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第18話

Author: 醸し屋
一方で、裕也はそれを聞いて、笑顔が一瞬固まり、声が少しこわばった。「なくしたのか?」

「私がいけなかったのね」愛菜は悲しそうに言った。「うっかりノートを湖に落としちゃって」

彼女は裕也の袖を掴んだ。「あのノート、私にとってすごく大事なの。裕也、見つけられないかな?」

そう言われ、裕也の胸のトキメキが途端に高く弾んだ。

愛菜はノートが大事だと言った。つまり、自分のことも大事に思ってくれているということか?

ノートを見つけ出せば、彼女は完全に自分を許してくれるのではないだろうか?

そう感じた裕也は躊躇わず言った。「どこだ、俺が探して来るよ」

だが、愛菜はためらいがちに唇を結んだ。「でも、こんな寒いのに……」

裕也は甘やかすように笑った。「バカだな、忘れたのか?昔は毎年、寒中水泳に行ってたんだ。寒いのなんて平気だよ」

愛菜は裕也を連れて、ホテルの裏庭にある人工池のほとりへと向かった。

今日は大雪が舞い、気温は氷点下。湖面にはすでに薄い氷が張っていた。

「あそこよ」愛菜は湖の中心を指さした。「午後に写真を撮っている時、うっかり落としちゃったの」

それを聞いて裕也はジャケットを脱いで彼女に渡した。「外は寒い。中で待ってろ。すぐに取ってくるから」

愛菜は窓の前に立ち、裕也が上着を脱いで一歩、また一歩と湖に近づいていくのを、冷ややかに見つめていた。そして――

ドボン。

彼はためらうことなく、骨まで凍みるような冷たい水の中に飛び込んだ。

湖面の氷が砕け、冷たい水が瞬く間に裕也の体を飲み込んだ。

それを見つめる愛菜の指先が微かにこわばった。それでも、彼女は無表情のままじっと見続けていた。

昔、裕也は二人の思い出の品を自らの手で湖に投げ捨てた。そして、なくしたと嘘をつき、彼女に3時間も湖の中を探させたのだ。

愛菜は、あの骨の髄まで凍えるような冷たさを、決して忘れることができなかった。

そして今こそ、彼がそれを味わう番だ。

湖の中の男は、潜ったり浮上したりを繰り返している。その物音に、すぐに多くの人が気づき始めた。

「誰か落ちたのか?!」

「いや、何かを探しているみたいだぞ」

「一体なにがそんなに大事なんだろうな。こんな寒い中、水に入ってまで探すなんて」

「また若いカップルがなにかやってるんだろ。最近の若者は、本当に体を大事にしないな」

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