆と縁……父は母の写真を持って始まる前から泣いている。「めぐみさん、今日は来てくれてありがとうございます」どうして自分が呼ばれているのか、一番わからないのはめぐみだろうと声をかけた。「ご結婚おめでとう。……嬉しいわ。鮫島くんと同期で、片思いしてた人だって聞いてる」「あ、その後めぐみさんを溺愛しますから心配しなくて大丈夫ですよ?」「え……どうして知ってるの?」頬を染めたところをみると、すでに2人はお付き合いを再開してとてもうまくいっているようだ。めぐみは蓮より先に死神を卒業し、凛花と交わした話はもちろん、死神時代のこともすべて忘れている。でも鮫島くんと仲良くやっているようで、凛花は心からホッとしていた。父と、父に抱かれた母の遺影、そしてごく親しい仲間が見守る中、蓮と凛花の結婚式は滞りなく行われた。フラワーシャワーの中を歩く2人は、過去のことを少しずつ忘れ、この世に溶けるように生きていくのだろう……もちろん、人間として。……それなのに。「……は?背中に羽?」幸せな結婚式から2年が経過した。凛花は蓮の子供を宿し、やがて無事に女の子を出産。ルルアと名付けられた。「多分ほかの人には見えないんだと思います。でも、家族にはハッキリとそれが見えて……」ここは蓮の職場、yukabiオフィス、話を聞いてもらっているのは絆と縁だ。蓮はルルアのベビー服をそっと脱がせ、背中を2人に見せる。ルルアはまだ赤ちゃんなのに、脱がせられた服を前に抱えているのが女の子らしくて可愛らしい……「お2人には、見えます?」「……俺には見えるな」「同じく。俺にも見える」2人にも見えるとわかり、凛花はそれ以外にも話と違うことが起きていると話した。それは、これだけ時間がたっても2人の記憶がなくならないこと。「蓮さんが死神だったことも最高幹部のことも、めぐみさんや鮫島も暮らしてたマンションのことも。……アミルさんのことだって忘れてません。当時の記憶は、いつ頃なくなるんですかね?」ルルアの成長に伴い、いろんな人との交流が生まれるだろう。そうなった時、ほかの人にはない経験の記憶は邪魔になるのではないか。「普通は、もうすでに記憶をなくして……わが

  • 死神上司の危ない…キス💋私に魔力は効きませんが?   63.父に宣言

    「え、そんな宣言……する?」「動揺させてすみません。でもお義父さんにはきちんと話を通しておきたいと思いました」「わ、わかるけどさぁ、なんて言えばいいのよ。……どうぞどうぞって?困ったなぁ、結婚を許したんだから、ダメとは言えないし……」父はリビングに飾られた母の笑顔の写真に助けを求める。見かねた私は後ろからついていった。「多分だけど……反対ならお母さんが今夜現れるような気がする。そしたらまた考えるから、今夜は蓮さんと同じ部屋で眠らせて」「そ、それって……」「いやだ……!変なこと考えないでよ?」絆と縁の話を聞いて、蓮は慌てて凛花を連れて帰ってきた。そして父が帰ってすぐにこう言った。「お義父さん、凛花さんに僕の子供を産んでほしいと思ってます。先に解決しないといけないことがあるのは理解していますが、すぐにでも彼女が欲しいんです」……そして、冒頭のやり取りに戻る。「そうか。この世には、元死神が溢れかえってる……」「私とお父さんも、相当特殊みたい」「まぁ、そうだろうね。聖なる人を妻にして子供を生んでもらって……その子供も能力があるんだから」父に絆と縁の話を理解してもらって、私たちは結婚することになった。「婚姻届を出して、小さくても結婚式をしてほしい。……幸せなお祝いの場は、聖なる精霊が集まるって聞いたことあるから」父の言葉を尊重することになり、結婚式は小さなレストランを借りて行うことになった。婚姻届は少し緊張したが、不思議なことに「神西蓮」の戸籍は存在し、難なく受理された。そして……それからの蓮はかつての「神西課長」が戻ってきたような精力的な日々を過ごすことになる。オンラインで学べる仕事で役立ちそうな講座を片っ端から受講し、払った金額以上のスキルと技術を早々に習得。やがて事業を展開したい考えを持っていた、絆と縁の会社、yukabiオフィスに就職することができた。「収入の面での心配はもうない。だからその……そろそろどうだろう」二組の布団を敷いて、手をつないで眠っていた2人。ある日蓮が、凛花の手にキスをしながら熱い視線を送ってきた。「結婚式は来週だが……すぐに子供ができたとしても支障はないと思うんだが」「そう……ですね」返事をするやいなや、キスしていた手を引かれ、自分の布団に誘う蓮。「あの、こういう行為のしかたは、覚えてる

  • 死神上司の危ない…キス💋私に魔力は効きませんが?   62.元死神たちの会合

    「はじめまして。神西蓮と申します」「うわ、イケメンすぎて緊張するぅ……」バイト先に出勤して社長と副社長の秘密を打ち明けられ、凛花も思い切って蓮の話をした翌週、彼を2人に会わせることにした。話は聞かせてあり、体験談をぜひ聞きたいといった蓮。父の賛成も取り付け、会社近くのカフェで落ち合ったところだ。2人にキラキラした目を向けられ、キョトン、とする蓮。人間の姿を手に入れた彼は、ピュアで邪気のない子供のような表情を見せることが多い。そういうことは、社長たちにもあったのか……「改めて自己紹介しとくね。俺は兄で社長の絆【きずな】。こっちは弟で副社長の縁【えにし】。凛花ちゃんが見破った通り、俺たちは双子。あんまり似てないけどな」座ったまま頭を下げる凛花と蓮に、2人は早速経験談を話し始めた。「俺たちが死神稼業から足を洗ったのは、寿命が来ている人間に、カマを振れなかったからなんだよ」「そう。そのせいで人間界に修行に落とされそうになって、それが嫌で2人で逃げ続けて……そのうち幹部たちと戦うことになってさ」「まぁ、勝利したってわけよ」話を聞く限り、その戦いとはいわゆる剣を振り回したりするバトルとは違ったらしい。「戦いがある、とは聞いてたけど、なんていうか……まやかし、みたいなものだったな」「精神的にジワジワ追い詰められる感じ。……あれ、もし人間がされたら確実に病むよ」まさに、病んだ。2人の話に大きくうなずく凛花。蓮が2人に向かって口を開く。「人間の姿を手に入れた後、死神からの接触は?」「1度もない。ただ死神時代の記憶はいつまでも消えないんだよね」「それについては諸説あってさ……」縁の答えに、絆が声を落として身を乗り出す。「結婚すると消えるらしい……!」「らしい、とは?おふたりにも経験談を聞かせてくれる仲間がいるんですか?」たまらず質問する凛花に、絆は笑い出した。「……え?いっぱいいるよ!皆自分からは言わないだけだから」そう言われて思わず辺りを見渡してしまう。若い人が多いけれど、カフェの外には老若男女、たくさんの人が歩いている。……あの中に、死神としての経験を持つ人が、いる?「結婚するとその記憶自体なくなって、本当の人間としての人生が始まるって話。……話を聞いた人も恋人と結婚して、次に会った時死神の話をしたら笑い飛ばされたもん」

  • 死神上司の危ない…キス💋私に魔力は効きませんが?   6.おとなしくキスだけされてないから

    「俺のマンションに来ていいのは鈴原だけだ」「…えっと、どうしてわかったんですか」絵里奈に別れを告げ、車に乗り込みながら、神西と携帯で話す。「…軽く、テレパシーだろうな。キスをする間柄だ。お前の考えが伝わってくることがある」考えてることが伝わるって…私が課長に特別な気持ちを抱き始めていることにも気付かれるってこと?けれど携帯の向こうの神西は、それ以上のことは言わない。なのでもう少し食い下がってみることにした。「…でも絵里奈は、子供の頃からの親友なんです。神西課長をただの上司として紹介するならいいじゃないですか」…そもそも、付き合おうといったのはそっちだ。「内緒にするなら、徹

  • 死神上司の危ない…キス💋私に魔力は効きませんが?   5.凛花、実家にて

    闇夜に浮かぶ、外壁をツタが絡まるマンション…そこが住まいだと神西に言われた時、すべてが繋がった気がした。背中のカマ、情報もなく部屋にやってきたこと、アパートの突然の全焼…忘却と操作のキス…そして打ち明けられた死神の話。全部の辻褄が合う。…凛花はこれまでのことをすべて忘れていなかった。その中でわかったことがある。…やはり自分は、見てはいけないものを見ていたのだ。同時に…死神なんて存在が、こんな身近にいたなんて、普通に驚きだ。だって上司だよ?…やたら厳しくて怖いのはそのせいか…「…それにしてもなんだか薄暗い明かりしかつかない部屋だな」自分に与えられた部屋の窓から、何気なく階下を見

  • 死神上司の危ない…キス💋私に魔力は効きませんが?   2.

    「…効かない?自分に惚れさせるためのキスだったってことですか?…だとしたら残念ですね?まったく効きませんし、むしろ…」丸い目を頑張ってつり上げて、神西を睨み上げる凛花。「…嫌いになりましたわ!ふんっ!!」つかまれた腕を振りほどこうとするのを、神西は力でねじ伏せる。…このまま離すわけにいくか…!「…ちょっと待て。もう一度…」忘却のキスが効かないとは、鈴原凛花…突然変異の人間か?逃れようとする凛花を抱きしめ、もう一度唇を合わせた。…今度はもう少し長く。…やがて、彼女の体から…フッと力が抜けるのがわかった。そっと体を離し、さっきと同じように凛花の様子を伺うと…意外な反応に神西は頭を

  • 死神上司の危ない…キス💋私に魔力は効きませんが?   1.

    「あの…神西課長、大丈夫ですか?」ついに、言ってしまった。…言ったそばからもう後悔する。「…は?」ゆっくり振り返った顔が怒っていて…それより言いたいことがあると、その端正な顔に書いてあるのがわかる。「そんなことより、企画書は?」「はい!…わかってます。今、マネージャーに提出してちょっと見てもらってるところで…」「…どうしてそんなまどろっこしい事をする?できたらすぐに俺に出せと、何度言ったらわかるんだ?!」いつの間にか怒られるこの構図…予想できてたから今まで言えなかった…「…だって!神西課長、背中に大きなカマを背負ってるから、ずっと気になって!」マーケティング戦略部の神西

Bab Lainnya
Jelajahi dan baca novel bagus secara gratis
Akses gratis ke berbagai novel bagus di aplikasi GoodNovel. Unduh buku yang kamu suka dan baca di mana saja & kapan saja.
Baca buku gratis di Aplikasi
Pindai kode untuk membaca di Aplikasi
DMCA.com Protection Status