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第3話
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気づけば、愛も遅すぎた 第23話
「はやく！お前たちの新郎を呼んでこい！俺が舅として結婚式に出られないって、そんなことがあるか？」騒ぎの声を聞き、樋口家の執事が十数人の黒いスーツのボディーガードを連れてやってきた。「御目に掛かります、水村さん」弘文は後ろの親戚たちに向かって叫んだ。「見ろよ、以前樋口家で一緒に食事したこともあるんだ。絶対に何かの誤解だ！」執事は金縁眼鏡を押し上げ、微笑みながら言った。「水村さん、我が家の若奥様はあなた方との父娘関係を認めていません。ですから、奥様もあなた方と親戚関係を認めることはありません。ここで騒ぐのはお互いの面子を傷つけるだけです。我々はみな顔の知れた家柄です。顔を潰すのは良くありません。どうかお引き取りください」弘文はあきらめきれず、声が詰まった。美代子も隣で涙をぬぐっていた。「晴美の結婚式に、実家の人間が一人もいないなんて、外に言ったら笑い者だ」執事は嘲笑した。「若奥様に実家がないなんて誰が言った？実家の席はもうほぼ満席です。ただ若奥様は、実家の人間とは血の繋がりがない、彼女の成長を助けてくれた人たちだと言っています。血の繋がりって、時にはあまりあてにならないものですね」美代子は先ほど、使用人の鈴木が迎えに入れられたのをはっきり見た。なのに、自分の実の娘は、自分を結婚式に入れさせない。執事はもちろん清子から晴美の事情を聞いており、明らかに晴美の味方だった。そんな媚びへつらう連中は軽蔑していた。彼はボディーガードに合図を送り、列を作って自分の前に立たせた。「私はまだやるべきことが多いので、失礼します」周囲の水村家の親戚たちは口々に議論していた。皆、弘文とは長年の付き合いの友人だ。「玉の輿に乗ったと思ったら、晴美は俺たち親戚を認めていないんだな」事情を知る者は言った。「あれは全部弘文のせいだ！」「さあ帰ろう！水村家は名家ではないが、こんな仕打ちには耐えられん！」……皆の話し声が弘文の最後の心の支えを折った。彼はまっすぐに後ろに倒れ込んだ。美代子は慌てて支えたが、力及ばなかった。「弘文！弘文！」……弘文は脳出血で病院に運ばれた。結婚式の後に、翔と晴美はそれを知った。翔は小声で晴美に尋ねた。「本当に見舞いに行かないのか？」
気づけば、愛も遅すぎた 第22話
翔と晴美の結婚式は一ヶ月後に予定された。京市に戻った恒志はすぐに琴星を探し出した。彼は彼女を屋上に呼び出した。琴星は車椅子を押されながら上がってきて、期待に満ちた目で彼を見つめた。「恒志、やっと私のことを思い出してくれたのね！」恒志は嫌悪の眼差しで琴星を見て、彼女を車椅子から直接引き起こしてから、柵のそばに押し付けた。「言っただろ！晴美に手を出すなって。さもないと、容赦しないからな！」琴星は笑った。「私はもう廃人よ、どうしたいの？殺すつもり？ちょうどいいわ！そうすれば一生私のことを忘れられないでしょ！」恒志は眉をひそめた。「どうしてそんなに残酷になれる？俺を、晴美を傷つけて何の得があるんだ？」琴星は恐ろしい笑みを浮かべて言った。「得？あなたたちが苦しんでるのを見るだけで幸せなのよ！誰が私をここまで追い詰めた？それはあなたたちよ！」琴星は恒志の袖を引っ張った。「愛してるのよ！なんで結婚してくれないの？私のどこが晴美に劣るの？」恒志は目の前の狂気じみた琴星を見て、一言一言はっきりと言った。「お前は晴美に何一つ勝てない！」琴星が晴美の障害になるなら、彼は躊躇なく彼女を排除するつもりだ。恒志は琴星の首を絞めたが、最後の力は抜いた。琴星は顔を真っ赤にして咳き込んだ。「ははは！恒志、あんたは臆病者よ！今は何もなくなったの。看護師にも情婦と罵られてる！この結末は全部あんたのせいよ！私を殺そうとしても、怖くてできないね！あんたに翔と争う資格なんてないわ」恒志は怒りに燃えたように前に出て琴星の口を押さえようとし、押し合いになった。琴星は力を入れ、恒志を巻き込んで屋上から転落した。落下の間、恒志は琴星の涙の跡と邪悪な笑みを見た。「恒志、一緒に死のう。地獄で待ってるから！」琴星は死んだが、恒志は命を拾った。しかし彼は高位の脊髄損傷を負い、脳は正常なままだったが、頸から下を一切動かせなくなった。聞くことも見ることもできたが、言葉を発するのは困難だった。意識を取り戻して最初に発した言葉は「晴美には言うな」だった。側で世話をする助手がいたが、晴美と翔の盛大な結婚式の日に、京市の有力者や有名人が皆出席した。テレビは四局が生中継した。助手は恒志が刺激を受けチャ
気づけば、愛も遅すぎた 第21話
京市に到着した後、晴美は二日間休養し、翔と一緒に樋口家に戻った。晴美は翔が選んでくれたワンピースを着て、緊張して一言も話せなかった。翔は彼女の不安を察し、彼女の手を握った。「堂々としていればいいよ。君は可愛いんだから。安心して、うちの母さんは絶対に君のことを気に入るから」晴美は樋口家が京市でどんな存在かを知っていた。水村家が米村家と縁を結ぶだけでも高望みなのに、ましてや樋口家となればなおさらだ。緊張しないわけがなかった！庶民の娘が名家に嫁ごうとしたところ、相手の男性の母親が一億円を突きつけて別れさせようとする展開が、ドラマでよくあるじゃないか？晴美の頭はどんどん混乱していった。車がある荘園に入ると、彼女ははっきりと「樋口家」という看板を見た。緊張してワンピースを握り締めている彼女を見て、翔は笑いたくなった。庭園に入った後、すぐに正門に着くと思っていたが、車は次々と家を通り過ぎた。翔は指をさして言った。「これは叔父の家、これは母方の叔父の家、これは伯母の家だよ。樋口家の分家は多くて、この山一帯にはほぼ分家の親戚が集まっている。ほとんどはここに住んでいないけど、正月や節句には必ず戻ってくる。ここは専属の執事に任されている」翔は彼女の手を取り、手の甲にキスした。「結婚したら、俺たちの別荘もあるよ」そう言われるほど晴美はますます緊張した。こんな大きな名家は、普通は相応しい家柄の娘と結婚するものだろうに、なぜ子供たちに相手を選ばせるのだろう？ついに車は古城のような豪華な建物の前で停まった。こんなに大きな樋口家から逃げ出すことはできないと、晴美は思った。執事が車のドアを開けて車の枠を手で支え、晴美を迎え入れた。「翔様、晴美様、奥様はもう長い間お待ちしています」翔は晴美の手を自分の腕に絡ませた。彼女を連れて本当の樋口家に入った。大広間は豪華絢爛で、美的センスあふれるデザインが施されており、贅沢ながらも控えめな雰囲気を醸し出している。壁に掛けられた装飾画はどれも価値が高かった。華麗な服を着た女性が近づいてきて、一目で気品のある人だとわかった。彼女は興奮して晴美の手を握った。「あなたが晴美ね。翔がよくあなたのことを話していたけど、今日会ってみて、やっぱり素晴らし
気づけば、愛も遅すぎた 第20話
晴美は彼を見つめ、目に涙がたまった。観客席には、かつて家族だと思っていた三人が座っており、この件の全貌を知っているが、彼らは彼女のために声を上げる勇気がなかった。その代わりに、信頼できそうにない一見の男が無条件に彼女の味方になり、信じ、支え、力を貸してくれていた。観客席では議論が絶えなかった。その騒ぎの中で、翔は晴美の手を握り、片膝をついてポケットから指輪を取り出した。観客席の後方にいる人たちも、その大きなダイヤモンドをはっきりと見ることができた。「晴美、俺と結婚してくれないか？」さきほどの疑問の声はこの一幕によってすべてかき消された。よく言われるのは、最高の広報戦略は一つの出来事が別の出来事を上書きすることだ。スクリーンの琴星は明らかにライブ会場の様子を見ていた。流れが逆転したのを見ると、彼女は崩れ落ちそうだった。琴星は絶えず叫び続けたが、司会者は雰囲気が悪くなるのを察して、ライブ配信を切った。司会者は翔のことを知っており、手を出せない相手だと思ったのだ。晴美は笑顔で頷いた。翔は彼女の指に指輪をはめ、抱き上げてくるくる回った。美代子は弘文の肘を軽く押しながら言った。「彼らは私たちに相談もせずに決めちゃったわよ！」弘文は見ていて止めようとしたが、周囲のざわめきに気を取られた。多くの人がカップル誕生を盛り上げ始めた。そして翔について調べる者もいた。「この名前、やはりどこかで見たことある！」ある女性が驚きの声をあげた。「樋口翔！彼は京市四大名家のトップ、樋口家の末っ子じゃない？」「やっぱり、愛情深い男はお金持ちの家で生まれるんだね」阻止しようとしていた弘文と美代子は静かに席に戻った。樋口家？それは米村家とは比較にならない。もし米村家が名家なら、樋口家は京市の財閥のような存在だ。何世代も続く富と権力を持ち、皇族とつながりもある。恒志は目の前の光景に完全に打ち砕かれ、最後の切り札も失った。弘文と美代子さえ翔の味方になってしまった。彼は立ち上がり、背を向けて去っていった。スマホには琴星のライブ映像がまだ映っていた。授賞式は無事に進み、晴美は名誉だけでなく恋も手に入れた。会場の全員が激しい拍手を送った。恒志との幼なじみの婚約とは違い、翔の愛は激
気づけば、愛も遅すぎた 第19話
弘文は立ち上がり、晴美の写真を撮った。美代子は嬉しさのあまり涙を流した。各大メディアが競って報道した。しかし突然、一人の記者がスマホを取り出し、別の記者に見せた。やがて全員の記者がスマホを取り出して確認し始めた。会場は騒然となった。誰かがささやき、晴美を異様な目で見ていた。この知らせは審査委員会に伝わった。委員長は晴美のライバルの支持者であり、この絶好の機会を見逃すはずがなかった。彼はスタッフに命じ、スマホのライブ映像をスクリーンに映し出させた。スクリーンには琴星の顔が映し出された。琴星は車椅子に座り、涙をこぼして泣いていた。「姉は私の実験成果を盗作しました。私の婚約者も両親も奪いました。そのせいで。私は結婚式の式場で高所から落下しました。残りの人生を車椅子で過ごさなければならなくなりました！」観客席は大混乱となり、多くの人が晴美の賞の行方について議論を始めた。裏で皆が話していた。「これを見ると、この賞は彼女には与えられないね」「盗作と剽窃に何の違いがある？要は盗みだ！」「今や本人が自ら名乗り出て、はっきりと説明しているんだから、これは問題があるに違いない！」「妹の婚約者を奪ったのに気づいたのは私だけ？これは倫理の問題よ！この賞は純粋なものだ。下品な人には合わない」晴美は壇上で何も言い返せなかった。しかし、下にいた弘文が立ち上がった。「皆さん、この女に騙されてはいけません！彼女は水村家の取り違えられた娘だと言っていますが、全然違います！彼女がうちに来たのは、良からぬ企みがあるに違いません！」スクリーンのライブ配信にはコメントが次々と流れ、琴星に弘文の言葉が伝えられた。琴星は涙をぬぐい、より一層激しく泣き始めた。「取り違えの件だって、私も被害者です！彼らは私こそが水村家の娘だと言ってたから、自分のものを取り戻すのは当然です！それに、婚約者との結婚式で、姉が手を回し、私の面目を失わせました。私の実験成果は、婚約者が建てた実験室で完成したものです。こちらは婚約者が証明してくれた映像です。ご覧ください！」琴星は証拠映像を流して自分の主張を裏付けた。恒志がかつて琴星側につき、晴美の盗作を証明したあの場面が、彼の胸に深く突き刺さった。自分はどうして
気づけば、愛も遅すぎた 第18話
車は研究チームの敷地内に入ると、入口にいた警備員がすぐに通してくれた。木村先生が最初にその知らせを知り、彼らを直接会議室へ案内した。「皆さん、ここで少し休んでください。晴美はまだ実験が終わっていません。終わり次第、お会いします。今はこのプロジェクトの重要な時期なので、誰も気を抜けません。少しお待ちください」助手は挨拶を交わして木村先生を見送った。美代子は周りを見渡しながら、「やはり私たち水村家の実の娘だけあって、本当に優秀ね」と口にした。弘文は手を背中に回し、背筋を伸ばして壁に掛かっている多くの賞状を見ていたが、晴美がいつ大会に出たのかも知らなかった。彼は初めて、晴美を誇りに思った。ほぼ二時間近く待ち、皆の忍耐がほとんど尽きかけた頃、晴美は翔を連れて入ってきた。翔は弘文と美代子に敬意を表して、丁寧に挨拶した。「おじさん、おばさん、初めまして。樋口翔と申します」晴美は彼を制した。「そんなに丁寧にしなくていいわ。彼らは私の両親じゃないの」弘文は怒りをあらわにした。「この不孝娘！琴星と取り違えたと思っただけだろ？まだ根に持っているか？こんなに長く音信不通で、家にも一通の手紙も出さなかったのか？」晴美は一番遠い席を見つけて座った。翔は彼女の隣に座った。「あなたたちが琴星を認めたその瞬間から、私は親も家も失ったのよ。そんなに琴星が好きなら、なんで私を探しに来るの？」恒志は黙って隅に座っていた。「あなたと連絡が取れず、恒志にしか連絡できなかったの。連絡を取ったら、あなたが恒志を病院に置き去りにして、放っておいたことがわかったわ。彼だって、あなたの標本を取るために、入院したんだよ」弘文は美代子の言葉を聞いてだんだん怒りを募らせた。「こんなふうに育てた覚えはない。どうしてあんな冷酷な子になったんだ！」晴美は恒志を見つめた。「どうしたの？米村さん、今度は密告を覚えたの？でも、その相手を間違えたのよ。私が京市を出た時から、彼らには私という娘はいなかった」恒志は言葉を発しようとしたが、何も言えなかった。「ふざけるな！もう親子鑑定をした。あなたが実の娘だ。俺たちは琴星に騙されていたんだ！」晴美は無表情で答えた。「それで？だからって親の立場で、私の人生に口を出して、
