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4話 見知らぬ人のよう

作者: 子猫
last update 公開日: 2026-01-19 15:08:13

1度口を離すと、優希を後ろ向きに自身の膝に座らせ、露出した首から肩に何度も口を寄せる。

そのまま背中へ熱い唇が移動すると優希は思わず背中を仰け反らせた。

反ることで突き出た胸を、服越しに大きな手が下から掴み、人差し指で先端を掻く。

思わず優希の太ももに力が入った。

「ちょ…っと、ちょっとまって!」

優希は流されそうだったが、背中を怪我しているかもしれないことを思い出し不埒な動きをする手を押さえる。

「背中を見せて。怪我してるなら消毒しないと。」

「さっき三滝秘書が支えてくれた時に彼女の爪が引っかかっただけです。大したことないのでそんなに心配しないでください。」

邪魔されたことを抗議するかのように暁春が耳を噛むと、優希の肩が震える。

甘い刺激に思考がまとまらないが、1つだけ確認しなければいけないことに気づいた。

「もう!真剣なの、止めて。」

本気で拒否する様子にさすがに動きを止めた暁春は優希のお腹で指を組む。離れるつもりはないようだ。

「さっき見た時はワイシャツに破れたところなんてなかったのに、どうやって有美ちゃんの爪が暁春の背中に引っかかるの?何か危ないことに巻き込まれてない?」

優希の問い詰める言葉に暁春は目を瞬いた。子供のようなその仕草に頭の片隅で可愛いという単語が浮かんだが、それ以上に事件、事故の様々な可能性を考えた。

暁春の立場では全体を考えて1部を切り捨てる選択をしなければいけない時もある。そうなれば恨まれることもあるだろう。

背中を刺されているのではないか。まで思考が行った時、ケロリとしている暁春の様子を見て否定する。

その時、有美の爪という言葉に違和感を覚えた。

本当に彼女の爪が引っかかったというなら、どうやったら服を破らずに爪が血を出すまで素肌に引っかかるだろうか。服を脱いでいないとありえないのではないか?

彼女は決して純心な乙女ではない。女性の爪痕が男性の背中に残ることの意味は理解できる。

荒唐無稽な考えだと思ったが、事件や事故の線が薄くなった今、1番可能性が高いと感じてしまった。

何故今日は急にこんな考えに走ったのだろうと優希は不思議に思ったが、悪い考えは止まらない。

2人が隣合って歩いていた映像が頭の中に流れる。運命の相手のように調和していた。

何かを考えているのか、優希の様子を伺っているのか、黙ったま優希を見る目がどこか見知らぬ人のように感じて無意識に眉を顰める。

緊張で喉が詰まる感覚が不快だった。

「嫉妬?」

何故何も言わないのか、不安になり、そう口に出そうとした瞬間に暁春の磁性のある声がした。目を細め、口元に軽い笑みを浮かべる姿は後暗いことなど何もないようだった。

「…なに」

真剣に取り合われていないと感じ、意図せず声が低くなる。そんな話じゃなかったじゃないかと思った。

その態度も愛おしいというように目元を下げる暁春。

「お馬鹿さん、犯人はあなたじゃないですか。」

優希は意味がわからずいっそう眉を寄せた。

( 朝出てから会ってもいないのに?いったいいつから出てる血だと言うの…。)

暁春は険しい顔のままの優希を自分に向かせ、耳に小さくキスをすると囁いた。

「2週間前、あなたは落ちないように必死に俺にしがみ付いていた。」

「腕だけじゃなく、この足でも、俺を離さなかったじゃないですか。」

めくれた裾から伸びる足を人差し指でゆっくりなぞられると、その刺激に優希の太ももが暁春の腰を締め付けた。

「忘れた?」

からかうような暁春の声に、先週の出来事を思い出した優希の顔が、暗がりでもわかるほど赤くなった。

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